2人目 ✗・カラマイア 結
皆の下に向かい。王様から言われたことを共有した。3時限目の授業は中庭で行われる予定だと。
そして、少し時間が過ぎて、ぞろぞろと中庭に人が集まってきた。
クラスBの皆が私に気が付き、心配してた旨を伝えてくれた。私に特に何もなかったことに安堵していた。
皆の優しさに心が温まった。
そして、王様の号令の下、3時限目の授業が執り行われた。
交流会なので、皆が喋りたい人と喋っている。新しく交友を謀ろうとする者もいれば、元々の知り合いと話をする者もいる。私は後者だ。
私は今、3人で話をしている。
私、カタバ、そして金色の眼の人及び、カイスだ。
先程本人に名前を教えてもらった。
「…で、なんで魔力を抵抗なく流せたんスか?」
「それはだな…」
今は私を助ける際に、スムーズに魔力を流せたことに対する疑問に答えるため、話し合いをしている。
「私から話してもいい?」
「え、カラマイアさんからスか?」
「だめかな?」
「いや、別にいいッスけど…」
「それじゃあ、言わせてもらうね。本当は秘密だけど、既に居合わせた皆は知ってるし」
「すまないが、頼む」
それから、2人にクロス家とコンクルード家について話をした。
今回の疑問である、何故魔力が簡単に流れたのか。
それについては、こう説明させてもらった。
大昔に、ナフカードが歴史に登場するもっと前に、クロス家に双子が産まれた。
が、それをよく思わない風習が当時にはあり、弟の方は家を忌み子として追い出された。
そして、その弟はクロスと名乗る代わりに別の名前を、その時のクロス家の当主から貰った。
その名はコンクルード。
因みに、兄は昨日まで一緒に楽しく遊んでいた弟が、突然家を出ていってしまった事実に悲しみを覚えた。兄は、弟が追い出される事を伝えられていなかった。当然ながら父親に憤慨を感じたが…それはまた別のお話だ。
そして、家を追い出されたコンクルードは世界各地を旅していた。金銭の問題は、彼の元お付のメイドが、自分の貯金の大半を持たせた為、余り困ることはなかった。
そして、とある国で数多くの功績を出し、ついにはその国の国王にまでなってしまった。
そして、彼は1人の子供を授かった。
その子どもは、父親がクロス家から受けた仕打ちを知り、1人復讐心に燃えた。
後に魔法を極め、魔法の王、略して魔王と呼ばれるようになった。
その力を使って、悪事を働こうとしていることを知り、止めに入ったビギニング、そして、謎の第三者。その3名についても、また別の話。
これが、クロス家とコンクルード家、そして魔王誕生のお話。
「なるほど…そんな大昔に血が別れたんスか」
「そうであったのか…では、カラマイア嬢と余は遠い親戚ということになるのか?」
「多分そうなる。けど、先祖が同じでも私と貴方の血は全く違うものになってると思う。他には質問ある?」
「もう無いッスね。さっきので知りたいことは聴けたっす」
「では、余から1つ良いか?」
「何?」
「魔力を血縁関係のない他人に流すには時間がかかると聞いたが、カインとはそんなに長い間接触していたのか?」
「いや、道を聞かれて、それに答えたくらいだから、10秒くらい?」
「え…そんな短時間で瓶1本分の魔力を流せるッスかね?」
そういえばそうだ。そう考えると、カインの出自が気になってきた。
カインを探すため、周りをぐるりと見渡した。
…見つけた。王様とヤクイさん、ウリキドがカインを取り囲んでいる。
2人に、具合が悪くなったと伝えてその場を脱し、中庭の隅で目を瞑った。
……『固有 第二眼』。
会話を盗み聞きしよう。
「カイン…縄を解いてほしければ、この学校の生徒になれよ」
「本当に良いのぉ?そんなこと1人で決めて」
「何故ワタクシがここの生徒にならなければならないんですか」
「ちょうどいいじゃん。制服も着てるし。なぁ、ヤクイ?」
王様…なんか勧誘してる。
「これは潜入するために創ったんです。決して、此処の生徒になる為に創ってなどいません」
「そんなに嫌なら、魔法使って此処から離れればいいんじゃないのか?」
「この縄のせいで、魔法が使えないんですよ」
「常に持ち歩くようにしてるからね」
………直接聞いたほうがいいな。
そして、目を開くと、心配そうな顔で2人が立っていた。
「まだカインの魔力が抜けきっていないのではないだろうか?」
「可能性はあるッスね」
わりと真剣に心配してくれてた。
会話を盗み聞きするために嘘をついた何て、言いづらい雰囲気だ。
「あ…カインの魔力はもう無いよ」
「ぬ、普通に体調が優れないのか?」
「いや…ちょっとカインを観察してた」
…怒られるだろうか?
