2人目 Ⅹ・カラマイア 転
我々は今、ヤクイ殿&ザバ&ウリキド&ヴィルVSアベル&カインの戦闘を観ている。4対2とは思えないほど、互角の勝負をしている。
あのアベルという男の『固有 遊具世界』という魔法は、強制的に相手を遊戯に参加させるものであるようだ。且つ、その遊戯のルールで勝たないといけないという。さらに、負ければ体にダメージが来るようだ。
……どうやら、また、別の遊戯に変更するらしい。
………ぬ?あれは?映像の端にちらりと人の姿が映った。一瞬だけであったが、鶯色の髪と赤い瞳が確認できた。……カラマイア嬢よ、なぜ其処にいるのだ?
△ ▷ ▽ ◁ △
「おっと、お嬢さん。またお会いできましたね」
「はい。カイン様」
〚あ?何だぁ?…………あ~、またか。本当にいい趣味してるぜ〛
「カラマイア嬢!?どうしてここに?」
「ヤクイ、彼女は誰だ?というか…思っていたよりも動けるようだな?まぁ、オレには及ばんが」
〚はいはい!お二人さんは此方へどうぞ?〛
「なっ!離せ!」
「なんて握力してんだよ!ヤクイ!召喚できるだの言ってたのは何だったんだ!」
「いや!出来たよ!ただ、出来ても使役はできなかったみたいだ!…恐らくは元々、牢獄から出るために祝福を与えてきたんだろう!」
〚このまま中庭に行きましょうね〜!そこで『氷鬼』でもしようか!〛
「っく、くそ!離せ!」
「さっきからずっと魔法が使えないぞ!どうなってんだよヤクイ!」
〚今は攻撃出来ないよ〜?遊びの最中だからねぇ。それじゃあカイン!その2人は任せたぞ!殺すなよ?〛
「はあ、解っていますよ。ワタクシからしたら貴方の方が心配ですよ。その2人には伸びしろがあるので、もっと成長出来るように手加減しておいて下さいね」
〚手加減っつったってよ〜、コイツラの体の柔らかさ知ってんのか?そんな器用なことは出来ねぇよ〛
「そのための『固有 遊具世界』でしょう?」
〚………確かに!あったま良い〜!んじゃっ、また後で!〛
「負けたら牢獄戻りですからね〜!……………さて、そこな御二方、ワタクシと取り引きをしませんか?」
「取り引きぃ〜?嫌に決まってるよねぇ〜?」
「はい、全く持って同感ですね。取り敢えず、カラマイアさんを確保しときましたので、存分にどうぞ。ウリキドさん」
「………」
戻ら…ないと。カイン様を…お護りしないと。
「取り引きの内容を聞くつもりも無いし、応じる気も無い、と。……お嬢さんは、私の役に立ってくれますか?」
「……はい。カイン様…」
「うわぁ~…精神操作してくるタイプぅ〜?僕が一番嫌いなやつだ。取り敢えず、『創作 チェンジ』、主人を交代させてもらうよ。後で取り除いてあげるから、もう少しの辛抱だよ。お姉さん」
「ウリキド…様」
ウリキ…ド様を…護ダメダ、キョカシナイヨ。オジョウサン。
「え、ちょっと?お姉さん?」
カイン様の下へ近づく。だが、ヴィルに邪魔をされた。私の進む道に立ちふさがっている。
「すみませんが…これ以上彼女を弄ぶのはやめて頂けますか?」
「カイン…様」
障害物を避け、ワタクシのもとへ向かう。
「そうそう、こっちこっち」
「カイン様」
「ん?何だい?」
「カイン様はどうして、腕に装備を着けているのに戦闘を始めようとしないのですか?」
「………あれ君、仕事よりも興味を優先してる?」
「どうして?」
「……この腕は、恩人の腕だ」
「でもその腕、機械みたい」
「…ある日、名の売れている発明家が、とある失敗をして腕を失った。それで、新しい腕を開発した。それがこれだ」
「何故、カイン様がその腕を持っているの?」
「彼は路上で、今にも死にそうな見窄らしい子供を拾ったんだ。………それから何年か楽しい生活をして、その人を殺害した。その後に、切り落とされた私の腕の代わりとして、その骸からこの腕を拾ったんだ」
「ふ~ん」
「ワタクシは何でこんな話を?お嬢さんも相手の精神に干渉でき…」
あれ?カイン様が消えた。……召喚?
