1人目 Ⅴ・ヤクイ 起
……今日も仕事だ。贅沢な悩みという自覚はあるが、日々の仕事が辛い。辛いというか、一人でやる業務の量ではない。まるで、フィットネスジムに休憩無しで8時間いるような、そんな感覚だ。
キーンコーンカーンコーン
あぁ、やっと昼休みか…長い長い午前がやっと終わる。休日だとあんなに一瞬で終わるのに。
今日も休憩室の扉を開く。お昼ご飯をそこで食べるために。
ガララララ
いつも通り。何もかもがいつも同じ。飽き飽きするほど、変わりなく。俺はそんな時間が嫌いだ。
「…早く帰りたいな」
昼休み。静かにご飯を食べて、ゆっくりと頭を使わず休憩していたいが、同期のおしゃべりさんがそれを邪魔する。
あぁ、静かにしてくれ…その話何回してるんだ。愛想笑いはもう疲れたよ。何が面白くてそんなに笑ってるの?ご飯口に入ったまま喋るな。おかずに箸を突き刺して食うな。肘を机に置いたまま食うな。お行儀が悪いぞ。
キーンコーンカーンコーン
あぁ、なんで俺はこんなやつに気を使ってるんだろう?声もまともに聞こえない。小さいんだよ。
休憩が終わってしまった。時間を有意義に使うことができなかった。
あぁ、人生自体を無駄にしているような気がする。もっと就職先を慎重に選ぶべきだった。周りの評価が高い会社でも、その部署、グループ、チームの評価まではわからないのだから。
あぁ、もう午後の仕事が始まる。なんて短い休憩時間なんだろう。
キーンコーンカーンコーン
はぁ、今日も仕事が終わった。明日も会社はあるけれど、今日は給料日だ。すると、親から連絡が来ていた。銀行に行こうと。どうせ俺の金目当て。きっと一人暮らしの方が安く暮らせる。
髪を染めたいから1万頂戴。お酒飲みたいから1万頂戴。飲みすぎてガス代払えないから1万頂戴。お酒に使っちゃったからまた頂戴。
わかったと言うまでは、駄々をこねてお金をせびってくる。だんだんイライラし始めて、逆ギレしてくる。最低でも30分は駄々をこねてくる。
皆も想像してみてくれ。親が、自分にお金がほしいと駄々をこね、逆ギレするところを。
実に滑稽で、不甲斐ないだろう。
▲ ▶ ▼ ◀ ▲
「…お疲れ様です〜」
事務所に挨拶をして更衣室に向かう。先に更衣室で着替えていた先輩達にも挨拶をする。
「お疲れさまです〜」
さっさと着替えて会社を後にする。今日は歩きだ。
家までの歩き時間は苦ではない。むしろ自分と向き合えるから、有意義と感じられるから好きだ。
俺は毎日、逆に消えてしまいたくなるほど必死に生きているつもりだ。
俺の家は、まるで漫画みたいな家族構成で、高校時代は話のネタが尽きなかった。皆から心配はされていた。だけど、大事な時期に大きな変化は良くないと思っていたから、何処にも行かなかった。
ただ共感してほしいだけなのに、本気で俺のために心配してくれる人に対して、俺は言い表すには失礼な気持ちになっていた。
▲ ▶ ▼ ◀ ▲
アパートにやっと近づいてきた。郵便物を確認して、階段を上りながら家の鍵をリュックから取り出した。
「やっと家だ…」
カチャカチャ
鍵って上手く入らないよな。あと引き抜く時に引っ掛かる。
ギイィィィ……
「ただい…ま?」
どこだここ?急に見知らぬ土地にいるぞ。
急いで振り返ったが、そこに見えたのはアパートの階段ではなく、巨大なお屋敷だった。
また正面へと視線を戻すと、自分のいる場所から見下げる位置取りに、中世を彷彿とさせる建物が連なりを見せている。
ヒューー
心地よい風が頬を撫でた。
「……かなりよくできたドッキリだな」
どうせ一般人に視点を向けたドッキリだろう。なら、俺のすることはただ一つ。座して待つ。
「……………………」
そういえば、リュックもスマホも無い。いつの間にか無くなっている。どういうトリックだ?
