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ヒロインは王子様の手をとりたくない

私はその足で充てがわれた部屋へとって返し、纏めてあった荷物(と言ってもトランクひとつだが)を手にして城の馬車所へと向かった。




だが、

「え?出せない?」

(今日城を辞して実家に帰るから馬車を一台出してもらえるようにって前々から頼んであったはずなのに?)

「あゝ、別の街道沿いで事故があったらしくてな。そっちに出払っちまってるんだ」

 申し訳なさそうに言う馬車所の門兵に違和感が募る。

「でも今日中に帰らないといけないんです。何とか__」お願いします、と続けようとした所で横合いから別の声が飛んだ。

「無理だって言ってるだろ?次期隊長がお前に馬車は貸すなって__「っおい!」あ!」

「………」

(なるほど、(ギルバート)の指示か。速攻でそんな指示を出すとはあの野郎、普段節穴のくせにこういう指示だけは素早いのね?全く……)

「どこまでやれば気がすむのかしら?」

ぼそっと呟いて私はその場を離れた。

“今日城を出る“と言った手前、手をこまねいているわけにもいかない。

仕方なく(嫌だったが)女官長の元まで赴き“馬車が出せない“と言われた旨を告げると、「あぁ、お前に関しては“じき使いを寄越すから部屋で待機せよ“との王太子殿下からのお言葉がありました。仕事も言いつけないようにとの事ですから仕方ありません。部屋でお待ちなさい」

(え マジか)

仕方なく元の部屋へ戻ると、そこには既に別の女の子が入っていた。


「ここはもう私の部屋よ!アンタ出ていったんでしょ!?」

「そのつもりだったんだけど、急遽馬車が出せなくなったからここで待つようにって言われたの、女官長様に」

こう言えば引くかと思ったが、

「えぇ?きいてないわよそんなこと。ここはアンタが出て行ったら私が貰っていいって言われてたんだから、もう私の部屋よ」

「ひと晩だけ、待っては貰えない?」

「嫌よ。大体、同じ男爵令嬢なのにアンタだけ一人部屋住まいなんて、ずっとムカついてたのよ!ちょっとキレイだからってちやほやされちゃってさ」

むしろ私がいつこの城でちやほやされたのか訊いてみたいが、今は目の前の事態の方が深刻だ。

だが、私が何か言う前に無情にも扉は閉められてしまった。

「いい気味よ!野宿でもすればぁ?」という言葉と共に。


私は途方に暮れて一旦庭園のベンチに座って考える。

あの男爵令嬢は確か没落貴族の娘で、行儀見習いではなく小間使いとして城にあがっている。

私と扱いが違うのは当然だと思うのだが、「つくづく私はこの城に歓迎されてないわねぇ?」と金の髪を弄びながら呟き、

(なら、尚更早く出て行かないとね?)と決意を新たにした。


馬車が使えないなら徒歩か馬しかないが、私は馬には乗れない。

(はぁ、こんなことなら練習しとけばよかった)

流石に馬車で一時間以上の道のりを徒歩では無理だ。

王都であっても夜は物騒だし、若い娘一人で歩くなど論外だ。

いっそこのベンチでひと晩過ごす?

いや、酔った兵士や下級貴族に襲われるかもしれない。

 

実際目にした事はないが、夜にこういった場所は盛り場になる。

酒の方ではない、喘ぎ声や肌と肌がぶつかり合う音、時には啜り泣きのような声__文字通り"盛って"いるのだ。

本能に従った獣達が。

そんな場所でのこのこ夜を過ごそうものなら、襲っておいて「誘ったのはそっちだろう」とでも言われかねない。

ここはそれが通じる場所だ。

(まさか、わざわざ部屋を追い出してこんな状態に追い込んだのは私を傷物にする為とか?)

