表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/38

4人目 Ⅻ・ヤクイ 氵

 俺の首は、初代国王の手により切り飛ばされた。


「え…え!いや、殺すつもりは無かったんだがな…」


 自由落下をしていく俺の首を、初代国王はキャッチしながら着地した。


「どうしよう…バイナリぃに殺されるんじゃないかこれは…!と、取り敢えず、【完全回復】を使っておこう!」


 初代国王の刀と鎧がドロリと溶け出し、人の姿へと形を変えた。


 そして現れたスライムっ娘は、初代国王よりも大慌てである。


「ど、どど、ど、どうしよぉ〜!!セリョウ様がヤクイを殺しちゃったぁ〜!」


「い、いや、待て!まだ完全に死んだと決めつけるのは早い!」


「ぼぉくでも知ってるよぉ!人間は首を切られたら死ぬぅ!そして、ヤクイは首を切り飛ばされたぁ!」


「お、落ち着くんだ…!【完全回復】が効いてくるのを待つんだ!」


「でもぉ!それって即効性だったよねぇ!ねぇ!?つまりはそういう事だよぉ〜!」


「ならば、【蘇生】を使おう!それなら確実だ…!」


 初代国王は俺の生首に向かい【蘇生】を使用した。


 だが、何も反応は起きない。


「あれぇ〜!どうしてぇ…!」


「セリョウ様のキャラが崩れてきてるぅ…つまり、本当にやばいってことだよぉ〜…」


「子孫に顔向けできないよぉ…どうしよう…これから会いに行く予定だったのにぃ…」


 ………ど、どうしよう。


 実は生きてるけど…何か、言い辛いな。


 完全にタイミングを失ってしまっている。


 今なら傷の一つでもつけられるかも知れないけど…ってか、その作戦だったけど…罪悪感が凄い!


 出来ない!そんなこと!


 ってかさ、俺の身体は未だに空を飛んでいるってこと…気が付いていないのかな?


 一応地面に着地しようか…。


 因みに、あの人達には俺の生首に視えてるんだろうけど、本当は俺の思念により姿を変えた、マイ日本刀だよ。


 刀に【完全回復】とか【蘇生】を使っても…そりゃあ、無意味だよね。反応は無いよね。


 よし、声を掛けてみよう!


 取り敢えずは、俺が生きていることを伝えて安心させねば!


 それから俺は、俺の生首を見つめて、大慌ての2名に声を掛けた。


「あ、あの〜、それは刀ですよ…?本物はこっちです、生きてますよ…な、なので、落ち着いてください…!」


 すると、俺の声が届いた2名は、バッとこちらに首を動かした。


 両者共に眼を見開いて驚いている。


「あ、あの?なんか…すみません!」


 俺は罪悪感から、腰を綺麗に折って謝罪した。


 本当にごめんなさい!こうなるとは思わんですやん!


「よ、良かったよぉ〜!生きててよかったぁ!ぼぉくね本当に死んじゃったって思ったんだからねぇ!」


「す、すみません!」


 スライムっ娘に抱き着かれたけども、冷てえぇ!!


 いきなりアイスバケツチャレンジを始めたみたいな冷たさしてる!


 これを身に包んで動いていた初代国王はいったい何者だ?


「えぉっほん!…今回の戦闘の勝者はヤクイだ、俺に傷をつけられる状況だった。だから、俺の負けだ。………生きてて良かったわぁ〜…!本当に焦ったよ俺」


「それは本当にすみません…!やり過ぎました!」


「まぁ、勝ちは勝ちだから、ほら、そのスライムあげるよ」


「え?」


「えぇ~!ぼぉく、そんなこと一言も訊いて無いよぉ!?」


「ごめんよ、メイクン。それくらいしか、対価がないんだよ」


「えぇ~…こ、この人にぃ…」


 そんな眼で視ないでおくれよ、罪悪感がぶち上がりしてしまうよ。


「絶対に…オ●ホにされるよぉ…毎晩ズポズポされるんだぁ…」


「しないわ!やめてっ!俺、彼女いるから!」


 急にぶっ込んで来るじゃん!下ネタ全開はビビるよ?


