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第16話『警察官たるもの……』

 ……ホワイトハウスが言うところのオペレーションJは失敗し、公安事案A27号は収束した。


 ホワイトハウスが立てたオペレーションJヤタガラス作戦。

 軍事産業を潤すため、米国が海底資源の漁夫の利を狙うため、そのための日中尖閣戦争の誘発が課題であった。

 ──将来総理大臣となるであろう有力政治家米泉統一郎へのCIAからの多額の援助、その代償として米軍の尖閣諸島防衛義務を免除させる。

 ──民自党黒部新造政権に、核攻撃能力共同保有や、長射程兵器の配備を旨とする安保三文書改訂を迫り、共犯関係となる。

 ──ウクライナ紛争に自衛官を退役扱いにして義勇兵として派遣する。

 ──イージス艦のトマホークを米軍からのシステムジャックで暴発させると共に、日米の密約をマスコミにリークし、黒部政権を退陣に追い込む。

 ──黒部新造の暗殺と、国葬の閣議決定。

 ──米泉統一郎を内閣総理大臣に選出。

 ──在日米軍の特権を利用してクーデターの人員装備を横須賀、横田に運び入れる。

 ──国葬の日にCIA工作員がゲリラ攻撃し、内閣総理大臣が治安出動を命令する。

 ──米軍と自衛隊が一体となってゲリラを鎮圧し、日本を米軍の施政権下に置くマッチポンプ。

 ──この機に乗じて尖閣諸島に侵攻した中国人民解放軍と自衛隊が戦い、尖閣防衛義務放棄のため米軍に頼れない自衛隊は中国軍と共倒れし、アメリカが海底資源の漁夫の利を得る。


 その恐るべき計画は、特に後半のオペレーションは、失敗した。

 黒部新造内閣総理大臣が収集した米泉統一郎のスキャンダル──尖閣諸島防衛義務を放棄させたことを公安警察が裏を取り、畠山正晴法務大臣が強請りの材料とし、自身を内閣総理大臣臨時代理に指名させ、日本の行政権を事実上抑えたからだ。

 畠山首相代理が警察官僚OBであったことも大きい。彼は自衛隊に頼らず、警察の力でA27号事案にケリをつけた。

 だが「内閣総理大臣臨時代理に防衛省で指揮を取っていただく」という名目で畠山が拉致されたあの場面においては、天皇の密命を賜わった自衛隊別班内の隠密組織が活躍した。


 誰かだけの手柄ではない。

 黒部総理大臣が、畠山大臣が、桜祐たち特捜専対が、大河内たち別班が、稲田たち警察庁が、仁科たち警視庁が、力を合わせた結果、公安事案A27号を倒せたのだ。


     *    *


「特捜専対の方々がお見えです」

「失礼いたします」

「おお、座りなさい」

 後日、公安事案A27号特別捜査本部諜報専従対策室の面々は、警察庁長官執務室に招かれ、労をねぎらわれていた。

「警察庁は久しぶりだわい」

 警視監の最終階級を持つ畠山正晴内閣総理大臣が堂々とソファーの上座につく。内閣総理大臣が労いの場に出席する以上、特捜専対の素性をメディアから守るためには、警察庁長官執務室が選ばれた。

 警察庁からは小野田公現警察庁長官、稲田大成警察庁警備局長、赤坂正樹警察庁警備局警備企画課理事官が出席する。

 警視庁からは仁科完治警視総監、国枝隼人公安部長も同席する。

 公安調査庁からは、浅倉弘子長官、乃木康信首席調査官。

 そして主賓たる特捜専対からは、君塚信一警視、桜祐警部補、千代田春警部、大河内和夫警部補が揃い踏みだが、彼らの階級は一段階ずつ上がっている。だが桜祐の階級だけはそのままだった。

 ひとりだけ辞令を渡されない桜祐が真意を尋ねると、畠山正晴は茶をすすりながら答えた──

「なあに、お前にわしの選挙区を継いでもらいたいからだよ」

 爆弾発言であった。

「既に赤坂正樹警視正はわしの頼みで政界進出、将来的に国家安全保障担当内閣総理大臣補佐官として起用するつもりだ。その地ならしとして、内閣総理大臣秘書官事務取扱にまずはつける」

 赤坂正樹警視正が四角い眼鏡を光らせ、頷く。

 他にも、小野田警察庁長官は内閣官房副長官に、稲田大成警備局長は警視総監に、仁科完治警視総監は内閣危機管理監となることが内定している。

「正、お前も……」

「反対です」

「何だと! 膳立てしてやるちゅうに」

「父さん忘れたんですか、言いましたよね「何があっても警察官としての任務を果たせ」と」

 畠山正晴は口をぽっかりと開けた。

「警察官僚としてどこまでやれるのか。やり遂げてから余生を考えます」

「……わしは、どこへ出しても恥ずかしくない息子を持った」

「父さんが笑うの、はじめて見た」


       *    *


 都心の街並みを走る公安の車。

 桜祐が運転席に、千代田春が助手席に着き、後部座席に君塚信一と乃木康信、大河内和夫が座る。

「よかったの祐君、国会議員になれるチャンスを断っちゃって」

「だって、国会議員になったら、もう春さんと会えないじゃないですか」

「えっ、それって」

 桜警部はブレーキを踏んだ。

「大好きです春さん! あの時は任務で付き合ったけど、本当は心から好きなんです。それに警察官僚の僕なら……」

「ばか……私だって警察官僚だからじゃなく祐君だから好きなんだから!」

 大河内がヒューヒューと笛を吹き、君塚が微笑む。乃木が軽く拍手した。









《 クーデター:警視庁公安部自衛隊監視班 ──完── 》











 ……日本の危機も、日本警察史上最大の危機も、桜警部たち公安の活躍で乗り越えることができた。

 在日米軍と自衛隊の反乱勢力を鎮圧するため、別班と公安調査庁、果ては民自党、皇室にまで及んだこの公安事案は、畠山内閣総理大臣が日本国の行政権を掌握することで趨勢を決した。

 これからも公安は、警察官は闘いつづける。捜査に終わりはないのだから。

 



 



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