82:人魔戦争勃発
Twitterで公開している欲しい物リストより、読者のニーベルングさま(!?)がたくさんのプレゼントを送ってくれました!ありがとうございます!(´;ω;`)
バーチャル美少女やってますので、みなさまもアカウントを見てくださいね〜っ!
「さぁ、暴れて来いよ『聖女ソフィア』」
「こちらは我らにお任せを」
瞬間、まだ残っていたキマイラたちが複数体まとめて殴り飛ばされ、さらには全身を凍り付かされていく。
本当に頼れる王子様たちだ、バルムンクやニーベルングから受けた傷はまだ癒え切ってないはずなのに。
「ありがとう、ウォルフくんにウェイバーさん!」
空から感謝を送る私に、イヌ耳の王子様と貧民街の王子様はニッと微笑んだ。
王都の人たちもやる気いっぱいなのだ。二人の助力があればキマイラどもなんて目じゃないだろう。
さて、こちらもパパッと仕事を済ませますか。
「おいおいおい、他の男を見ないでくれよ。アナタは俺の聖女なのだから……!」
炎を噴き上げながらニーベルングが宙に浮かぶ。
ものすごい完成度の『ファイヤエンチャント』だ。どう頑張っても武器に炎を纏わせるのがやっとだった私とは違い、ヤツは髪から全身までも身体を火炎に包み込んでいた。
それに火力も凄まじい。まさしく攻防一体の全身凶器と言ったところか……間違いなく、炎魔法の使い手としては私の三段は上を行く実力者だろう。世界最強の魔法使いジークフリートを倒したのは伊達じゃない。
ああ――だがしかし、それが一体どうしたというのだ?
コイツは勝手な期待を押し付け、平和だった私の日々をグチャグチャに破壊した塵屑だ。
国のため? 未来のため? どうでもいいんだよ知ったことか。
私は私と私の周囲が平穏であればそれでいい。よってお前は害虫だ、どんな手を使ってでもこの世から排除してやるよ。
「――お前を殺すわ、ニーベルング」
偽物ではなく本物の笑みを浮かべながら、私は未来で完成するはずだった『核融合』の力を解き放つ――!
「現れるがいい、浄滅の刃――『ハイパークリア・バーストソード』千連発動ッ!」
綺羅星のごとく周囲が輝き、全てを滅する蒼炎の剣が虚空に千本現れる!
一本一本の熱量がこれまでの私の最大火力を上回っているというのに、その魔力消費量は実に軽微だ。それもこれも、『水素』という五年後に見つかる予定のガス成分を知っているからに他ならない。
体内の魔力を水という質量のある物質に変換することに比べれば、ほとんど重さのない水素に変えるほうが魔力燃費は格段にいい。
よって私は大量の水素を生み出し、圧縮し、それらを燃料として炎の威力を爆発的に高めていた。
「展開完了。吹き飛びなさいッ、滅刃全掃射ーーーーーーーッ!」
今こそその力を見せつける時だ。片手を前に突き出し、ニーベルング目掛けて全ての刃を殺到させる――!
