70.1000万ポイント
スキルロールを選んで修得するのに、本当に半日程度の時間がかかってしまった。それだけに、充実感はひとしおだ。
レオはまずカリスマを発動させて、イルザとリタから修得できるスキルの一部のレベルを上げた。さらに探索系スキルもレベルを上げる。それから魔力量を底上げするための基礎スキルと、習得済みの戦闘スキルのレベル上げ。新規取得スキルはなし。
イルザは、今までポイントを割いてこなかった補助や治癒魔法を取得した。さらに、戦闘系の技スキルに多くポイントを割り振る。イルザの場合、基礎スキルのレベルが高すぎるので、そちらにポイントを振るのは不経済なのだ。
リタは予定通り、属性剣技を中心にポイントを振る。さらに戦闘系基礎スキルのレベルを上げた。
その結果、三人のステータスはこのようになった。
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【名前】レオ
【レベル】20 レベルUP
【種族】人間
【性別】男性
【年齢】16
【保有スキル】双剣技(4)、身体強化(7)、火魔法(4)、炎熱魔法(4)、雷魔法(2)、魔力増量(4)、経験効率(7)、鑑定(4)、全力斬り、連撃(2)、回避(1)、先制(1)、戦闘予測(2)、格闘(3)、体術(5)、上級治癒魔法(2)、気配遮断、解毒、縮地、疾風突き、三重付き、百裂拳、摺り足、正拳突き、散弾氷塊、飛雷刃、沛然大雷光、サンダーアロー、見切り、威圧、身体補助、解呪、武器創造:水、識別:青、カリスマ(ユニーク)
【レベルUPスキル】
剣技(5)⇒(6)
細剣技(3)⇒(5)
氷魔法(3)⇒(4)
魔力運用(2)⇒(6)
魔力強化(3)⇒(6)
高速探索(7)⇒(8)
感覚拡張(6)⇒(8)
武器強化(4)⇒(6)
索敵(2)⇒(5)
罠回避(4)⇒(6)
【名前】イルザ
【レベル】20 レベルUP
【種族】人間
【性別】女性
【年齢】23
【保有スキル】
炎熱魔法(6)、解毒、四大元素(ユニーク)
【レベルUPスキル】
氷魔法(5)⇒(8)
魔力増量(5)⇒(8)
魔力運用(6)⇒(7)
魔力強化(5)⇒(7)
【新規登録スキル】
雷魔法(4)
風魔法(4)
治癒魔法(6)
状態回復:全
魔法力倍加:補助(6)
筋力向上:補助(6)
付与魔術(4)
ファイヤアロー
爆炎刃
垂噴焔
極焔鳥
【名前】リタ
【レベル】23 レベルUP
【種族】人間
【性別】女性
【年齢】20
【保有スキル】
双剣技(8)、剣技(6)、戦闘予測(4)
【レベルUPスキル】
身体強化(7)⇒(8)
連撃(6)⇒(7)
回避(3)⇒(6)
先制(3)⇒(6)
【新規登録スキル】
雷付与:短剣(7)
風付与:短剣(7)
雷鳴旋
吹き下ろし
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「これはちょっと、見違えるわね……」
さすがに1000万ポイントあると、スキルの数も一気に増える。カリスマで習得しているレオは別枠としても、イルザやリタにも戦闘の幅が出てきたことがわかる。これに装備品の属性や特性を考慮すると、これまでとは別次元の戦闘ができるだろう。
それと、レオが探索系にポイントを割いていることも大きい。41層以下の構成を考えると、アイテムとの併用を行うにしても、これくらいのスキルレベルは欲しいところだ。欲を言えば、もう少し高くてもいい。戦闘系スキルはカリスマで補助できるのだから、やはりパーティリーダーのレオは探索系にポイントを振っていくべきだろう。
「レオ君はレベルがまた二つあがっているわね。これは経験効率の恩恵かしら」
「そうだと思います。イルザやリタと僕で、差が出るとしたらそれしか考えられないから」
「ついに追いつかれてしまいましたね。いつかはこんな日が来るとは思っていましたが、まさかこんなに早いとは……私はうれしいです」
すっとローブで目元を隠している。教師として生徒の成長が喜ばしいのは嘘ではないのだろうが、そういう実感がレオにはない。
「でも、レベルが並んでもまだまだ僕とイルザの間には格の違いがあるよね……」
「そんなことはありませんよ。レオ様はご自分の成長に無自覚なだけです」
