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4人目 ⅩⅡ・ヤクイ 月

 これは元冒険者ギルドの扉へと手を伸ばした時に起きた出来事である。


 扉のドアノブに触れた瞬間に、視界の隅に映る世界が、一瞬にしてその姿を変えのだ。


 俺はその異変に気が付き、すぐさま周囲に視線を向けると、先程窓ガラス越しから眼にした、ギルド内の椅子やらテーブルやらが伺えた。


 どうやら俺は、内側に入っているようだ。


「ここは…」


 そうした疑問を抱きつつ、ギルド内を探索していると、ギルドの隅の方に、人影を見つけた。


 俺はそこへ恐る恐るといった調子で近づき、その傍らまで移動した。


「…生きてるのか?この人…」


 4人がけのテーブル席に、1人腰掛けて突っ伏している少女がそこに居る。


 でっかいアゲハ蝶を、人の頭髪にプリントしたようなデザインをしており、とても眼を惹かれる。


 ひとえに言えば、黄色い髪に黒い筋が走っているような感じの頭髪である。因みにそれは肩まで伸びている。


 その肌はかなり白い。舞妓さんよりは白くないが、普通の人よりは白い肌をしている。


 服装はオーバーサイズの白いパーカーを着用しており、綺麗な太ももがその裾から伸びている。


 下を履いていないのかと思うほど、根本から太ももが視えており、太ももフェチの俺は大歓喜だ。


 そして再び頭部にフォーカスすると、その口に眼がいった。


 なぜなら、綺麗なピンク色をしている舌先が、俺にこんにちはをしていたからである。


「猫かよ…」


 舌が長くて、口の中に収まらないのかな?ってか、食事の時とか大変そう。俺なら絶対舌噛みまくる自信あるよ。


「…死んでるのかな…?」


 そう口から溢して、その子の頬へ指を伸ばした。俺はそのままプニッとしてやろうと考えている。


 絶対柔らかいよ、この子のほっぺ。


 そうして、指が頬に到達しようとしていた頃合いに、急に眼を開いたパーカーっ子に俺は腹部を蹴り上げられて、数メートル程後方へ吹き飛ばされた。


「ぐぶぇっ!」


 そしてそのままギルド内の床と衝突し、俺は意識を失った。


 俺の最後の記憶は、パーカーっ子が此方にゆっくりと歩いて来ているところで途切れている。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


「っ!?…いってぇ…何だ、今の…?」


「怪我したの?」


「おわっ!ビックリした!…って、既視感あるな」


 俺は気がつけば、ギャザットの膝を枕として、仰向けに倒れていた。…前もこんなことあったね。こっちの方が、顔が視えやすいけども。………おっと失言。


 何か、頭撫でられてる。…嫌な気はしないけど、本能は鳥肌を立ててしまう。


 俺はムクリと身体を起こし、周囲の確認をした。


 どうやら俺は、元冒険者ギルドの扉の前で気絶していたようだ。


 ノアの時もこんな感じだった。…でも、あの子はノアとは違う。…もう一度触れれば、また行けるだろうか?


 そうして、再びドアノブへと手を伸ばすと、すぐ傍らで俺の背面やお尻についた砂を払ってくれていた、世話焼きっ子の彼女に、腕を掴まれ止められた。


「………右手解禁」


「あ…」


 俺は、先程伸ばしていた方とは反対側の手、右手でドアノブに触れた。


 そして、またも視界の隅に映る風景が変わった。


「居た…!」


 扉の方から振り返ると、今度はズラリと並んだカウンター席の1つに腰を落ち着けながら、パーカーっ子は此方をジッと視ていた。


 それに対して俺は、恐る恐るながらも、一歩一歩と確実にその子との距離を詰めていった。


 そして、パーカーっ子と数メートル程の距離を設けて歩みを止めた。


「あ、あの!」


 取り敢えず、俺は声を掛けた。


 また何も出来ずに攻撃されては、たまったもんではない。


「…何?」


「あ~…えと…」


 無いよ!何も!と、取り敢えず、眼に入ったものを言うんだ!