「…………………」
ずっと座ってぼーっとしていると眠くなってくるな。
あぁ、暇だ。時間を無駄にしているという感覚が、心をざわつかせる。
明日も会社に行かないといけないのに。何でこんなことになっているのか。種明かしが遅すぎて、時間に焦りが生じてきている。
帰ってやることが多いのに。ご飯を炊き、洗濯物をし、洗い物をする。簡単に言えば家事だ。正直面倒なのだが、親がやるとは思えないから、やるしかない。
ウトウト……
あぁ…不味い。本格的に眠くなってきている。もう、考えるのも気だるくなってきている。
気づいたら体を横にしている自分がいる。芝生が心地良い。手入れが行き届いているのだろう。テレビスタッフの親切心に甘えよう。
あぁ……本当に…寝てしまいそうだ。
「………………」
Zzzzzzz……
「…うん…いま何時だ?」
一体どのくらい寝てしまったのだろう。種明かしをする人には申し訳ないな。
んぁ?なんだここ?随分と綺麗な部屋に俺を移動したようだな。全く気づかなかった。かなり熟睡していたようだ。
それにしても、今入っているベッドも、部屋の装飾も照明も、豪華絢爛だな。しかし、なんて手の込んだハリボテだろう。
ガチャッ
「おぉ、起きたか。体は大丈夫か?」
ドアから誰か入ってきた。髪はブロンドのショート。歳は外見だけ見ると、10代前半くらいに見える。顔立ちも整っていて、正直うらやましい。きっと起きるのを待ってくれてた、種明かしをする人だろう。
外向けの感じにいくか。
「いゃあ〜、驚きましたよ!まさかこんなにリアルなドッキリを仕掛けられるとは、本当に信じてしまいそうでしたよ〜!」
「お、おお?ドッキリ?」
「ええ、ネタバラシをしにきたのですよね?」
「……多分、君の世界のサプライズ的なやつかな?君がどこから自分の所へ呼び出されたのかは把握してないんだよね」
「ん?」
「君からみたらここは、紛うことなき異世界だよ」
「………またまたそんなぁ。引っ張りすぎてもオーディエンスが退屈するだけですよ?本当に異世界なら何か証拠となるものがないと」
「そっか。じゃあ、これ見ててよ」
何だ?ソファーに置いてあるクッションを持って何をする気だ?
「【分離】」
分離?急になんだ?
「っは!?」
クッションが薄っっペラくなった。どうなってんだ…これ。
「どれがウレタンかな?まぁ、素人にはわからないか」
「……………」
「どう?これで信じれる?」
……どうやら、マジ……っぽいか?いや!まだ分からない。まだ……
「これは…そうだ。焼却炉に【移動】。丁度良いタイミングで送れたんじゃないかな?今からゴミを焼却する時間だし、証拠隠蔽できたね」
「消え…た」
ペラペラがこの人の手元から消えた!?どうやって?角度の問題?
スタスタスタ
「おっ、どうした?」
違うみたいだ。ではなぜ?
「もしかしてまだ信じられてない?」
「本当に異世界なんですか?」
「さっきからそう言ってる。あと、何回か見てるでしょ?証拠」
まじか……まじか!じゃあもう…会社通勤しなくていいってこと?もう…あの親と、関わらなくていいってこと?…………さ、さ…
「最高かよ!?」
「うわ!?なっ、なんだよびっくりしたな!」
「ありがとう!本当に!やっと…やっと!素の自分でいられる!」
「お、おーい?大丈夫か?頭に血が上ってないか?」
ああ、上っている。鼻血が出そうなくらいに!元の世界の、皆の顔を二度と見なくて済む!
ああ!最っ高だ!!有り難い!
