表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

異世界転生の裏。~好きな人はもう居ない~

作者: EternalSnow

練習作




 そう、すべての始まりは突然やってくる。

 ただ、その始まりは、終焉も意味する。

 異世界転生(・・)。つまりは、そういうことだ。


 転生するということは、今生では死亡を意味する。

 始まりと同時に終焉を意味するのだ。


 じゃあ、その世界で死ぬはずがなかった少年が転生することで、空いた穴は……。






 あのカバンは彼のものじゃないか


 耳を疑った。

 報道された事件として、耳にして、急いで彼の家に走った。


 靴を履くのも煩わしいと思いながら、制服も着替えずただ走った。


 未成年って書いてるだけだから。

 あのカバンは彼のものじゃないかって言葉が頭をずっとよぎった。


 違うと振り切ろうとしても、疑問が消えない。

 彼にあげた懐かしいキーホルダー。

 男勝りで、僕といっていたあの頃にあげたキャラもののキーホルダー。

 よくガチャポンにあるもので、子供のころのたわいのない思い出の品。

 違うはずだ。

 でも、学校でそのキーホルダーを友人に笑われていた彼を思い出す。


 ただ怖くて、言い出せなくて、冷たくあしらっちゃったけど。



 彼がそれを大事にしてくれているのは、少しうれしかったのに。

 あのカバンについていたキーホルダーを恨めしく思ってしまう。



 違うって言いたい。

 彼のものじゃない。

 あれはどこか他人の、見知らぬ学生のカバンのはずだ。



 家はもぬけの空だった。

 嫌な予感がよぎった。


 今日の緊急病院を調べる。携帯で調べればすぐに出た。

 近くの病院だ。

 家に帰って自転車に乗って走ればすぐにつく。


 私は走った。

 私は走った。

 ワタシハシッタ。



 受け付けで慌てて言った。

「〇〇くんはいませんか、幼馴染なんです!」

 受付の人は目を伏せながら案内してくれた。


 白い布を顔に被せた彼に合った。

 そう合った。

 会うことは、もう……できなかった。


 彼は、もう居ない。


 そう思えば、涙があふれていく。

 今思えば、彼を好きだったのは、子供のころの話だと息巻いてたけど。

 今も好きなままだったんだなっと今更ながら気づいた。


 弟のように接してきた子供時代の淡い思い出。

 転んだ僕に手を差し伸べてくれたあの手も、

 どこか傷だらけで、いつもつらそうにしてた顔も、

 笑顔で一緒に走り回っていられた子供時代。


 あのころだけの気持ちだと思っていた。


 驚くほど暗くなって、

 驚くほど人が違ってしまって、

 そのギャップに冷たくなってしまった薄情な私。

 それでも私はあなたが好きだったのか。


 いなくなってから、気づいてしまう。


 後悔は後で悔いるモノである。

 なるほど、言い経て妙にしっくりくる。


 想いに気づいて、想いを伝えていれば、なにかと違ったのかもしれない。

 一緒に帰っていれば、変わったかもしれない。

 彼を、守れていたのかもしれない。





 言葉にできない気持ちを抱えて、数日たった。

 未だに消えない。

 彼はこの世に居ない。

 喪に服すって意味が分かった気がする。何もする気がおきないもの。


 こんな気持ちを抱えるくらいなら、

 彼が好きだったなんて、知りたくなかった。


 毎日、お墓の前でつぶやいていた。

「好き」

 これだけ言って、まだ涙が止まらない。

 涙が枯れない。消えない。

 こんな気持ちをずっと抱えて、居なくなっているって実感して、まだ苦しく思った。


 家から彼の家の方角を見て、ため息をついていた。

 もう彼はいないと思うと、どうしてもこの行動を変えられなかった。






 寒い冬になって、彼のことをまた思いだした。

 同じキーホルダー。

 ガチャポンで無理矢理に引いた。キーホルダー。


 これを捨てられたら、彼のことを忘れられるのかな?

 そう思って、彼の居る道路へ投げようとして……投げられなかった。


 キーホルダーを握りしめて泣いた。

 もう嫌だと叫びたかった。

 今すぐにでも君に会いたいと叫びたかった。

 でも、できない。



 もう彼はいない。

 忘れようって思えば、彼を思い出してしまって消えない。


 どうして、どうして、どうして!


 このまま居れば、彼の元に行けるのかな?

 どうしようもなくて、涙があふれて止まらない。



 わからないままそのまま天地が逆さまになった。


 理解できない言葉を聞いた気がする。

 ああ、彼が見える?

 見える気がする。



 なんで彼はそんなに泣いているの?

 どうして、そんなに苦しそうなの?

 大丈夫、今度は私が守ってあげるから、一緒に泣いてあげるから。


 側に、いさせて?



ひどすぎて、何も言えない

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 読ませて頂きました。 心にグッとくる話だなと思いました。
2020/08/10 10:20 退会済み
管理
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