「あの、セリョウさん…」


「ん?なんだ?」


「要らないです」


「要らない?そのスライムは、鎧にもなり、剣にもなれる。ヤクイが持つ刀と遜色ない性能を発揮出来るだろう」


「…要らないです。ごめんなさい」


「…そうか」


 すると、俺の対応に不満でもあったのか、スライムっ娘が声を上げた。


「えっ、ちょっとぉ!要らないって言わないでよぉ!貰ってぇ!ぼぉくの事貰ってよぉ〜!…別にぼぉくからは嫌って言ってないでしょぉ…!ねぇ~え〜…」


 うわっ…泣いた…でもこれは罪悪感が湧かない。何で?


「わ、分かったから!泣かないで!ごめんね!貰う!君を貰わせていただくから、一緒に生活しよ…?」


「1人にしないって誓えるぅ?」


「しない!ってか、心配で1人に出来ない…!」


「やったぁ〜!ぼぉくの事、離さないでね…だぁりん♡」


 ちくしょう!そのまま死んだふりして帰ればよかった!


 意図せずスライムがパーティーに加わってしまった!どんまい…俺!


 ナンテコッタイ!!


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 超越者セリョウ・ナフカードに勝利した俺は、スライムっ娘を報酬として受け取った。


 本当に…いや止めとこう、言わない。


 初代国王は、子孫に顔を出してくると言って以降、お城に戻って来る気配はない。


「……帰るか」

 

 痺れを切らした俺は、ここいらでお暇させて頂く事にした。


 そうしてその場から立ち上がり、お城の出口へと足を動かすと、頭の上から反応がきた。


「お家どんな所かなぁ〜。楽しみだなぁ〜」


 スライムっ娘は今、ファーストコンタクト時と同様に、ノーマルスライムの状態で頭の上に乗っている。


 旋毛がヒンヤリとしており、なんとも芳しくない状態である。


 COLDからHOTになって欲しい。そう切に願います。


「数日は宿だよ、それからはお屋敷になって、更にしたら寮になるかな」


「えぇ~!もしかしてぇ〜、お貴族様だったりするのぉ〜?」


「違うかな。俺はお貴族様の執事ポジションやってるから」


「確かにぃ…言われてみれば、だぁりんは執事服きてるもんねぇ」


「俺をだぁりんと呼ばないでくれ…」


「えぇ~!だぁりんが駄目ならぁ、なんて呼べばいぃ〜のぉ?」


「そうだなぁ…」


 なんて呼ばせようか…少なくとも、誤解をされるような呼び方は駄目だな。


「じゃあ、マスターって呼んで」


「りょうかぁい、ますたぁ〜!」


「なんかフワフワとした呼び方だな…まぁ、良いか。可愛いは正義って言葉もあるし」


「そうだよぉ〜?ぼぉくはかぁわいいんだからぁ〜!」


 そんなに頭の上でゴロゴロと動かれると、旋毛が冷えて頭痛が起き始めてしまうじゃないか。


 でも、他にどこに置けばいいんだろう…?


 人形の状態で隣を歩かせるのは、なんとも侍らせている感が出てきてしまうため、除外済みである。


 ………よし、軍服天使を視つけたら、このスライムっ娘のお世話を任せよう。そうしよう!


「はいはい、可愛い可愛い」


「でしょぉ〜?ますたぁ〜ってば、わかってるぅ!」


「いやぁ…実際可愛いからね」


 特に声がね。


「えぇ~?なになにぃ〜?もしかしてぇ…ぼぉくのことぉ、口説いてるのかなぁ〜?」


「うん」


「…えぇ?…あ…えとぉ…」


 よし、静かになった。


 こころなしか、旋毛も温かい。


 要は一石二鳥ってやつだ。


 それからは、特に大した会話も無く、出入り口まで辿り着いた。


 扉のノブに手を掛けて外へと出ると、そこには、王様と軍服天使がこちらを待っていたかのように待機していた。


「おっ、来たか。さっさと祠に行くぞ………ってか…」


 王様は軍服天使を親指でピッと指し示し、話を続けた。


「キェベクの使徒を侍らすとはな。あと、その頭に乗ってるスライムはセリョウの使徒だろ?…コンプでもするつもりか?」


「待てっ!侍らすとは訊き捨てならない。私が、いつ、あんなのに、侍らさせたというんだ!人間如きが調子に乗るなよ?」


 王様の素っ頓狂な物言いを受けて、いの一番に反応を示したのは軍服天使である。


 本当に嫌そうな顔をしているので、俺は傷ついた。


 そこまで嫌ですか…?


