83:総軍出撃
次々と轟く砲撃音。何十台もの戦車たちが列を成して弾頭を放つたび、巨大キマイラたちの身体に大穴が開いていった。
月明かりの下に断末魔が響き渡る。
「グギャァアアアアアアーーーーーーッ!?」
「ワッヒャッヒャッヒャッヒャーーーッ! さぁ暴れるぞい暴れるぞぉいッ!」
悶絶死する巨大キマイラたちを前に、ドワーフ族の長にして戦車を開発した張本人・ドルチェさんが獰猛に笑う。
乗り込んだ機体の天辺から三歳程度にしか見えない身体を出し、あとに続く数十台の戦車部隊へと指示を出していく。
「ヌッハッハーッ! とにかく撃って撃って撃ちまくれーーーーーッ! なぁに、どうせ弾は山ほどあるんじゃ! なにせ我らが『シリウス』の街こそ、火薬の最大生産地なんじゃからのォーーーーッ!」
「「「オォオオオオーーーーッ!」」」
雄叫びを上げながらドワーフたちは好き放題に撃ちまくる。
ああ、その表情はとても楽しそうに輝いていた。なにせ人間の半分程度しか背丈のない自分たちが、十メートル以上の巨大キマイラどもをズッコンバッコンと嬲り殺しに出来ているのだから。それは気持ちいいに違いない。
ドルチェさん率いる戦車部隊が暴れ回る光景を前に、魔王ニーベルングは呆然とする。
『あの者はたしかドルチェだったか……秘密裏に危険物を作りまくって飼い主の貴族を半殺しにした厄介者と聞く……! っていやそれよりもなんだあの鉄の荷車は!? あんなもん俺は知らないぞォッ!?』
「当たり前でしょう、アレは彼が趣味で作り出したものだから。私はドルチェさんにこう命じているのよ、『一切口出ししないから好き勝手にモノを作りなさい』とね」
『なっ、なにィッ!? あんな男を放し飼いにしてきたのか!?』
なんて命知らずな真似をと驚愕するニーベルング。見た目も頭もぶっ飛んでしまった彼だが、自分でも言ったように国家のナンバー2だったのだ。私の常識はずれな人材運用に対してはそりゃ突っ込みたい気持ちも湧き上がるだろう。
――だけど常識なんて知るかバァァァカッ!!!
どうせコソコソとわけわからん危険物を謎のハイクオリティで作り出す危険人物なんだ。
だったら最初から放し飼いにして、ストレスを溜めさせないようにしつつ堂々と危険物を作らせたほうがまだ危険じゃないだろう(いや危険だけど)。
まぁでも今はそれで正解だと思っている。
おかげで彼は、戦車という燃料さえあればどんな悪路でも突っ走れる馬以上の移動手段を作り出してくれたのだから。それによって魔法で飛んだり出来ない者たちもギリギリ王都に辿り着くことが出来た。
さぁみんな、嫌というほど見せつけてやれ。亜人種と貧民の底力を――!
「獣人戦士団、ならびに牙獣部隊よ! 魔物どもを殲滅せよォーーーーッ!」
「「「ワォオーーーーーーーーンッ!」」」
獣人族の長であるガンツさんに指揮され、獣人族の戦士たちとそれに追従する猛獣の群れが飛び出していく。
無数の狼たちが卓越したコンビネーションで街に散ったキマイラどもを噛み倒し、そこに獣人族たちがトドメの一撃を放っていった。
うん、調教の成果はバッチリだね。野生の狼たちも見事な忠犬に生まれ変わったものだ。
というわけで可愛いワンワンたちによく頑張ったね~と手を振ってやると、一斉にビクンと震え上がって私に対して腹を見せた。いやなんでじゃい。
さらに亜人種の活躍は続く。
長耳のエルフたちがあちこちの建物の上に昇ると、手にした弓矢を街中の怪我人たちに放っていったのだ。
これには当然撃たれた人も驚くが、次の瞬間には別の意味で驚愕する。矢の先端には鏃の代わりに超高濃度最高級回復薬の詰まった小瓶が括り付けられており、当たった瞬間に弾けて中身が傷口にかかり、ありとあらゆる致命傷を一瞬で治していったのだから。
その成果に、エルフ族の長であるシルフィードさんは得意げに笑う。
「フッフッフッ、さぁ王都の人々よ思い知りなさい! これがエルフの弓術と、量産しまくった霊草で作った特製回復薬の完成度ですよーッ!」
街のあちこちに回復薬付きの矢を乱れ撃ち、片っ端から怪我人たちを治療していく。
よしよし、流石はダンジョンでしか取れないはずの希少な霊草を使いまくった回復薬だ。通常の薬草から作った治療薬など目じゃないくらいの効能を発揮し、欠けた指すらも生えていった。
キマイラが拡散したことであちこちから上がっていた悲鳴が、次々と歓喜の声に変わっていく。
そうして救われた怪我人たちや事態を理解できずに逃げ惑う人々を、貧民の人たちが誘導していく。
「経路は確保してあるッ、戦えないヤツぁこっちに逃げろ! 足の悪いヤツは背負ってやるから遠慮なく言え!」
熱く、しかし冷静に指示を出す貧民たち。
彼らは元々ニーベルングの口車に乗せられて私にたかりに来た者たちである。
亜人種たちと比べて秀でたスキルなんてものはないが、それゆえにみんな一生懸命だった。
今度こそまともな人間として胸を張って生きるために、老人や迷子の保護など自分に出来ることを精一杯こなしていた。
まぁ、一人だけメチャクチャ強い人もいるみたいだけどね。
「やれやれ、この国のために戦うのはなぜか気が進まないが――『聖女』を助けるためとあれば、なかなか悪い気分ではない」
瞬間、天の彼方より無数の雷が迸る。
それらは一人の少年によって完全に狙いをコントロールされており、街中に散ったキマイラどもを次々と焼き払っていった。
ああまったく、敵だった頃はとても恐ろしかったのに、今はものすごく頼もしい――!
「ありがとうね、シンくん!」
「フッ、任せてくれソフィア殿。今こそアナタに拾ってもらった恩を返す時だ」
銀色の髪を掻き上げながら、シンくんは――記憶をなくしたハオ・シンランは朗らかな笑みを浮かべるのだった。
頼もしき仲間たちの奮闘を見納め、私は魔王に向き直る。
「どうかしら、私の自慢の仲間たちは。とっても素晴らしいでしょう?」
『グヒッ……ああもちろんだ、最高だともッ! やはりアナタにはヒトを強くさせる才能があるッ、どうか俺の女王様になってくれーーーッ!』
「フンッ、寝言は寝て言えブタ野郎。私を言いなりにしたかったら――力尽くで勝利してみせなさいッ!」
両手の魔剣に蒼炎を宿し、私はニーベルングに斬りかかった!
それに対してヤツも獄炎を放ちながら、両手より巨獣の牙を出現させた――!
『グヒャハハハハハッ! 上等だァ聖女よッ! 魔王として、お前を屈服させてくれるわーーーッ!』
かくして人々の雄叫びが上がる中、私と魔王は王都の空でぶつかり合う。
命懸けの第二ラウンドが幕を開けるのだった。
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