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王室のお友達案件 1

「王太子殿下、サーギス王国から緊急の書簡が届きました」

「何?」

耳慣れた国名にアッシュバルトは急いで書簡を開ける。

「……………」

無言で読み進めていくうちにデフォルトの眉間の皺が深くなっていき、読み終わると同時に深く息を吐いた。

「サーギスから、何か悪い知らせでも?」

書簡を運んできた側近が心配げに訊ねると、

「いや、文章からそう深刻そうな感じは受けないが……楽観すべきではない内容が含まれている__これは、荒れそうだな」

アルフレッドが。




「は?サーギスにドラゴン出現??」

アルフレッドが思いきり胡散臭そうに発するのをみて「やっぱりな」とアッシュバルトは心の中で嘆息する。

「そうだ。まだ数件の目撃情報だけで、被害らしい被害は出ていないらしいが」

「それっておかしくない?ドラゴンが目撃されてるのに被害がない?そんな情報噂にもなってないし、幻影かなんかじゃないの?」

「私もそう思ったが、どうやらそのドラゴンはサーギスの王城内に限って目撃されているらしい。城は城壁に囲まれているからな、城下の民の目には触れないんだろう。サーギスの王子たちも眉唾だと思ってたそうだが先日王子の一人も目にしたらしい。それで是非我が国のドラゴン騎士団の力を借りたいそうだ」

「はぁ?」

「ドラゴンに対する騎士団を有してるのは我が国だけだ。それもセイラ妃殿下がお亡くなりになり、ドラゴンが姿を現さなくなってから形骸化していたがお前も知っている通り先日数多のドラゴンが復活し我が国はそれを速やかに殲滅した。だからだろう」

「……殲滅したのほぼティアひとりで俺たちはじめ騎士団なんて連絡係しかしてなくない?」

「わかっている。そもそも被害も出ていないのに何のつもりかと思ったが、単に騎士団を率いて私たちを呼び寄せたいらしい」

「あゝ、単に自分たちは簡単にレジェンディアの王族を呼びつけられますよって諸外国へのアピール?」

「そんな所だろう、もちろん民が動揺している以上何もしないわけにはいかないから無策でいるわけではないという意思表示、そしてサーギスはレジェンディアと親しい間柄だという喧伝と牽制の為だろう、あちらの王太子の即位も近いと言われているからな。互いに即位すれば話し合うことは増えるだろうが子供の頃のように行き来は難しくなる、新婚旅行を兼ねて遊びに来るつもりで気軽にどうだという感じだった。言うほどあいつ本人は脅威には思っていないようだな、手紙の感じからすると」

「ふ〜ん。やり方は気に入らないけど義姉上と新婚旅行を兼ねてってのは悪くないんじゃない?ギルとカミラ連れて行ってくれば?」

「何を言っている?向こうが一番来て欲しいのは義妹どのだ。当たり前だろう、聖竜の乙女なのだから。是非連れて来て欲しいと書いてあるぞ」

「却下。そんな政治的思惑の絡んだとこにティアを引っ張り出すわけにいかないでしょ」

「そこまで深刻に考えなくていい、久しぶりに私たち兄弟やミリィに会いたいんだそうだ。“正式に国賓として来てくれればただ遊びに来てくれるより堂々ともてなせる“とも書いてある、ドラゴンは口実で直接私やミリィに結婚祝いとお前に婚約祝いを言いたいんだそうだ。私とミリィの結婚式にもこの騒ぎの対応で来られなかったらしい」

「そういえば来てなかったね。代理の使者が贈り物だけ届けてきたのはそういうわけ……」


アルフレッド達兄弟と、ミリディアナとサーギス王家の兄弟姉妹は幼馴染にあたる。

元々の親同士が親しかったために幼い頃から気軽に行き来(実際には距離があるがこの世界には転移魔法陣という便利なものがある)し、良い遊び仲間だった。

互いが成長するにつれ行き来は減っていったが、ミリディアナはサーギスの王女と頻繁に手紙のやり取りをしているらしい。

とくに二人いる王女のうち下の姫はまだ十二歳という年齢もあってかミリディアナを「お姉さま」と呼んで慕っている。

上の王女は二十一だが年齢に開きがあるうえ、第一王女で王位継承権も高いことから一歩引いて接しているようだと以前ミリディアナが言っていた。

もちろん一緒に遊んでいたのは二人だけでなくアルフレッドも一緒で、途中からギルバートとカミラも混ざってよく遊んだ記憶がないわけではない。

気安い間柄だったと記憶している。


だが、その嘉だけでドラゴン騎士団の招聘とは__「なぁんか、ヤな感じだなぁ」と呟きつつ、「義妹どのに伝えず独断専行はしないのだろう?」とのアッシュバルトの言葉に不承不承、アリスティアはじめ全員を一室に集めた。




「__て訳でサーギスの奴らがティア連れてきて欲しいって言ってんだけどどうする?」

「どう、と言われましても……」

私の知り合いじゃないし、と戸惑い気味のアリスティアに続き、

「私が口を出せるような問題では……」

幼少の頃ならばともかく、現在は臣下として弁えているギルバートに、

「王家同士の問題でしょ?」

とカミラが続いた。

「そんな深く考えなくていいよ、ドラゴンの事は口実でただ遊びに来いって言ってるんだからさ、幼馴染なのはカミラたちだって一緒でしょ?」

「そりゃそうだけど」

「それにドラゴン騎士団は建前としてでも連れて行かなきゃならないんだから行くとなったらギルバートの参加は決定だよ?」

(ならドラゴン騎士団御一行と王族だけで行けば良いのでは?)

と思ったのが顔に出たのかどうか、

「ティアが行きたいっていうなら行くけど、行きたくないなら俺も行かない。全部兄上に任せる」

「お前……」

「元々王太子夫妻案件でしょ?母上も好きにしろって言ってるし」

何故ここで国王である父でなく王妃の名が出てくるかというと、この国では国王より王妃の実権の方が上だからである。

対外的には知られていないが__そもそも目に見えない〝実権〟において一番強いのはアルフレッドかも知れない。

アリスティアの拉致・救出事件の際「何故お前が王太子じゃないんだ」という趣旨のカイルの質問に対し「いんだよそんなん誰がなったって」と答えていたのは案外真実だったりする。

アルフレッドは実質王子として国を守ろうとする姿勢はあれど頭の固い人間と見掛け倒しの馬鹿が嫌いである。

つまり、貴族同士の面倒な駆け引きが嫌いなので“王太子“なんて面倒な座は御免で、兄《王太子》の補佐程度ならやっても良いがそれだって王子のままか何なら家臣に降っても構わないと思っていたし、そこを踏まえたらアリスティアが冒険者になるのなら自分も同じ冒険者になっても構わないとさえ思っていた。

そうしなかったのはアリスティアが卒業式で求婚に頷いてくれたのと、どんどん各国に広まって行く“聖竜の乙女“を対外的に安全圏に置いておくためである。

ぶっちゃけアリスティアと聖竜のタッグに力で勝つのは不可能だが、権力には権力の方が話が早いこともある。


「ミリィはどうしたい?」

「わ、私は……」

__このミリディアナのひと言で、話は決まった。

























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