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ByNRia〜私達の学び舎は、何が起きても心配ありません〜(下書き&一旦停止)  作者: 差氏 ミズキ
〝起承転結〟 1人目〜3人目
10/38

2人目 Ⅹ・カラマイア 承

 「むぅ…朝か」


 部屋の窓を開け、部屋の換気をする。


 今の時刻を確かめ、朝食の準備を始める。


 食堂で食べるのも良いが、朝食だけは自分自身で用意している。


 そして、いつも通りキッチンにて朝食を作ろうとしていたが…そこにはいつもと違う風景があった。


「あ…おはよう」


「帰れ。…いややっぱり待て、何故ここに居る?」


「部屋の鍵空いてたから。昨日の夜入った。貴方と一緒に寝れば、寝坊をしないと踏んでいたから。やっぱり正解」


「なるほど…」


 いつの間に部屋に…全く気が付かなかった。………同じベッドで寝ていたのか?ま、全く気が付かなかった。余の寝相は酷くなかっただろうか?


「朝ご飯を作ったけど、食べる?」


「うむ、いただこう」


 何故こんなにも警戒していないのか?


 それは決まっているだろう。カラマイア嬢は余に危害を加えられない。ならば別に良い。


 近くの丸テーブルの椅子を引き、腰掛けた。


「何を作ったのだ?」


「ハンバーグ」


「ほう…」


 ハンバーグ?なんだそれは?少なくとも、余の家では聞いたことがない。


 そして、カラマイア嬢は別の所から椅子を隣に移動させ、料理を丸テーブルの上に置いた。その後、椅子に腰掛け口を開いた。


「はい、召し上がれ」


「うむ、有り難くいただこう」


 なるほど、肉か。であれば余の好物だ。


 ナイフで一口大に切り分け、口に運ぶ。


「どう?」


「うまい!【料理】持ちか?」


「いいえ。私の実力」


「ほぉ!それはすごいな。専属の料理人にでもなってほしいと思うほど美味いぞ」


「ふふ。良かった」


「………隣に来る必要はなくないか?」


「私も食べる」


「なら早くそう申せば良かろう?既に半分は食べてしまったぞ。残りはカラマイア嬢が食べると良い」


 そうして料理をカラマイア嬢の方へ動かした。


 ……新しいフォークでも持ってこよう。


「うん。美味しい」


「……これが普通なのか?」


「何が?」


「いや、何でもない」


 というか、先程はエプロンを付けていたので気が付かなかったが、既に制服に着替えている。


 余も着替えなければな。


「どこ行くの?」


「着替えだ」


 そして制服をクローゼットから取り出し、別の部屋に移動した。


「流石に目の前では着替えられぬ」


 そして学校の制服へ腕を通した。


 男女共に同じ白色ベースの制服だ。汚れがついたら落ちなさそうで、どうも落ち着かない。


 見た目はカッコ良いから気に入っているがな。


 そして、先程の部屋に戻った。


「遅い」


「何故怒る?頬も膨らませて…お主はリスか?」


「怒るよ?」


「すまない。余は何かしてしまったのか?」


「……許す」


 どういう事だ?全く理解が追いつかない。余はいったい何を許されたというのか。


「既に食べ終わっておるな」


 食器を手に取り、台所へ場所を移し、制服の袖をまくった。


「私が洗うよ」


「いや、洗わせてくれないか?美味い朝食を振る舞ってくれたのだ、少しくらいは恩を返したい」


「……でも、洗いづらそう」


「仕方ないだろう?余にとって位置が低すぎる…だからって任せるわけでもないが。部屋に戻ったらどうだ?荷物はそこにあるのだろう?」


「荷物も持ってきてる」


「…………そうであるか」


 綺麗に食器を洗い終わって、身支度を正し、寮を出る準備をした。


「よし、忘れ物は無いか?」


「おはようのキスを貰ってない」


「ぬ?」


「私はもうした」


「ぬ!?」


「いつもそれが無いと、やる気が出ない。寮に入ってからはクスルにしてもらってた」


 ……最近の子は随分とアグレッシブの様だな?


 ぬぅ…だぁ~…どうしよう?どうすればよいのだろう?郷に入っては郷に従えか?


