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ByNRia〜私達の学び舎は、何が起きても心配ありません〜(下書き&一旦停止)  作者: 差氏 ミズキ
〝起承転結〟 1人目〜3人目
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1人目 VICTORY・ヤクイ 吉

 「な…え…」


「どうしたヤクイ?まだ牢獄にいるかのような顔をして」


 なんだ…理解が追いつかない。何で?皆は?


 皆が居るであろう席に、皆の服を着た骸骨が座っていた。


「ラフ…アン?」


 彼の下まで移動しその頭蓋を指先で突いてみた。




ガコッ…ボトリッ…




「ラ…ッハルル…」




ガコッ…ボトリッ




「ウリキド!」




ガシッ…バラバラバラ…




「みっ、皆、なんで…」


 幻覚…?


「正解。よくわかったね?じゃあ、僕も本当の姿に戻ろうっと」


 そう言うと、服を脱ぐかのように、皮膚が脱げていった。


 目の前で見ていて、吐き気がするほどキモい。


 そして、俺の前に現れたのは、身の丈が190はあるであろう長身の男。髪はピンクでウルフカット、左目の目尻にほくろ。顔もいわゆるイケメンだ。


《はじめまして~、僕の名前はノア。君が上がる階段の管理をしているものだよ》


「皆は?」


《ちょっ、もぅ怖いよ!此処に君だけ【呼び出し】たのには理由がちゃんとあるから!ねっ?だから餅ついて。ほ、ほらっ。座って座って》


「理由とは?」


《うぅ~、警戒心Maxってのが伝わってきて、僕泣いちゃうよ〜》


「………」


《やっと座ってくれたぁ〜。それで、君だけを此方に【呼び出し】たのはね、君と話をしたいと思ったからだよ。あと、君がいう皆、ハルル、ウリキド、ラフアンは今、突然気絶した君を介抱しているよ》


「そうか…それはよかった」


《一つだけ聞かせてほしいんだ、それが聞けたらすぐに返すからさ》


「何が聞きたいんだ?」


《君…何で飛べるの?》


「何でって言われても、カインの攻撃を避けているうちに、気がついたら空を飛んでいたんだ」


《……》


「本当だぞ?」


《…まぁ、嘘はついていないようだね。僕は空を飛ぶ人間を2人しか知らない。1人は僕。もう1人はアダム。僕達ファミリーのドンだ》


「アダム…」


《君はアダムに魅入られてしまったようだね。どうする?解放することもできるけど》


「アダムに魅入られて、何かデメリットがあるのか?」


《アダムに魅入られるということは、次の器としてマーキングされているということだ。そのうち意識を乗っ取られ、ヤクイは消えアダムが誕生するだろう》


「それは…怖いな」


《僕なら解けるけど、どうする?》


「…………」


《ゆっくり決めればいい。この部屋は時間の進みが十分の一なんだ。ここでの10分は、外では1分だ》


「…解いてほしい。頼みたい」


《早いな…じゃあこっちへ。手を借りるね》


「…どうぞ」


《チュッ》


「っ!?」


《よし、これで解け……そんなに嫌な顔をしないでほしいな。僕だって傷つくぞ》


「本当にもう大丈夫なのか?」


《うん。オマケもしといたし》


「オマケ?」


《一度空を飛ぶと、その便利さが忘れられないだろう?だから、僕の飛行能力をお裾分けしたんだ》


「乗っ取られたりしないのか?」


《しないしない。もぉ〜、疑り深いんだから。よし、用は済んだことだし、みんなのところへ返すね》


「ああ、頼む」


《じゃっ、バイバーイ!》


「待てっ、ノアの本当の名前は?」


《僕の本当の名前?…う~ん…確か…セクタ・コンクルード》




ヒュンッ……シュポッ




「っは」


 戻ってきた!