あ…あぁ、やべぇ。興奮しすぎた…酸素足りない。どんどん視界がブラックアウトしていく。体の自由が徐々に奪われていく。
まぁ、一旦休憩いれるか………
バタッ
「ええー…まじか、ぶっ倒れたよこの人。取り敢えず…ベッドの上に移動させとくか」
パチリ
うぅ、なんだ?気絶したのか?客観的に見れば、急に声を荒げたかと思えば気絶した。うん、普通にキモいな。
ってか、さっきからほっぺたツンツンされてんだけど。なんだ?さっきの人か?
まぁ、いいか…………ふぐぅ!!
「また寝ようとするな」
「わふぁりまひぃた。すみましぇん」
ほっぺを親指と人差指で豪快に挟まれた。
「で?どうなの?」
何が?
「信じてくれた?」
あぁ、それか。
「あぁ、まぁ流石に」
「なら良かった。じゃ、早速うちのために働いてもらうよ」
「は、働く?」
労働からは逃げられないってか?
「うん」
「い、いったい何をすれば?」
君は奴隷としてこの世界に転移しました。って言われたら詰みだぞ。
「君には奴隷になってもらうよ」
「ウワアアァァァ!」
「ってのは冗談で…って、驚きすぎでしょ…引くわー」
「え?冗談?良かったぁ〜。こっちでも奴隷とか本当に無理…」
あっ、ついつい要らないことまで喋りすぎてしまった。
「君の世界で、君はどういう扱いだったんだ?」
「それは………」
「やっぱりいいよ、なんか無理やり聞いてる見たいでやだ」
喉が勝手に閉じて声が出ない。話していいのかわからないし、解ってくれるかどうかも…
「じゃあ話戻すけど。君にはうちのボディーガードになって欲しい。まぁ、君に出来そうなのは精々弾除け程度だと思うけどね。因みに、拒否権は無いよ。これからよろしくね」
……ボディーガードって…そんなに此処は危険が多いのか?
「は、はい。わかりました」
「あー…そういえば名前何?」
「えっと…ヤクイです。ニシロ…ヤクイ」
「じゃあ、ボディーガードよろしく。ヤクイ」
「君の名前は?」
「うちの名前は、ピャッチ・N・パルファム。ピャッチでいいよ」
「よろしく、ピャッチ」
メモしたいけど、手ぶらだからなにもないんだよな。ピャッチ・N・パルファムね。これは連呼して覚えるしかないな。
「取り敢えず今日はやることないし、暇だから屋敷の案内するから」
屋敷?何かさっき見たクソでかい屋敷か?
「あっはい、お願いします」
▲ ▶ ▼ ◀ ▲
一通りの案内を終えて、そのまま夕食をとることになった。
「うわ、人参入ってる」
人参嫌いなのか。てか、インスタントなんだな。厨房はあるのに……そういえば、一通り案内してもらったけど、ピャッチ以外に人を見かけてないな。
「一人でこの屋敷に居るんですか?」
「そうだよ。たまにお客さん来るけどね。あと、掃除してくれる人とか」
「一人だと退屈になりそうですね」
「そんなことない。領民の管理とか、他貴族との会議とか、全然楽しくないことばかり」
「…そうですか」
悪いことを言ってしまったな。
この子は一人でこの大きな屋敷に居るのか。そういえば、性別はなんだろうか?
「気になったことがもう一個あるんですけど」
「なに?」
「性別は?」
「……男」
「良かった〜。ただの美少年で助かったわ。俺、女子苦手なんだよね」
話そうと思えば話せるし、目も合わせようと思えば合わせられる。けど、本能的に苦手意識が出てくる。なんでだか分からんけどね。
「そうなのか…」
モグモグ……ゴクンッ
腹も満たしたことだし、後は…何すればいいかな?仕事?でも、今日は特にないんだったか。
じゃあ、何しよう。このまま部屋でくつろぐかな。
ガチャッ
「ヤクイ、お客さんが来たぞ。一緒に来い」
ええ〜、お客さんの対応をしろとかですか〜?俺その業務が一番嫌い。
コンビニでバイトしてた時代がフラッシュバックしてくる。あぁ、まじでクソ客しかおらんかったな。
弁当温めまでは普通だ、それを店内で開けて、包装とか蓋とかを店員(俺)に捨てさせるという、クソ客。話長いし、顔見るだけで鳥肌が立つ。
しかも、レジでそれやってくるんだぜ?
