10 婚約
よろしくお願いします
クロードは伯爵家の次男で継ぐ爵位はない。しかし学力は高く剣にも優れていた。しかも超絶美形である。しかも卒業後に第一王子の側近になりそうだとの噂があった。そのため学院どころか社交界でも優良物件として有名で狙う者は多かった。
嘘の噂でも責任を取らされるかもしれないのが貴族の社会なのである。
先程のことは早速シュトレイン家の家族会議にかけられることとなった。勿論クロードも加わっていた。
「金山が廃鉱になってどこかへ消えたと思っていたが、こちらの国へ来ていたとは」
「王子への不敬で国外追放がこんな事になるなんて。詰めが甘いのよ」
カリナの両親は怒りまくっていた。親子で考えることが同じだ。
「急いで調べさせるわ。今度こそカリナに仇する者は徹底的に潰す」
三人の考えが同じだったのでカリナは口を挟まないことにした。
「クロード君、カリナを幸せにする気はあるのよね?裏切ったら許さないわよ。地の果てでも追って行くわよ」
「勿論です。僕の初恋はカリナなんですから。裏切るなんてしません」
「それなら良いわ、認めてあげる」
「ありがとうございます。でもまだ告白の答えをもらっていませんので」
「カリナ、クロード君の事好きじゃないの?あんな事があったから踏み切れないの?」
「その事で聞いて欲しいことがあるの。聞いてもクロードの気持ちが変わらないという自信がないから、なかなか言えなかったけど話そうと思うの」
そこでカリナは眠っていた時のことを正直に話すことにした。両親には大まかなことは話していたが中身が入れ替わったことは言っていなかったので、驚かれると思っていたがもしやと思っていたらしい。
「あまりにも革新的なことを言い出すし、雰囲気が落ち着いていたと言うか、ね貴方」
「神様から加護を頂いたと言っていたからそのせいかと思ったりもしたのだが、確かめるのが怖かったんだよ」
「ご心配をおかけしてごめんなさい」
「無事に帰ってきてくれたんだから良かった。ミーナ・サウザンドと言ったか、徹底的に調べて潰そう。クロード君も分かっているね」
「勿論です」
「さあここからは二人で話し合いなさい」
両親は応接室を出ていった。
「私の秘密は以上よ。クロードが香里奈さんを好きでも仕方がないと思う。良い人だったもの。もう二度と会えないけど想うのは止められないから。婚約の申し込みは考えてからして欲しい。好きな人がいる人と結婚は嫌だし、クロードなら時間が経てばまた好きになった人と結婚出来ると思うから」
「正直に話してくれてありがとう。小さな頃から好きだったのはカリナだ。君が婚約しても傷付いて眠っても諦められなかった。眠っている時に何度も寝顔を見に来た。人形のようで悔しかった。僕だったらこんなに思い詰めるまで放っておかないのにってずっと思ってた。起きてからのカリナは大人びてた。また一人でどこかへ行ってしまいそうなほどね。カリナじゃなかったんなら僕の勘は当たってたんだ。君が帰ってきてくれて嬉しい。僕と結婚してください」
「はい、よろしくお願いします。だから私だけを愛してね」
「一生愛するのは貴方だけだと誓うよ。血の契約を交わしても構わない。今度きちんと指輪と花束を持って来てプロポーズするから、絶対他の奴の所へ行かないでね」
そう言うとぎゅーっと抱きしめて額にキスをした。
「はあ、甘い」
頬に何度もキスをし唇にそっと触れ
「口を開けて」と言うと舌を入れて来た。向こうの世界の情報で知識として知ってはいたが、上顎を好きな人の舌が自由に動き回っている。歯列まで自由に舐め回されて気持ちよくて意識が遠くなってきた。
「甘くて蕩けそう。理性がちぎれそうだから今日はこれで我慢する」
二人とも緩んだ顔を戻してから両親の元に行き結婚の許しを貰った。
クロードの両親にも許しを貰わなくてはいけないがもう既に大賛成だそうである。
婚約式は三ヶ月後、結婚式は一年後になった。これからクロードは執務の補佐としての仕事を覚えて貰うために滞在することになった。
今日は婚約指輪を買いに行く日だ。カリナは令嬢らしい水色のデイドレスにトパーズのイヤリングとネックレスを合わせた。クロードは白のスーツでクラバットを水色で揃えていた。ピンが金色でカリナの色をさりげなく入れていた。
馬車で貴族街の贔屓の高級宝飾店に行き、先に降りたクロードがカリナをエスコートした。
店内に入ると支配人が飛んできて奥の部屋に案内された。
「シュトレイン伯爵令嬢様、ヘミングス伯爵令息様良くおいでくださいました。この度はご婚約おめでとうございます」
流石商人は情報が正確だ。クロードが婿に入ることを知っていた。
「うん、ありがとう。婚約指輪が欲しいのだけど見せて貰えるかな」
「はい、こちらでございます」
ケースの中に大きなエメラルドが並べられていた。隣のケースには紺色の大きなタンザナイトが並べてあった。その中にクロードの瞳と同じ色の宝石を見つけた。吸い込まれるようなコバルトブルーの輝きだ。アウイナイトと呼ぶらしい。
「それが良いわ、クロードの瞳と同じ色だもの」
「じゃあ、私は貴女の色のエメラルドを選ぼう。これを指輪にしてくれるか」
「いつもしていられる小さな石のも欲しいわ。クロードは金の指輪をしてね」
「仲がおよろしいのですね。出来上がりましたらお屋敷に届けさせましょう」
私達は宝石店を出て予約していた海鮮レストランへ向かった。完全な個室なので他の客とかち合うこともない。いつかのカフェの様なことはごめんだった。