「舌が…」


「…舌?」


 舌?何でそれにしてしまったんだ俺?相手の眼を視ないで、口元ばかり視て育ったせいか?


 取り敢えず、続きを述べなくては。


「大変…可愛らしい…ですね。猫みたいで」


「っ!」


 相手はこちらの発言を受けて、パッと両手で口元を隠した。際しては、耳までその顔を赤くしている。


 それは、先程までの無表情とのギャップがかなり強いように思える。


「で…!貴方は、いったい?」


「同ジ言葉ヲ、遠イ昔ニ、言ワレタ」


「はぁ…」


「少シ、驚イタ。ソレト、サッキハ、ゴメン」


「いや、大丈夫ですよ。今もこうして無傷ですし…」


 あれ?そういえば、何で怪我一つしていないんだろうか?


 ギャザットが治してくれた?………まぁ、それが一番妥当か。


「ア…ソウイエバ、仕事、シナイト」


「…仕事?」


 パーカーっ子はそう言うと、椅子から降りて、此方に近づいてきた。


 その行動に身を強張らせながらも、俺はその場でジッとしている。


 そうして、お互いに手を伸ばせば触れ合える位置まで近づいたパーカーっ子は、その場にしゃがみ込み、俺の手を取った。


「な、何を?」


「仕事」


「そのまま、腕を引き千切らないでね…?」


「ソレハ、君次第」


「えぇ……怖いぃ…」


 今から何が始まるのかとドキドキしていると、その子は俺の右手の甲に口を近づけた。


 その時の俺は、ノアみたいに、キスでもするのかと思っていた。だが、現実は思っているよりも、180°違った。


「痛っ!!!」


 手の甲をガリっと噛まれた。よく視ると、骨が露出していたりする。


 そして、痛みを感じて声を漏らした次の瞬間には、その激痛は消え去っていた。


 それに気が付いて、噛まれた手の甲を視ると、蝶の形をしている紋章が浮かび上がっていた。…これ、なんか既視感あるな。命令とかに使えそう。


「うわっ…」


 手の甲をベロンと舐められた。お陰で右手はベトベトである。それに…やはり、この子の舌は長い。


「終ワリ」


「いや、唾液でベトベト…」


「嫌?」


「嫌だけど」


 あ、落ち込んだ。え?喜べばよかったんか?…いや、う~ん…でもこれはフェチじゃないしな。


「まぁ…取り敢えず、この紋章の説明を…」


「ソレハ、アラユル、状態異常カラ、ソノ身ヲ、守ッテクレル」


「ふ~ん…え?強…それに、てふてふの形なのも結構格好良いじゃん」


 俺はベトベトの右手を見つめて、しばらくその紋章とにらめっこをしていた。


 黒色の蝶の形をした紋章。因みにベタ塗りで模様は無い。


 そうして紋章に見惚れていると、パーカーっ子が声を掛けてきた。


「君ハ、ニシロ ヤクイ、合ッテル?」


「あぁ、はい。…どうしてその名を?」


「ヨシ、間違エズニ、仕事、出来タ」


「はい?」


「マタネ」


 その言葉が耳に届くと同時に、俺は強烈な睡魔に襲われた。その場に立っていることも出来ない程の睡魔である。


 俺は床に膝を突き、そのまま眠りに入ってしまった。まだ、訊こうとしていたことが、沢山あるのに。


 あ…この子…パーカーの下に………。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


「あ…夕焼けになってら…」


 次に眼を覚ますと、空は夕焼け小焼けで日が暮れていた。


 体勢はまたもや、膝枕だ。空がよく視える。


 頭を撫でる手は、俺の眼が開かれた事で止まり、俺の頬をグニッと掴んでいた。


「え…どうしました?」


 少し痛い。


「…さてと、帰りましょかー」


 仰向けの状態から起き上がり、ギャザットの手を取って立ち上がる補助的な事をした。恐らくは要らないけど、せめてもの恩返しだ。有り難いと感じたら、少しずつでいいから、返していかないと駄目だよな。


「ありがとう」


「いえいえ、何なら、王宮までおぶりますよ?」


「…………」


 おっと…間違えたか?沈黙って思ってるよりも怖いよ?


