俺は姫さま(3歳)の暇つぶしの犬
転生したら犬だった
比喩的な意味でなんだが、姫様の犬だった。
いや本来は護衛のはずなんだが、何分姫様がまだお小さいせいで、遊び相手というか玩具のような存在になってしまっているのだ。
ワンと鳴けと言われればワンと鳴く。
何せ姫様はまだ3歳だ。
そんな訳で今、俺は、王宮の庭で姫様が放った魔法を追いかけて剣で切り裂いている。
いわゆる『取ってこい』だ。
俺は姫様の犬なのだから、こういうことだって喜んでやる。
でも姫様、水魔法はまだいいですが火魔法はやめてください火事になってしまいます!
…ってあああ、言ってるそばからもう!
「ほーら、取ってこーい!」
可愛らしい掛け声とともに、結構なスピードで火魔法が放たれる。慌てて追いかけて、斬りふせる。剣に魔力を通すことによる対消滅だ。
本当は俺も魔法を放って姫様の魔法をかき消すこともできるし、その方が早くて楽なんだけど、それをやると姫様の機嫌が途端に悪くなる。だから身体強化をかけてひたすら庭を走り回る。
周りの皆は、それを微笑ましそうに眺めているだけだ。
誰か何か一言くらい言ってくれてもいいんじゃないだろうか。
そう思って辺りを見渡す。
「が、頑張ってください!」
頬を染めたメイドが、拳をきゅっと握って応援してくれた。
嬉しいけどそういうことじゃない。
「ザガン、今日も冴えてるな!」
隊長、褒めてくれるのは嬉しいんですけどそういうことじゃあないんです。
「姫様!もっとビシビシしごいてやってください!」
何言ってやがるマック!今度の訓練でぶちのめすぞ!
同僚のマックは、今日も阿呆だ。
「いつもお疲れ様です」
庭師のベン爺が、ニコニコしながら頭を下げてきた。柔らかな物腰に癒される。まるで彼の育てる植物のようだ。彼が丹精込めた庭を燃やさせるわけにはいかない。
「ほら走れ!ワン!」
姫様が新たな火球を放った。
「ワン!」
条件反射で鳴いてしまった。
一通り魔法を撃ち尽くすと、姫様は満足されたようだった。
「いい動きだったわ!」
腰に手を当て、上機嫌でニコニコしている。
姫様にこんな物言いを教えたのは誰だ!どうせマックか隊長だろうがな!
「うむ、今日もよい動きだな、ザガン」
…陛下、あなたでしたか…。
国王陛下が現れた。




