71:借金五億の変な犬と比べて確実に安パイだよ、レイジさん!
書籍版ではレイジさんの小話もあったりします!
ダンジョン探索が終了した日の夜。領主邸にて、私はレイジさんに結果報告を行っていた。
新しいダンジョンが生まれた場合、一級冒険者立ち合いの下で出てくるモンスターの危険性や出現頻度を調査して、その結果によって付近に冒険者ギルドを設立するか決めるんだよね。
獲物が少なすぎるところにギルドを設置しても仕事にならないしねー。中には数日に一匹ザコモンスターの『スケルトン』が生まれるかどうかのダンジョンもあるから、そういうところには定期的に冒険者を派遣して対応しているのだ。
まぁシリウスの街に出来たモノは議論の余地なく危険なダンジョンだから、ギルド設立は確定事項みたいなものだったけど……。
レイジさんは報告書に目を通し終えると、「なんだこれは」と頬を引くつかせた。
「――三時間の探索だけで上位モンスターの『タイタン』三匹、巨大昆虫『ジェノサイド・ビートル』が五匹、凶悪酸性生物『ヴェノムキリング・スライム』が十匹、あとオマケのようにスケルトン数十匹と遭遇かぁ……こりゃぁ間違いなく危険度一級ダンジョンだよ、ソフィア姫。今までよくモンスターが溢れかえらないよう間引き出来てたね……」
「獣人族の人たちが優秀でしたからね。それで、ギルドの設立は?」
「もちろん許可だよ。こんなダンジョン、冒険者たちを常駐させておかないとどうなるか分かったものじゃないって!」
これから忙しくなるなぁ~と彼は呟く。
そうそう、意外だったのはこの人の立場なんだよね。これまでは何の気なしに話しかけてきたけど……、
「それにしても驚きましたよレイジさん。まさかアナタが、ステラの街の冒険者ギルドの『サブマスター』さんだったなんて……!」
「はははっ、オレみたいな若いのが上役を名乗ってもあんまりいい顔されないからね~」
特に偉ぶった様子もなく爽やかに笑うレイジさん。
そう、領主として話をするときに立場を明かされたときはビックリしたものだ。
そのいかにも優男って感じの風貌から男性冒険者たちには舐められ気味だったけど、いやーまさか偉い人だったとは……それなりに親しくしておいてよかったよかった。
「まぁ気にしなくていいって。わかりやすく言い換えると、ステラ支店の副店長みたいなものだからね。こう言うとなんかバイトでもなれそうじゃないかい?」
「って何言ってるんですか……。そんなこと言ったら、冒険者ギルドなんて全ての国に根を広げる大企業みたいなものじゃないですか。たとえ支店の副店長だろうが十分偉いしすごいですよ」
「ありがとうソフィア姫。――ああ、ちなみにこの街にギルドを設立することになったら、オレがマスターになる予定なんだよね~」
ってその若さでまだ出世する気なのッ!? 私なんて前世じゃ二十代になってもまだ底辺冒険者だったのに!
……この人、爽やかな顔の裏で何かやってるんじゃないだろうか。他の出世株を色々な手段で潰しまくったり……ふええ、敵に回さないようにしよ……!
私はレイジさんに握手を求めて手を差し出した。
「……レイジさん、これからも仲良くしていきましょうね……!」
「ん、ああそうだね。これからは街の領主とギルドマスターの関係になるわけだしね。イヌ耳の彼が嫉妬しそうだけど、仲良く連携を取っていこうか」
相変わらずのイケメンスマイルで握手に応えてくれるレイジさん。
一体この爆速出世マンがその笑顔の裏で何をやっているのか、万年底辺だった私はビクビクと恐怖するのだった……!
※レイジさんが有能で前世のソフィアちゃんが無能だっただけです。
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