「ソーシャル、この子のお世話してみない?」


 スライムっ娘を頭から手に移し、軍服天使の方へと差し出した。


 すると、軍服天使はギョッとした顔になり、こちらをチラチラとし始めた。


「お、おお…お、お前!これ…」


「あぁ~!お久しぶりだねぇ〜!!元気してたぁ?」


「…………」


「ソーシャルってぇ、初めて会った時からその服装だよねぇ」


「メイクかよ、驚かせやがって…」


 先程までの焦り顔とは一変して、ギロリとこちらを睨み始める軍服天使。


 何がそんなに気に食わん?


 適切な距離は保ってると思うんだけどな。


「で、私はメイクの世話を任されたのか?…言っておくが、普通に嫌だぞ?」


「嫌だって言わないでぇ!眼の前にいるんだよぉ?それにさぁ〜、ぼぉくにも感情はあるんだぞぉ〜!」


「だって、メイクって、面倒くさいじゃん」


「はぁ~?そういうこと言っちゃうんだぁ~?…ならぁ、ぼぉくにも考えがあるぞぉ〜?」


「何だよ?」


「うわあぁぁ〜ん!面倒くさいってぇ、面倒くさいって言われたぁ〜!酷いよぉ〜…!」


「ほら、面倒くさい」


 悪態をつきながらも、軍服天使は俺の手からメンヘラスライムを受け取り、頭にかぶっている帽子の上へと移した。


「ほら、これで良いんだろ?」


「おお、素直だね」


「ますたぁ~!この帽子硬いぃ〜!外してぇ!」


「マスター…?」


「うん、俺がマスター。ソーシャルもこれからは、俺の事マスターって呼んでよ」


「いい趣味してんな。…して、マスター、メイクに黙るように指示してくれ。煩くてかなわん」


「あぁ〜ん!ひどぉ〜い!そんなこと言うのぉ?ぼぉくの方が年長さんだよぉ?」


 すると、丁度良い頃合いを視つけたのか、王様が使徒2名に声を掛けた。


「天使、スライム、お前達はもう渡したのか?」


「…いや、すっかり忘れていたな」


「そういえばぁ〜…なんかあったねぇ。でもぉ、数百年生きてる身としてはぁ、忘れてても仕方ないんじゃないかなぁ?」


「なら、今からでも渡しとけ。今後、動きやすくなるだろうしな」


「はぁ~…」


「はぁ~い!ソーシャルとは違ってぇ、ぼぉくは素直なのでぇ、渡しまぁす!」


 …なんの話や?


 渡すものがある?


「はぁい、どうぞぉ〜」


 スライムっ娘が、人の形となり、此方に手を差し出した。


 その上には、指輪らしき物が伺える。


「どうも…」


 それを取って、適当に指に嵌めてみるが、特に何かが変わった感覚はない。


 本当にただ、指輪を身に着けたってだけである。


「その指輪はねぇ、ぼぉく達使徒が一人一人所持しているものでねぇ、その指輪に念じればぁ、いつでもぼぉくが呼べるようになるよぉ」


「ほぉ…それって、魔力の消費とかは…?」


「なぁい!」


「ほほぉ……さて、ソーシャル」


「嫌だ」


「まぁまぁ、今後楽になるよ?」


「…嫌だ」


「そ、そんなに嫌ですか?」


「私はマスターを信用しきれない。くだらないタイミングで呼ばれる可能性だってある」


 ここ数日間で、初対面の時よりは親睦が深まったと考えていたけど、全然そんな事無かったね。


 ってか、このスライムっ娘は帽子についてもう何も言わなくなったな。一度、意識が別なところに移ったからだろうか。


 現に、ノーマル状態へと戻ったスライムっ娘は、普通に軍服天使の帽子の上に鎮座しているもの。


 そういえば…軍服天使って、寝るときも帽子取らないよな。


 うわ…気になってきちゃった。…でも、好感度が落ちそうだから辞めとこう。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 セリョウの祠へと移動した御一行は今、その祠へと向き直り、手を合わせている。