「……分かった。顔を寄せろ」


「ん…」


 身長差的に少し屈まないといけないのが、洗い物くらい腰にくる。


「チュッ…」


「…っ!?今っ!口に?」


「早く学校に行くぞ!それとも、足りなかったのか?」


「い、いや。充分だよ」


 何故顔を赤くしているのだ。こっちまで恥ずかしくなる。


 外に出て、学校への道を2人で歩む。今日は遂に、学校に向けての初登校だ。


 距離はそこまでない、3kmくらいだ。


 走れば10分程で付くだろう。


「おはよう!」


「おお、ヤクイ殿!おはよう」


「うん!この人」


「何だ?噛み合わなかったぞ」


「…確かに、珍しい組み合わせだな。どういう風の吹き回しなんだ?」


「さあ、余も知らぬ。カラマイア嬢よ、余に関わってくる真意は何だ?」


「お仕事」


「…らしい」


「いや、らしいって言われても……カラマイア嬢、仕事って?」


「余の真似をするでない」


「別にいいべ?」


「クロス家の仕事で、コンクルード家の人を監視しないといけないの」


「こんなに堂々と…」


「だけど、私の代で絶対に終わらせる」


「おお!それはかっこいいな!」


「明確な人生の目標があるのか。余よりもしっかりとしておるな」


「そういえば、ご主人合格してるかな〜?」


「主人だと?誰かに雇われておるのか?」


「まぁ、そんな感じ」


「フード……いいなぁ」


 フード?何だ急に?


 あぁ…街中の人間の服装を観ていたのか。


「先程から気になっておったのだが、我々とは違う色の制服だな」


「あぁ、これね。一般枠の人はみんなそうよ」


「ほう。では、ハルルやウリキドも?」


「うん。それと、これ!」


「それは…鈴か?耳飾りになっておるな。だがそれでは、うるさくならないのか?」


「これ、特殊な鈴でね…」




  △ ▷ ▽ ◁ △




 2人が話に熱中している。


「カラマイアさん…もしかして…彼は」


「うん。コンクルード家だよ」


「ああ…だから…自分と目が…合わないんだ」


「……貴方、もしかしてビギニング家?」


「うん…そうだよ。…ラフアンって名前だから…よろしくね」


「うん。よろしくラフアン」


 それからしばらく歩き続けて、正門まで辿り着いた。


 一つの看板がそこには建てられていた。


「中庭集合?そこへ向かえば良いのか?」


「多分そう」


「カタバさん…背が本当に高い…」


「そうなんだよ!俺もこのくらい…いや、高望みは良くないか」


「ぬ?何の話を?」


「気にしないでくれ!こっちの話だ」


「そうか?わかった」


 看板に書いてあるとおりに、正門を抜けて、菜園を通り、時計回りに進んだ。


 しばらくして、中庭と思われるスペースに到着した。


「学校の外観だけでも、1時間以上楽しめそうだな…」


「余も同意見だ」


「かなり広いよね……迷子になったら大変そう」


「その時は、私が見つけるから安心して」


「かっこいい事言うじゃん!」


「…何だ?もう1人誰か…」


「あ!ご主人!お~い、俺合格しましたよ!」


「あ…ヤクイさん…待って!」


 どうやら、先程言っていた主人に会えたらしい。


 あの人は確か…


「パルファム公爵か…」


「何?…今なんと?」


「え?ピャッチ・N・パルファム公爵が主人なんだなって」


「……パルファム……公爵?」


「うん。あの人が今の代の公爵。すごいよね、まだ14なのに」


「…先代は?」


「先代?…あの人のお父さん?さぁ…そういえばここ何年間も見てない」


「そうであるか…」


「何かあったの?」


「いや…そういうわけではない。気にしないでくれ」


 すると、別の所から声がかけられた。


 毎日聞く声だ。


「あ~!こんなところにいた二ャ!」


 私を見つけて、此方側にかけてくる。


 が、足元のちょっとした段差に気づかずそのまま転んだ。


「いだ〜!…ニャ」


「それが貴方の素?」


「違うニャ!これは不意な出来事だったから!これはノーカン!…だニャ」


「動揺してるの?」


「そ、そんなことより!どこ行ってたニャ?朝起きたら跡形も無くて、蒸発したかと思ったニャ!」


「私は蒸発しない」


「知ってるニャ…まぁ、無事で良かったニャ」


「カタバ君にお世話になってた」


「……え?……それって」


「何だ?今日は見つめられる事が多いな?」


「そういう…ことニャ?」


「何を指しているのか分からない」


「……同じベッドで寝たニャ?」


「うん。暖かかった」


「朝起きてみればビックリだ。部屋にいつの間にか居たのだ」


「み、見かけによらず、積極的ニャンね〜。ね、寝込みを…」


「何か焦ってる?」


「い〜や?全然そんなこと無いニャ」


「そう?」


 会場も少しずつ賑を増してゆく。


 どうやらもう少しで時間のようだ。


 すると、王様が学内から出てきて高台に足をかけた。これで全員揃ったのか?


