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9話。温泉。



『美肌になれるミミック温泉。』


そんな謳い文句の、山奥にひっそりと佇む一軒の温泉宿。中々予約が取れなかったが、先月やっと予約がとれた。

主人がミミック好きなのか、あらゆる所にミミックが施されている。ここの主人は絶対に良い人だ。


僕は宿に着くと早々、ミミック箱のような造りをした露天風呂にゆっくり浸かり、身も心も癒されている。


「はぁ〜、いいねぇ〜。」


トロミのある湯により肌がスベスベになり、体の芯まであたたまる。なる程、人気な訳だ。

こういった贅沢を味わえるのも、旅の醍醐味。


温泉を満喫し、ミミック柄の浴衣を着て、ミミックが描かれた瓶牛乳を飲んでいると。番頭から声をかけられた。


「いかがでしたか?」


「とても良かったです。あの、この辺りに生きているミミックがいると聞きまして。会いに行きたいのですが良いでしょうか?」


「……ああ〜、はいはい。いますよ。こんな山奥に箱があったんじゃあ悪目立ちますし。人で罠にかかる者はそういやせんよ。悪戯すりゃ話は別ですが。」


「かなりいるんですか?」


「いんにゃ。ワシが子供の頃からそう増えても減ってもいませんねぇ。


古いミミック達でさぁ。ワシらにとっては宝箱なんで、大切にしているんですよ。

アンタは悪さはせんでしょうが、くれぐれも手出しせんでください。」


「勿論です。僕にとってもミミックは宝箱ですから。」


ミミックは源泉付近にいるそうで、早速向かう。近づく程に硫黄の臭いが漂い、岩には成分が付着して固まっている。川のように流れるお湯に手を入れてみた。90度くらいかな。湯煙でけぶっている。


源泉のある小さな洞窟にたどり着くと、荷物入れにちょうど良い大きさの黒い箱が6箱置いてある。これはミミックだ!

湯の花が付着し硬質化しているかと思えば、定期的に手入れをされているようだ。付近に酸で溶けた動物も複数置いてある。丁寧に管理されているのが嬉しい。


「ちょっと見せてくれるかい?」


蓋に手を掛け開けてみると、中に白く濁った液体が満ちていた。指で触れると強酸の触り心地。手を入れて中を少し触診してみると、この液体は体積の半分を占めている。


消化液とも言えないこの液体。恐らく、ミミック達は箱の底から源泉などを摂取して体内で栄養素を作り出し、廃液を上に貯めているのだろう。


腰に下げた鞄から試験管を取り出して、強酸を回収する。これはミミック達にとっては廃液でも、人々にとっては素敵な副産物。


「君達のおかげで良いお湯が楽しめているよ。ありがとう。」


成分を知ったら、もう一度温泉に入りたくなった。戻ろう。

宿に戻ると番頭さんが笑顔で迎えてくれた。


「ミミックに動物を与えているのは貴方ですか?」


「ええ。あのミミックは温泉だけで生きられます。しかし、肉類を与えることで栄養素が高まり良い入浴剤を作り出してくれる。この温泉宿の宝箱です。


さあ、今日の夕飯は温泉を使ったミミックしゃぶしゃぶです。食事処へどうぞ。」


「それは素晴らしいですね。楽しみです。」


こうして僕は宿を楽しんだ。朝食には色とりどりの野菜や肉がふんだんに挟まれたミミックサンドもいただいた。これも実に美味しかった。


お土産に、ミミック柄手拭いとミミック風風呂桶も買い。僕はミミックに身も心も癒された。


「さて、次はどんなミミックに出会えるかな。」




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