70:たとえ本当はギリギリの戦いだろうが無駄に顔をよくしたせいでただの強キャラにしか見えないことにそろそろ気付こう、ソフィアちゃん!
――多くの冒険者たちが街に来た翌日。私とウォルフくんは彼らを引き連れ、シリウスの街に出来たダンジョンを案内することになった。
普段はもっとたくさんの獣人族の人たちと一緒なんだけど、そこはレイジさんと話し合ってやめにしておいた。
冒険者は血の気の多い人ばかりだからね。もしも種族間の差別意識などから探索中に喧嘩になったりしたら命取りになるし、それに急造のチームは戦い方が合わない危険性もあるから仕方ないだろう。
設置した梯子を伝って穴の中に降りていくと、そこにはなぜか空まであるような大草原が広がっていた。
改めて見ても地下空間とは思えない。これには要請を受けてやってきた冒険者さんたちもビックリする。
「うぉ~報告にあったけどやべぇな……ここまでおかしなことになってるダンジョンは初めてだ……」
「高位のモンスターが出るダンジョンの証拠だ。おめぇら、可愛いガイドさんの手前、気合い入れっぞ!」
武器を構えて警戒態勢を取る冒険者たち。
……ダンジョンっていうのは不思議な場所で、内部の空間がおかしいことになっているんだよね。
たとえばステラの街にあった雑魚モンスターの多く出るダンジョンなんかも、外から見たら少し平地から盛り上がったくらいの小山なのに、いざ中に入ったら街よりも広い謎空間になっていた。
そして先ほど冒険者の一人が言っていたように、内部の異常さは出現するモンスターの強さに比例する。
十メートル級の巨人モンスター『タイタン』が現れるこのダンジョンは、内部に草原や森や岩場まである特級の異様さを誇っていた。
冒険者ギルド職員のレイジさんによると、ここまでおかしいダンジョンは国に数個もないらしい。
そのため派遣してくれた冒険者たちもみな精鋭ぞろいである。彼らは剣や槍を手に、私のことを隙間なく囲ってくれるのだった。
……って、
「あの……みなさん? 私って中を案内するためについてきたんですけど、先頭に立たなくてもいいんですか……?」
「は、はぁ!? いやいやそんなのあぶねーだろ! アンタがハオ・シンランとかいうテロリストを倒しちまうくらい強いってのは聞いてるが、万が一怪我があったらどうするんだよ!」
こんなに美人なお嬢ちゃんに先を歩かせるわけにはな~と頷き合う冒険者さんたち。
ふぉっ……ふぉおおおおーーーーッ! 何この人たちめっちゃいいヒトじゃーーーーんっ!?
そうだよね、よく考えたら私って領主なんだからわざわざ身を危険に晒すことなんてないじゃんかッ!
そもそも私、本当は雑魚だからッ! 幼少期から修行したり狩りをしまくってきたおかげでちょっと強くなれただけで、もう才能の伸びしろなんて残ってないしいつもギリギリで余裕がない勝利を重ねてきただけだから!
あーあ、それなのにガンツさんをはじめとした獣人族の戦士たち(※出会い頭にボコった人たち)は、「ソフィア様ッ! 戦い方を見せてくださいッ!」とか頼んでくるし、忠犬のごとく私の側に控えているウォルフくんも「後ろにいろって言いたいが、おめぇのほうが強いからなぁ……」なんて悔しげにありえないこと言ってくるしで、いつも前衛を任されていたんだよねッ!
それに比べたら冒険者さんたちのなんと紳士的なことか……ッ!
私は内心感激しつつ、でも戦闘意欲ゼロ・自己保身マックスのクソ領主(※退職希望)とバレないために、表面上は不服な表情をしておいた。
「もうみなさんっ、私だってちゃんと戦えるんですからね!? 領民たちの平和な日々を守るためにも、どうか私にも剣を振るわせてください!」
そう言うと「ほぉ……こりゃあ勇ましいお姫様だ。だがまぁここはオッサンたちに任せとけや」と感心しつつも柔らかく参戦を拒んでくれたのだった。
よーし、これでやる気があることは証明したねッ!