「えぉっほん!皆の者、注目!合格者が全員揃ったので、前倒しでプログラムを進める。王様兼校長のニギちゃんだ!よろしく頼む!ここでは校長と呼ぶように!」


 よく通る声だな。私もあのくらい声が出ればいいのに。


「それでは!皆さんお待ちかねのクラス分けを行う!先ずは、年齢順に合格者の点呼をする!」


 …クラス。カタバと同じがいい…観察が楽だから。


「先ずは、今回の合格者の中で最年少である、クスル・グクス。その年はなんと12歳!」


「え、貴方ってそんなに若いの?」


「じ、実はね。でも最年少とは思わなかったニャ」


「そして、次は13歳の方々を一気に言います!マクネア・N・ネイン。ヘロメ・B・アッシュ。ラリ・C・カント、以上3名」


 …B…C。珍しい。


「で、14歳は、ピャッチ・N・パルファム。カイス・N・フォル。ザバ・N・ドゥ。ウリキド、以上4名」


 皆若いな。もしかして私の寮って10代後半が集中してるのかな。


「15歳、キュルテ・N・ノーム。タカヤ・N・サティー。リュレ・N・ノエ、以上3名」


 何かハルルさんが嬉しそうな顔をしている。誰か知り合いがいたのだろうか?何故かウリキドもドヤ顔だ。


「16歳、ラナク・N・トロワ。ケミカ・N・セブル、以上2名」


「もしや、カラマイア嬢は余と同じなのか?」


「17歳、バダル・N・ノウノ。シェイ・N・フィフト

。カタバ・コンクルード。ラフアン・ビギニング、以上4名」


「む?3名分しか読み上げてなかった気がするのだが?…………もしや聞き逃してしまったのか?…って、カラマイア嬢は余より歳上だったのか!?」


「18歳、カラマイア・N・クロス。ギャザット・N・トゥウェン。ヤクイ、以上3名」


「ニャ!?歳上?しかも6つも……」


「そんなに驚く?」


「歳下と思ってたニャ」


「余もクスル嬢と同意見だ」


「19歳、オース・N・ナーブン。ラクマ・N・ナイシ

。ハルル、以上3名」


「ぬぅ…Nが多いな…」


「当たり前でしょう?私たち貴族は王様に忠誠を誓ってるの。Nは忠誠の証」


「成る程な、余は頭が足りていなかったようだ」


「そして最後!やっと!…年齢不詳の最年長!」


 本心が垣間見える。確かに長かったけど。


「その名も、ヴィル・ナクト。謎の毛糸玉だ」


 確かに、私もそう連想していたけど、改めて聞くと酷いね。


「以上!計24名が今回の合格者だ!おめでとう!」


 所々から拍手が聞こえる。私も拍手しとこう。


「で…ここからが本題!クラス分け気になるよね〜?どう分けたのかというと、君たちのランクで分けさせてもらった。もしも、ランクが一つ下で、あの人と同じクラスになれなかった…とかがあっても、ランクが上がればそのランクのクラスへ行けるから、落ち込むなよ?」


