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第3話 ゴスロリの面接者・瀬良由花


 時間が過ぎるのは早く既に16時30分となり善弥さんが帰ってきた。

 何をしていたかを聞いたことはない。仕事をしていると勝手に思っておく。しかし、面接に来る人は気になった。


「面接にはどんな人が来るんですか」


「大学生の綺麗な人だ」


 善弥さんは履歴書を思い出すように答えたが大学生と容姿しか覚えてなさそうだ。

 大学生ということは最低でも三つ上になるということだ。もし、採用になったら毎日緊張しそうだ。しかも、善弥さんが綺麗と言ったってことはおそらく女性になるのだろう。もし、男性だったらお兄さんみたいで少し嬉しいかもしれない。

 そんな淡い期待を抱いていたら16時50分となり一回のインターホンが鳴った。


 未解決屋は一階が善弥さんの自宅であり、2階が事務所になっている。事務所には外に併設されている階段で登ることができ、インターホンは一階の自宅と兼用となっている。


 今の時間にインターホンが鳴るってことは面接の人だろうか。善弥さんの方を横目で見ると何やら引き出しを漁っている。


「面接の人だったら通していいですか?」


「あぁ、構わない」


 凪はインターホンへ向かい受話器をとった。インターホンを取り付けた時から変えていないのかカメラが付いておらず相手が誰なのか分からなかった。なんと言えばいいか分からず、無難なことを口にする。


「お疲れ様です」


「初めまして面接に参りました瀬良由花(せら ゆいかと申します」


 姿は見えないが丁寧な言葉に、パキリとした声音を聞いただけでいい人なのだろうと思った。

 善弥さんに面接を受けにきたと目で伝えた。目の中の言葉を理解したのか善弥さんはコーヒーを片手に面接を行うソファーに座った。


「右手にある階段を登って上の事務所に来ていただけますか」


「わかりました」


 その言葉には少し緊張が緩んだのか先ほどよりも言葉に丸みがあった。


 2階に登る階段は誰が登ってもガタだとかガタンっと音が鳴る。錆びれたかね折れ階段は登る足音を色濃く表す。足が長い善弥さんは一段飛ばしをして階段を登るため足音の数も少なく音もあまりしない。今登っている瀬良由花さんは体型が大きいのだろうか、一つ一つ聞こえる足音が自分よりも大きい気がした。


 2回ドアがノックされ善弥が「どうぞー」っときだるげに言った。


「失礼します」


 パキッとした声が聞こえドアノブが回される。立て付けが悪いのかギギギっとドアと壁が擦れる音が聞こえ瀬良が顔を二人の前に出した。夕日が窓を通して瀬良に集まり発光する。


「瀬良由花です。本日はよろしくお願いします」


 目の前に現れた人に俺は一歩後ろに下がってしまった。

 靴は黒く靴底は高い。靴紐は白くモノクロとなっている。靴下は太ももまで白く長く足は蹴ったら折れてしまいそうな細さであった。スカートはスマホの電源を消した画面のように真っ黒であり、腰からふんわりと円形を作っていた。周りにはレースが揺蕩い空中に浮いている。下から見たら未確認飛行物体と間違われても仕方がないと思えた。上の服は腰が細くなる魔法でもかかっているのだろうか。巨漢の人がつけている腕よりも細く体の柱となっている。上着の下は白く上に羽織っている服は黒い。全ての服が白と黒だけで揃えられているが、薄かったり濃かったりと色で奥行きがついていた。頭には何がついてるのか分からないが沢山ついている、手首にも、指にも、首にも。


 階段を登る足音から体型が大きいと思ったが厚底の靴が階段の重たい音を出していたと気づいたのは彼女の腰の細さも関係しているが、それよりも身長が厚底の靴を履いても163から165センチだと分かった時だった。


「凪どうした」善弥は瀬良を見て止まっている凪に声をかけた。


「ゴスロリだ」凪は小さく漏れた言葉に気付き口を閉じた。


「こちらにどうぞ」瀬良は一礼すると凪に促されるままに従い善弥と対面となるソファーに座った。


 彼女が動くたびにぎっしりとした綿菓子がなっているようで耳がくすぐったい。

 彼女が座ってすぐにホットコーヒーを用意しようと考えていたが、アイスコーヒーを出してしまい、気づいた時にはカタンとコーヒーを机に置いていた。


「ありがとうございます」


「それでは自分はこれで」


 依頼者が来た時に出す間に入ったクッキーを何枚か皿に移し中央に置いたところでドアに手をかけた。


「凪、お前も座れ」


 そう善弥さんに声をかけられた時には驚きのあまり声が出なかったが「えっ」と出そうとしたせいで舌を少し噛んでしまった。

 それにしも何で自分が面接に参加しないといけないのだろうか。仕事とはいえ仕事仲間とはならないだろう。俺はただの事務仕事をするだけだ。


「こっちじゃないぞ」善弥はニヤリと笑い瀬良の横を指で刺した。その行動を察したのか瀬良は直ぐにソファーの左手に体を動かした。


「えっ」


 間抜けな声が出ていたと思う。普段人の目を気にしないはずなのだが、今後顔を合わすことが多くなる人には見せたくない反応だった。それも、瀬良さんが採用されればなのだが。


 恥ずかしさの熱が残りながら瀬良さんの隣に座ると柑橘系の匂いがふんわりと漂ってきた。思い描く香水よりも柔らかな匂いのため柔軟剤なのか、そうでないのかは分からないが緊張がぐぐっと増す。


「取り敢えず、志望動機から聞いてもいいか?」善弥は瀬良に目線を向けた後ニヤリと凪を見る。それはお前にも答えてもらうと言うように。



「はい。志望動機は、ある事件について情報が得られる可能性が高いと考えたからです」カラーコンタクトで赤く染めた目は善弥の目を真っ直ぐ見ていた。




次回投稿は5/9、20時を予定しております。

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