第4話 面接と未解決事件について
「ある事件か。内容を聞いても?」善弥は腕を組み偉そうに瀬良の目を見る。
「はい。それは約3年前に起きた変死事件。遺体の体内から主要臓器が綺麗に取られる事件です」
それは俺でも知っていた。日夜テレビで事件の報道がされ、他のニュースが記憶に残りづらく世間を騒がせていた。
死体は胃、腎臓、副腎、肝臓、膵臓、肺、心臓、大腸、小腸、肝臓、卵巣、精巣と人によって残っている部位もあったが多くの死体から臓器が取られていた。被害に遭った人間は男女を問わなかったが主に若い人間、中学生から成人までが多く狙われたと言う。中には小学生の遺体まで発見されていた。そして、この事件が世間に騒がれている要因は全国的に遺体が発見されていること。犯人がまだ見つかっていないこと。遺体が綺麗に残っていること。そして、未だに事件が継続して行われていることがあった。
「理由を聞いても?」
瀬良はゆっくりとコーヒーを持ち上げ一口つけたのち音を立てずソーサーにカップを置いた。
「妹がその事件の被害者になりました。それが理由です」
その言葉は背筋を凍らせ正した背骨を曲げることを許さなかった。
「そうか。わかった」善弥は顔色を変えず一言置くと凪に目線を向けた。
「次に凪だ」
「はい」凪は凍った背筋を解凍できずに善弥の質問を待った。
「隣の瀬良が言っていた事は本当か?」
その言葉に困惑を見せたのは俺よりも隣に座る瀬良さんだろう。善弥さんの言い方は俺が人の嘘を確実に見抜けると確信がある言い方だ。
「言わないとダメですか?」
「答えなければ今月のお小遣いはないと思え」
その言葉は俺の首を両手で掴み力を入れていると同義だった。しかし、答えたく無い理由もある。
凪が二、三分と沈黙を貫いていると善弥が「早く答えろ」と睨みを聞かせ言った。
「すべて本当の事を言っています」
その言葉にハッとしたのは2人の会話に困惑していた瀬良であり、今にも「どういうこと?」と問い質したい仕草をソワソワと体で表現していた。
「すみません。ベンチコートを取ってきます」凪は春には似合わない服の名前を出しながら善弥を睨みつけ一階にある自宅に走り込んだ。
「あの、どういうことですか?」
瀬良の質問に善弥は頭を書き考えを巡らせたが良い答えが導き出すことができなかった。
「あーうんーまぁ、取り敢えず気にせず面接を続けていいか?」
「わかりました...」
瀬良は先程の行動が気になりつつも善弥の目を見てしっかりと答えた。
「瀬良さん的には先程言っていた事件についてどう思う?」
「正直なところわかりません。情報源が結果しか出ていないため、警察がどのような犯人像を導いているのかも、証拠として何か、凶器などがあるのかも、わかりません。勿論、動機も」
「そうだね。犯人が単独なのか組織なのかもわからない。明らかに情報源が少なすぎるよね」
「はい」
「話わ変わるけど、三億円事件は知っている?」
「現金輸送車を狙った昔の事件ですよね」
「うん。犯人は人も殺さず、凶器で脅すこともなく綺麗に金を奪っていった。正直なところ、金が出ていないのだから奪ったのかも怪しい。消えた、と言うのが正確な表現かもしれない」
その言葉にピクリと瀬良が眉を動かした。
勿論、善弥はそのことに気が付いてたが話を続ける。
「犯人のモンタージュ写真も作られ、事件は解決されるのでは? と期待をしていた人もいただろう。大金は消えたが死ぬ人は出ていないと、楽しんで考察をしていた人もいたかもしれない」
善弥がコーヒーを流し込むと凪が春には似合わないベンチコートを羽織り瀬良の隣に震えながら座った。
「でも、事件は時効になってしまった。この事件、犯人はどのように現金を隠したと予想できる?」
「わかりません」瀬良は長考したが答えを出す事は叶わなかった。
「超能力だ」善弥は至って真面目な顔で瀬良を見た。
「現金を一瞬にして、消し去った。証拠となり得るもの出さない。もはや超能力以外あり得ないと考えるがどう思う?」
善弥さんの話は突拍子もない事だが真剣に話している。
「可能だと思います」
その言葉に驚いたのは俺だけじゃない。善弥さんも目をまん丸とし、真剣な瀬良さんの目を見ていた。