「しゃがんで」


「あ、はい…」


 おぶらせてくれるのか…。


 俺はその場にしゃがみ、彼女が背中に乗るのを待った。


「………?乗らないんですか?」


「…………」


 どうしたんだろう?……まさか、俺…臭いのかな?


 そうして1人不安がっていると、背中にずっしりとした重さが加わった。


「よし、では帰りますね」


 彼女をおんぶしたまま立ち上がり、王宮へと向かう。


 背中越しに、彼女の鼓動と体温が伝わり、何だか懐かしい気分だ。まるで、妹でも居たかのような感覚になる。


 特に会話をしているわけでもないが、別に気まずいとかは感じていない。恐らくは、もう慣れたんだと思われる。


 何か気になる点があるとすれば、俺の耳に直接、彼女の吐息がかかってしまっている事くらいだ。


 別に耳が弱いわけでもないので、対して気にしていないが、段差をピョンっと降りた時に、彼女の口から漏れる声のせいで、なんだか変な気持ちになる。


「…思春期男子じゃないんだから…俺は…」


 そうそう、俺は既に社会に出たの。…本当は進学したかったけど、家庭の事情というやつだ。


「もう少しか…」


 現在は王宮の尖った屋根が視えてきた頃合いであり、もう数分歩めば到着するだろう。


 そんな事を考えていると、耳元に囁くような声が訊こえた。


 その声はどこか色っぽく、背中から伝わる心臓の鼓動も、先程よりも速いように思える。


「ねぇ、宿屋寄らないの?」


「っ!?…え、はい!?」


 お誘いか?お誘いかな?お誘いということでいいのかな?


 いいや、早まるな!落ち着け。冷静さを取り戻すんだ。


「い、いい…、い、行きません!ほら、さっさと帰りますよ。ギャザットさん」


「…………」


 早歩きにて王宮を目指す。俺の理性が性欲に勝っているうちに。


 ……いや、飛ぼう!そっちのが圧倒的に早く着く!


「ギャザー、しっかりと掴まっててくださいね、離陸するんで」


「ギャザー?」


 身体がふわふわと浮き始める。そのまま高度を上げて、目的地へと一直線に飛行を開始した。


 はぁ~、空飛べるって便利〜!それに、風が心地良い。このペースなら、あと1分で王宮の寝室に着陸出来るだろう。


 …そういえば、俺の身体に巻き付いている腕が、強さを増していっているような…?


「大丈夫ですか?もしかして、高いところ無理でしたか?」


「…………」


 俺の問い掛けに対して、彼女はより一層強くしがみつく事で返事をしてみせた。


 …あれ?何か…この子、俺のつむじの匂い嗅いでね?


