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第11話『内閣総理大臣暗殺事件!もうひとつのクーデター』

 衆議院選挙期間中、特捜専対の新たな拠点となった警察病院の一室で、千代田春警部補はパソコンのキーボードを叩いていた。

 そこへ桜祐警部補が紙コップをふたつ持って近寄る。

「春さん、コーヒーでもどうぞ」

「ありがと」

「黒部総理大臣から託された政治家のスキャンダルのデータですか?」

「そ! 色々調べて裏を取るの」

 祐は画面を覗きこむ。

「これは米泉環境大臣の醜聞ですか?」

「やばいよ彼」

 春は祐に、ハッキングで得た米泉統一郎のネタを見せてやる。

「まずCIAから献金を受けていて」

「その時点でアウトでしょ」

「支援してもらう見返りに、米軍が尖閣諸島を防衛する義務を放棄することを将来の総理大臣として認めるという密約を結んだの」

「……このネタがあれば、仮に米泉政権が発足しても、退陣に追い込める」

 パソコンの通知でニュース速報が入った。


【 NKHニュース速報:黒部首相、血を流し倒れる。銃声のような音 】


 黒部新造内閣総理大臣が、元自衛官によって暗殺されたことを彼らは知る。

「嘘でしょ!?」

「政変が起こるぞ」


     *    *


 数時間以内に、副総理兼財務大臣の浅尾太郎内閣総理大臣臨時代理は、全閣僚に帰京を命じ、閣議室に集めた。

 皆が円卓で沈痛な面持ちだ。

「暫定的に、副総理の私が閣議を主宰する。問題は選挙戦を再開するかどうかだ」

 立ち上がる者がいた。

「やりましょう!」

 米泉統一郎環境大臣だった。

「ここで政権が団結して、テロに屈しない姿勢をみせるのです! そうすれば国民感情を焚きつけ、民自党は政権を掌握できます!」

 閣議の空気は変わった。


 ……米泉環境大臣の意見により選挙戦を再開した民自党は圧倒的多数の議席を獲得。

 リーダーシップを発揮し、民自党圧勝の立役者となった米泉統一郎は、党両院議員総会にて新総裁に選出された。

 米泉内閣総理大臣は、副総理兼財務大臣に畠山正晴を法務大臣から横滑りさせ、内閣官房長官には親交の深い須田義仁を留任させた。

 クーデター政権発足か。

 ここまではA27号の思惑通りと思われたが……


       *     *


 桜祐警部補は畠山正晴副総理兼財務大臣に定時連絡をしていた。

『父さん、副総理兼財務大臣ご就任おめでとうございます』

 副総理兼財務大臣は嫌そうにため息をついた。

「何がめでたいもんか」

『CIAが黒部前総理を口封じに暗殺した以上、こちらも対抗策を』

「もう米泉の天下だ。A27号は政変に成功した。もう手遅れだ」

『父さん! 目には目を。歯には歯を。クーデターにはク……』

「言うな!」


       *     *


 赤坂の高級料亭に、米泉統一郎内閣総理大臣が到着した。

 部屋で待つのは、畠山正晴副総理兼財務大臣、小野田公現警察庁長官、稲田大成警察庁警備局長だ。

「失礼致します」

 その部屋に、女将が襖を丁寧な所作で開け、米泉統一郎内閣総理大臣が顔を見せる。

 当然、米泉は驚く。

「なぜ警察庁幹部がいるのですか」

「米泉総理大臣のクーデター計画を潰すためです」

「知りませんよ、何の話ですか」

「あれを」

 警察官僚OBの畠山正晴副総理兼財務大臣は、後輩の稲田大成警視監に、米泉のスキャンダルを持ってこさせる。

「総理の返答次第ではわしはこれをマスコミに流す」

 それは、黒部新造が調べ、千代田春が裏を取った、米軍による尖閣防衛義務の放棄の証拠書類であった。

「現職の大臣が総理大臣に脅迫ですか!」

「あんたは総理大臣にしてもらうため、尖閣諸島を投げ出し、米国の歓心を買った。絶対にやってはならん行為だとわからんのか! この売国奴が!」

「……どうしろと言うんですか」

「しばらく入院、静養をお願いする」

 鹿おどしが鳴った。

「わかりました。明日須田官房長官を内閣総理大臣臨時代理に指名し、直後に入院します」

 だがそれでは首相が米泉から須田に変わっただけで、A 27号の天下のままだ。

 かつては警察官僚でありカミソリ畠山と恐れられた畠山元警視監は、米泉内閣総理大臣を畳に背負い投げした。

 高級な和の料理と酒が床に飛散する。

「警察庁長官、救急車を呼べ! 米泉統一郎内閣総理大臣が汚職の上錯乱し、急性アルコール中毒で昏倒した! ただちに強制入院だ!」

「かしこまりました!」

 畠山は米泉を体重で押さえつけながら、

「異例だが、明日病床から副総理の私を内閣総理大臣臨時代理に指名してもらいたい」

 米泉が顔を醜く歪ませる。

「これは、クーデターだ」

「あんたに言われたくないね」

 形勢は逆転した。








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