その上で『みんなに戦うことを止められちゃったので仕方なく控えてます』って免罪符をゲットしたので、今回はもうサボり放題だッ! やったねソフィアちゃん、久々にダラダラできるよ!
さ~て、これで今日の私は観戦モードだ。一級冒険者さんたちのバトルを眺めながら、持ってきたお茶でも啜ってますかなっと。
――そんなのんきなことを考えていた時だった。不意にウォルフくんが鼻をスンスンと鳴らすと、「おめぇらここから離れろッ、巨人野郎が出るぞッ!」と叫んだ。
獣人族は身体能力に加えて嗅覚も優れているため索敵も得意なのだ。だが冒険者たちは理解できず、いきなり何を言ってるんだと戸惑った数瞬後――、
『ゴォロォスゥーーーーーーーーーーーッ!!!』
足元の地面が爆散し、そこから体長二十メートルものタイタンが姿を現した!
あちゃー、極まれに出るめっちゃ大きくて強いヤツだ!
「うわぁーーーッ!?」
「なんだとォっ!?」
衝撃で吹き飛ばされていく冒険者たち。
私はウォルフくんが叫んでくれたからすぐさま飛び退けたものの、多くの人たちはタイタンの奇襲に反応できず地面を転がってしまう。
『シネーーーーーッッッ!』
そこに容赦なく繰り出される巨人の拳。人間を丸々包み込めるようなその鉄拳が炸裂したら、一撃で何人もの人間が殺されてしまうことだろう。
っていけない――ッ!
「させるものですかッ! 『ハイドロバースト・フレアボム』!」
足元より水蒸気爆発を発生させる。その爆風によって飛翔した私は、一瞬でタイタンの腕を切断。本当にギリギリのところで冒険者たちを助けることに成功したのだった。
だがここで油断してはいけない。タイタンが痛みと驚きで硬直している隙を突き、このまま勝負を終わらせてやるッ!
私は空中で双剣を構え、タイタンに向かって斬りかかるッ!
「ハイドロバースト・六連発動ッ!」
そして繰り出すのはヴィンセントくんを参考とした超高速戦闘だ。
少しでも失敗すれば自爆しかねないが、もはや伸びしろのない凡人である私が上位のモンスターと戦うには、多少のリスクは覚悟しないといけないだろう。
私は再び足元から爆発を起こし、音を超えたスピードでタイタンのもう片方の腕を切断。さらに爆風を放つことで無理やり体勢を変え、もう一度足元から爆発を起こして右足に斬りかかり、次に左足を斬り飛ばして一切の抵抗が出来なくさせる。
ここまでにかかった時間は1秒。もはや何が起きているのかわけが分からないといった様子のタイタンの顔目掛け、最後の飛翔を開始する。
「(私の)平和のために、お前はここで滅びなさいッ!」
叫びと共にその首を切断し、これで戦いは決着だ。
私が地面に降り立った瞬間、バラバラにされたタイタンの身体が音を立てて地面に落ちていったのだった。
ふぅ~~~……本当に危ないところだったね……!
これからは冒険者さんたちにダンジョンの間引きをさせまくってラクさせてもらう予定なんだから、ここで半壊とか困るって!
私は胸を撫でおろしながら、へたれこんでいた冒険者さんたちのほうを見る。
「よかった、みなさん怪我はなさそうですね。それではダンジョンの探索を続けましょうか!」
そう笑いかけると、彼らはしばし黙った後――、
「「「そ、そうですねッ! ではソフィア様、先頭をよろしくお願いしますッ!」」」
そう言ってピチっと一列になり、まるでカルガモの子供たちのように私の後ろに並んだのだった。
――って、みんな守ってくれるんじゃなかったのーーーーーーーッ!? ええええええどゆことぉーーーーーッ!?
書籍版『貧乏令嬢』、いよいよ今日発売です!
《読者の方へのお願い》
本作を
面白い! 早く更新しろ! 続きが気になる!
そう思って頂けたら、
下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてください!
よろしくお願い致します!
↓また画像から予約サイトに飛べます!