 周辺を見渡すと、階段に腰掛け眠そうなウリキドと、額を両手で覆っているラフアン、ホッとした顔のハルルがいた。


「い…痛い…」


 どうやら、勢いよく起き上がったせいでぶつけてしまったようだ。申し訳ない。


 てか、構図を考えると膝枕をされていたのだろう。階段の上に寝かせてて良かったのに。


 頭を元あったであろう位置へそっと戻した。言うて俺も痛かったから。


 ここであることに気づいた。下から見て気がついた。


 ラフアンの胸板がちょいとばかし厚い。服の下には相当ムキムキの体があることが伺える。


「…………」


 なんだ?ハルルが馬鹿をみるような目でこちらを見ている。


「取り敢えず、俺は無事だ。心配させてすまないな」


「よかった…急に倒れたから…びっくりしたよ」


 改めて声を聞くと、結構高めの声だな。


 …………………いや、ないない。


「さて!階段上ろうか」


 立ち上がり皆を仕切る。客観的に見て何様なのか。


「ウリキドさん……起きて下さい…」


「うぅん…あれ?ヤクイ君が目を覚ましてる」


「待たせてゴメンな」


「ううん。それよりも、彼は元気だった?」


「…………ああ。歓迎してくれたよ」


「何の話をしているんですか?」


「なんでもないよぉ。ねぇ?ヤクイ君」


「ああ、なんでもない」


「何だか怪しいですが…まあ、今は出ることに専念しましょうか」




 それから、俺達は階段を上り続けた。


 しばらく階段を上り続け、ようやっとそれらしいドアを見つけた。


 俺達はドアまで駆け上がり、ドアを開けた。


「これは…」


 ドアの先には見覚えのある光景が。


 そう、円卓だ。


 今度は4人で帰ってきた。




ッパーン!




「っ!?」


「おめでと〜!2次試験突破できて良かった〜!もうずっと、お腹の調子が悪くなってたんだ」


 なんだ…クラッカーね。


 咳払いをした後、王様は言葉を続けた。


「ンン゙!それでは、ハルル、ウリキド、ヤクイ、ラフアンの以上4名を今回の一般枠として迎える。おめでとう」


「あ…ありがとう…ございます…?」


「ほらほら、もっと喜んで!合格したんだぞ?」


 もう少し体力が残ってたら、アベルのときの様に出来たかもしれない。しかし、今はヘトヘトだ。


「早く帰りたぁ〜い!」


「ええ、流石に疲れが溜まってますね…」


「…おっ、おう。そうか、では、寮まで案内する。着いてきてくれ」




スタスタスタスタ……




 案内されたのは、大きなお屋敷だ。これからは此処で生活していくのだと思うと、胸が弾んだ。


 部屋割りは既に決められていた。


 屋敷の2階、一番左端の部屋に俺とラフアン。その向かいの部屋にハルル、ウリキドという感じだ。


 授業が始まるのは1週間後とのことだ。他に誰が合格したのか、誰と一緒のクラスなのか、そこら辺もその時に発表するらしい。


 ということで、俺は暇な時間を活用してラフアンと親睦を深めようと思う。彼の魔法はかなり強力だ。


 今の状況は、部屋にあるテーブルを挟んで2人で会話をしている。


「試験ではかなり助けられたよ。正直ラフアン様々だった」


「いっ…いや、そんなことないよ…ヤクイさんがいなかったら…攻撃…できなかったし」


「それで、聞きたいことが幾つかあるんだけどさ」


「はい…何でも…聞いてください」


「俺が、カインの『死へのカウントダウン』で死にかけたとき、ラフアンは幻覚を見て、それでその彼から、彼の得意としていた魔法を教わったんだろ?それって何の魔法なんだ?」