「セリョウ、俺達を見守っててください」


「普通に呼び捨てなんですね」


「本人からそう言われたしな」


 そうして深くお辞儀をした王様は、俺の方へと身体を向けて、手を差し伸べた。


「ヤクイ、悪いがその耳飾りを少し貸してくれ」


「あぁ、はい」


 そういえば、鈴の付いた耳飾りを付けていたな。


 最近はすっかり鳴らなくなったから、全然忘れていた。


「はい、どうぞ」


「サンキュー」


 王様へ耳飾りを渡すと、彼はそれを両手で包み込み始めた。際しては、ブツブツと呪文的な何かを呟いている。


 なんて言っているのかは定かではないが、耳飾りに魔力的な、何か特別なものを流しているのは理解できた。スイ先生の授業で習ったからこその理解である。


 そうしてボーっと王様の手元を眺めること数十秒、目的が済んだのか、王様はその手で包んでいた耳飾りをこちらへと差し出した。


「ほれ、付けてみてくれ」


「ありがとうございます…」


「よし、避けろよ?」


「…はい?」


 すると、突然にも鈴が鳴り出した。


 耳元で大きく鳴り響くその音は、入学式の際にも訊いたものである。


「っ!」


 鈴の音が鳴ったと当時に、俺は空へと急上昇をした。キェベク戦を乗り越えてスピードの上がったそれは、瞬く間に上空へと俺を飛ばしてくれた。


 急にエグいな…と、首を下に向けると、どうした事か、王様が軍服天使と鍔迫り合いをしているではないか。


 いや、正確には王様が実現させたと思われる謎の銀髪長身の男性と、スライムの鎧を身に纏った軍服天使が鍔迫り合いをしている。


 そうした只中でも、王様の眼は俺を捉えてやまない。


 軍服天使の方をチラリとも眼を向けないのは、謎の銀髪長身が負けない事を確信しているからなのだろう。


「よーし!ちゃんと機能したな?」


 地上にいる王様から、上空数メートルの位置にいる俺へ声が掛けられた。


「はい!訊こえました!鈴の音!」


「なら良かった!今まではエネルギー切れで機能停止してたけど、祠からちょっと拝借して補充しといたから、数年は持つぞ!」


「エネルギーで動いてるんですかこれ!」


「ああ!取り敢えず降りてこいよ!天使とスライムを止めてくれ!」


「はーい!今降ります!」


 自身の高度を下げて、必死の形相で鍔迫り合いをしているスライム鎧天使に声を掛けた。


 すると、声を掛けると同時に、謎の銀髪長身はパッとその姿をくらました。


 いったい何処へ消えたのだろうか。


「ソーシャル、メイくん!王様は俺を信用したうえで、耳飾りの機能を試しただけだから、落ち着いて!」


「……っふん!無駄な体力を使ってしまった」


「ちょぉ〜っとだけ心配が勝っちゃってぇ、つい動いちゃったんだよねぇ、ぼぉく達はぁ」


「ってか、ソーシャルが動くとは思わなかったよ」


「マスターが攻撃されたんだから、当然動くだろう。それに、私には君を導く使命がある。ここで怪我をされては堪らない」


「なるほど…そいつは有り難いですね」


 危険な状況に陥ったとしても、軍服天使やスライムっ娘が助けてくれるっぽいな。今回の件でそれを知れた。


 俺は地上へと降り、王様へこれからの予定を尋ねた。


 明日まで自由時間なら、ギャザットをデートに誘おうと考えている。


「王様、今日は後、なにか予定ありますか?」


「ん~…特にねぇかな…明日の朝に此処を発つくらいだな」


「なるほど…」


「なに?誰かと遊ぶのか?」


「そうですね…」


「…っえ!そうだったの!?いつの間に…」


 突然にも王様が燥ぎだしたぞ?