 なんか後頭部ら辺が彼女の吐息により温かい。それに…スーハーしているような音が訊こえる。


 …自意識過剰かな?自意識過剰だな。


「今から着陸しますんで、もう怖くないですよ…」


 それから俺は、昼頃にも眺めていた、荘厳造りのクソ綺麗な庭に着陸した。


 あ~…なんだかマイナスイオンを感じるわ〜。


「はい、到着しましたよ」


「…………」


「降りないんですか?…支える手はもう離しましたけど…」


 未だに背中にしがみついているギャザットは、心なしかその身体を震わせていた。


 余程のこと高所が苦手なのだろう。それで、放心状態的な感じなのだろう。


 ジェットコースターが苦手な人とか、降りた後にこうなったりするもんな。…たぶん。


 そう考えるとなんだか申し訳無い。


「取り敢えず、ベッドまで運びますね」


「…………」


 彼女の身体を再び支え、おんぶの状態でベランダに上がり、室内へと入った。


 そして、やたらと大きいベッドの縁へと腰を下ろし、再度彼女に降りるように促した。


「…なんで降りないんだろ…?」


 だがしかし、しばらく待っても降りる気配は無い。


「降りないなら…仕方ない」


 こうなればもう仕方が無い。


 俺は履いている靴を脱ぎ、ギャザットの靴も脱がせた。


 そしてそのままベッドの上を這って移動し、うつ伏せの体勢となった。


 その体勢には、少しずつ膨れていく性欲を誤魔化す意味も含まれている。


「俺はこのまま寝ます!おやすみなさい!」


 すると、背中から重さが無くなり、代わりに自身の隣が沈んだ。かと思えば、不意に手が握られた。


「あったか…」


 閉じていた眼を開くと、隣に横になっているギャザットと、パチリと眼が合った。


「怖かった」


「それはごめん。本当に申し訳ないって思う」


「冗談言っただけだったのに」


「ごめん…なんかもう、消えたいです…」


「……………」


 俺は身体を起こし、ベッドの上で胡座をかいた。


 依然として手は繋いだままであり、相手が離さなければ解けそうにない。


 今は寝室に2人きり。


 丁度いい機会なので、彼女に朝から抱いていた疑問を投げ掛けた。


「一つ訊くけどさ、どうして、そんなにお世話っていうか…その、良くしてくれるの?」


 その疑問の答えはすぐに返ってきた。


 彼女も横になった状態から起き上がり、正座にてこちらに向き直った。


 そして、起き上がる際に離していた手を、再び繋いできた。しかも、今度は両手である。


 何故か分からんが、何処となくモジモジとしている。


「それは…私が…あ、貴方に一目惚れをしたからです。…お世話をしてしまったのは、職業病で…本業は、ナフカード国の王宮でメイドをしています」


「ほぉ…メイドさん」


「わわ、わ、私の気持ち、受け取ってくれますか?」


 ギャザットは顔一面をを朱色に染め、俯きながらそう問いかけた。


「……………」


 それに対して俺はといえば、ただ何も喋らず、彼女の手の温もりを感じている。


 因みに、心の中の俺の声は大歓喜だ。


 告白された!!やったぁ~!!えっ!いいの?こんなに可愛い子から告白されていいの?俺なんかが良いんですか?


 しかも…一目惚れだって!えぇ~、そんなこと言われたらさぁ、こっちも顔が熱くなってきますよ?ってか、現に顔が赤いと思う。ギャザットが下の方向いててよかった〜。


 正直、嘘じゃないなら、俺は良い。


 ニシロ ヤクイを愛してくれるならそれでいい。


 一度でいいから、誰かに愛されてみたかったしな。


「ギャザットさん」


「は、はい…!」


「俺で良けれ…っばぁ!」


 飛びつかれた!!最後まで言わせてよ!


 お陰で変な体勢だよ…座った姿勢で海老反りしちゃってるもの。


「……もしもこれが…嘘だったとしても、俺は嬉しいな」


 天井から垂れ下がるシャンデリアを眺めてそう呟いた。


 すると、思いのほか嬉しい言葉が彼女から返ってきた。


「嘘でも好きです」


「…………そっか」


 卑屈になるのは控えないとな。


 っていうか、起き上がれん。この子、意外と重いのよ。多分だけど、この細い身体には筋肉が沢山詰まってるんだと思う。


 それにしても…この体勢キツイなぁ…。


「あの…足が痛いです」


 そう伝えると、彼女は俺の上から退いてくれた。


 ズシリとした重みがお腹の上から無くなる。


 それから俺は身を起こした。


 すると、ギャザットが俺の腕を引き、廊下へと引っ張り出し始める。何だろうかとふと時計に視線を移すと、その理由はすぐに理解できた。


「夕食の時間です」


 今は、何かを食べる気分ではないけどな〜…。


 今は食欲よりも、理性よりも、性欲が勝ってきている。だからだろう、食欲が湧かない。きっとあんまり入らないだろうな。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 夕食を取り終わり、風呂に入り、あとは寝るだけといった頃おいのこと、俺はギャザットと共に、夜の街へと繰り出していた。