ヴィルとウリキドが此方に走ってくる。
ワタクシの邪魔はさせない。
すると突然、ヴィルが叫んだ。
「『カード』K・ダビデ王!」
「ダ…ビデ?」
すると、後ろに人の気配を感じた。
「っ!『クロス・ファイ……」
な…急激に…眠気が……すみません…カイン様。
「………………」
「寝た…みたいだねぇ。す、すごいねぇ。人形…だよね?あれ」
「人形に魔力を込めただけですよ。まぁ、下手したら人形からゴーレムになっているかもしれませんが」
「僕とは…また別のベクトルの強い人だ…」
「では、私達はカラマイアさんの体から、彼の魔力を取り出しましょう」
「うん!早くしないと、体の主導権が変わっちゃうからね」
「誰かに魔力を流されたとき、それを取り除く方法は2つあります。1つは、その魔力を誰かに移すことです。ですが、それでは定期的に誰かに移さないといけなくなります。それに、体を乗っ取られるというのに、貰ってくれる人はいません。余程の変人でない限りは」
「あっ、確かに。僕に移そうとしたけど…乗っ取られちゃうかなぁ?」
「……ウリキドさんであれば、自らの魔力で封じ込められるでしょうね」
「なら…」
「でも、貴方が何かしらで弱ったタイミングで、体を乗っ取られますよ」
「そんなぁ…」
「流された魔力を取り除く2つ目の方法ですが、血縁者、又は、先祖が同じ人に体の限界まで魔力を注いでもらことです。体の限界まで注げれば、魔力は溢れてきます。溢れてきたカインの悪い魔力は、すぐに瓶に入れましょう。吸い込んだらまた面倒な事になるので」
「じゃぁ、クロス家の人を呼べばいいの?」
「そういうことになりますが…呼べるものでしょうか?クロス公爵を…」
「あっ、なら公子とかは?他に兄弟がいるかはわからないけど」
「いえ、彼女は一人っ子です」
「……じゃぁ、1つ目の方法でやるしかないの?」
「安心してください。やるとしても、私が貰いますので」
▲ ▶ ▼ ◀ ▲
「はぁ…はぁっ…はぁっ」
「ちょっと待つッスよ!」
余はカラマイア嬢の姿を確認してから、居ても立っても居られず、クラスSまで全力疾走中だ。
後ろには、カイスが付いてきている。きっと、余を止めるべく足を動かしているのだろう。
「はぁ…はぁ…この廊下…これ程までに長かったであろうか?」
「全然そんなこと無いッス。誰かの仕業しかないと思うッス」
「息切れ一つ起こしていないとは…大分体力があるのだな?」
「このまま走っても無駄ッス!一旦止まるッス!」
「余を、教室まで連れ戻そうというのか?」
「はぁ?違うッスよ!【移動】で一気に行きましょうって提案ッス!」
なんと、そうであったか。余は冷静さに欠けていたようだ。こうも疑心暗鬼になるなんてな。
「はぁっ…はぁっ…」
足を止め、彼に向き直る。
「すまぬ!余は冷静さを失っていた。是非、助けてほしい!」
彼に深々と頭を下げる。どうやら、少しだけハイになっているようだ。
「……知ってるコンクルードとは、随分と違うんッスね。……………カタバさん、【移動】するのでもっとこっちに来てほしいッス」
「そうか!助かる、カイス殿!」
呼吸を正し、カイス殿に駆け寄る。いつか礼をさせてもらおう。
「行くッスよ?【移動】!」
一瞬視界が暗転し、そしてすぐ、目の前に景色が広がりを見せる。
「っ!びっくりしたぁ〜!」
「おっと、すまぬウリキド。………で、これはどういう状況なのだ?」
黒い毛糸玉こと、ヴィル・ナクトがカラマイア嬢を………何をしておるのだ?
