始まり
チュンチュンと鳥のさえずりが聞こえた。
天気は快晴気持ちのいい朝だ。
現在の時刻は7時2分。健康的な目覚めと言えるだろう。
まず何をしよう。
学校に遅れないためには8時には家を出なければならない。
そうだ、まず顔を洗おう。
鏡の前に立ち冷水で顔を洗う。顔を上げてみるとやけに疲れている顔だった。
嫌な夢でも見ていたのだろうか。
次は...朝食を食べよう。
階段を降りると朝食が用意されていた。
ラップに包まれた目玉焼きとウィンナー。六個入りのミニクロワッサン。
そして、「朝食」と油性で書かれた紙が添えてあった。
テレビを点けた。様々なニュースが伝えられてる。
「続いてのニュースです。先日○○県○○市の○○高校に通う高校2年生徒が自宅で自殺をしたことが明らかになりました。生徒は遺書を残しており...」
テレビを切った。朝からこんなことを聞きたくはない。
今日は朝食がなかなか喉を通らなかった。
だけどチクタクと時計の声はよく聞こえてきた。
どうやらのんびりしすぎていたようだ。
時刻は7時50分を示していた。
「あとは家を出るだけだな,,,」。
リュックには荷物がパンパンに入っていた。
前日に準備をしていたのだ。
リュックを取りに行った。
ドス、ドス、ドス、と階段を上る音が自分だけしかいない家にはよく響いた。
玄関で靴を履く。
忘れ物はないか今一度確認する。
忘れ物はなかった。
「よし、行こう。」そうして少年は学校に向かった。
やはり今日はいい天気だ。
部屋の中でも判ったが、外に出るとさらによく感じられた。
歩いていく。歩いていく。歩いていく。
さっきから誰かにつけられている気がする。
歩く速度を上げた。相手も速度を上げた。
さらに速度を上げた。相手もさらに速度を上げた。
これはまずいと思った。こんな朝からストーカー?誘拐?して来るやつがいるのかと思った。
走った。走った。走った。
出発ギリギリのバスに乗れば振り切れるはずだと思った。
相手も走って追いかけてくる。
心臓が痛い。呼吸は乱れ、脚も疲れてきた。
走るのをやめたかった。もう疲れた。
でも、あいつに捕まった後のほうが怖かった。
バスが見えた。ちょうど停まっている。
あと少し。あと少し。あと少し。
はぁ。はぁ。はぁ。
呼吸を整える。
あいつはどうしているだろう。
途中から足音は聞こえなかった。
怖い。怖かった。
振り向きたくない。振り向いて、もしやつが後ろに居たらと思うとゾッとする。
でも、見ないと。確認しなきゃいけないと思った。
大きく息を吸って後ろを振り返った。
あいつの姿はなかった。
安心した。
大きく息を吐いた。
それにしても変なやつだった。
足音が特に変だった。
なんか、心のなかに入ってくるような感じだった。
姿もおかしかった。
ミラー越しにあいつを見た。
全身真っ黒の服装をしていた。
こんな朝にあんな格好をしてたら不審に思われるはずなのになぜ誰もあいつに気が付かなかったんだろう。
もしかして自分は幽霊が見えるのかと思った。
「そんなわけないよな。」
考えてもわからないからバスに乗ろうとした。
体が震えた。ゾッとした。後ろにあいつが居ると本能的のわかった。
体が動く。見たくないのに勝手に体が振り返る。
あいつの顔を見た。
それはよく知っている顔だった。
おまえだったんだな。