 いったいどうしたのだろうか。


 ………王様って、【さとり】とか使えるのかな。…心を読んでのこの反応なら、まぁ、納得である。


 ほら、王様もこっちを視ながら頷いてる。つまりは確定だ。


 王様って色々知ってるんじゃなくて、色々知れるのかもな。


「ヤクイやるな〜!俺はてっきり、ラフアンと御セるのかと…」


「御セる?…あぁ。よくもまぁ、そんな言葉を思いつきますね」


「まさかの一目惚れねぇ…」


「そんなこと言われたら、付き合うしかないですよ」


「…で、ラフアンの事はいいのか?」


「…実は、ラフアンには一度告ってるんですよね」


 そう、俺は一度勇気を出して告った。


 だが、結果はあえなく惨敗。


 理由を訊いてみれば、まだ心の準備が出来ていないからとのこと、そして、ビギニング家は一夫多妻制が普通だから、準備が出来るまでの間に他に恋人を作っててもいいとも言われた。


 すぐに靡いてしまうダメ男の俺からすれば、なんとも有り難い制度である。


 なんとも有り難い制度である。


「キェベクに感謝だな。それはあのクソ天使が定めた制度だし」


 普通に心の声訊いて会話するんですね。


 あれ、口に出してたっけ?ってなっちゃいましたよ俺。


「一応言ってくけど、【さとり】だけを使ってるわけじゃないからな」


「はぁ…そうなんですね」


「取り敢えず、明日の朝まで暇だから、アンゲロイのオススメスポット教えるけど訊くか?」


「ぜひ!」


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 俺はあれからギャザットと合流をし、そのままデートを始めた。


 使徒達にはソレゾレお小遣いを渡して、アンゲロイの街をお散歩させている。


 かくいう俺も、ギャザットと二人でのんびりお散歩を楽しんでいる。


 そして今、王様から伝えられていた場所へと到着を果たした。


 そして今、王様にしてやられた事に気が付いた。


「今からスルのですか?」


「あぁ、いや、まさかラブホだとは…」


 ってかこの世界にラブホなんてあるのか…。


「私は何方でも構いません」


「っく…どうしよう…!」


 今からするとなると…残りの自由時間はほとんど無くなってしまう事になる。でも、幸せである事には違いない。


 そんなに真っ直ぐ視つめられると、ちょっと照れちゃうな。


 ってか…あれ?そういえば訊いてたっけな……。


「ギャザットさん、そういえば何だけどさ」


「はい、どうしましたか」


「一夫多妻制…ってどう思いますかね…?」


 何か心臓バクバクしてきたな、緊張してきているのだろうな。自分が思っているよりも、顔に出ているかもしれない。


「いいですよ。ヤクイくんが複数の人と交際をしても、第一夫人は私なので」


「お、おおぅ…」


「他にお付き合いをしたい方が?」


「はい…ラフアンとも…付き合いたいんです…」


「ラフアンさんですか!」


「え、あ…はい」


 何だ?急に声が大きくなり始めたぞ?


「ぜひ彼女とも付き合ってください!」


「はい…?」


「あの、わ、私、そっちの気もありまして!ラフアンさんの様なメカクレ属性の方は特に好きなんです!ストライクなんです!」


「お、おお…」


「それに、近くを通り過ぎた際に生じるあのフワッとした匂い…直で嗅いでみたいです…!」


「おお…と、取り敢えず、よかった…?」


 なんと、ギャザットはオタク属性と百合属性を兼ね備えていたのか…。


 でも、早口で語り始めた彼女の楽しそうな表情や、控えめな身振り手振りは、とても可愛らしいものである。


 それからは、主にラフアンをテーマとした会話をしながらお散歩を再開した。


 ギャザットの興味がラブホから別のものに移ったお陰で、当初の問題は切り抜けることが出来た。


 あと少し遅かったら本日の自由時間は無くなっていただろう。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 日をまたぎ、宿の窓から朝日が差し込み始めた頃おいのこと、アンゲロイの街はいつになく賑をみせていた。


