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第5話 超能力

「実は一つ履歴書には書いていないことがあります」


 凪はまさかと思った。

 先ほどから震えている凪は先程持ってきたホットコーヒーを飲みカチカチと音を立てソーサーに戻した。


「どんなこと?」


 善弥さんは大人の余裕なのか、今から瀬良さんが言うことを見通しているのか、仕草に一ミリたりとも変化がない。


「私は超能力が使えます」


 相手を馬鹿にするとか、マウントをとり自分の力を誇示したいとかそんなプライドを纏った声はしなかった。瀬良さんが言う言葉は普通で覆われている。


「どんな超能力?」


「ものを瞬間移動させる能力です」


 純粋な目が善弥を貫く。カラコンをつけていた瞳が本物の赤い瞳に変わっていてもおかしくないほど、彼女の存在は異質なものとなり始めている。


「凪、今のは?」


 最悪だ。もう少し荒い人使いを直して欲しいものだ。


「本当です。少しも嘘をついていません」


 凪は善弥の質問に答えてすぐ立ち上がり味噌汁を作り始めた。今日の最高気温は23度と暑くも寒くもない。室内は暖房もクーラーも付いていない。瀬良もその異質さが気になり始め、凪をちらちらと横目で見ていた。


「そうか、その超能力を見せてもらうことも?」


「はい、そのつもりで来ています」


 彼女はそういうとソーサーに置かれたコーヒーフレッシュを手に持った。


 超能力は代償が伴う。代償と言っても命を奪うものは聞いたことがない。正確にはそのような人と会ったことがない。

 俺は相手が嘘をついているか、本当のことを言っているかを暴くことができる。その代償として一定時間急激な寒さに襲われてしまう。気温が35度を越えようが体が震え始める。一見大した代償ではないと思うのだが人間にとって寒さは天敵なのだ。寒いだけで考えることをやめたくなるし、動くことさえ億劫になってしまう。夏場になると暖かい飲み物を自販機で買えないし厚着もできない。一度だけ善弥さんに頼まれて外で使用したが、苦痛のあまり持っているナイフで刺してしまうとこだった。


「いきます」


 瀬良は手のひらに置いたコーヒーフレッシュを軽く握り込み1秒目を瞑った。その後、ゆっくりと握り込んだ手を開けると手には何もなく綺麗な白い手が宙にあった。


「コーヒーフレッシュはどこに?」凪が反射的に言葉を出しあたりを見回すが見つけれずにいた。


「凪さんのソーサーの上です」


 下の名前で呼ばれたことにたドキリとしたが、好意的でなくまだ名乗っていないのだと恥ずかしくなった。


 目線を下に向けると無いはずのコーヒーフレッシュがソーサーに乗っていてた。彼女が能力を使う時、自分も善弥さんも無言のまま事を見ていた。聞こえたのは外を走る車などの生活音だけであった。比較的静かな中、音を立てず物体が移動した。


「代償は?」


 自分は目の前の光景に言葉を無くしていたが善弥さんは冷静に代償について聞き始めていた。


「これです」瀬良は善弥に向けてコーヒーフレッシュを握っていた手のひらを向けた。


 手の痙攣でも無い。手の色が変わることもない。指紋もあったはず。何が変わった...


「小指の指輪か」善弥は淡々と答えコーヒを口に含んだ。


「そうです、能力を使うと身につけている物が無くなってしまいます。正確にはどこかに行きます」


 凪はそこで彼女の服装の意味に気づいた。



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