2人目 エピローグ 帳簿にないS級生徒
アベルとカインの一件から数日ばかりが経過した。
カインの身柄は、クラスSの教室で管理されることになった。
「おはよう。ブーセ」
「ああ、お嬢さんか。毎日よく来ますね。そんなに暇なんですか?」
私はあれから毎朝、クラスSに顔を出してはブーセに挨拶をするということをしている。私にとっては、唯一信用できるクロスだ。
そして、彼には先生として、爵位を得るためにどうすればいいか相談をしている。
すると、その先生は突拍子もなくある事を言った。
「そろそろ、牢獄に戻ろうと思っています」
「え…」
「アベルが心配なんですよ。セトがワタクシの代わりとしてアベルと遊んでくれているでょうけど、そろそろセトも疲れていると思いますし」
「…………」
「それに、下手をすればノアにまで遊びを強いているかもしれません。牢獄や部屋にいるファミリーは皆使命があってそこにいます。ワタクシも同様に。なので、その使命を継続しないといけないのですよ」
「……そう」
「なので、ワタクシは帰ります。……定期的に顔を出しますから、そんなに悲しそうな顔をしないでください」
「わかった。また、色々なこと教えてね」
「はい。では」
そう言うとブーセは、空間に亀裂を発生させて、その中へと体をねじ込んだ。
そして亀裂は閉じて、彼は帰ってしまった。
「…信用できる家族が、向こうに行っちゃった」
すると、ドアが開かれた。誰かが入ってきたみたいだ。
「カタバ…くん…どうしてここに?」
「カインに挨拶でもしようかと思ったのだが……少しばかり遅かったようだな」
「うん…」
「…そう悲しまなくとも、定期的に顔を出すと言っていたではないか」
「うん………あれ?なんでその言葉を?」
「あ…」
「もしかして、ずっとドアの外にいたの?」
「じっ、実はな。カインに挨拶でもしようとドアに手をかけた時に、ちょうど声が聞こえてきてな。それで、入るタイミングを探っていたらこうなってしまったのだ」
「恥ずかしい」
「……その信用できる家族に、余は入っていないのか?」
「え…」
「いや、変なことを言ってしまったな。カインも帰ってしまったことだし、余は自分のクラスに戻る。それと、おはよう。カラマイア嬢」
「う、うん。おはよう、カタバくん」
そうして、彼は部屋をあとにした。先程の発言はどういう意味だったのだろう。
「私もクラスに戻らないと」
私もクラスSの教室をでて、自分のクラスに戻った。
クラスBの扉を開き、中に入った。すると、聞き慣れた声が耳に届いた。
「あっ!おかえりニャ」
「うん。ただいま、クスル」
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「ぬぅ……定期考査であるか…」
「そうなんだよ、まじで面倒くさい」
ヤクイ殿から来月末にある、定期考査の知らせを受けた。
「頭の良い人に勉強教えてもらお…」
「うむ…」
余は、頭の良さに自信はない。平均的な知能だろうと自分自身では思っている。
2人で、クラスAの中でも勉強ができる人にそれぞれ声を掛ける。
「すまぬが、勉強を教えてもらいたい。余は経営学が苦手だ」
余がチョイスしたのはリュレ・N・ノエという人物である。
彼女は、緑の髪、黄色い瞳が特徴的な女性だ。どうやら恋人がいるらしい。若いのに大したものだな、余も見習いたい。
「あ〜確かに、経営学って難しいもんねぇ。応用と基礎があるけど、どっちが苦手なの?」
「応用がさっぱりなのだ」
「じゃぁ、基礎は大丈夫ってことだね。なら、すぐに解るようになるよ」
「そうか。それは有り難いことであるな」
「それで、いつ頃から勉強する?」
「うむ……では、すまぬが6限目の自習の時間で頼みたい」
「6限目ね……うん、いいよ。特に予定とかは無かったし」
「では、その時によろしく頼む」
「うん、僕でいいならいつでも教えるよ」
「それは心強いな」
これで、定期考査に向けての勉強は大方大丈夫だろう。どうやらヤクイ殿は、バダルに頼んだようだ。
一番最初の定期考査で、余のこれからの勉強の量が決まる。高順位になれば、それを維持するために沢山の勉強を、低順位でも、結局沢山の勉強をしなくてはならない。
ならば、余は真ん中を狙う。安定している順位が一番であるからな。
そろそろ、休憩の時間が終わりそうだ。席に戻って、授業の準備でもしよう。