「ふ~ん」


「何か気になるのか?」


「私は貴方と同じクラスが良いけど、望み薄だなと思って」


「そうか?」


「うん。だって貴方の強さは昨日観てたし。それに比べると私は膝下くらい」


「音も聞こえていたのか」


「一方通行で申し訳ないけどね」


「ふ、ふむ」


「では、クラスCからだ!優秀だな、今回の生徒たちは。前回、前々回はFからの発表だったと聞いている」


「私はどこかな」


「クラスCは、キュルテ、ラナク、オース、ラクマ、シェイ、へロメ、ラリの以上7名」


 誰が誰だか分からない。他のランクのクラスと交友を謀る場は設けられるのだろうか。


「クラスBは、カラマイア、ピャッチ、ギャザット、タカヤ、マクネア、ラフアン、ハルル、クスルの以上8名」


 Bか………カタバと同じクラスになれなかった。当然と言えば当然か。


「そして、天才の領域のクラスA、バダル、リュレ、カイス、ザバ、ケミカ、ヤクイ、カタバの以上7名。かなり豊作だな」


 ヤクイ…昨日観た限りではカタバに届きうる人だから納得だ。


「そして…極稀に現れるはずのランクSが今回は2人だ!ウリキドとヴィル!因みに俺、ニギちゃんのランクはB+止まりだ」


 え、そうなんだ。意外。


 ……………カタバと同じクラスなら良かったのに。


 すると不意に頭を撫でられた。


「心配せずとも、すぐに同じクラスになれるだろう。それに、クラスが違うからといっても、会えない訳では無い。さらに言えば、カラマイア嬢はいつでも余を観れるだろう?」


「や、やめて」


「おっと、すまない。歳上であったな」


「関係ない」


「そういえばニャンだけど、おはようのキスって、まだだったニャンよね?大丈夫ニャ?」


「ああ、それに関しては余がさせてもらった」


「あ…うん。してもらった」


 ……顔が熱い。


「驚いたぞ、おはようのキスをしていたなんてな」


「そうだね、ニャーも最初は戸惑ったけど、手にすればいいって言われたから、毎日してたニャ」


「手に…?」


「あの言い方的に最初は口だって思っちゃったけど、手でよくて安心したニャ。危うくファーストを奪いかけたニャ」


「ふ、ふむ。なるほど、そうであったか。それは…危なかったな」


「ごめんね…勘違いするような言い方で」


「別に誰も責めてないニャンよ〜」


「というわけで!それぞれのクラスに移動するように!教室内に入ったら、担当の教師も其処にいるから。皆ランクA++の化け物だ、気を引き締めろよ?それでは、解散!自分のクラスへ移ってくれ。地図は…今皆の手元に【移動】させてもらった。これを見て行ってくれ。それではまた会おう!」


 そう言い残すと、【移動】で何処かに行った。恐らくは校長室的なところではないかと思っている。


「では…それぞれの場所で頑張るとしようか」


「そうニャンね〜。んじゃ、またね〜」


「じゃあ、またね」


 そうして各クラスへと足を進めた。


 クラスBに向かう途中で1人、見知らぬ人を見かけた。クスルには先に行ってもらい、私が対応した。さっきのクラス発表時には見かけなかった人だ。


 一体誰なのだろう?


「あ、そこの君。クラスSって何処だっけ?」


「ああ、それは…」


 手元にある校内の地図を、彼に開いて見せた。


「ここにある」


「ふ~むぅ…了解!ありがと、お嬢さん」


 そう言うと彼はクラスSに向かって歩き出した。


 あの特徴的な腕はなんだろう?義手?いや、外装のようなものだろうか?