 それも、良い方の賑ではなく、悪い方の賑である。


 何事かと思い、宿の窓から外の様子を伺うと、どうした事か、そこかしこで火事が起きていたのだ。


 どの家からもゴウゴウとした炎が立ち昇っている。


「何だこれ…と、取り敢えず消化活動…!」


 それからは、使徒達と共に次々と家々の消化を進めていった。際しては、俺と軍服天使は空から水系統の魔法を用いている。スライムっ娘には、各家に取り残された人達の回収を頼んだ。


 気が付けば王様達も地上から消化をしてくれている。


「王様!これはいったい…!?」


「…どうやら、この街には定期的に火災が起きるらしい!取り敢えず今は消化に専念するんだ!!」


「はい!」


 王様の言う通りだな、今は消火活動に専念しよう。


 残り半分くらいだろうか…このままのペースで行ければ、あと数分で片付けられるだろう。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 消化活動を終えた王様御一行は、この街の長だというエルフの男性の屋敷へと、今回の件について尋ねるために足を運んだ。


 お客用と思われる部屋の中には、俺と王様とエルフの3名がおり、他の女子達は別室にて寛いでいる。


 部屋の中央に設けられたソファーに俺と王様は横並びで腰を落ち着けており、ローテーブルを挟んだ対面のソファーにエルフが座っている。


「初めまして。私の名前はアズマル・シュヴァルツ・アンゲロイ。この街の管理をしているものです。本日の一件では、大変お世話になりました」


「アズマルさん、一つ訊いていいか?」


 自己紹介を終えたアズマルに王様が質問を始めた。その表情は珍しく真剣である。


「はい、私に答えられる事なら何なりと」


「定期的にこんな感じで火災が起きてるらしいじゃんか?それって、自然現象?それとも、作為的なやつ?」


「どちらかといえば、後者ですね。この街には、つい最近から…………いえ、10ヶ月程前から、とある神様が住み着いてしまいまして…」


「ふ~ん…そいつが定期的に街を燃やしてんの?」


「そうですね。恐らくは、恐怖によりこの街を我が物にしようと考えているのではないかと」


「そいつの場所って何処か分かるのか?」


「ええ、定期的に供物としてお酒を50樽程運んでいますので」


「なるほどな…」


 王様は少し考える素振りをして、再度アズマルに問い掛けた。


「困ってんなら、俺等で退治してくるけど、どうする?」


「なんと、神様を追い払えるとでも?」


「追い払うのは厳しいかもだけど、討伐は可能なんじゃねぇかな」


「左様ですか…そうですね…でしたら、頼んでもよろしいでしょうか?」


「ああ、任せとけ。ナフカード国の王様は、魔法帝国の帝王と肩を並べられるんだぜ?そりゃ行けるって話よ」


「なんと、あの帝王と渡り合えるというのですか?」


「ああ、一応負けることは無いな」


「それだけでも十分です。…どうか、この街に住み着いた神様、カグツチを退治してきてください。よろしくお願いします」


 アズマルはソファーから立ち上がり、俺と王様に向けて綺麗に腰を折ってみせた。


 それに対して景気よく反応するのは我らが愚王、誰に対しても敬語がないタイプの人間だ。


 にしても…カグツチねぇ…それって日本の神様じゃね?イザナギとイザナミの子供で、イザナミを殺してしまった神様。で、確かイザナギに殺されるんだよな…。


「おう!報酬はナフカード国とアンゲロイの街を直通できる道を作る…な!」


「なんと…無茶な事を言いなさる。ですが、分かりました。成功を収めることが出来たのなら、私が直々に道を引きましょう」


「よし、決まりな。完成した道を視るのが楽しみだぜ…」


 それからの行動は早かった。


 お屋敷を出た御一行が向かうのは、アンゲロイの最北端、祠とは真反対の方向にある山の中である。


 アズマルの話によれば、そこに目的とする神様が勝手に住み着いているとのこと。


 そして今は、その山の麓で戦闘をするメンバーを決めている最中である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