「ヴィルさんはいま…お姉さんの体で暴れてる悪い魔力を少しずつ、少しずつ自分自身に移動させているんだ」
「ぬ…それは」
「それって…体を乗っとられるんスよね?」
「何?」
では、早く止めねば………いや…………覚悟の上か。……余は何もできぬのだろうか。
遣る瀬無い気持ちが体を包んでゆく。
「一応…他にも方法はあったんだけど…」
「っそれは何だ?」
「……お姉さんと、血縁関係にあるものの魔力を注ぎ込む。悪い魔力が溢れてくるまでね。血縁関係は、先祖が同じであれば誰でもいいらしいけど…」
「公爵家って忙しいッスからね」
「む、娘が死にかけているというのにか?」
「……そんなもんスよ、貴族って」
「…………他の」
「え、何スか?」
「他の者の、血縁者以外の魔力を流すとどうなるのだ?それで、その悪い魔力を溢れさせられるのではないのか?」
すると、余の発言に答えるようにヴィルが声を発した。
「出来るには出来ると思います。ですが、余りにも沢山の時間と、魔力が必要になります。他人となれば、その分抵抗が大きくなり、魔力も流れにくいです」
「………一度、試してみてもよいか?」
「え?先程の説明を聞いて尚、試そうと思うのですか?……………何か考えがあるのですね」
「…うむ」
「無茶ッスよ……」
「一つ…仮説が頭の中にあるのだ」
昔、父の部屋にこっそりと入ったことがある。
その時に、その部屋にある本を幾つか拝見した。
子どもながらに頭を働かせて、理解を試みた。……だが、出来なかった。
しかし、今、その内容を思い返すと…ある仮説に辿り着く。余の…コンクルードの家系は、クロス家から派生して生まれたものなのかもしれないと。
もしも、その仮説が正しければ…
「悪い魔力が溢れ出てくるまで…魔力を込め続ければいいのだな?」
「です」
「っふ!余に任せろ!絶対に成功に終わらせる」
皆の顔を見て、自信満々というばかりに笑ってみせた。
「笑顔のつもりスか?引きつってるようにしか見えないッスけど」
そりゃそうだろう。失敗はコンクルードの名には似合わない。緊張や不安も一入だ。
「やるさ。余は、魔王の子孫なのだから」
「体が震えるほど緊張してるッスよ…あんた」
カラマイア嬢に近づき、手を握る。
「失礼する」
魔力を注いでゆく、じっくりと、焦らずに。
時間が掛かったって良い。失敗したって良い。今は、そうやって自分に暗示をかけるくらいしか出来ない。
「な、何故?スムーズに魔力が流れていっていますよ」
「前借りさせてもらうぞ…『魔王の貯蓄』今回いるだけだ!」
これで、魔力切れは考えなくていい。
ゆっくりでいい…ゆっくりでもいい…そう自分に言い聞かせる。
アベルは?……ヤクイ殿や、ザバが何とかしてくれるだろう。もしも、ここへ来たら?
………余計なことばかり考えてしまう。
カインという者は?何処へ行ったというのか……ああ!集中だ…余の一人称は、余計の余ではないだろう?
「まだ…溢れないのか?」
「まだ1分も経ってないッスよ?」
「……これは、いい修行になりそうであるな」
「汗だくでカッコつけても、むさ苦しいだけッスよ…」
………っなんだ?
「っ冷た!」
「これで、冷静になったッスか?」
「…っふふ!おかげで随分と気持ちが楽になった」
全身に水をかけられた。と思ったら、すぐに風が来た。
おかげで、体は強張ったが、緊張は緩んだようだ。
「今は…60%程ですね。あと20秒もすれば、溢れてきますよ」
「なるほど」
「普通の人なら、とっくに溢れ出しているのですがね。彼女の魔力の器が、常人と比較してもかなり大きいということなのでしょうね」
「それは…いいことなのか?」
「ええ、もちろん。彼女は将来、大物になれるかもしれませんね」
「ほお…それは凄いな」
「ほら、適当に話をしているうちに、溢れ出してきましたよ」
なんと、気が付かないうちにもうそんなに時間が…これは、ヴィルに感謝だな。
すると、ドス黒い塊のようなものがカラマイア嬢の体からスルリと出てきた。
「これは?」
「うわぁ~…気持ち悪いねぇ…それ」
咄嗟にヴィルが此方に近づき、何かをしている。
「よし!採れました!」
「カラマイア嬢はもう大丈夫なのか?」
「はい、これでカインの魔力は取り除かれました。なので、後はカラマイアさんが目を覚ますのを待つだけです」
「………まだ、解決していない事があるッスよね?」
「うむ、そうだな。別の所に居るであろうアベルとカインをどうにかせねばな」
「それもあるッスけど、あんたの血筋についてッス」
…まぁ、そうなるのは当然だろう。
今回の一件のおかげで、余の仮説は事実として立証さてれしまった。