「おぉおおおおおおおおおーーーーッ!?」
迫りくる千刃を前に、ニーベルングの口から悲鳴とも歓喜とも取れる雄叫びが上がった。
ズドドドドドドドッッッッ! と音を立てながら飛翔する剣群を、ヤツは飛び回って避け続ける。
超高速で直進しながら直角に曲がったり垂直に上下したりと、明らかに重力加速度で内臓がぶっ壊れてもおかしくはない動きを続けるニーベルング。
その変態軌道によって千の刃をギリギリで避けているように見えるが――それでは駄目だ。完全に避けきれなかった時点で、お前はすでに終わっている。
「死になさい」
「えっ――グゥッッ、ガハァアアアアアアーーーーーーッ!?」
その瞬間、ニーベルングの口から大量の血が吹き上がった。
さらには全身の毛細血管からも血が噴き出し、錐揉み状態で民家に向かって墜落していった。
ドゴォオオオーーーーーーンッという轟音を立てて大地に落ちるニーベルング。
大量の土煙が沸き立つ中、ヤツは全身をグチャグチャにしながら訳が分からないという表情をしていた。
「なっ、なんだ……急に、全身から血が……ッ!」
「それもそのはずよ。今お前の体中の細胞は、『放射線』という毒によって壊されているの」
何……と、魔王は大きく目を見開いた。
そう、これが未来の究極魔法『核融合水爆術式』のもっとも恐ろしい点だ。
今から約五年後、魔法分野を研究していたとある老学者は水素の存在を発見した。
そこから彼は水素を活かして何が出来るかを追求し続けた結果、ついに核融合という破壊の究極地点にまで辿り着いたそうだ。
だがその破壊性はあまりにも凄まじすぎたらしく、もしも生み出した核の炎が術者の手元から離れ、完全に制御を失った瞬間――理論上、そこから放たれる光線に触れただけで全生命を死に至らしめてしまうという恐ろしすぎるモノだった。
まぁもっとも、術者自身もヘタしたら死ぬ上、核融合を起こすには超高速かつ一切の不純物なく魔力を水素に変えられるほどの魔力コントロール能力が必要となるため、実現される瞬間を見ることなく老学者は寿命で死んでしまったそうだが……、
「はぁ……まさか私が使うことになるとは思わなかったわ」
思わぬ運命に溜め息が出てしまう。
生まれ変わってから十年以上。私は徹底的に魔法の技術を鍛え上げたほか、前世で覚えた水魔法による薬品作成を幼い頃から行い続けた。
さらにはハオ・シンランとの戦いで会得した『魔力混合水蒸気爆発術式』……一歩間違えば死に至る技を使い続けたことで、ついに私の魔力コントロール能力は才能の限界にまで辿り着いた。
それも十代も半ばというもっとも元気で集中力も高い時期にだ。十五歳なのに前世と合わせて約二十年の魔法使用経験がある人間なんて、それこそ私くらいだろう。
そんなところに――魔法使いの実力を極限まで高める『アダマンタイト魔晶石』の剣を与えられたらどうなる?
さらにはほとんど概要を知っているだけとはいえ、未来の魔法技術の知識まであったら?
答えは決まっている。
「喜びなさいニーベルング。お前を抹殺するために、『最強の魔法使い』として君臨してあげたわ……!」
手にした魔剣を魔王に向ける。ただそれだけでヤツの周囲の建物は溶け、ニーベルングは絶叫を上げながら人体発火した。纏った炎を突き破るように、身体から蒼い炎が吹き上がる。
これが核融合による熱量だ。ちょうどコイツが民衆たちを城の周囲まで集めていたおかげで助かった。
本当に人望があったのねぇニーベルング、付近に人がいないおかげで遠慮なくお前を燃やせるわ。
「グガァァアアアアアアアアーーーーーーーッ!?」
響き渡る断末魔の叫び。
悶絶する魔王の姿につくづく思う……こうなったらもはや嫌でも『最強』と名乗るしかないだろうと。
たとえ私自身は凡才だろうが、アダマンタイトの助けによって水素の高速生成が可能となり、最強の技術を獲得するに至ったのだ。
世界最高峰のマジックアイテムをプレゼントされた上にどこかの誰かが考えた究極奥義をパクったら、そりゃだいたいの者は最強クラスになるに決まっている。そんな力を我が物顔で振るう私はクズ女だ。
ああ、だけど――私を心の底からクズ女だと自覚させたのはお前だぞ、ニーベルング。
お前に心を追い詰められなかったら、私はきっと未来の技術などぶつけなかっただろう。
私が使ったら本当に開発するはずだった人が悲しむだろうと無意識に考え、きっと思い付きすらしなかったはずだ。
だけどそんな余裕はなくなった。引いても進んでもお前の望む『女王様』になるしかなくなったことで憔悴し……その果てにようやく私は自分の望みを自覚することが出来たのだ。
そう、要するに私は周囲からチヤホヤされればそれでいいのよ。
人の迷惑なんて知ったことか。というかどうせコレは実現することのなかった技術なのだから、私が気持ちよく輝くために徹底的に利用してやる。全てを浄化する炎だなんてとても『聖女』らしいじゃないか。
さぁ人々よ求めるがいい。貧民も亜人種も関係なく、どんな願いでも聞いてやろう。悪を倒せと望むのならば、正義感なんてまったくないまま望まれるがままに倒してやろう。
そして感謝しろ。チヤホヤしろッ! 私は私自身の意志で、全人類に媚びてやる!
