トラブルの根源はどちらちらかといえばそちらでは?
プロローグの前振り。
本日は夏期休暇が終わり中期が始まってすぐの野外授業日。
学園の敷地内ではあるが、学舎からは大分離れた森の中に男女混合四人一組で、配られたヒントを元に効率良く魔法を使ってクリアポイントに到着すれば合格、というオリエンテーリングタイプの授業だった。
それ自体は別に問題ない。
問題はチーム分けだった。
「チーム分けを発表する。今回はそうだな、名前のアルファベット順だ。アリスティア・メイデン、アレックス・ランバート、アルフレッドー…」
__はいィ?!
仰天する私に構わず、続いて呼ばれた名前はアッシュバルト。
あ゛ー確かに。
全員Aから始まりますねっ!これならカミラ様やミリディアナ様と一緒は絶対無理ですねっ?!
て・いうかこの四人でって何の罰ゲームですか先生っ!
狂犬が付いて来ないだけマシですがっっ!
(そういえばあのゲーム内でヒロインが"今日は授業の一環で森の中で魔獣に遭遇した際にグループでどう上手く切り抜けるか"を競う授業があって攻略対象と一緒のグループになった。そのプログラムを通して少しだけあの方たちに近づけた気がする。嬉しい“的な呟きをする場面があったな。あれ、これのことか……イベントでなかったのはヒロインの名前が自由入力だから?いや、でもー…)
「せ、先生……」
それでもさすがに男性三人と私一人はないだろうとそろそろと声を発したが、
「ん?全員女子ならヒントを多く出すなどハンデを与えるがこのグループには必要ないだろう、全員成績上位者だ」
__そういう問題ではなくてですねっ!
いや二人一組でこの中の誰かと組まされるよりはましか?マシなのか?
毎回こんなグループ分けなら対策が必要だが、この先生の組ませ方は本当にランダムでそれこそ成績順だったり、その時たまたま近くに立ってた者同士など、本当にその場の思いつきでやってる感じだし。
名前のアルファベッド順なんてこと毎回はないだろうけど。
(わかってたら理由付けて休んだのに、失敗した)
と心中で毒づく私に、
「よろしくね、メイデン嬢」
とアルフレッドがいつもの笑顔で声をかけてくる。
「よ、よろしくお願いします」
あゝ周囲の視線が痛い。
そんなに羨ましいなら変わって欲しい、名前は交換出来ないけど。
「だいじょーぶ。これでも鍛えてるから頼ってくれていいよ?ああ でも何においても優秀な君なら先頭きって進む方がいいのかな?」
「まあ。とんでもない、私は皆様の足手まといにならないよう後ろからついていかせていただきますわ」
「学園内でも飛び抜けて優秀な君の台詞とは思えないけどね?」
「過分な評価痛み入りますわ殿下」
〝あはは〟とか〝うふふ〟とかが背景に書きこまれそうなにこやかな会話であるのに何やらどす黒い空気が渦巻いてるのに何人の人間が気付いたろうか、近くにいた(弟のこの気質によく慣れてるはずの)王太子さえ呑まれて黙っていた。
そしてその顔色も弱冠青かった。
そんな空気のまま出発した彼らだったが、思いのほか行程は順調だった。
何故なら叩く無駄口がない、というか互いに必要なこと以外発しないので進みが速かったのだ。
「なーんか、期待外れかもね」
「油断は禁物だぞ」
「だーってさあ、いくら授業の一環たって雑魚すぎじゃない?」
確かに進路妨害に出て来るのは小さな魔獣レベルなので倒すのが簡単なのだ。
尤もそれはこの面子が優秀だからであって魔法攻撃力が弱いグループならば苦戦するだろう。
そんな道中、いきなりシュー、という耳障りな音がきこえて全員がぴたりと脚を止める。
場に一気に緊張感が走り、同時にざわりとおぞましい気配を感じ周囲を見回すと、“ガサリ“という茂みを掻き分ける音と共に音の主が姿を現した。
それは体長が十メートル、胴体は下に向かうにつれて細くなってはいるが、頭の部分は幅七十センチはありそうな蛇だった。
絵面からすると笛を吹くと壺から出てくるタイプの蛇の巨大版という感じだろうか。
シューという音の正体はこいつの舌だ。
(あれ、色からして絶対毒持ってるよね?)
