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15話。お賽銭。



旅の道中。広大な田園地帯を歩いていると、あぜで敷物を広げ、食事休憩中をしている女性達に声を掛けられた。


「あらぁ!旅人さん?」


「そうです。」


「いやぁ〜。いい男だねぇ。私がもう少し若かったら放って置かないのに。」


「アンタは旦那泣かせだったからねぇ。」


「ウチの旦那に色目使ったの忘れてないからねぇ。」


前にもこんな場面に出会したな。面倒事に巻き込まれては、まだ見ぬミミックが逃げるかもしれない。立ち去ろうとすると、女性達が笑顔で手招きしてきた。


「お兄ちゃん、良かったら一緒に食べて行きなよ。」


「ご好意ありがとうございます。ですが、もう済ませているので。お心だけいただきます。」


「あら、そうかい。それならオヤツに持ってお行き。」


女性達は沢山並べられた料理の中から、手際良く握り飯を竹の皮に包んで持たせてくれた。無下にする訳にもいかず、いただく。


「あの山を抜けるのかい?変わったモンが出るかもしれないが、悪戯しなけりゃ悪さはせんからね。気をつけてなぁ。」


「ありがとうございます。では、失礼します。」


僕は深く頭を下げてから歩みを進める。

僕はこういった食事をしないので、この握り飯をどうしようかな。何処かに置けば野生動物が食べるだろうか。


山道に入り、どこか良い場所を探して歩いていると、小さな川の流れる小道に抜け出た。

小道の途中には、安全に通れますようにと願いの込められた、石造りの守り神が祀られている。寂れてはいるが屋根も手入れされており、人の手は入っているようだ。


「ここにお供えすれば良いかな。」   


守り神の側にある小ぶりな賽銭箱にお金を入れて、手間に握り飯を置く。


「無駄になりませんように。」


背を向け歩くと、背後に不思議な気配を感じる。振り返ると、カタカタと賽銭箱が動いているではないか。


「初めて見る個体だね。」


小さな賽銭箱は、握り飯ににじり寄るとパカリと口を開いた。近寄りよく見てみる。


「なる程、二重構造になっているのか。上にお金を受けて、下で食事を取るのか。それにしても………このミミック可愛いっ!!!」


小さな口で握り飯を頬張る姿が、まるで小動物かのようだ。


「細かな歯があるね。賽銭泥棒を退治しているのかい?偉いねぇ。」


思わず撫でそうになるが、食事の邪魔をしてはいけない。モグモグと美味しそうに食べる様子が可愛くて。僕はその場から動けなかった。


「………ケプゥ。」


全て食べ切り、満足した賽銭箱ミミックは体を重たそうに動かしながら定位置に戻った。僕も大満足したので、お礼に小銭を3枚入れると。


『………ペッ!』


1枚隙間からポイと返された。下のお腹が膨れ過ぎて、上の賽銭を受け取る部分が狭くなっているようだ。


「入れ過ぎたか。ごめんね。」


賽銭箱ミミックに一礼して先を行こうとしたら、既に日が傾いていた。ああ楽しかった。


「さて、次はどんなミミックに出会えるかな。」


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