5人目 プロローグ 視えている?
薄暗い、いかにも研究室を思わせる一室で、一人の少年が手術台から起き上がった。
室内はその少年以外誰もいない。
身体に刺さる数多のチューブを抜きながら手術台を降りた少年は、綺麗に折り畳まれた衣服を着用して、その近くのデスクへ腰を落ち着けた。
複数枚おきにプロファイルの施された資料が、そのデスクの上に綺麗に横並びに置かれている。
少年はそのうちの一番右手側の資料を手に取り、ペラペラと一枚一枚丁寧に捲る。
その手が止まったのは、本日の日付が書かれている以外に、特に何も書かれていない白紙の5ページ目だ。
1ページ目…アヂン…騎士団を一人で相手取る程までに剣技の才が秀でている長男、そして今は…私の剣。
2ページ目…ドゥヴァ…魔法帝国の帝王が直接顔を視にくる程に魔法の才に恵まれた長女、そして今は…私の魔導具。
3ページ目…トゥリス…年若くして大人顔負けの頭脳を誇る次女、そして今は…私の脳。
4ページ目…チティリ…魔力を弾く稀有な体質を持つ次男、そして今は…私の鎧。
私の子供達で創った…私だけの…アイテム。
全身を愛する子供達に包まれる幸せ…それを理解できない愚王は、私の手で直さねばならない。
末の息子を彼奴に保護させたのが間違いだったのだろうな。数年前に訪問したが、返してくれなかった事を記憶している。
今は恐らく…男の魂に女の身体…そんな中途半端な状態で苦しんでいる事だろう。
君の元の身体は今も大切にしているよ。
こうして私の魂を移すことで、大切に管理出来ている。
あぁ…愚王の下から離れられないとはなんと可哀想な……雪が降る頃には迎えに行けるからな…それまでの辛抱だ…待ってておくれ。
銀髪で銀色の瞳の少年は、白紙の5ページ目にこう書き連ねる。
5ページ目…ピャッチ…邪神に対抗するために創った改造人間、そして今の私の素体。
そして…〝世界の理に対抗する力〟を、息子の魂が持っている。
あとはその魂を…他の子供達と同様に『地縛瓶』に移せれば、私の対邪神戦の備えは完璧だ。
……子供達よ…私を見守っていてくれ…パパの勇姿を、大きな背中を見せてあげるから…。
世界を救う事が出来るなら…私は喜んで…自ら底の底へと堕ちよう。
それの為には…偉大なる目標を達成する為には…その分犠牲や代償が必要なんだ…解ってくれるだろう…?
私の…大切な子供達よ…。
デスク上に並んでいる書類を綺麗に一纏めにし、それを引き出しの中へと入れ〝その場所〟後にする少年。
…………〝僕〟の気のせいだろうか。此方をチラリと見やり、不敵な笑みを浮かべた気がした。
引き出し内の書類の中には、彼の名前も記載されていた。
その名はノーリ・パルファム。
元パルファム公爵…その人である。