「ああ…それはね…『固有 状態リセット』って名前の魔法なんだけど…」


 それから、しばらく会話をしていた。


 そこでふと気づいたことがある。


 今の俺って汗臭い?ここに来るまでにかなりの汗をかいたはずだ。これは彼も同じはずなのに、彼からはいい香りしかしない。なんて羨ましい体質なのだろう。


 そう考えると、風呂に入りたくなってきた。汗を流したい。


 一応、部屋に風呂やトイレは備え付けられている。しかも風呂とトイレが同じ空間にある。所謂、ユニッバスだ。


 正直別々が良かった。


「そういえば、たくさん動いたから汗の匂いが気になるんだ。風呂に入ってくる」


「え!…自分も…匂うかな…」


 彼は自分の身体を嗅ぐ素振りをした。でも、よく分からなかったようだ。


「ラフアンは全然汗臭くなってないんだよな。むしろ、いい匂いがするくらいだよ。羨ましい限りだ」


「いい匂いって…そんな」


 おっと、キモいわ今の発言。


「自分の匂いが気になるなら、ラフアンも入らないか?裸の付き合いというやつだ。そこで話の続きでもしよう」


「え…その…自分は…」


「まぁ、別に強要はしないよ。じゃっ、風呂入ってくる」




  ▲ ▶ ▼ ◀ ▼




 更衣室にて服を脱いで、腰にタオルを巻いて。あることに気がついた。


「お湯はってない…」


 ま…まぁ、シャワーでも浴びながら浴槽にお湯をはろう。




  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲




「ふうううぅぅ……染み渡る〜」


 足を伸ばせる風呂は最高だな。


「……疲れた」


 今日はもう、風呂から上がったら寝てしまおうか。別に会話なら明日でも出来るだろう。


「でも…楽しかったぁ」


 あんなに動いたのは初めてだ。牢獄にいたのは体感1時間半はある。あっ、そういえばまだ王様に文句言ってねぇ。でも、後でいいや。


 そういえば、俺の主人、ピャッチは合格しただろうか……それも、来週になれば分かるか。


 そうして、頭の中を整理していたところ、更衣室からガサゴソと音が聞こえた。


「あの…入ります…よ?」


「どうぞ~」


 そして、俺は驚いた。


 俺は今、腰に巻いていたタオルを頭の上に置いている。ラフアンのタオルはといえば、その体を全身包むかのように巻かれていた。


 そこで俺は気がついた。ハルルが馬鹿を見るかのような目で見つめてきた訳だ。


 ラフアンは女性だった。


 彼ではなく、彼女だった。


 えっ…どうしよう?取り敢えず頭に置いていたタオルを使い咄嗟に試行錯誤をした。


 よし、何とかブツは隠…れた!うん、隠せた!ちょっとくらいならはみ出てもバレへん。


 改めて考えると…確かに膝枕は柔らかかったし…胸板が厚いと感じたし…いい匂いもした。


 俺から誘っておいて、先に風呂から出たら不味いかな?不味いよな?不味いわ。


 そうこうしているうちに、彼女はシャワーを済ませ、此方に来ていた。時間は俺を待ってはくれない。


「ヤクイさん…隣良いですか?」


「あっ…どどどうぞどうぞ」


「…?じゃあ…失礼します」


 アババババババッ!まずい!女性怖い!牢獄で一緒に行動していたおかげで少しは大丈夫だけど…っていうか…胸が思ったよりもあった。服越しでは分からなかったが、胸が思ったよりもあった。


「そんなに…見られると…恥ずかしいよ…」


「あっ、すみません」


 なっ、何か、何か話題はないか?


「そっ…そういえば」


「はい…?」


 そういえば、何だよ!何を言おうとしてるんだ俺は!あっそうだ、あれ聞こう!


「セトと積極的に対話してたけど、何話してたんだ?」


「それは…秘密…かな」


「そっか…」


 いや、そっかってなんだ!断ち切ってどうする!


「その…ヤクイさんって…自分のこと男って…思ってましたよね…」


 これは図星だ。返す言葉もない。


「…ああ。男だと思ってた。だから今…心臓が爆発しそうになっている」


「そう…ですか」


「でも!…女友達は初めてだ。これからも変わりなくおしゃべりしようぜ?」


「は…はい!おしゃべり…しましょう」


 男って単純だわ。もうなんだか好きになってきた。


「…可愛い同居人が出来ちゃったな…」


「っふぇ!?」


「え?」


 あら?もしかして…声出てた?え?あ、いや…声出てた?


