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18話。狭い世界。中編



村長の家に村人達が挙って集まり、僕の旅の話を胡座をかいたり、のんびりした様子で聞いている。

僕としては面白おかしく話しているのに、始終笑いは一切起こらなかった。おかしいな。


「……と言う訳でして。ミミックとの出会いを求めて僕は研究の旅を続けているのです。」


話し終える頃、数名の若者以外は横になり目を閉じていたり船を漕いだりしていた。仕事終わりで疲れているのに少し長話過ぎたようだ。


「貴重なお話ありがとうございました。では、みんなゆっくり休んで下さい。」


村長が手を叩いて村人達を起こすと、全員が欠伸を混えつつノロノロと帰宅していった。僕はまた地下にいるミミックに会いに行こうかな。僕の旅の話を聞いて貰いたい。喜んでくれるかな。


「…あの、少し宜しいでしょうか?」


若者の一人が僕を外に手招きしてくる。まさか、もっと聞きたいのかな。


「喜んで。」


着いていくと、村長の家から少し離れた草むらに若者が3人隠れて待っていた。


「あの。他の国では、キンキラな服着た人達が毎日仕事しないで酒や美味いものを食ったりするって聞きまして。本当ですか?」


「あー……そんな人達もいるよ。」


「やっぱり。この村はおかしいんですよ。村長は俺達が外に出るのを許してくれないんだ。

他からここに住みたいって人が来ても、よくわからない事を聞かれてさ、村長が良しとしないと住めない。きっと何か隠しているんだ。」


「どんな質問をされたか聞いた事があるかい?」


「俺覚えてるぜ!『ぜいきん』だか『にゅうこくきん』だかはらったかって聞いてた。はらわないないと住めないって。おっかねぇ。」


「おらたち、悪い『きん』持ちなんかな。怖いよぉ。旅人さんは『きん』持ってるんかね?」


「街に就職して出て行った奴らが、軒並み村に戻ってくるんだ。何で戻って来たって聞いたら『ここの方が住み易い』って言う。でもよぉ、街の方がこんな村より楽しいじゃねぇか。村長がなんかして連れ戻してるに違いねぇ。」


どうしたものか。いや、下手に触れない方が良いだろう。


「ここは住み易い村だと思うよ。」


「それによぉ。村長が酒瓶を沢山抱えてるの見た事あるんだ。俺達の見てない所で呑んだくれてるに違いねぇ。俺達をこき使って贅沢しやがって。みんなと同じ生活してるフリして騙してんだ。」


このままではミミックに危険が及ぶかもしれないので、助言しよう。


「村長はいつも酒のにおいをさせているのかい?それに、見間違いかもしれない。酒瓶ではなく、薬瓶の可能性もあるよ。決めつけはよくない。気になるなら村長に聞いてみれば良いんじゃないかい?」


「……………ちっ。何も知らない他所もんがぁ。」


4人は僕の問いに答えず黙り込んでしまった。そして、舌打ちすると去って行く。大事にならなければ良いが。


村長の家に戻り水瓶の中に入りに行くと、水瓶を綺麗にふきあげた形跡があった。そして、掃除用具と共に不用心にも蓋がどかされて、底が開いている。中に入り梯子を降りると、地下で村長がミミックを抱えて座っていた。


「誰かに見つかってはまずいんじゃありませんか?」


「ああ、貴方でしたか……そうですね。私も歳ですし、つい忘れがちになる。このところ。悲しい程に。自分を見失う時間が増えてきているのです。」


村長はミミックの蓋を皺の寄った手で優しく撫でる。


「私には子孫がおりません。そして、貴方はミミックに非常に関心を持たれている。

どうか、私の代わりにコレと生活をしてくれませんか?コレももう年寄りなんで、半年はもたないと思います。」


そう言って村長がミミックの背面を見せてくる。そこには穴が一つあいていた。腐食してきているらしい。なる程、ミミックは老化すると再生能力が劣り、消化物で腐食するのか。


「僕にここに住めと?」


「そうしていただきたい所ですが、無理強いは致しません。共に連れて行って最期まで世話をしていただきたいのです。


私は村長の座を他の者に譲り施設に行くので、コレを連れては行けないのです。

コレを置いていかねばならないのかと嘆いていた所に、貴方様が現れた。これは奇跡だ。」


村長は棚にある培養液の中で、一番古いものを2本取り出した。


「熟成されて栄養濃度が濃くなっているので。多く見積もっても一年分の栄養になります。培養液の材料や配合もお教え致しますので。どうか、コレをお願いできませんか?

私の全財産……と言っても、本当にごく僅かではありますが、貴方様にお渡しします。」


村長の目に、僕は過去の自分が重なった。今回はミミックを大切に思うこの人間の気持ちを汲もう。


「わかりました。では、ミミックの最期を看取るまでここに住みましょう。」


「おお………ありがとう、ありがとうございます。」


村長はミミックを床に置いて床に頭を擦り付け泣いた。ミミックは側でパカパカと蓋を開け閉めする。まるで、子をあやす親のような様子に僕は胸の中で不思議な感情が芽生えた。



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