 因みにそれは、彼女の方からの提案である。


 なんでも、夜に外へ出た事が無いのだとか。それで、暗い夜道を歩いてみたいとのこと。


「明るいんですね」


「まぁ、夜の方が人は活発になるしな」


「もっと暗い道を想像してました」


「もっと夜が更けたら、想像どうりになるかもね」


「…………」


 なんだか残念そうな面持ちをしているな。


「帰ります?」


「帰ります」


 特に何かを得た訳でもないが、満足したようだ。


 来た道を戻るようにして、俺達は道を戻った。


 そして、事件は起きた。


「宿屋がありました」


「…………」


 こちらをジッと見つめながら、昨日から変わらない無表情にて、宿屋を指差す女の子が一人。


 はてさて、どこまでが本気なのだろうか?


 初日にセの字は早すぎるのではなかろうか?


「行きますよ」


 口を開いたまま固まっていた俺に対して、彼女はそう言い放ち、強引にも宿屋へと腕を引いてきた。


 それからは凄かった。


 ああ、それからは凄かった。


 そう、それからは凄かった。


 とにかく、それからは凄かったんだ。


 その日からは、在校生にかけられる起立の指示に、俺は従う必要はなくなった。


  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲


 あれから日をまたぎ、お昼を摂り終わった頃合い、俺は現在、王様とサシで会話をしている。


 ってか、この人俺と同い年ってマ?


 今年で19になる俺と、来年で20になる王様……同い年だな。めっちゃ以外だな。俺…普通に王様の事、年上だと考えてたよ。


 俺は今、馬車で次の中継地点まで揺られている。因みに、縦に2つ並んでの移動だ。


 前を走るのは俺と王様の乗る馬車、そして、それに続いているのが、ピャッチとギャザットの馬車である。


「俺さ、もう少しで寿命なんだよね……。それでさ…」


 対面に座している王様が突然にも、重たい事を言ってきた。


 一瞬、その言葉に対して、冗談を言っていると思っていた。だが、語る王様の表情は至極真剣なものだった。


「いや、待ってください!それって…本当ですか?」


「うん。……でさ…俺…後継ぎとかいないから、俺が死んだら、ナフカード国は滅ぶのよね」


 …まぁでも…36代も、同じ一族が統制していた王国なんて、滅多にないしな。そりゃあ…滅ぶ可能性もある…のか?


「どうして…寿命がそんなに短いんですか?…病気とか…?ですかね?」


「…難しいなぁ。…うーんとね、ちょい待ちね。今纏めてるから」


 寿命で死ぬったって…短命すぎやしないか?来年までは持つのだろうか?…俺はなんて時にこの世界に呼び出されてしまったんだ。


「よし!纏めたから、訊き漏らしの無いようにな?ヤクイ」


 どうして俺にその話をするんだろう。っていうか、他の人達はそれを知っているのか?いや…知らない可能性の方が高そうだ。


 俺にその事実を伝えたのは、ただの気まぐれなのだろうか?