そんな考えに行き着いてしまうほど、ここ二カ月ですっかり人間不信になった私はもう誰も信用など出来なかった。


 故に、だした結論はひとつ。

 (出ていこう)

 再びトランクを手にし、私は城を後にした。






一方、意気揚々とアリスティアが部屋を辞した後に残された人々は。

「……やりすぎたね」

というアルフレッドのひと言に漸く金縛りが解け(?)、

「だが、目的は達成出来ただろう。これでミリィの不安も解消されたのだから喜ぶべきかもしれん……」

と呟くが、

「馬鹿言わないで!〝大いなる災厄〟は私達が在学中に訪れる事がほぼ確定的になったのよ?!その時に超希少魔法を顕現する可能性の高い彼女がいるのといないでは大違いだわ!それをわかってて言ってるの?!」

と怒鳴りつけたのは次期騎士団隊長ギルバートの婚約者、カミラ・カルディ侯爵令嬢。

「あ〜…」

「ぐ……」

弟王子、兄王子が続けて頭を抱えた横でギルバートはただ唇を引き結ぶ。


(((そうだった)))という心中は同じだが、この件についての情報はなに分先程降りてきたばかりなので、皆脳に染み込んでいなかったのだ。

「とにかくギル、直ぐに部下に命じて彼女が馬車を使おうとしたら適当に言い繕って出さないようになさい!それから彼女の教育にあたってた人物のリスト作成!早く!」

 と婚約者に命じられて慌ててギルバートが去ると、

「まず、女官長辺りからかな?」

「そうだな、女官長を呼べ」

と双子が頷きあった。



やって来た女官長に話を聞き、部屋にいた面々は頭を抱えた。

「ええ。とにかく甘やかさないように、との殿下のお達しの通り厳しく指導致しましたわ」

「その厳しくとは、具体的にどんな事だ?」

「朝食後、同じ時間帯に食事をした者全員の分の後片付けから皿洗いまでしておくように言いつけました。働かざるもの食うべからずでしょう?マナーレッスンにはそれが終わったら行って良いと言っておきましたよ」

「「「…………」」」

終わるわけがない。

それは本来、台所勤めのメイドが何人かでやる仕事だ。

女官長は“朝の仕事以外は夜に繕いものを言いつけるくらい“だと言っていたが、その繕いものの数もまた多かった。

夜にそれを渡され、“朝までにやっておくように“ と言われたのなら寝る間もなかったろう。


他にも図書室では雑務と資料整理、図書室とその他執務室への資料運びで何往復もさせ、彼女が図書室で勉強したり本を読んだりしているところを見た事があるか?との問いには揃って“見たことがない“という答えが返ってきた。

さらには他のメイド達も丁度良いとばかりに彼女に雑用を押し付けサボってた事が発覚し、王太子達は頭を抱えた。

「何て事だ……」

「これじゃ〜ただの苛めだよね。彼女良く二カ月もったよね?」

「他人ごとみたいに言うな」

「実際他人ごとみたいなもんだと思うけどね、アッシュが溺愛する婚約者の為に仕組んだことなんだし?」

「言うな……」


確かにヒロインだという事をハナにかけて大きな顔が出来ないように、と各所に“厳しく接し、決して甘やかすな“と通達を出したのは自分だ。

だが、“何をさせても良い“などと言った覚えはない。

ないのだが、同じ事だ。

彼女は数々の仕打ちに耐えかね、学園入学まで知らないうちに取り下げ、こちらとの縁を切ろうとしている。


 それは困る。


彼女が学園生活中に発動する希少魔法は、この国にとって重要な意味を持つ。

とにかく早々に謝罪をし、機嫌をとって学園へ入学してもらわなければ。


そう思って彼女の部屋に使いをやると、

「あの子ならもう出てったわ。この部屋はわたしがもらったの」

と別の娘が言う。

驚いて女官長に聞くと、「今日中に出て行くと言っていたが、殿下がたが使いをやるから部屋で待つようにという伝言はきちんと伝えた、言われた通り仕事も言い付けてない」との返答があり、ますます王太子達は混乱した。