「な~んだ、それだけッスか。危うくカインをボコしに行くとこだったッスよ」
「やっぱり、知りたい情報は直接聞く」
「気をつけるッスよ?」
「わかってる」
「余は、ここでカイス殿と話をしているからな」
「うん」
カインの下へと足を動かす。
彼の本名はブーセ。流れてきた記憶が教えてくれた。
足早に目的の人物の元へと移動する。
「すみません。ちょっとカインをお借りしても?」
すると、ヤクイさんが口を開いた。
「え?……容態はもう大丈夫か?」
「はい」
「そっか、よかった。カタバが心配そうな顔してベンチにいたから、まじで危ない状態なのかなって思ったよ」
「余裕だった」
これ見よがしに、Vサインを突き出す。
「おお〜!良かった、良かった。それじゃあ、2人きりにさせてあげましょう?」
「そうだな、俺は校長室に戻ってる。何かあったら呼んでくれ」
「ほら、ウリキド。ハルルがあんなところにいるぞ」
「あっ、本当だ。じゃぁ、またね〜」
「よし、それじゃあ俺も行くか。…よっこいしょと」
彼は座っている状態から立ち上がり、周りをキョロキョロとし、目当ての人を見つけたのか足早にこの場を離れた。
「ありがとう。ヤクイさん」
「え?…ああ!ありがとうね…どういたしまして!」
視線を足元に移し、縄でぐるぐる巻きの状態のカインに腰掛けた。
「重っ…」
「え…」
「お、お嬢さん。何の用だい?何か目的があってワタクシに近づいたのだろう?」
「今、重いって…」
「ほら、ヤクイが皆を散らしてくれたんだ。早く話をしないと他の人が寄ってくるかもしれませんよ?」
「…顔違うよね?」
「はい?」
カインの顔に触れ、ペリペリと偽の顔を剥がしていく。
記憶の中のカインとは顔が全く違ったから。もしやと思えば、剥がせるようになっていた。
「あっちょ!」
茶色い髪は透き通るようなシアンカラーに、眼の色は黒から赤に。髪の毛の長さも変わった。先程は項が伺えたが、今は隠れるほどに伸びている。しかし、肩にはギリギリ届かないくらい。
「声も変わった。それが本当の声?」
「酷い!頑張って創ったんですよ。変装ができるアイテムを。なのに普通に壊しちゃうのは酷いではありませんか?」
「ごめん。重いって言ったことチャラにする」
「……で?なんの要件何ですか?直接文句でも言いに来ましたか?それとも、殴りに来たとか?」
「私の質問に答えてほしい」
「質問ですか?…まぁ、いいでしょう。魔力を流したお詫びに付き合いますよ」
「貴方のフルネームを教えて」
「ワタクシのですか?」
「うん。教えて」
「……まぁ、良いでしょう。隠しているわけでもありませんし。…ワタクシの名は、ブーセ・オプファー」
「あとは?」
「………産まれた時の名は、セーブ・クロスです」
「…そう。クロスなんだ」
「もう、捨てたよ。今はブーセです」
「貴方は…何で道端でぐったりとしていたの?」
「ああ…それは、家をこっそりと抜け出したら、お金を持っていくのを忘れていましてね」
「そこに発明家の人がきたんだ…」
「そう。彼に拾われて、彼を殺して、そしてまた、別の人に拾われた」
「何で、家を抜け出したの?」
「…その日の前日まで、一緒に遊んで笑っていたのに、ワタクシは気づけなかった。弟が胸に秘めた苦しみを…それで、謝るために家を抜け出しました」
「貴方が抜け出したら、後継ぎはもういないんじゃ?」
「いや、新しい子がいた。ワタクシに妹が出来ていた。本当は帰って謝ろうとしていました。ですが、ワタクシは帰るのが遅すぎたみたいで、もう部屋すら無かった」
「弟って?」
「ワタクシの弟は、気がついたら家から居なくなっていました。数年間、世界を廻っても、ワタクシの家以外にクロスの名前の人は見つかりませんでした。…………ワタクシは、弟を失ってしまったのです。いえ、ワタクシが殺したも同然です。それからは、〝弟殺し〟という言葉が頭から離れなくなりました」
「弟の名前は?」
「不要の意を込めて、ペケ・クロスと名付けられていた。……ッチ、思い出しただけで、悔しさがすごいです」
「………その弟、もしかしたら名前を変えて生きていた可能性があるよ」
「はい?いえ、そんなわけが無いです。何年間も探した末に、諦めてしまった程ですよ?」
「私の、クロス家の歴史について聞いてほしい」
それから、先程カタバやカイスに説明したものと同じ内容を話した。
話を続けるうちに、ブーセの、合いの手代わりの自己否定は消えていった。
そして、最後まで話し終えると、彼は目に涙を浮かべていた。
