家
「疲れた……寒い……眠たい…………」
私は真夜中自分の家の前に佇んでいる。
もう既に日付が変わって結構経つ時間に、家に帰る事など初めてなの私。
それにこの髪……家族はどう思うかな? きっとびっくりするよね。
うー 入るのに勇気いるなぁ。いつまでも玄関にいる訳にもいけないし、そーっと入ったら大丈夫かな?
LINEでは遅くなるって伝えていたんだけど、忙しくて怖くて携帯も開いてないんだよね。
たまにブルブルしてたから、見るのが怖いのよ。
こんな時間になっちゃったのは、色々な事があったからで、やっぱりあの人の勘違い? 嫌、押しの強さのせいだわ。
寒い玄関の前に未だ佇んで動けないでいる私。このままじゃあ不味いよね……
「よし! 帰ろ」
息を殺して玄関の鍵を差し込んだ。ゆっくりクルリと回すと、カチャンと音がなりゆっくり引き抜く。
普段なら鍵の音なんて気にもしないのに、深夜だと響き渡るのね……
そーっと扉を開けて顔を覗かせると、目の前に母が居た。
「あなたねえ! いったい何時だと思ってん…………きゃーーーーーーーーーー」
奥からバタバタ足音が聞こえてくる。
「どうしたの! 煩いよ。真夜中に幽霊? 不審者? って! どうしたのよあんたその髪は!!!」
お姉ちゃん……厄介な人に見つかっちゃったよ。
「色々あったんだよ。もう眠いのよ。とにかく寝たいから、明日ちゃんと話すから、寝る」
「聞きたいの。私は今すぐに聞きたい。あんた、私の性格知ってるでしょう。それに多分母さんこのままじゃあ寝れないよ。
泣きながら、電話占いに相談してるのが私には目に見えるんだけど」
「私にも見えるよ。でもさぁー……えー眠い……んだよ。本当に」
「この時間が勿体無い! サッサと中に入って、洗いざらい全て話してスッキリして寝れば良いでしょ! さあさあその髪の理由を話しなさい」
お姉ちゃんに見つかったら逃げれない……この人、我が家で最強だからね。全てにおいて、性格も肉体的にも最強だから仕方ない……諦めよ。
リビングに座ったら母があったかい梅昆布茶を入れてくれた。
これ大好きなの心がホッとするし、落ち着くのよ。日本人に生まれて良かった。
2人は目の前でガッツリ待ちの状態……私は今日の出来事を仕方なく話した。
「あの男! 偶に来てたチャラチャラした奴でしょ!
あいつ、私にも携帯番号交換しましょうーって言ってたな確か。
あーゆタイプ大っ嫌いだから無視してたけどね。あんな奴別れて正解よ!
キッパリ忘れて次よ次! あんなのに比べればもっとマシな奴などいっぱい居る」
「お母さんね……その髪と服が気になるわ」
「⁇⁇⁇」
いきなりの意味不明発言に、私と姉は顔を見合わせて???良く分からない。
「だからね! その雰囲気と服があってないのよ。
前の可愛い感じの雰囲気ならその服は正解よ。でも今のかっこいい雰囲気じゃあなんか変よね。チグハグよ。
お母さん明日暇だから、一緒にお買い物行かない?
似合う服買ってあげるから、ちょうどお父さんに商品券貰ったんだ。お母さんねイケメンの子供欲しかったの~
嬉しいわ。夢が叶った感じね。今度バイト先にも行ってみたいわ」
この人が母親で助かった。イケメンや可愛いもの占いや不思議な事大好きな、少しだけ風変わりな母で良かった。
明日は大学も昼からゆっくり行けば良いから、午前中買い物して昼から大学で大丈夫かな。
バイトの書類の為に市役所も行かないといけないし、前のバイト先にも連絡と……忙しいな……
家族から受け入れられて少しだけホッとしたかなっでも、心の中何か刺さってる様に胸の奥が痛い。
彼と親友の事を考えると痛いし怖い。愛美は私の事どう思っているのか聞きたいけど、聞きたくない。
違う大学になってからも連絡もとってたし、遊びもしてたのに……なんでこんな事になるんだろう。
「さあ! もうこんな時間よ貴女達早く寝なさい」
「あー明日会社で会議なんだよ。私、寝るわ。
歩元気だしなさい。弟ができて嬉しいわ。今度ご飯食べに行こうね見せびらかしたいわ」
「奢ってくれるなら行くー おやすみ。お姉ちゃんお母さん」
私は部屋に入って、そのままの状態でベッドに飛び込み死んだ様に寝た。