ヤバすぎんよ。
「返事は?」
「うす」
「…一応、うちが主人なんだからな」
「はい」
「よし、行くぞ。客室で待たせてるんだ」
スタスタスタスタ……
「お客さんって誰なんですか?」
「王様」
OMG。
そんなお偉い方がこんな時間に何用なんだ?
「あいつ、うちの事が心配だからって結構な頻度でここに来るんだ。全く、いい迷惑だ」
「王様に対してそんな…」
「実際にあいつと会ってみれば、うちが王様に敬語を使ってない理由は分かるだろ。言うより、見たほうが早い」
いったい…どんな王様なんだ。
ゴクリッ
「着いたぞ」
「緊張するなぁ」
粗相をしたら処刑されるだろうか?うぅ、怖い。
「そんなに緊張する必要はない。あいつに対しては、敬語も礼儀もいらん。あいつは簡単に言えばキチガイだし」
「おいおいピャッチ、それは心外だぜ。俺はそんなには、キチガイじゃないぜ?」
ガチャッ
「ほら、中に入れよ」
内側からドアが開けられた。
この人が王様なのだろう。綺麗に整えられた所々に紫のメッシュが入った黒い髪。身の丈は俺と同じぐらいだろう。ちょっとだけ王様のほうがでかいけど。
「うちの屋敷だし、お前が客だ」
「じゃあもっと、丁寧に扱ってほしいなぁ〜?」
「お前には敬意を払う必要もない。そもそも、威厳もないし。先代の王様はなんで、まだまだガキのコイツに王位を譲ったんだ?」
「おいおい、ひでーな。もっと優しくしてくれって。それに、まだまだガキって言うけどな、年齢はお前のほうが下だろ」
「うちは、あんたの精神年齢の話をしてんだよ」
「…で、その子は?」
あっ、話逸らした。
「うちが【呼び出し】たボディーガード兼従者だ」
「ふぅ~ん?」
ジロジロ……
唐突に置いて行かれたような感覚。顔を合わせたと思ったら、急にレスバし始めてるんだもん。置いてけぼりになるよそりゃ。
「君、名前は?」
「ニシロ ヤクイです。ヤクイでいいですよ」
「おうっ。よろ〜」
「じゃあ、元気だって伝わっただろ?早く帰れ」
「まだ帰らんわアホ!ところでヤクイ、今日の夕食何食べた?」
「おいっ、ヤクイに聞くな!セコいぞ!」
「インスタントヌードル食べました」
「ピャッチ……もっと栄養のあるものを食えよ!俺なら一流のコックを…」
「あー!うるさいうるさい!うちはあれで十分なんだよ」
「ピャッチは…でしょ?これからはもう一人増えるんだから、これを機に食生活の改善をしなさいな」
「………チッ」
「ええ……今…舌打したのか?」
おっと、これはヤッバイ雰囲気か?俺が止めに入るか?むしろ逆鱗に触れるのでは?ああ~…怖えぇぇ…
「おいおい……」
ゴクリッ
「これ反抗期ってやつ〜?え〜、すっげぇ可愛いんだけど〜!そうかそうか、ついに来たか反抗期!」
………おや?