極めつけは馬車所に確認したところ言われた通り追い返したがその際、

「どこまでやれば気がすむのか?」

という旨の発言をしていたいう。


ますます不味い。


だが何といっても美貌の彼女は目立つ。

城中に聞き回ったところ、

「ああ、あの子なら出て行きましたよ。昼前だったかな?この通用門から。今日もお使いかい?てきいたらうぅん、もう実家に帰るのって言うから。狙ってたヤツ多かったんスけどねぇ。馬車を借りなかったのか、てきいたら私みたいな者に貸す馬車はないって言われたって。ちょっとヒドいっすよねー。あの子可愛いし良くお使いに出されてたけど俺たち門番にもいつもお疲れ様ですって挨拶してくれるいいコだったのに。とにかく充てがわれてた部屋ももう次の娘が入ってお前のいる場所はないって言われちゃったから帰るしかないって。もう会う事もないと思うけどお元気でって挨拶されましたよ」

との報告をうけ絶句した。


「そんな事までさせられてたのか……」

そのせいで門番には完全に小間使いとして認識されていた。

更にはその門番にもう会う事もない、と告げたという事は。

二度とこの城へ来るつもりはない、という意味だ。


「捜索隊を出せっ!」王太子は即座に命じた。




当の本人(アリスティア)は捜索されてるとは夢にも思わず、宿屋の一室で疲れた足を休めていた。

昼前から歩き出して、昼過ぎにカフェで休みながら食事を取り、辺りが暗くなり始めると同時に宿探しを始めて、極めて全うな商売をしてるであろう女将さんの仕切る宿に一室を取った。

意地だけで夜通し歩き続けて身を滅ぼすほど愚かではない。

この辺りの地図は頭に入っているし、ここらへんに宿や店があるのを承知で、元々一泊かけて歩いて帰るつもりで出たのだ。

あれだけ働かされて給金などびた一文貰っていないが、元々実家は裕福である。

手持ちの荷物にも帰る旨を告げた手紙の返事にも、お小遣いは添えられていた。それに自分は下町育ちだ、全うな宿とそうでない宿の区別くらいつく。


自分はあの人たちみたいに温室育ちではないのだから。

仲良く出来ると思っていた人達にあそこまで冷たくされたのはショックではあったが元、々会ったばかりの他人なのだ。

これ以上気にするのはよそう。


そう思っていたのに、いきなり宿の階下が騒がしくなり、やがて私の部屋のドアがけたたましくノックされた。

(え?まさか野盗?!)

咄嗟に身構えたががきこえてきたのは、

「アリスティア嬢!いるか?!」

 と叫ぶアルフレッド王子の声だった。

「…………」



正直足も疲れているし無視したかったが、王子が相手ではそうもいかない。

(宿にも迷惑だしね、コレだから温室育ちは)

仕方なくドアを細く開け、

「__まだ私に何か?」

と迷惑そうな表情を隠そうともせず尋ねると、

「メイデン嬢!無礼であろう!」

というギルバートの罵声が煩かったので再びドアを閉めたくなった。

(五月蝿い)

この騎士(コイツ)、絶対私のこと嫌いだろう私も嫌いだムカつく。

あんた達は馬とか馬車とか魔法だろうけど、こっちは徒歩だっつの。

という罵声を堪えるアリスティアに、

「良い。黙れギルバート。今の場合こっちが悪い。淑女を尋ねる時間ではない__無事で良かった」

心底ホッとした様子に見えるが私の心は動かない。

(何しにきたんだ?)としか思わない。


「すまない。君がどんな扱いを受けてたか調査してるうちに君は城を出て行ってしまって__、しかも徒歩で。“夜は王都でも危ないのに何て無謀な“と思ってね。ちゃんと宿を取ってるとは思わなかった」

「わざわざそれを確認に?」

「面白い事言うね」

(どこが?)