それが私の『聖女伝』だ――!
「さぁニーベルング、正義の炎で消え果なさいッ!」
正義なんてないよッ! ――と思いつつ、カッコいい表情で魔王をこんがり焼き殺していく。
優れた炎の使い手ゆえか、私の放つ熱エネルギーをある程度中和しているようだが無駄だ。あと数秒で骨までも燃え尽きるはずだろう。
だが、その寸前で――、
「う……ウォオオオオオオオオオッ! 素晴らしい素晴らしい素晴らしすぎて強すぎるぅうううううううううッ! やはりアナタは俺の理想だーーーーーーーッ!」
全身火だるまになりながらニーベルングは立ち上がった! 人間ならばとっくに筋線維など燃え尽きているはずなのに。
さらに怪異は続く。ヤツの身体がブクブクブクブクッと膨張し――やがて弾けるように皮が吹き飛び、内部より紅蓮に燃える巨大鳥……伝説の魔物『フェニックス』が姿を現したのである……!
ただしその頭部には鳥の頭ではなく、ニーベルングの上半身が生えていた。完全にバケモノとしかいいようがない。
コイツ、やはり――。
「ハオ・シンランの人体改造技術……。キマイラの生成だけじゃなくて、そっちまでパクっていたのね」
『グヒャハハハハハハッ! あぁ当たり前だろうッ! 先人の生み出した素晴らしい技術を受け継いでこそ、人類は未来に輝き続けるのだからァーーーーッ!』
ハイになって狂い叫ぶニーベルング。さらに彼は上半身の背中から竜の首を二本も生やし、その口から炎を噴き上げた。
ああ……あまりにもおぞましすぎて吐き気すらしてくる。
あのハオでさえ内心ではモンスター化した自分を嫌悪している節があったというのに、コイツはハオ以上にグチャグチャになった身体を誇らしげに見せつけてくる。
きっとノリノリで自分を改造したんだろう……その姿はまさしく『魔物の王』だった。
『アナタは最強国家の女王となるのだッ! それすなわち人類の頂点ッ、ならば試験相手はバケモノくらいが丁度いいだろうッ!!』
轟々と燃える炎翼を広げ、魔王ニーベルングは再び上空に浮かび上がる。
さらにヤツが指を鳴らすと、あちこちの地面が爆散し、そこから体長十メートルを超える『巨大キマイラ』が何十体も姿を現したのである……!
明らかにハオ・シンランが作り上げたモノよりも技術的に進歩していた。
「呆れた……もしかしてお前、国民の税金をこんなヤツらの研究に使ったの?」
『応ともよッ! 自慢ではないが巨大国家のナンバー2だったのだ。コソコソと逃げ回りながら研究するしかなかった犯罪者とは違い、ポケットマネーも秘密裏に使える人脈も潤沢よッ!
さぁ聖女よ、これより第二ラウンドだ。あの巨大キマイラどもから民衆を守りながら、俺を倒すことが出来るかな!?』
哄笑を上げるニーベルング。
さながらジョーカーを二枚連続で切った気分なのだろう。目をキラキラと輝かせながら笑う姿がいっそ可愛く見えてきた。
ヤツは視線で問いかけてくる。さぁどうする聖女よ、どう逆転する? 今度はどんな未知を見せてくれるのかと。
ああいいわ、だったら見せてあげましょう。
ただし私の力ではなく、素晴らしい仲間たちの力をねぇ!
私は刃を高らかに掲げ、道をバキバキと破壊しながら突き進んできた仲間たちに告げる!
「――支援砲撃、開始しなさいッ!」
「「「イエッサーーーーーッッッッ!」」」
その瞬間、巨大な砲筒のついた鋼鉄のカラクリ――『戦車』に乗ったドワーフたちが、一斉に引き金を引いたのだった!
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