それに、
「どう見ても先生が実地授業用に放ったものじゃないな」
と呟く王太子に(ですよねー)と心中で返すアリスティアも瞳は蛇から離さない。
大きさもさることながら目もギラギラ光ってるし、毒持ちという事は見かけ倒しでもない。
それにおそらく、純粋に生息してる生き物でもない。
だとしたら思いつくのは、
「キメラ……?」
この世界には魔法が溢れていて魔獣も普通にいる。
魔法大国であるから、魔獣=敵ではない。
魔獣も動物と同じで人に慣れてパートナーになる(魔女と黒猫みたいな感じで)物もいれば害獣として人に殲滅される物もいる。
その辺は普通の動物と一緒だ。違うのは魔力持ちかどうかでこれは、ぱっと見区別が付きづらい。
魔獣も動物も、同族同士でしか番わないものもいれば異種間でも全く気にしないものもいるからだ。
だから人間の認識では普通の動物かと思えば魔獣だったりすることがある。
異種間交配が進みすぎて、見ただけでは魔獣と動物の区別がつかなくなっているのだ。
だが、そうした理由でなくこちらが思いもよらない魔獣が被害をもたらす事もある。
魔術師が人的に魔獣を掛け合わせ作り出す魔獣、つまり合成生物だ。
そんな風に魔獣を生み出すのは勿論違法だ。
だが自然種か違法合成かを明確に分ける基準はない。
それ故野放しになってるのが実情である。
とはいえ、生徒の実習中に魔法学園の敷地内にこんなものがいるはずがない。
(どう考えても犯罪、というかこの面子で思い浮かぶものといったら__キメラによる暗殺?)
双子の王子もその可能性は真っ先に思い至ったらしく、
「僕らで殲滅する。メイデン嬢、下がって。アレックス、彼女の保護を頼む」
と王子二人が剣を構え、
「はい」
神妙に頷き、私を庇うように剣を構えて前に立つアレックスはそれなりにさまになってはいた。
なってはいたが次の瞬間、
「うわぁっ?!」
と頓狂な叫び声をあげた。
アレックスの目の前にもう一体、大きさこそ最初のやつの半分だが頭が二つ、双頭の蛇(というかコブラ?)がにゅ、と出て来たのだ。
「アレックス、倒せるか?」
「御意!」
と剣を構えた刹那ぴゅ、と蛇の口から何かが放たれた。
「っ?!」
アレックスは手にした剣でそれをはたき落としつつ、
「此奴、毒針を吐く様です!殿下がたお気をつけー…」
下さい、までは言えなかった。
毒針は避けたが蛇の胴体が速い動作で彼に巻き付いたからだ、剣を持ってる右腕ごと。
アレックスは当然魔法を使って脱け出そうとしたが、詠唱する前に蛇の胴体に締め上げられてオチてしまった。
(うわぁ。これ、ゲームなら王子様が助けてくれるとこなんだろうけど、ゲームじゃないからなぁ…__自分でやらないと!)
私はす、とポケットの中の目的のものに手を伸ばしながら静かにアレックスに巻きついた蛇と対峙した。
遠見を発動しているので王子達の様子はわかる。
二人がかりで苦戦している。
(こっちどころじゃなさそうよね、あれ)
私は手にした札を四枚まとめて双頭の蛇の目を狙って投げた。
狙い違わずカードは蛇の目にヒットした。
(よし!!!)
シャーッ…!と蛇が不快な声で足掻くのに王子達が反応して目を丸くしている。
(__こっちに反応しなくていいからでかいのそっちに集中して下さい!)
目を潰したから毒針は狙って吐けないだろうけど、めったやたらに周囲に吐きまくる可能性はある)
私は距離を保ったまま様子を見る。
やはり潰された目の仕返し とばかりに毒針を放っていたが急遽、ぐるん!と鎌首を自分が絡みついている獲物にもたげた。
(あ、不味い!)