「まあ、詳しい話はあとだ。とにかく一旦城へ戻ろう」

と延ばされる手をとる気はさらさらない。


「何を言ってるんです?あのお城は、私の帰る場所などではございません」

あの城は王子たち(コイツら)にとっては家だろうが私には違う。

私が帰るべきなのはこの人たちがバカにした田舎の男爵家なのだから。




そう固辞したものの、結局私は城へ連れ戻された__というか、運ばれた。

あくまで手を取らず、城へは行かないと告げる私をアルフレッド王子がいきなり抱き上げて階段を降りようとしたのだ。

「おろして下さい!」

「却下。ここで押し問答してるより、こうした方が早い」

「私は物ではありません!」

「荷物みたいに扱ってはいないつもりだけど?」

確かに格好だけはお姫様抱っこだが、本人の意思をまるっと無視している事には変わりない。


 が、


勝てる状況でもない。

「……わかりましたからおろして下さい。まだ部屋に荷物があるんです」

「ギルバート、彼女の荷物を」

「っ!知らない男性に自分の荷物を任せろと?!」

 トランクひとつの状態ならともかく、宿に着いてから中身は広げてしまっている。

それを初対面同然のしかも男性に詰め直させるなんてありえない。

流石にそこは思い当たったらしく、

「っすまなかった、扉の外で待つ」

と部屋の中へ私をおろし、扉を閉めた。

(……このまま逃亡出来ないかな……窓からとか)

と一瞬考えるが、

(無理だな、リスクが高すぎる)

と諦めて私は荷物を詰め直した。

物凄く腹立たしい気分で。


(やっとここまで来たのに!この人たち、何がしたいの?!)

「お待たせしました」

とトランクを手に棒読みで部屋から出ると空かさず荷物をギルバートが、アルフレッドが再び私を抱き上げる。

「なっ……?!」

「あの後この街まで歩いてきたんならもう足限界でしょ?実際今部屋から出てくる時だって足ガクガクしてたじゃん?」

(気付かれてた……)このチャラ王子に。

「無理して階段降りさせるなんて淑女(レディ)に対してする事じゃない」

「面白い冗談ですね」

あの城で淑女扱いなんか一遍たりとも受けたことがない。

「……そもそも行きたくないんですが?」

この階段をおりて宿を出たい訳でもない。

貴様ら、いやあなたがたが来なければ、無理させた足をゆっくり休められた筈なんですけどね?

「こういう扱いは嫌い?」

「状況と相手によります」

「っは〜、手厳しいなあ」

なんてやり取りをしながら彼が乗ってきたであろう城行きの馬車に乗せられた。

ギルバートは元々馬で来ていたみたいだが、

「僕と馬車で二人きりは嫌だろうから」

と王子も馬に跨った。


ここまでされてはどうしようもない。

王族用の馬車の揺れに疲れきった体は眠気を感じるが眠りはしない。

寝てる間にどこに連れていかれるかわかったものではない。

そもそも城に着いたところでどうしようというのか?


半刻ほど走った馬車が止まり、

「着いたよ。お姫様」

と王子が差し出す手を丁重に断って降りたすぐ先には王太子はじめ例の面子全員が揃っていた。

何故かアレックスを除いて、だ。

目の前に立った王太子が神妙な面持ちで、

「済まなかった。数々の非礼、改めてお詫びする。もう一度、話を聞いてもらえないだろうか……?」

聞きたくないし、正直顔も見ていたくはなかったが、逃げるだけの力もない。

仕方なく、私は頷いた。





はあ。

漸くこの忌々しい城から出て帰れると思ったのに、まさかまたこの王太子の執務室とやらでこの面子と対峙する事になろうとは。

もうこの人達の自分に対する評価や機嫌など心底どうでも良くなっている私は隠す事なくため息を吐いた。

ここに来て初めてそれは丁寧にソファにエスコートされ良い香りのお茶と菓子まで出されるが、それには目もくれず私は話を促す。

「それで、お話とは?」

「まず、誤解を解きたい。こちらとしては本当に学習環境を提供するつもりで呼んだんだ」

「"つもり"だった事は理解しました、それで?」

そういうの、絵に書いた餅っていうんですよ?