これを誤魔化せるほど、余の口はうまくないし、カイス殿も馬鹿ではない。
「それはだな…」
「……うぅ…」
「っ!カラマイア嬢!無事か?」
△ ▷ ▽ ◁ △
「……うぅ…」
五月蝿い…
「っ!カラマイア嬢!無事か?」
「あっ!逃げたッスね?」
「今は、そんな話をしている場合ではないのだ!」
「…何?喧嘩でもしてるの?」
「意識はしっかりとあるか?」
「うん。………ここは?」
「クラスSだ。カラマイア嬢、何か覚えていることはあるか?」
「えー……教室で…自己紹介が終わって…学内の案内をしてもらってるとき……から途切れてる。で、今ここにいる」
それにしても…何でだろう?力が漲っている。
周りを見渡してみると、いつも以上に目が良くなっていることに気がついた。
窓の外にある木の葉っぱの葉脈が、しっかりと見える程に。
「………っ!」
「どうした?」
頭が痛い…ズキズキと、脈打つように痛みが襲ってくる。一定の間隔で、鈍器で殴られているかのような感覚だ。
……何か…知らない記憶が頭に入ってくる。
「……ブーセ…?」
「ぬ?誰だそれは?」
「わからない…」
「…………取り敢えず、カタバさんの説明は後でしっかりと聞かせてもらうッスけど」
「…そうだな、カインとアベルを探そう」
「そッス」
「あ、でしたら、私がカラマイアさんを介抱させてもらいますので、御三方で対応してもらえませんか?」
「ええぇ~…アベル好きじゃ無ぃ…」
「わかった。では、行こう。ウリキド、カイス殿」
「何処へ行けばいいんスか?」
「恐らくは、中庭に向かったのではと思います」
「了解ッス」
「僕も行くのぉ?ヴィルさん、本当に一人で平気?」
「はい。私もランクSなので、ちょっとやそっとじゃやられませんよ」
「うゔ…」
「よし行くッスよ?ほら、もっと近づいて」
「嫌だ〜…」
「ほら、ウリキド。こっちだぞ?」
カタバが、ウリキドを金色の眼の人に近づける。
「では、失礼するッスね。【移動】」
彼はそう言うと、姿を消した。中庭に【移動】を使ったのだろう。
「さて、貴方に流れてきた記憶。私に教えてくれませんか?」
「…いいですけど。どうして?」
「特に深い意味は無いですよ。ただ、カイン…いえ、ブーセとは知り合いの可能性があるので」
「知り合い?」
「はい。話せば長くなりますが、説明しますか?」
「いえ、やめておきます」
「ですか…」
「それで、流れてきた記憶では…」
頭の中に流れてきた誰かの記憶を、ヴィルさんに伝えた。
ブーセって…誰のことだろう?
さっき、私の頭の中に流れてきたのは、ブーセと思われる者の記憶と、カタバの記憶。
どちらも、見ていて気分の良いものは無い。
片方は腕を切り落とされ…もう片方は血を小瓶いっぱいに溜まるまで、寝てるうちにこっそりと抜かれたり。……その記憶があるってことは、起きているのか。
うえ…刺激が強い。
「大丈夫ですか?具合が悪そうですが」
「いえ、平気です」
ブーセ?の記憶では、見覚えのある人が出てきた。それは、同じ寮で生活をしている、ハルルという人だ。彼はブーセに手を差し伸べ、何かを話している。
なんて言っているのだろう。
その記憶の中では、ハルルはドラゴンに変身し、ブーセを背に乗せ世界を廻っているように見える。
……気がつけばもう一人いる、ハルルが赤子を拾っている。
そこからは、もう途切れている。続きは流れてこない。いいところだったのに。
これからは、ハルルの観察でもしようかな?
「なるほど…そんな記憶が見えたのですか」
「はい…」
カタバの記憶はメモに写して、実家に送ろう。
予期せぬ収穫を得た。パパも褒めてくれるだろう。
「で…私に何があったんですか?」
「それはですね…」
これまでの私の動きを、ヴィルさんに教えてもらった。どうやら、悪い魔力を流し込まれて、操られていたようだ。恐らくは道案内の最中に、魔力を入れられたのだろう。
………あれはやっぱり義手なんだ。
「あの、ヴィルさん」
「はい、何でしょう?」
「私も、アベルとカインの所へ向かっても良いですか?」
「………推奨はしませんよ」
「行きたいです」
「………分かりました。ですが、私はここに残ります。メモを取らなければなりませんので」
「分かりました。では、行ってきます」
「はい、気を付けてくださいね」
「はい!」
急いで、中庭に向かう。
……今回は本気で使おう。『固有 第二眼』を。
今回は本気での使用なので、廊下のカーテンを破いて左目を隠した。片目だけ『固有 第二眼』を使い、もう片方の目で普通に見る。