攻略はどうでもいいが目の前で死なれたら寝覚めが悪い。
私は再度カードを放ち、それを追うように蛇に近づくと、蛇の口の中に持っていた玉(自己防衛の為の魔法玉)を放り込む。
(これ、一個しか持ってないんだからちゃんと効いてよね!?)
玉は蛇の口の中でバチバチと光って蛇の口内を電気ショック状態にした。
(もしまた暗がりに引きずりこまれることとかあったら使ってやろうと思ってたアイテムなんだけど)
電気ウナギを作ろうと思ったわけでは断じてないのだが、『ギャ!!』といちいち放つ音が不快な蛇は悶絶した。
(よし!片方が感電したら片割れもちゃんと止まった!良かった!)
その隙にずるずるとアレックスを引きずり出して蛇から離す。
いつまた蛇が起きるかわからないからだ。
そんなさまを間の抜けた顔で見ていたアッシュバルトに、
「アッシュ!目を逸らすな!」
「「!!」」
アルフレッドの叫びとコブラもどきがシュッと襲いかかるのは同時だった。
それを目にした私も手早く残りのカードを投げた。的はでかいが距離がある。
そしてあの図体の割に動きは速いので一枚だけ目を掠めたが残りは空を切った。
一瞬コブラもどきの動きが鈍ったところにアルフレッドが渾身の一撃を叩き込み、「アッシュ!」
アルフレッドの合図にすかさず王太子が止めを刺す。
(さすが双子、息はぴったりね)
などと感心していたが、
「ありがとう、メイデン嬢助かった」
とアルフレッドが息をつくのとは対象的に王太子は不審げに、
「随分良い手際だったな。__まさかこうなることを知っていたのか?」
__何だと?危険だったのは私も同じだ。
むしろ、帯剣してない私が一番危険だった気がするのだが?
「どういう意味です?」
私は表情を変えずに言う。
「言葉通りの意味だ。魔獣が出てきたら悲鳴をあげて逃げるのが普通だ。特に君のような(見た目)かよわい女性は」
「逃げてたら全員助からなかった、というより(見かけ倒しの)どなたにも守ってもらえない私は死んでいたのでは?」
「私達が君の命を狙ったと?」
「いいえ?自分の身を守っただけなのに何故私は責められているのか疑問に思っております」
「ちょっと、アッシュ?」
「黙っていろ アルフレッド。お前は妙だと思わないのか?」
「こんなのが授業中出てきた事は妙だと思ってるよ?__けどメイデン嬢の行動は別に奇妙じゃない、元々危機回避能力の実践授業で 、彼女は一切気を抜いてなかった。それだけだよ」
「それだけだと?」
王太子が険しい顔で責めるように言う。
「そうだよ。ごめん、メイデン嬢このことはまた、」
気遣わしげに言うアルフレッドに王太子が、
「何故お前が謝る?大体ー「全くですね」ー何?」
王太子の言葉に私が被せたので王太子もアルフレッドも怪訝そうな顔になる。
「何故(暴言吐いてんのは兄のほうなのに)殿下が謝るのですか?以前から思ってたんですがアルフレッド殿下、何故貴方は他の方の失言に対し真っ先に謝るのですか?「!」「っ?!」」
(ああもう、)
「王太子殿下におかれては、何かある度に私を疑わずにはいられないのですね」
(ダメだ、このひと)
これに対して双子王子が何か発する前に、先生がたが駆けつけてきて当然だが大騒ぎになった。
その最中、私は担当の先生に「折り入って、お話したい事がございますと告げた。
その日の放課後、生徒会室にはいつもの五名が揃っていた。
蛇のショックが抜けないアレックスはまだ保健室だ。
そしてやはり彼女は怪しい、こちらに恨みを持って狙っているのではないか?などとアッシュバルトが言い出し、アルフレッドがそんな事はない、なら自分達をわざわざ助けなかった筈だし動機もないと応酬した為紛糾していた。
兄弟の議論がひと息ついたところでカミラが呟く。
「私も命は狙ってないと思うわ」
「何故そう言いきれる?」
「だって万が一狙ってたとしてやり方がおかしいじゃない。あの先生のグループ分けはランダム過ぎて読めないし、」
