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25話。自己責任。



『死者のみ入島を許可する。生者は足を踏み入れるべからず。』


こんな謳い文句の離島がある。禁足地に指定されているが、様々な思惑で入島する者が後を経たないらしい。


それには、この言葉には続きがあるからだ。


『禁を犯すものには、穏やかな死を与えん』


ーーー


「村の環境保護の為、入村料をいただきます。それと、こちらの注意事項をお読みいただき同意書にサインをお願いします。」


目的の村に入るには、一般客は厳重な手続きが必要だ。村に入る案内所に向かい、項目を一読する。

要約すると。動植物の採取の禁止に、村の中心に位置する池に建つ小島は聖域で禁足地に指定されている。


僕はサインを書き、支払いを済ませて村に通じるトンネルに足を踏み入れる。まばらに人が数名が歩いているだけで、足音だけが響いて静かだ。煌々と灯りがともる道の先に、ポツリと光の出口が迎えてくれた。


トンネルを抜けると直ぐに、池の側に建つ異様に大きな病院が視界に入る。

ここの病院は、金次第で最先端の医療を受けられ、難病を患う患者の療養所も兼ねている。


病院の周囲を歩き内部を見てみるが。入院患者がのどかにベンチに座っていたり、車椅子で散歩をする子供がいたり。いたって普通の光景だ。職員の様子も違和感が無い。


裏口までまわってみると、産業廃棄物処理の車が搬出される所だった。車の振動と臭いで中身が何か大体想像がつく。長居しない方が良さそうだね。


「新患さんですか?」


搬入口を閉めようと出てきた職員が僕に声をかけてきた。無表情の中に焦りが見え、こちらの様子を伺っている。僕は側に生えている木を指差す。


「すみません。トラツグミが飛んでいくのが見えまして。直ぐに失礼します。」


「そうですか。この辺りは私有地になるので、不必要に立ち入らないで下さいね。」


警戒されているので、僕は頭を下げてその場を離れる。

目当ての小島まで行ってみようかな。病院から離れると誰も歩いていない。そもそもここは観光地として売り出していないから、当然ではあるが。


情報収集に、遠目で見えていた池の船着場に向かうと、若者3人が相談をしている。あれは観光客みたいだね。


「『死者のみ入れる島』。数々の曰くつきな場所を制覇してきている我々が行くに相応しいな。」


「あの小島。禁足地とかいって、こんなにも簡単に釣り船貸し出してんだからさ。行って良いって言ってるもんだ。」


「う〜ん。あの小島、霊的なものを感じないんよね。本当に聖域なのかなぁ。」


3人は意気揚々と船に乗り込み小島に向かっていく。僕も行ってみよう。そんなに距離もないから、水面を走っていけば良いや。


船着場から離れ、周囲を確認してから小島に向かうと。若者達の乗っていた船が一艘、雑に岸辺に置かれている。

気配を探るが、ここにミミックはいないね。以前出会った、人に触手を植え付けて共生するタイプがいるんじゃないかと踏んで来てみたんだけどな。


この様子だと、あの伝承は囮というわけだね。


『ぎぁあぁあ〜!!』


茂みの先から叫び声が響く。音を立てずに進んでみると、小島の中央辺りに仰々しい石碑が建てられていた。そして若者3人が地面にのたうち回り、彼等を見下ろすように警棒を持った防護服姿の6人が立っている。


『おい、一人死んじまった。電圧強すぎたんじゃね?』


『抵抗されるよりマシじゃねぇか。死んでも使えるんだからさ。』


『そうだけどさ。今回のは皮膚を使うんだし、早く採取しないと。』


防護服の一人が石碑の窪みを押すと、石碑が動いて地下に通じる階段が現れた。中へ若者達を引きずり運ぶと石碑が閉じられる。僕は少し待ってから石碑に近づき動かして階段を降りる。

階段を降りると湿度の高い暗闇が長く続いている。手元に明かりはないが、感覚を頼りに歩いて行くと一つの扉に辿り着いた。


先に人の気配は無い。扉を開けると、そこは安置所だった。安置されている内、5体の収納袋の中を確認してみる。それぞれが違った実験方法で亡くなっていた。

2人はかなりの激痛を伴ったようで、鬱血が目立っている。目と口ぐらい閉じてあげたら良いのに。処理中に体液が流れてしまう。

注射痕が複数あるので、死の直前に安楽死用の投薬をされている可能性はあるけど。穏やかな死とはよく言ったものだ。


「こんな辺鄙な場所に建つのに、この国で一番医療技術が発達しているのがこの理由だね。

禁足地に入るのだから、どうなっても良いって同意したようなものか。」


僕は扉に戻り遺体に向かい黙礼する。この国の医療技術の発展に貢献できたんだ。無駄死にではない。


「この村自体がミミックのようなものか。さて、次はどんなミミックに出会えるかな。」


扉を閉じて、僕は暗闇を戻った。









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