「っいくら何でも無礼だろうっ!」

「アンタは黙ってなさい!」

五月蝿いギルバートの足をカルディ侯爵令嬢が踏んづける。

それにも驚いたが、それで大人しくなるギルバートにもっと驚いた。

なるほど、この俺様騎士も婚約者には弱いらしい。

そんな二人のやり取りには慣れているのか、王太子は神妙な顔をこちらに向けたまま再度謝罪してきた。


「本当に済まない。こちらが至らなかったばかりに色々と不快な思いをさせてしまった」

(不快なのは今もだっつの、そもそもなんなんだこの茶番は?)

「それはどれに対する詫びですか?

大量の雑用を押し付けて更にそれをこなしきれない私を廊下で待ち伏せては嫌味を言った事ですか、

それとも事故があったと嘘を付いてまで私には馬車を貸すなと言いつけた事でしょうか、

ついでにその上で私が元いた部屋には別の子を住まわせて私が野宿しなければいけないような状況に追い込んだ事でしょうか?」

並べ立てるとぐ、と目の前の方々が黙り、アルフレッドが口を開く。

「__これは明日に持ち越した方が良さそうだね」

(はぁ!?本当に詫びる気持ちがあるんなら今すぐ終わらすべきでしょうが!)

「だってさー、わかってる?この娘あの後徒歩でジタンの町まで歩いてってるんだよ?馬車でも三十分はかかる。普通の貴族の令嬢の脚で行ける距離じゃないよ」

悪かったですね普通じゃなくて。

「相当無理したと思っていい。それをこちらの都合で連れ戻したんだから先ずは休息させるべきじゃない?」

アルフレッドの言葉に、一同がはっとなる。

「尤もだな。すぐ客室を用意させよう」

「結構です!その"詫びたい"という気持ちが真実ならば話とやらを手短かに終わらせてすぐにここから一番近い宿まで送って下さいませ!」

「何故そこまで?」

心底わからない、という表情(かお)の王太子にどうしようもなく苛立ちが募り、気が付けば声をあげていた。

「ここに私が安眠出来る要素なんか一つもないからです!夜遅くまであれこれ言いつけられていた私が渡り廊下や庭園を横切らなければならない時、柱の影や茂みから伸びてきた手にいきなり暗がりに引きずり込まれそうなことになった事が何回あったと思ってるんです?!城住まいの方には常識なのかもしれませんが私は真っ平です!」


突きつけられた言葉に衝撃がはしる。

「!!!!!」

なるほど。

だからか。

という男女別れての目配せの後、いち早く立ち直ったのはカミラだった。

「なら、私のベッドを一晩貸すわ」

「は?」

「私もこの城の客室に泊まってるの、ミリィもだけど。女性が泊まるのに必要なものはひと通り揃ってるから、好きに使ってもらって構わない。部屋仕えの者にもよく言っておく。このまま貴女を部屋に案内して私は必要な物だけ持ってミリィの部屋に行って泊めてもらう事にする。元々私達が泊まってるエリアは一部の人間しか出入り出来ないし身の安全は保証するわ。貴女はそこでゆっくり休んで、話は明日。それでどうかしら?」

「何故……?」

そこまでして話がしたいのか。

 

わからない。

 

わからないが、(ここ)から出してくれる気はなさそうだ。

体力も限界に近いし、自力で逃げるには無理がある。

「わかりました。では一晩だけお借りします」

だが、

「ありがとう。何か欲しい物はある?食事は?」

これが罠でないという保証もない。

「いいえ。ただ、部屋に案内していただく際に井戸に寄っていただきたいのですが」

 出された物をそのまま口にする気には正直なれない。

「わかったわ」

カミラは深く頷いた。










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