確かにそうだ。例え読めていたとしても、イニシャル順で偏りすぎればじゃあ一名どこそこのチームと交換、などということも普通にあるし今日だってそれはあったのだ。
「おまけに出発する場所や時間だってランダムに分けられたでしょう?決まった時間に必ず目的の場所にいるなんて予測は不可能だわ。その上時間差で出発した他のグループと中でかち合う可能性だってある。そもそもそんな場に居合わせてひとりだけ生き残ったら自分が怪しいって言ってるようなもんじゃない」
「っ、それは!」
詰まったアッシュバルトが反論を捻り出す前に、
「全くもってその通りだな」
と生徒会長が会話に入って来る。いつの間に来たのだろう。
吃驚して固まる五人に、
「ああ失礼。急いでいたのでノックを忘れてしまった」
と開いたドアをコンコン、とやる。
「…………ノックの意味あるのかそれ?」と突っ込む勇気のある者はここにはいなかった。
「会長、急ぎとは?」
一番先に立ち直ったのはアルフレッドだった。
会長はアルフレッドの質問には答えず、
「アッシュバルト。君はあの場で真っ先にメイデン嬢を疑ってくってかかったそうだが本当か?」
「食ってかかったつもりはありません。〝こうなる事を知っていたのか〟と訊いただけです」
「だけ、ねぇ…、君は、いや君たちならどうだ?」
「「「「「?」」」」」
「授業中いきなり魔獣に襲われ、何とか逃れたものの一緒にその場を切り抜けた相手に〝お前がやったのか〟と詰問されたらどう思う」
「むかつきますね」
間髪入れずにアルフレッドが言う。
「だろうね。私もそう思う」
少し前の個別指導室。
私は今回の授業の責任者でもある先生とマダム・ラッセルに話をしていた。
個室に男性教師と二人は不味いのと、いちいち複数の先生に説明するのは面倒だからだ。
私はあの時の状況の説明に加えて「王太子殿下におかれてはどうしても私が怪しくてならないらしいのです。いくら私がそんな事をしていないしするつもりもない、と言ったところで無駄です。あの方にとって私はそういう存在なのです。いくら只のアクシデントであってもこんな事が続けばいつかは謂れもない罪を着せられ追放、私だけならばまだしも父であるメイデン男爵や領民達にもその塁が及ぶやも知れません。ですから」
「〝退学させていただきます〟だそうだよ、彼女は自主退学を希望してきた」
「「「「「!!」」」」」
驚愕がはしる中、アルフレッドが舌打ちする。
(何かやるだろうとは思ったけど……!)
「事がことだけに担当教師だけでどうにかなるものでもない。学園長を通してから後日、と先生がたも言ったそうだがメイデン嬢はさっさと単独で学長室まで退学届けを提出しに行ってしまったよ」
(__早っ!)
「それはー…、不味いですね」
くらくらする頭に手を当ててアルフレッドが言った。
「不味いどころじゃない。あの魔獣は先生がたが張った結界を破り侵入した形跡がみつかったそうだ。当然、学園の外側からだ。内部にいる者の犯行ではない。詳しくは調査中だが……」
「それではメイデン嬢は__」
ハッとしたように言うギルバートに、
「無実だ、というより事実無根だろう」
会長がさもありなん、という風に頷く。
「ですが、ならば彼女__メイデン嬢は何故あんなに鮮やかに対処出来たのです?」
「……彼女がなんで〝魔法札〟のような装備をしていたかという事なら答えよう。今年メイデン男爵領は害獣被害が酷かったのを知っているか?」
「?__いえ」
「僕は知ってます」(夏期休暇中に行った時、そんな話をしていた)
「〝魔法札〟に魔力を籠めて害獣の目などを狙い、そこで怯んだ隙にハンターが害獣を狩る。そういう使い方を夏期休暇中思い付いて実践していたらしい。最初は小さな害獣、徐々に大きな獲物に移行してったそうだ。領民も最初は領主の娘それも貴族のご令嬢が害獣退治に加わるなんてと思ったらしいが、試しに手伝ってもらったらめざましい成果をあげたそうだ。夏期休暇中は自分で馬を駆ってあちこち駆けずりまわっては退治してまわっていたそうだ」
