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第三章 プロローグ

数日と予告しておきながら一ヶ月開いてしまいました、申し訳ありません。

時間と体力が足りませんm(_ _)m

  初めて会った時はただの可愛い女の子。良くある男爵家の庶子で、愛人だった母親の死後引き取られて魔力を顕現したという以外は、ただの容姿が美しい少女だとしか思ってなかった。


充てがわれた宮に様子を見に行くたび言葉少なに黙々と作業をこなしていて、『何しにきたのか知らないけど邪魔しないでよ?』って顔を取り繕う事もなく。

『この娘は一体、なんなんだろう?義姉上の言ってた“ヒロイン“とも、ただの貴族令嬢とも違う。俺が嫌い?__いや、俺達全員を敵視している?』

そう気付いた時はもう遅くて、入学も、行儀見習いも辞退してこっちが話し合う姿勢をみせても取り合わず、さっさと城を出て行ってしまった。

王子である自分に全く興味のない少女。


急いで後を追って、見つけた時も差し伸べた手をはねのけて「あの城は私の帰る場所などではありません」と言われた。

無性に口惜しくて、そして思った。

いつかこの城を帰る場所だと言わせてやる、この手をとらせてみせると。

その後も自分の魅力と危なっかしさに無頓着で、なのに人助けが好きで、でも俺達のことは嫌いで。

何にも怯まず向かって行く空色の瞳に恋をした。

その思いは日に日に強くなっていつしかその場所は“この城”でなく“この腕の中”になった。

目が離せない彼女はどんどん美しくなって、でも王子妃になるのもこの国の魔法省に入るのも嫌らしい。


どうすればいい。

どうすれば、傍にいられる?

背中を預けられる男になればいいのか、王子をやめればいいのか?


考えて考えて、でも何が最適解かわからなくて。


そんななか彼女がセイラ妃殿下のメッセージを受け取った時に決心して宣言した。

「卒業までに彼女が俺の求婚プロポーズを受けてくれれば良し、受けてもらえなかったら継承権を放棄して彼女に付いていく」と。

兄には「馬鹿なことを言うな!お前は王子なんだぞ?!」と怒鳴られたが、「なら継承権はそのままで出奔する。彼女がギルドの冒険者になるなら俺もなるから、他国の情報は集めやすいし外界(そと)からサポートするよ。国に何かあった時はすぐ戻れるよう連絡も絶やさない。それなら良いでしょ?」と強引に納得させた。


その後、卒業式で何とか婚約者に収まることは出来た。

けれど、「その気になるまで待つ」と宣言してしまった手前迂闊に手は出せない。

婚約者の立場から直接彼女を狙う輩を牽制出来るし、棟が違うとはいえいつでも姿を見られるだけでもホッとしていた__在学中も、避けられてばかりいたから。


なのに、カイルが現れて、彼女との仲が急速に縮まっていくのを目の当たりにして、僅かばかりあった余裕が吹き飛んだ。

暴走して、傷付けて怖がらせてしまった。

本気で脅えた目を向けられているのに気付いた時は固まった__それ以降、繰り返し悪夢を見るようになった。

彼女に「大嫌い!」と泣きながら背を向けられて、置き去りにされてしまう夢。

「早く謝りに行かなきゃ」と思うのに、その夢どおり捨てられてしまったらどうしよう、婚約破棄して欲しいなんて言われたら?

いや、破棄しても番犬として付いて行く許可を得られればならばまだいいが、

「嫌なので付いて来ないで下さい」とか言われたら__、いや言われてもおかしくない___そしたら正気でいられる気がしない。

最初のプロポーズに速攻で「嫌です」と言われた事を思い出して余計に凹む。

玉砕覚悟ではあったがちゃんと本気だったのに、彼女には一顧だにして貰えなかった。


そうして俺がグズグズしてる間に肝心の彼女が拐われてしまった__女とみれば孕ます事しか考えない屑に。


許せない、彼女を俺の目の前から拐うなんて。

許さない、俺以外が彼女に触れるなんて。


まず助ける、それは確定事項でそう難しくはない__問題は、間に合うかどうかだ。

彼女がヤツに傷つけられる前に、また泣いてしまう前でないと意味がない。

間に合うだろうか?

本気で傷ついて、泣いて、「もう男なんて大っ嫌い」と修道院に行くとか言い出したらどうすればいい、手元に引き寄せておきながら守れなかった自分は__?


そんな不安を、彼女は一気に吹き飛ばしてくれた。

間一髪で間に合った俺に「助けて!」と叫んで、名前を呼んでくれて。

その後自分を拐ったクズに全力で怒りをぶつけて、そのまま俺の腕の中に飛び込んで来てくれた。

その時の幸福感を、何と言い表せばいいか。

安堵と興奮、想いが実った瞬間。

腕の中に重みを感じた瞬間、一切の音が消えて、気がついたら彼女が僕の胸にしがみついて泣いていた。

怖かった、気持ち悪かった、触れられたくなかった__と。


ごめん、あんな奴の手に落として。

ごめん、あんな奴と同じような事をしようとして怖がらせて。

ごめん、君がちゃんと背中を預けられる男にまだなれなくて。

せめて、奴を二度と君の目に触れさせないように、二度と誰かを傷つけられることがないようにするから。

だから、傍にいる事を許して?俺のお姫様。


*・゜゜・*:.。..。.:*・*:.。. .。.:*・゜゜・*  




兄王子の結婚式が済み、彼女アリスティアを自分の婚約者ものだと大々的に知らしめてからひと月、アリスティアは王子妃教育という名目(実質はドラゴン騎士団の次期総帥として)で城で過ごし、少しずつ王城での生活にも馴染んできた。


朝から晩までとはいかないが誘えば食事の席にも一緒に着いてくれることが多くなったし、午後執務の合間のティータイムなどにはミリディアナと一緒に「お疲れ様です。お茶にしませんか?」と声掛けしてくれることさえある。

同じ学内で姿さえ見せてくれなかった学生時代と較べたら天地の差であり、アルフレッドは日々の幸せを噛み締めていた。


だが、そんな平穏は突然に破られる__思いもよらない形で。











とりあえず今夜から三日間は19時に予約投稿しておきます。

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