「いやいや、それはイルザが嘘つきでしょ。同レベルの相手にイルザが劣るわけないじゃん。いくら相手がレオ様だって、嘘は良くないよ」
「こらリタ、黙りなさい」
「はーい。言うまでもなく、レオ様はわかってそうだけどね」
まあ、単純に才能の差というやつだ。レオにカリスマという規格外のスキルが宿っているように、イルザの天稟は単純なレベルなどで測れるものではない。イルザと同じレベルの魔法使いであったとしても、炎熱魔法をあそこまで使いこなせる者は皆無だろう。
それはまた、リタにしても同じことだ。彼女の双剣技は才能と努力が奇跡的に融合してたどり着いた境地だというのは、見ていればわかる。同じく、同レベル帯の剣士が立ち会ったところで、おそらくリタには傷一つつけられない。
「ま、頼もしい限りだよ。僕は僕で、自分の役割をしっかり果たさないとね」
イルザやリタの強さを目標にしてきているわけではない。彼女たちは頼りがいのある仲間で、教師で、かけがえのない友人だ。立ち合いで上回る必要なんてない。パーティなのだから、補いあって支え合えればそれでいいのだ。
「私も、少し役割を変えました。今後は攻撃系のスキルにポイントを振るのは多くなくなるかもしれません」
「アタシは逆に、もっともっと攻撃的になっていくことになりそうだね。とりあえず、敵は片っ端からぶった斬るつもりでいきますのでよろしくー」
これから険しくなるであろう迷宮を攻略していくには、パーティで唯一の魔法使いであるイルザには、自然、補助や回復の役割を担ってもらうことになっていく。レオでも代替は可能だが、武器のことを考えると魔力は節約するに越したことはない。
一方で、リタは属性を得たことで物理防御が高い敵にもダメージを通しやすくなった。広範囲にダメージを与える技も習得している。これからはパーティの主なダメージソースになっていってくれるだろう。
「ハンナさん、余ったポイントで消耗アイテムも少し補充していきたいんですが、いいでしょうか?」
「あ、そっか。前回の探索でも結構使ったのよね。足りなかったものはない?」
「ちょっとだけ調整は必要かもしれません」
前回用意していったアイテムのラインナップに、少し増減を加えていく。具体的には、魔物除けの類のアイテムは減らして、探索補助系のアイテムを増やすことになる。
それから、万が一に備えてスピードポーションなどの戦闘補助アイテムも購入しておく。備えあれば憂いなしだ。
「これで1000万ポイント、だいたい使い切りましたね」
「いやー、私も管理局は長いけど、ここまでの大盤振る舞いはあんまり経験ないわ。領主クラスにならないと、なかなか1000万ポイントを一気にって冒険者はいないもの」
「領主ならばあるんですか?」
「あるけど、そもそも領主はあんまり管理局に寄り付かないからねえ」
そういえば、フラーク兄弟も似たようなことを言っていた。月欠けの夜は領主にしては珍しく、二週間に一度くらいは顔を見せる、と。
逆に言えば、それ以外の領主はめったに顔を出さないということだ。
「そもそもわたし、領主クラスの窓口を担当したことないもの」
「ハンナさんでも、ですか?」
「古株の方だけど、もっと古い人はいくらでもいるもの。そこまでのお得意様が相手なら、管理局もちゃんとした手練れを用意するわよ」
む、とレオは眉を寄せた。それはあまり良くない話だ。
「どうしたの、レオ君?」
「いや、僕たちが領主になった場合も、そうなっちゃうんでしょうか? つまり、ハンナさんには窓口を担当してもらえなくなる?」
「へ?」
ハンナはぽかん、と口を開けた後に、破顔した。レオはいたって真面目なのだが、なにか面白い話を聞いたように、笑っている。
「なかなかいないわよ、真顔で領主になったら、なんていう冒険者」
「そうなんですか? でも、僕はもともとそのつもりでしたし」
「うん、レオ君は最初からそう言ってた。だから、笑ってごめんなさい。もう40層の階層試験を突破する金級上位だものね。ぜんぜんおかしなことじゃないわ」
大丈夫、君たちが希望してくれるなら、どこまでだって付き合うわ、とハンナは笑顔で請け負ってくれた。
「しっかし、そうか。この調子だと、そろそろ十傑も近いわね」
「十傑?」