「いや~!まだ思春期入ったばかりの子だとずっと思ってたけど、成長したな〜。俺には反抗期なんて来なかったからさぁ!すっごく新鮮なんだよ!うわぁ~!かっわいい〜!」
「だぁーもう!うるっさい!早く帰れよ!」
「ピャッチ。俺も、王様の意見に賛成だよ。食生活の改善はしたほうがいいよ」
まぁ、俺が言えた口じゃないけどな。
「おお!ヤクイもそう思うよなぁ!ほらほら2対1だぜ?流石に観念しなさいな」
「……………」
何か逃げそうだな……
ガシッ
手を握るくらいなら爆発はしないだろう。
「別に今、改善しようってわけじゃないんですよ。少しずつ、自分のペースで改善して行きませんか?俺も協力しますよ。従者として」
「なら……いい。悪かった、ほんの少しだけだけど言い過ぎた」
「それ謝ってる?いやまぁ、俺も急かしすぎたよ。悪かった。ありがとなヤクイ、止めてくれて」
「いえ、俺はなんにも。ただ気になっただけで」
「早く離せよ。いつまで握ってんだ」
「ああ、ごめんごめん」
パッ
「この…不敬だぞ」
手を握るのも不味ったか。選択ミスったか〜。
「ねえねえ、俺にも不敬働いてる自覚ある?」
「…誰が?」
「自覚なし系ね、了解。それはそれで問題だけど、まだ若いし少しずつだな。んじゃっ、元気そうだしそろそろ帰るわ。体調崩すなよ?あと、補充しといたから」
「ありがと、助かる」
何補充しといたんだろ?まぁ、いいか。生活用品かなんかだろ。
「じゃ、またな」
「もう来んなよ〜」
「はははは」
ハハハハ
王様を玄関まで見送った後、部屋に戻りピャッチと会話をしていた。
「さっきはありがとう。おかげで立ち止まれた」
「いや、俺は何もしてないよ。感情をコントロール出来たのはピャッチ自身だったし」
「謙遜しすぎだな」
「全然、普通でしょ」
「ふぁぁ〜……眠くなってきた。うちは寝させてもらう」
「ここで寝るんですか?」
「当たり前だろう。ここしか寝室はない」
「そうなんですか」
「ヤクイも同じベッドで大丈夫だろ?」
「はい、大丈夫です」
「もう寝るぞ、そこの明かり消してくれ」
「わかりました」
カチッ
同じベッドかぁ……女の子なら良かったのにな。
「おい!どこ触ってんだ!」
「え?ああ、ごめん」
何かどっかが当たってたっぽい。お尻にでも当たってたんだろうか?俺、指先の感覚鈍いからもしかしてそれか?
それはそうと…暖かいな。すぐに眠れそうだ。
ZZZZZZZ…………
「寝たか?……………寝たか。しっかりうちの事護れよ?………昔、パパから貰ったアレ、ヤクイに使ってみるか。熟睡してるし、ちょっとチクッとしたところで起きないだろう。下手したらそのまま起きないかもだけど」
チチ…チチチ……
あぁ…朝か。
「良かった…」
起きたら元の世界に戻っているんじゃないかって、凄く不安だった。そのままで本当に良かった。
「起きるのが遅いぞ」
「え?ああ、おはようございます」
「おはよう。これに着替えろ」
「はい…?」
執事服?のような服だ。ボディーガード兼従者だから、妥当な服装と言える。
「あっ、そうだそうだ。明日学校に付いてきてもらうからな」
「学校ですか?」
「ああ」
「俺18歳だけど…」
「年齢は特に気にしなくていいぞ」
「そういえば、留守の場合この屋敷の整備はどうするん?」
あっやべ、ついやってしまった。砕けすぎた。
「それは王様に代理を手配してもらっている」
「そうなんですね」
「じゃあ早速、仕事するぞ」
「はい」
早速執事服に着替えさせてもらった。
「随分と様になってるぞ」
「かっこいい?」
「パルファム公爵家の仕事は、資源の配送だ。主にうちが【移動】で送る。そしてヤクイが書類に判子を押す。変な書類が有ったら見せてくれ」
「はい!質問です!」
「なんだ」
「ピャッチは今何歳?」
「全然関係ない質問だな。今は14だ」
「若っ!」
「そうか?」
「その若さで、この屋敷の管理をしてんだもんね。すげぇ」
「そうか。ありがと」
いゃぁ、すげえなピャッチ。これは将来大物になりそうだな。
「っな、なんだよ。やめろ、撫でんな」
「これから、よろしくご主人」
「…おう。改めてよろしく。あと、撫でんのやめろ」