 ………まぁ…いいか。


 …もう少しでクラスBに到着する。


「ここを右に曲がり、真っ直ぐ進むと看板が見えてくる」


 あった。


 随分と時間がかかってしまった。


 そして、教室の両開きの扉の片方に手をかけて、中に入る。


 中に入るとみんな揃っていた。


 私が最後のようだ。


「随分と遅いではないか?他の者は全員揃っているぞ?迷子にでもなったか?」


「あ、すみません。少し迷子になりました」


「そうか、では最初の授業は校内の案内としよう。だが、まずは先生から自己紹介だ。カラマイア、空いている席に座ると良い」


「はい、わかりました」


 そして、空いている席に腰掛けた。前列4名、後列4名となっている内の、前列の扉に近い側から2番目の席だ。


 今日はキャラが多くて大変だ。




  ▲ ▶ ▼ ◀ ▲




 ……手であったとは。いや、確かに、冷静に考えればそれしかないな。


「どうしたんだ?浮かない顔をして。好きな女子が別のクラスにでも行った?」


「それはヤクイ殿の話であろう?」


「グッ…いや、でもすぐ上がってくると思うな」


「……朝に疑問ができたのだが、訊いていいか?」


「おお、珍しい。なんでも言いな。俺が答えられる範囲なら、問題無いから」


「それは頼もしい限りであるな。…して、その疑問なのだが、もしや…朝に登校していたとき、ビギニング家の者が居たのでは?」


「ビギニング?う~ん…ラフアンのことか?」


「ぬ?今何と?」


「ラーフーアーン」


「アウアン…母音なら口の動きで分かる。そして、余が述べた名前が間違っていることも」


「何で聞こえないんだ?」


「呪いの後遺症というか、別の呪いと言えば良いか…」


「R…F…アン」


「ラフアン?ラフアン・ビギニング?」


「そうそう!ビギニングかは知らないけど!」


「……こうもあっさりと、この呪いの後遺症をスルー出来るとはな。感謝する」


「そりゃどうも」


 知ったからといって、この後遺症を治す手がかりにはならないよな。………余の代で治す。絶対に。


 1限目の自己紹介を終え、教室内でヤクイ殿と会話をしているのが今だ。


 そして、その1限目が終わった休憩時に、同じクラスの人間から話しかけられた。


 先程の自己紹介では、カイス・N・フォルと名のっていた。綺麗な金色の瞳に、尖った耳、茶髪、口元には常に黒いマスクを着けている。背丈は150程だろうか。


「どもッス!友達になってほしいッス。後は、このクラスでは君たちだけッス」


「おう!よろしく」


「よろしく頼む」


「よろしくッス!特に…カタバ・コンクルードさん」


「俺は?」


「…ああ……」


「ヤ、ヤクイだよ!」


「まぁまぁ、そう怒らないでほしいッス。ただの冗談スから」


「本当か〜?」


「本当ッスよ!因みに自慢じゃ無いんですけど、嘘ついたことないんで」


「怪しいな〜?」


「信じてくださいってぇ!んじゃ、次は別のクラスにでも…」


「待て。カイス…といったか?」


「うす。カイスって名前ッス」


「………コンクルードに何か因縁でもあるのか?かなり混沌とした、心の声が聴こえてきてな」


「……ななな、ない、無いッスよ!…そんな…いや、ないッスね!」


「分かり易いにも程があるのではないか?」


「い、いや、ほんと!ほん…本当にないッス!…………少なくとも、言うのは今じゃないッス」


「そうであるか。では、話せるときに聴かせてくれないか?」


「心を読んで全て知ってるくせに?」


「一瞬しか使わん。聴きたくない情報を、聴いてしまうのは怖いからな」


「…………じゃっ、リュレちゃんと話でもしに行くッス。ほいじゃっ」


「…うむ」


 コンクルード家には、真顔で人間を死に至らしめる者がたまに産まれる。皆はその者を先祖返りと呼ぶ。


 きっとカイスもまた、その被害者なのであろう。


 先祖返りが発覚すると、家を追放され、コンクルードを名乗ることを禁じられる。…だが、守らなかった者が居たようだな?


「………これは…また一悶着的な?」


「恐らくはな」


 すると、別所から空気を轟かせる程の爆発音が発せられた。


 聴こえてきた方向的に、クラスSだ。


 何か実践的な授業でもしているのだろうか?


 そう考えていたのも束の間、突然扉が吹き飛ばされた。そして、見知らぬ者が入ってきた。


〚あれぇ?ここも違う?ったくどこだよ、ウリキドの奴は…〛


 そして踵を返そうとしているその者に、ヤクイ殿が声高らかに問いかけた。


「まて!アベルだろ?どうしてここに居るんだ?」


〚ん~?あ!お前、え~と…あっそうだ!ヤクイじゃないか?〛


「そうだ!で、何でここに居る?牢獄から出れるのか?」


〚何故か?そりゃオメェ決まってんだろ。ウリキドを攫いに来た〛


「攫いに?」


〚で、牢獄からは裏口から出てきた〛


「裏口があるのか?」


〚そう!世界の隙間っつうの?カインが開けてくれてさ、そこからひょいと来た〛


「ウリキドを攫ってどうする?」


 これは…どうやら緊急事態のようだ。


 ヤクイ殿が時間を稼いでいるうちに、この者を拘束しなければ。


 一つ一つの質問に答えるところを見ると、律儀な性格のようだな?扉は蹴破ったようだが。


 アベルと言ったか?


 長身で、褐色。それにあの目、人をなんとも思ってない目だ。ウリキドが攫われた後に、何をする予定か心を読まずともわかる。


 そして、他のクラスの人間も状況を察したようで、全員臨戦態勢に入っている。


〚攫った後は…確か、ファミリーに歓迎する予定だったかな…それまで生きてたらだけどな。………おっといけない!カイン探さないと!〛


「カイン?カインもここへ来ているのか?」


〚ああ〛


 こやつ…律儀なのではなく、馬鹿なだけか?