………私は彼を拘束している縄を解いた。
「…解いて…いいんですか?また…悪さをすると思いますよ」
「今はしない」
「………そうか…生きてたか。コンクルードと名を変えて…そりゃあ見つからないよな…ペケ…」
「貴方は弟を殺していない」
「…あいつ…ちゃっかりと子孫まで…」
「…一番ショックが大きそうね」
「そりゃそうですよ。ワタクシは、血の繋がりのない、誰の子ともしれない赤ん坊を育てていたというのに…………よかったなぁ…ペケ……」
「まだ質問がある」
「…良いことを聞かせてもらった礼だ。全て答えよう」
「ウリキドを攫ってどうしようとしてたの?」
「彼をワタクシ達のファミリーとして、迎え入れようかと思いまして」
「本人は嫌そうだったけど?」
「まずは顔合わせを行ってから、それで、ウリキドにファミリーになるかの確認をする予定だったので」
「ふ~ん…次の質問、私を乗っ取るつもりだったの?」
「少しばかり、体を拝借して貴方に流れていた変な魔力を除いてあげようかと考えていました」
「変な魔力?」
「はい。まるで監視でもするかの様に、貴方の体に蠢いていたので、魔力で囲んで、少しだけ乗っ取り、外に吐き出す予定でした」
「……………パパ?」
「貴方のお父さんが、監視するために流したんですか?だとしたら、ワタクシの時代と何も変わってないですね。クロスは」
「…そんな…」
「まぁ、でも、ワタクシの勘違いの可能性もあります。ただの御守りだったのかもしれません」
「いや…いいよ。私は……別のクロスとして生きる。そして、公爵になって、今までのクロス家の秘密を公にする」
「…すごいな、お嬢さんは。ワタクシにはそんな勇気なんてありませんよ」
「よし!そうと決まれば、先ずは爵位を得ないとだよね」
「はい、まずはお嬢さんが男爵になれるよう応援しますよ」
「うん。応援してて」
私は、今日から新生クロス家として生きる。
私の目標は更新された。あとは、そこに辿り着くために試行錯誤するだけ。頑張らないと。
▲ ▶ ▼ ◀ ▲
アベルとカインの一件から、数時間が経過した。
今はカイス殿と2人で、王様が用意してくれた弁当を頬張りながら会話をしている。
因みに、用意されたのは米が敷かれた上に、色々なおかずが乗っかっている感じの弁当だ。
「カイス殿、その者は本当にコンクルードなのだろうか?」
「間違いないッス。ピンク系の髪に左目尻のホクロは、コンクルードしかいないッス。それに、本人も名乗っていたッス」
今は、カイス殿が被害を受けた、先祖返りのコンクルードについて話を聞いている。
「どういうふうに?」
「我が名はタック・コンクルードだ!って感じだったッス」
「……タックか」
タック・コンクルードは余の叔父に当たる人物だ。そして、本人の一人称が我であったことを考えると、同一人物として考えても良いだろう。
確か、彼が家を追放されたのは8年前。
「因みに、いつの出来事か覚えているか?」
「えーと、確か…6歳ぐらいのときだったッスから…8年前くらいっすね」
なるほど…信じたくない結果であるな。
「何をされたのだ?」
「伯爵だった父を殺害されたッス。父が亡くなってからは、子爵の伯父にお世話になっていたッス。今も納得いってないっす!葬式もあげないなんて!」
「そうか……すまぬ。余の叔父がとんだ迷惑を掛けてしまった」
「カタバさんに謝られても、何も変わんないッスよ。タック本人に確認させてもらうつもりッス。あの日に何があったのか、その全てを」
「協力させてもらおう。余が一族を代表してカイス殿を手伝わせてもらう」
「…………カタバさんは、悪いコンクルードではないみたいッスからね。…お願いしてもいいッスか?」
「うむ。絶対に見つけ出そう」
「絶対ッスよ?」
約束と握手を交わした。
そして、今後のしばらくの方針は決まった。
カイス殿と協力し、叔父を探し出し、そして事情を聞く。場合によっては、此方で処理させてもらう。
ビギニング家の人間を見れるようにする夢は、少し先延ばしだ。
先にやりたい事が出来たからな。
そして、2人でお昼を食べ終わる頃にはすっかりと打ち解けていた。出会った当初の威圧感も微塵も感じない。
余は本当にこの学校に入って良かった。
此処は余りにも、居心地が良い。
「おーい!」
ぬ。ヤクイ殿に呼ばれてしまった。
「行っていいッスよ。此方は気にせず。昼寝する予定があるッスから」
「そうであるか。では、また」
「ウス。また」
そして、ヤクイ殿の方向へ足を進める。
今日は何の話をしようか。




