27話。喝采。
※5話、11話を先に読まれると内容がわかりやすいです。
大きな街に着いた。ここでは一風変わった催しが大盛況だそうで、毎週街を上げて開催されているそうだ。
話を聞く限りだと、ミミックが使用されているらしいので行かないという選択肢は無い。楽しみだ。
「おお!やはり。あの時の御仁ではないか。」
昼の繁華街を歩いていると、恰幅の良い男に声をかけられた。以前研究に周っていた国で、鏡台ミミックを紹介した男だ。
「お久しぶりです。お元気そうですね。」
「おかげさまで。前の見せ物小屋で被害に遭った遺族から、賠償金を払えとか色々と追われる身になりまして。譲っていただいた鏡台ミミックに助けられながら、共にこの国へ渡ってきたのですよ。」
「そうですか。となると、この街で人気の催し物というのは…。」
「はい。鏡台ミミックを使用したものです。丁度、今日開催されるんですが。御仁も是非見にいらしてください。特等席を用意いたしますよっ!」
「是非お願いします。」
僕は男に案内され、街で一番大きな室内集会場に着いた。窓口では大勢の人々が、催し物を観たいが為に行列をなしている。入場料はかなり高額ではあるが、それだけの価値があるようで一番良い席は全て完売だ。
「反対!!」
「こんな狂気は廃止すべきだ!!」
会場の側で首から『反対』『廃止』の看板を首から下げて講義する集団が立っていた。額に汗を滲ませながら、必死の形相だ。
「アレらは『穏健派』とか言う一派でして。娯楽の廃止を訴えておるのです。全く、何もわかっとりません。娯楽に飢えた人々を纏めるにはコレが一番だと言うのに。ささ、参りましょう。」
最前列に案内される。これから準備があるからと深々と頭を下げる男。太陽を反射させ、会場の熱気を投影しているかのようだ。
僕は着席し、静かに周囲の人々を伺う。何度も足を運んでいるであろう者達は目が血走り、早く始めろと野次を飛ばしている。
売り子がより楽しめるようにと、特製の飲み物を勧めにきた。試しに購入して口に含んでみると、強い酒に微量の興奮剤が混入されている。観客達はそれを2杯、3杯と頼みは煽り、気分を高めている。
「会場にお越しの皆さま!お待たせしました!」
男が入場口から拡声器を手に登場すると、それまでも賑やかだった会場はより一層歓喜に沸いた。これから行われる催し物に全ての人間が興奮を抑え切れないでいる。
男が部下に声をかけると、鏡台ミミックが台車に乗せられて登場した。艶々と血色の良い内蔵器官は、以前見たより肥大している。余程良い栄養を与えられているのだろう。
「本日の執行者です。
夫の恋人から日々虐げられ、挙げ句我が子を海に突き落とし殺害された。それを夫に強く抗議したとの事。許される話ではありません。
しかし!!今回の件について、領主様は心を痛め温情をかけたいと仰られました。そして今日、執行されます。さあ!ご入場下さい!」
鎖に繋がれた布切れ一枚の1人の女性が、屈強な男達と共にゆっくりとした歩みで進んできた。
女性はミミックの前に跪かされ、逃亡しないよう繋がれた鎖を地中に打ち付けて固定される。とは言っても、女の目は虚で逃げる気力も無さそうだ。
ミミックが標的に幻覚剤を散布し始めたようで、女性はそれまで地面を見ていたのに鏡を見て声をあげた。
「ぼうや!!ああ、私のぼうや!!ああ、生きていたのね。」
徐々に溶けていく女性。涙を流しながら鏡に向かい、女性は溶け崩れた自分の右足を愛おしそうに頬擦りする。
「これからは、お母さんがずっと一緒にいるわ。」
観客達は溶けた肉塊とミミックの体液の混ざり合った臭いを嗅ぎ、狂ったように笑い声をあげている。飲み物の効果もあってか白目を剥き、涎を垂らし、手が引きちぎれんばかりに歓喜の拍手を鳴らす。
拍手喝采の中。女性の全てがミミックに吸い取られ、鎖だけが残された。
「なんだ。ここも一緒じゃないか。」
僕は立ち上がり、歓喜に渦巻く会場を後にした。ミミックは何も悪くない。利用する人間の問題だ。
「さて。次はどんなミミックに出会えるかな。」
それから12年後。穏健派により体制が変わり、ミミックを使用した処刑は禁止となった。そしてミミックは元居た嘆きの館へ戻されたそうだ。