 相手に情報を提供し過ぎだろう。…いや、ブラフ?


「隙あり!!」


 クラスメイトの一人がアベルに飛び掛かった。何故隙ありと叫んでしまうのか。


「ちょっ、待て!そいつは!」


 今飛び掛かったクラスメイトの名は、 ザバ・N・ドゥ。特に外見に特徴のない男だ。あるとすれば、たまに見える舌ピアスくらいだろう。


 彼は魔法剣を創造し、アベルへ振るった。


 だが、アベルには当たらなかった。


 ………アベルが消えた。周りをぐるりと見渡しても、その姿はない。一体どこに行ったというのか。


「クソ!誰かに召喚されやがったか!」


「召喚?………あ!そういえば、ウリキドはアベルを召喚出来るんだった。それで消えたのか?」


「ウリキドが召喚したって?なら、安心だな。ランクSなんて人間の領域じゃないし。…………彼奴、オレの事を一ミリたりとも気にかけていなかった。まだまだ鍛錬不足だな」


「それじゃっ、俺はクラスSに向かう」


「はぁ?馬鹿だろ。勝てる見込みがあんのかよ?そしてなにより、アンタはオレより弱そうだ。戦ったとして、瞬きしてる間に終わるぞ?」


「見込みはある。たった今、俺にも召喚が使えるのを思い出した。腕に自信があるなら、ザバもついて来るか?あと、何気に初会話だな」


「初会話とかはどうでもいい!何上から目線に指示してくれてんの?」


「喧嘩したいなら、後でしよう。今は早く向こうに行きたい。一緒に行くのか、行かないのか、教えてくれ」


「………行くぞ!早く行きたいんだろ?オレは【移動】持ちだ!」


「よっしゃ!じゃあ早…」


 どうやら、ヤクイ殿が最後まで言い切る前に【移動】をしたようだ。いつもカッコつかない所は、実に彼らしい。


 教室内に残された者たちはというと、今すぐ援軍に向かおうと燥いでいる。


 大勢で向かってもヤクイ殿の邪魔になるだけだろう。ならば、余の仕事は決まっている。


 喧騒の中でも、全員に聞こえるよう声を張り、無駄に腕を組んだ。


「皆のもの!我らは此処に残るべきだ!あの二人と、クラスSの者だけでなんとかなるだろう。それにだ!クラスSの教師を任される程の人間がおるのだ、何も心配することはないだろう?」


 そして、余の呼びかけに先んじて声を上げたのは、カイスだ。


「確かに、そうッスけど……そういうあんたは行く気満々って顔してるじゃないッスか」


「当たり前だろう?余は特等席で戦闘を見たいのだ」


 すると、1時限目が終わってからずっと寝ていた先生が起きた。皆の表情を伺うと、そういえば居たな、という顔になっていた。


「………ふぁぁ〜…ああ~!よく寝た。………どうした、皆?………て!あれ?扉が!」


「それまじで言ってんッスか……スイ先?」


 たった今、眠りから覚めたこの人間は、このクラスの担任。自己紹介の際にスイ先と呼ぶようにと、言ってきた。眼鏡を掛けているが、伊達らしい。


「ふ~むふむ、そんなことが!ほぇ~…」


「な、何をしておるのだ?」


 何も無い空間に指をたて、壁に指を這わせるかのような動きをしている。


「まぁ、状況は大体わかった。それじゃあ、2限目始めるよ〜」


 すると、先生の言葉が終わると同時に、文句があると言わんばかりの表情でバダルという男が口を開いた。


「この状況でですか?少なくとも、このバダルからすれば、流石にどうかと思いますよ」


「まぁまぁ、落ち着きたまえ。料理系男子のバダル君。今から始める授業は鑑賞会だから」


 そう言うと、また空中に指を這わせた。そして数秒と経たないうちに、空中に映像が映し出された。


 ヤクイ殿とザバの姿が映っている。


「先生実は、こういう系の専門家だから」


「こういう系とはなんだ?」


「なんて言えばいいかな〜…う~ん…映像系かな?」


「何を言っておるのかさっぱりわからぬ」


「まぁまぁ、なんとか察してほしいかな。…では、これより2限目の授業を開始する。あ、号令はいらないよ」


 そして、スイ先の宣言と共に2限目の戦闘鑑賞会は開かれた。

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