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4話 暗闇と出会い


ソフィーが私の腕の中で穏やかな寝息を立てる。


 「ソフィー、ありがとう……」


小さい頃からいつも一緒にいたソフィー。内気で近所の子たちの輪に入れなかった私にソフィーが話しかけてくれたのが始まりだったっけ。あの時からずっと私にとってソフィーは憧れなんだ。

実はソフィーに合わせたくて髪を染めようと思ったこともある。この黒髪が私の根暗さを表してるみたいに思ったから。まあ親に止められちゃったんだけど。


そんなソフィーが今は私に全てを委ねたように安心しきって眠っている。それがどこか心地よい。


私が狂った人の返り血を浴びてしまってから、ソフィーは本当に私のために頑張ってくれた。いつ他の人と同じように狂ってソフィーのことを襲ってしまってもおかしくないのにだ。

私の親友は本当に優しい。でも、それだけじゃない。 あの小屋の中で狂ってしまった人たちに囲まれたときのソフィーの涙を思い出す。


「ソフィーに守られてるだけじゃダメだ。私だってソフィーを守れように強くならないと」


階段は降りきったけど地下の通路はまだ先に続いてる。ソフィーが中に入る前、微かに入ってきた光から察するに上には天使がいる。


「進むしかないよね……」


私は目の前に広がる暗い闇を見つめた。そして、私とソフィーの希望になる物が待ってればいいななんて願った。


「もうちょっとスポーツとかしてたら良かったなっ」


私は眠ったソフィーを背負いながら通路を進んでいる。畑まで逃げてきた時とはまるっきり逆の役回りだ。ソフィーより体が小さく、しかも体力も無い私にとっては辛いことだけど、ソフィーのためなら頑張れる。


かれこれ十分は歩いた。だけど、通路はまだ奥へ奥へと続いている。自分はどこへ向かっているのか。それが分からないのはかなり不安だった。


 「このまま進んでも大丈夫なのかな?」


通路の壁や床はしっかりとした金属で作られている。入口だったのは小さな木製の小屋だったのにだ。そのアンバランスさも私の不安を加速させていた。あの小屋は何かのカモフラージュでこの先にあるものをごまかしているんじゃないかと変な妄想もしてしまう。

心細い。やっぱり私は弱い人間だ。ソフィーを降ろして起こそうと思った私はすんでのところで思い留まる。そして、ソフィーに守られてるだけじゃダメなんじゃなかったの!?と自分を叱りつけた。


色んな気持ちを飲み込んで、私はただ進んだ。この通路の先に何が待っていても、ソフィーと一緒なら大丈夫って信じられたから。


通路は唐突に終わりを迎えた。錆び付いた金属の扉がその先を閉ざしている。


「ソフィー、ちょっとだけ待っててね」


ソフィーをそっと降ろして横にする。そして、彼女の持っていた拳銃を受け取る。

一つ息を吐き心を落ち着かせる。

よし、行こう。私は扉に手をかけた。


「あれ?し、閉まってる……」


扉は閉まっていた。どうやっても開かない。もしかして鍵が錆び付いてしまった……?

どうしよう、ここが通れないなら引き返さないといけない。でも、向こうには天使が……!

カチャ

私は一瞬それがなんの音だか分からなかった。


  「そんな顔はしなくていい。扉なら開けてやろう」


扉の向こうから女の人の声がする。


 「さあ、入って」


私は彼女に従い、未知の領域へと足を踏み入れた。


扉の先は、上の小屋とは比べ物にならないほど大きな部屋だった。しかし、薄暗く散らかっている。床には難しそうな学術書、ビーカーとか試験管などの実験用具、あとは私の目にはガラクタにしか見えないようなものが散らばっていた。

そして、声の主は部屋の中央に置かれたソファーに姿勢正しく座った。

アルビノっていうんだっけ?肌も髪も雪のように白い。さらに、白衣を羽織っているから上から下まで真っ白だ。ただ瞳は赤く怪しい光を放っていた。

今までで見たことがないほど綺麗な女の人だけど、ちょっと怖い気がした。


 「どうした?私の顔に何か付いてるか?」


彼女は私を一瞥した。

私は思わず背筋を伸ばす。ソフィーを外に寝かせておいたのは、万が一の時先に逃げられるようにするためだ。ソフィーは私がまず生き残るようにってずっと行動してくれた。でも、本来血を浴びてしまった私の方が囮になるべきなんだ。いつ狂ってしまうかもわからないんだから……。

だから、目の前の白衣の女性をしっかり見る。狂ってしまった人ではもちろんないようだけど、信用できるかは別の話。私が見極めるのよ、エリー。


 「こんな地下に住んでる私を疑うのは無理ないが少々露骨だぞ?まあ、信用できないかもしれないが、君には危害を加えるつもりはない。もちろん部屋の外の彼女にも」


白衣の女性が小さく溜息をつくと、そう言った。悪い人ではないのかな……?


 「言わせてもらうが、君たちもかなり怪しいぞ?不法侵入という言葉は知ってるか?」


「う、それは……」


痛いところを突かれた。確かにこの場所が彼女の所有なら私たちは、文字通り不法侵入だ。何なら入口の小屋を荒らしたりもしちゃったし。

俯く私に彼女は笑いながら言う。


 「そう心配するな。ここは決して合法な場所ではないからな。訴えたりはしない」


ご、合法じゃない?やっぱり悪い人なの……?

そんな彼女はスッと立ち上がり、私に向き合った。真剣な顔をしている。


 「地上で何かあったのだろう?私は長いことここから出ていなくてね。教えてくれないか?私の想像通りなら、力になれるかもしれない」




















お読みいただきありがとうございます。

今回は村野きさらでした。

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