「じゃあ、言うぜ?」


「は、はい!」


「はい、先ずは!俺の寿命…いや、ナフカード一族の寿命が、年々短くなっている理由!」


 それは、【蘇生】の存在。


 言葉の通り、死者の蘇生が可能である。


 だが、【蘇生】を使えば使うほど、その分寿命を削ってしまうのだとか。


 しかも、削れるのは使用者本人の寿命ではなく、ナフカード一族の子子孫孫の寿命。それを多岐にわたり使用してきた一族のツケが、残念な事に、現王様に回ったらしい。


「あ~あ…先代たちが、15貴族に【蘇生】の使用を許可するから…」


「15貴族?とは…なんでしょうか?」


「…それは、きっと自分で考えてみてもわかると思うぜ?あの日に読み上げたN達は、皆数字みたいな性だったろ?」


「…確かに、あのときは数字?って、疑問が出ました」


「あの子たちを15貴族って言うんだ」


 ノウノ…ドゥ…トロワ…フォル…パルファム…ノーム…セブル…ノエ…ネイン…クロス…ナーブン…トゥウェン…サティー…ナイシ…フィフト。


 それぞれ…まぁ、無理はあるけども、1から15だな。


「でも…先代達は、皆凄ぇんだよ。例えば…」


 初代は国を造った。


 4代目はテグルマニス学校を設立した。


 6代目は世界に蔓延る魔物を残り2割まで殲滅した。


 9代目は十国大戦にて勝利を収め、ナフカード国を拡大した。


 16代目は奴隷制度の撤廃。


 17代目は魔法の一般化。


 18代目は世界を震撼させた古代のドラゴンを討伐した。


 20代目は天空国と同盟を結んだ。


 23代目は牢獄の正確な位置を突き止めた。


 25代目はアダムと交友を謀り、それを成功させた。


 30代目は全ての国に通じる道を造った。


 34代目、爺さんはアダムの子孫を見つけ、安全な場所へと保護した。


 35代目、父さんは超越者の7名と交友を持った。


「そして36代目…俺はまだ何も出来ていない…全然足りない。俺が居たという絶対的な痕跡を、この世界に遺したい」


「……………」

 

 どうすればいいのだろう。何て答えればいいのだろう。


 なにか、うまい返しはないものか、精一杯頭をフル回転させる。


 すると、俺の気持ちが表情に出ていたんだろうな。王様が話題を変えた。


「でもまぁ…既にやってるか。世界中の情報局を統一したし…魔法局も統一したし…極悪人用の刑務所を設置したし…国際魔導具連合を設立して、経済の発展に貢献した」


「ちゃんと凄いじゃないですか」


「でも、足りないなぁ…」


 物憂げに天を仰いでいる王様に、俺は質問をした。


 先程の歴代の王様達の活躍に、気になる単語が伺えたのだ。


 超越者7名…なんとも気になる響きではないか。


 天空国に、アダムの子孫の保護、なんとも気になるものばかりである。


「王様、超越者…とは、いったい誰のことですか?」


「そうだなぁ…誰から紹介しようかな」


 王様は、腕を組み、足を組んで俺の手の甲に視線を移した。


「おっ!ちょうどいい、彼女から紹介させてもらう」


§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


 超越者・暴食 


 影響王 エフェトバタラ


§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


「彼女に関しては…あれだな、説明する順番難しいな」


 王様は足を組み直して、説明を続けた。


「7名の超越者達には、1人ずつ、使徒がいるんだ。その使徒の下にも人はいるけど…今回は端折る。俺の講釈を訊くよりも、使徒達に直接訊いた方が良いと思うぜ」


「なるほど…」


「彼女の使徒なら、帰り道の時に会えると思うし、その時にでも訊いてみようか」


「え~と…トロノイの街に使徒が居るんですか?」


「おう、それぞれ神殿代わりの建物、空間があって、それを警備しているのが使徒だな。因みに、これから行く所にも使徒が居る」


「確か次の中継地点は、ほぼゴールって言ってましたよね?」


「ああ、1人目のお参りの目的地はそこだしな」


 詳しく訊くと、そこにいる超越者は聞き馴染みのある性を持っていた。


§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§§


 超越者・傲慢 


 付加王 キェベク・ ビギニング


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 俺が今から向かう街に、彼の神殿代わりである花畑があるらしい。


「ビギニング…」


「ラフアンの遠い祖先だな。…いや、近い…いや、やっぱ遠いわ」


「祖先なんですか。……なら、ヘルトっていう…」


「あぁ…セトくんか。セトくんなら、キェベクのお孫さんっていうポジションだな」


「孫…なんですか」


「そそ。そして、セトくんの玄孫やしゃごがラフアンってわけよ」


 ほぇ!そうなんか、身近な人物の歴史?って面白いよな。


 そうして他愛のない会話を繰り返しているうちに、いつの間にか中継地点兼ゴールの街へと辿り着いた。


 外壁代わりに植えられている木々の連なりに対して、気が付けば俺は眼を惹かれている。

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