 あ~、彼女の顔が赤い…気持ち悪いと思われていないだろうか…生活を共にすることになるので、関係の悪化は嫌だ。


「お、おっと、顔が真っ赤だな、もう上がったほうがよさそうじゃないか?」


「…いや…まだ大丈夫…」


 なぜ?もうそろそろ、心が持たないのだが。


 なら俺が先に出ようか。


「さ、誘った側よりも先に出るのって勇気いるよな。じゃっ俺、先上がってるから」


「あっ…待って」


「あっちょ!」




ハラリ……




「きゃっ!?」


 なんてこったい。何故腰のタオルを掴んだのか。


 でも!危うく両手を使うことにより隠すことが出来ている。


「あの~、タオル…返してくれる?」


「あっ、ご、ごめんなさい!」


 ふぃ〜!危なかった!カイン戦とはまた違う緊張が体を強張らせている。


「じゃあ、先上がってるから!」


「はい…」


 そそくさと風呂場を後にした。


 体もしっかりと拭かず服を着ようとしたおかげで、少し時間がかかってしまった。


 流石に焦りすぎている。ここは冷静に、部屋に備えてある本でも読もう。


 そして、更衣室からリビングまで移動をした後、本棚から本を1冊手に取った。


「〈勇者と魔王〉か。この世界にも、勇者とか、魔王とかいるもんなのか?」




ペラペラ……




 これは普通に面白い。この世界の歴史を元にしたストーリーらしい。


 簡単に言えば


①勇者の直系である「ビギニング家」が、魔王の直系である「コンクルード家」と、永遠に戦わないといけない呪いを第三者よりかけられたと。




②その呪いを解くために、それぞれの家系の代表である、ヘルトとセクタが共に世界各地を旅する。




 まだここまでしか読めていないが、もう好きだ。てか、さっきこの名前聞いたな。


 そして、本を読んでいるうちにラフアンが、お風呂から上がったようだ。だが、今は顔どころか体も赤い。完全にのぼせてしまっている。確かに遅いとは思った。


「え…大丈夫?取り敢えず『そよ風』を」


「あ…ありがとう…」


「なんでのぼせちゃったの」


 今は、彼女をソファーに寝かせて、ずっと『そよ風』を浴びせている。俺はその向かいのソファーに腰掛けて、彼女がのぼせた理由を聞いている。


「それは…色々と…考え事を……」


「あぁ、やっと落ち着いたと思ったら、また赤く…」


 うん…うん?もしかして俺が変なこと言ったせいか?なんか口から溢れていた言葉をずっと気にしていたのかもしれない。もしかして、可愛いよりもかっこいいのほうが良かったとか。


 読んでいた本を元あった場所へ戻した。


 続きは気になるが、今はそれよりもラフアンの体が心配だ。


「本当に顔が赤いぞ…氷でも出すか」


「いや…そこまでは…いいよ…」


 のぼせたのではなくて、熱があるのでは?




ピトッ…




「ひゃあ!」


「あっそうか、顔触られたら嫌だよな。ごめん」


 前髪の下に手を通し、額に手を当てたが、やはり熱い。これは熱だろう。


「嫌なわけじゃ…ないけど…」


「『アイス』」


 小さめの氷をいくらばかりか出した。…が、ここでミスった。直で当てちゃ駄目だろう。


 何か包むもの……あっ見つけた。仕方ないが、制服を使おう。授業があるのは来週からだし、問題ないだろう。


 そうと決まれば、すぐに行動に移した。


 クローゼットから俺の制服を取り出して、氷を包み、彼女の額の上に乗っけた。


「あっ…ありがとう」


「心配だな…」


「別にこれは…熱とかじゃないよ…ただ、一人で…舞い上がってただけだし…」


「取り敢えず、大丈夫そうなら良かった。同居人には健康でいてほしい」


「……同居人…」


「まあ、同居人というか友人だな」


「…友人…かぁ…」




  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲




 しばらくして、おしゃべりを再開した。


 その頃には、彼女も落ち着いていた。が、目はあまり合わなくなった。


 嫌われてしまったのだろう。


「目が合わくなっちゃった…」


「それは…なんか…わからない…」


「そっか…」


 嫌われたかな…なんとか関係の改善をしたいものだ。


「ちょっと、散歩してくる」


「え…急だね…じゃあ、自分も…」


「いや、一人で考え事をしたいから」


「あ…そうなんだ…」


「次は2人で散歩しようね」


「…うん!」




  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲




 散歩をすると言っても、どこへ向かおうか。


 今は部屋の前で一人考え込んでいる。


「取り敢えず、街を観て回ろう。次に行くときの為の下見だ」


 さてと、そうと決まれば話は早い。早速街に赴いた。王様から貰ったお小遣いを携えて。


「結構賑わってるな」


 街の位置は、寮から道なりに下った辺りにある。


 ゆくゆくは、世界中の街を見て回りたい。


 その時の自分の隣には、一体誰がいるのだろう?


 一人かもしれないし、そうじゃないかもしれない。


 来週から始まる学校も楽しみだし、これから生活をともにするラフアンも気になる、そして、合格しているのか分からないけど、ピャッチと親睦を深めたりもしたい。


 今日は3人、友人ができた。


 その縁は大事にするつもりだ。


 街の中を巡りながら、これからの人生に思いを馳せる。


「よし、今日はこのくらいにして帰ろう」


 この世界には、俺の居場所がありそうだ。

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