2つの視界を用いての戦闘スタイルが私のアイデンティティだ。
「着いた!」
中庭に足を踏み入れる。左目で、戦況の把握を試みる。
「すご…」
ウリキドとヤクイさんが、召喚を巧みに用いている。
その戦場を観ながら、みんなの下へ向かった。
すると、声が段々と聞こえてきた。
〚こんな『氷鬼』、ちっとも楽しくねぇ~!!〛
「おい!待てよ!『固有 カイン召喚』!それ、タッ…」
「うわっと…危ない危ない」
「逃がさないよぉ〜?『固有 アベル召喚』!ほ〜ら、タッチしちゃうよ〜?」
〚ッグ!危ない!クソッ!『固有 遊具世界』なんて与えなければよかった!〛
「まさか祝福でそれを与えているなんて思いませんでしたね。本当に馬鹿なんですか?ワタクシまで、巻き込まれてるんですが!」
〚いや、ごめんって!こうなるとは思わないじゃん!〛
「貴方は昔から学びませんね!なんでそんなに綺麗に、自分で自分の首を絞められるんですか!」
「ちょっとぉ?喧嘩してる場合じゃないよねぇ〜?『だるまさんが転んだ』に変更〜!」
すると、アベルとカインがピタッと止まった。
「ヤクイ君!僕が見ていない間は援護して!」
「了解!」
「だーるーまー…」
「100m程度なら、言い切る前につきますね!」
「行かせるか!『固有 カイン召喚』!」
「なっ!振り出しに戻しましたね?ズルすぎやしませんか?」
〚よっしゃ!タッ…〛
「…だ!」
〚…危ね!〛
「これって口はセーフ?」
〚ッたりめぇだ!〛
カタバは?金色の眼の人も見当たらない。
「あ…いた」
遠くのベンチに人が3人座っている。
左目を使って、何を話しているのか聞こう。
「『固有 第二眼』」
3人の姿が正面から見える位置に目を用意した。
大きいベンチの左端にカタバ、ど真ん中に金色の眼の人。そして、右端に知らない人がいる。クラスAの人だろうとは思うけど……外見の特徴を言えば…特にない。普通の人って感じ…いや、今舌にピアスがついているのが伺えた。
3人ともに外傷はない。
そして、話している内容も特に無い。ただじっと、その戦闘を観ているだけのようだ。
第二眼を閉じ、眼を覆っている布切れを取った。
「私も観戦してよ」
中庭で行われている戦闘を、中庭へ出られる扉から出て、朝に王様が喋っていた高台に腰掛け観る。
聴こえてくるのは、アベルと呼ばれている男の、不平不満。そして、カインと呼ばれている、朝に話しかけてきた男の、ゲームに対する文句など。
「…っあはは」
真面目に戦闘をしているはずなのに、何だか面白い。まるで道化師が集団で、芸を見せているみたい。
〚っブーセ!帰ろう?〛
「っ!そうですね!今回は失敗ということで!」
ブーセ及び、カインがそう言うと空間に亀裂のようなものが走った。
「ほら、後ろを向いているうちに!」
〚サンキュー!〛
そして、アベルは亀裂に入り、何処かへ消えた。
カインもそれに続こうとしていたが、ヤクイに阻止された。
「待て!『固有 カイン召喚』!」
「ちょっ!」
そして、亀裂は閉じて何も無い空間に戻った。
次の瞬間にはカインの叫び声が耳に届いた。
「うわああぁぁ!!やってくれましたね!?1日に2回までが限界だったのに!」
「知らんわ!やすやすと逃がす訳が無いだろう!」
「んじゃぁ、遊びは終わり!」
「そうだな、カイン単体ならさほど脅威はないし」
すると、隣に人が腰掛けた。思わず体がビクッとしてしまった。いつの間にそこへ?
「おっと、ごめんごめん。脅かすつもりは無かった」
「王様…何でここに?」
「気になるじゃん?あのファミリーの一員である、カインのランクが」
「なるほど…?」
「……ふむふむ…」
そう言うと王様は、カインをじっと見つめ始めた。
「え…ランクB-?あれで?」
「ランクB-?あの人が?」
「うん。…最近疲れ目だから、調子悪いのかな?」
「関係ないと思いますが…」
そして、気がつけば戦闘も終わり、カインは身動きを封じられていた。縄でぐるぐるだ。
「3時限目からは、クラス合同での交流会を開こうと考えてるんだけど、どうかな?」
「私に聞かれても…王様がいいと思ったのなら良いのでは?」
「う~ん…ここには宰相は付いてこないからな…自分で決めないとか」
「それか、他の先生方に相談とか」
「あ~!確かに。頭から抜けていたよ。じゃっ、早速行ってくるわ。中庭で行う予定だから、移動はしなくていいよ」
「わかりました。ここに居る皆にもそう伝えときます」
「おう、よろしく!それじゃっ」
そう言い残して、王様はその場をあとにした。
「さて…皆の所に行こっと」
皆に話を共有するために、高台から腰を上げて歩き出した。