「え、彼女は馬には乗れなかったはず__」
乗れるなら行儀見習いのときも馬でさっさと帰ってしまっていたはずだ。
「去年の今頃は乗れなかったらしい。入学する少し前から、入学してからは週末や放課後に許可を取って練習していたらしい。今はそれは鮮やかに乗りこなすそうだよ?」
「「「「「……………」」」」」
入学より少し前。時期的には、自分達がやらかしたすぐ後。
「と、いう訳で疑惑は晴れたか?」
「はい……」
放心したように言う兄に、
「僕は元々疑惑なんて持ってません」
とアルフレッドが被せる。
「どちらにしろ君たちの出番はない。彼女を慕う生徒は多いし私も彼女に辞めて欲しくない。学園長はじめどうにか退学を思い留まってくれるよう説得するつもりだが、君達は加わるな」
そう言われ、返す言葉がない。
「アッシュバルト、私が卒業した後は君を生徒会長に指名するつもりだったが__考えなおす必要があるかもしれない。そこは覚えておいてくれ」
アッシュバルトはそう言って立ち去る生徒会長に返す言葉もなく、凍ったように立ち竦んでいた。
(アッタマきた……!何アレ何なの突如登場したキメラまで私のせい?!王太子の命なんて誰が狙うか……!私になんの得があるってのよ?!)
てか、アイツが狙われたんなら私、巻き込まれただけじゃね?
あの時取り出した〝魔法札〟、見た目は普通のトランプと何ら変わりはない。
だが、これは〝魔法耐性〟のある材料で精製されていて魔力を籠める事が出来る。
普通に魔法アイテムショップで入手可能で、コインやアクセなど色々ある。
私が以前持っていたペンダント(城で使ってたのは魔力が尽きて壊れてしまったので今は違う物を付けている)も同種のものだ。
私は帯剣(基本彼らは一部の授業を除き帯剣を許されているがこれも特例に限られる)出来ないし、けれど準備はしておくべきだと思ったからだ。
因みになんでトランプかといったら軽くて薄くてどこにでも忍ばせ易いし、前世で好きだった漫画の主人公がシュシュッと投げて妖魔をやっつけてたのが格好良くて、それに憧れてのことでもある。
(だって、カッコいいじゃない?)
勿論魔力を籠めても的に当てるのはそれなりに練習も苦労もしたし時間もかかった。
私がそこまで実戦での魔力行使を急いだのは卒業後ギルドに入る為だ。
ギルドに入るには、実力さえあればいい。
犯罪歴などがあれば勿論出入り出来る場所や依頼も限定されるが、そういう縛りさえなければ実力次第でいくらでも上に行ける。
ゲームで言ういわゆるランクアップだが、当然例のゲームには絡んでないし何より魔法省では所謂この国の子飼いで終わり。
この国の王立魔法学園を卒業後、他国の魔法省入りは無理だ。
だから、馬に乗れるようになった。魔獣を狩れるようになりたかったから。
最初は小さな害獣、だんだん大きな害獣を相手にするようになって、時折出る魔獣クラスまで撃退出来るようになった。
まあ、トドメはまだ自分じゃ無理だけど。
てーか、
王子サマだってんなら、
メインキャラだってんなら、
お前が自分でやれっっ!!
(人を偉そうに疑ってる場合か、あの時私とアルフレッドの加勢なかったらアンタ今頃コブラもどきの毒で死んでるわ!)
と心中で罵りつつ、退学届を出し、さっさと荷物をまとめて領地へ帰ろうとしたが父への連絡も荷物を纏めるのも待て、と言われとりあえず寮の部屋へ戻されたものの私は部屋の中をぐるぐる(走れるほど広くはないので)しながらブツブツと悪態をついていた。
そこへ、ノックの音が響き、
「アリスティア様?ナタリーです」
私はドアを開け、
「ミセス・ナタリー、何か?」
「王宮から迎えの馬車と勅使が来ているの……その、今、この寮の前に」
「__は?」
「国王陛下と王妃様が貴女と内密にお話をしたい事があるとお呼びなのよ」