66:衝撃の再会
まさかのあの人、再登場……!?
――『ダンジョン』の出現から数時間後。私とウォルフくんはどうにかタイタンの群れの討伐に成功した。
今はその後始末中だ。亜人種のみんなに指示を飛ばして、壊れた建物の残骸を片付けていく。
「みんな、突然のトラブルで疲れているだろうから無理だけはしないでね。体調が悪かったらすぐに私に報告してね?」
「は、はいっ! ……あの、領主様こそ疲れていないのですか? 巨人と戦ったあとなのに……」
「たしかに疲労もあるけど、みんなが頑張ってくれているのに休むわけにはいかないわ。……だって私の使命は、アナタたちを幸せにすることなんだから」
「りょ、領主様……!」
疲れ顔に小さく笑みを浮かべながら放った言葉に、何人かの亜人種たちが打ち震えた。
うんうん、そうやってみんなどんどん私を好きになってねッッッ! 疲労した身に鞭を打ってでも領民たちに尽くす健気な私(※という演出)を見れば、もう絶対に反逆する気とか起きなくなるだろう。
ああ、本当に今回の事件は経済的に大損だ。タイタンどものせいで街のあちこちがぶっ壊れて修繕費を考えたら鬱になりそうなんだから、せめて好感度アップのシチュエーションくらいにはしてやらないと釣り合わない。
まぁ怪我人はほとんどいなかったのは幸いなんだけどね。獣人族のまとめ役であるガンツさんが早急に避難誘導を行ってくれたことで、怪我をしたのはウォルフくんくらいだ。
本当にウォルフくんには感謝してもしきれないね。私が来るまで一人で何体もの巨人を足止めしてくれたのだから。
さて。被害状況のチェックもあらかた終わったし、散々モンスターを吐き出しまくったおかげでダンジョンも今は鎮静状態だ。モンスターの生成から外に溢れ出すまでそれなりの時間がかかるだろう。それまでに色々と手続きをしなくっちゃね。
まずは王都のほうにダンジョンが発生したことを報告して、それから冒険者ギルドにダンジョン内部で湧き出すモンスターたちの定期的な殲滅を頼んで、それから……、
「――アナタたちのことも考えなくちゃね」
「「「はっ、ははぁッ!」」」
ちらりと私が一瞥すると、貧民の集団が一斉に頭を下げてきた。
……本当にこの人たちは何なんだろう。少し聞いてみたら『よく支援してくれる謎の男にかき集められてここまで来た』のだとか。
その男によると私はジークフリート王の妾で、大金を貰いまくって亜人種ハーレムを作っているとかそんなことを言っていたらしい。
それでみんなでお金をせびりに来たって……はぁぁああああ、誰なのよそんなアホみたいな嘘をバラまいたのは……。
そりゃ大金が送られてきたばかりだけど、それはあくまでもニトロを開発した報酬だからね。あんな頭トンチキの戦争バカの妾なんて絶対に嫌だし。
ていうか、その謎の男はどうして王室からお金が送られてくるタイミングピッタリに、貧民の集団を送り付けてこれたわけ? まさか城の関係者だとか?
うーーーん……まぁ考えても仕方がないか。一応そのことも王様に相談しておこっと。
ともかく今は貧民たちへの対応だ。さぁ散った散ったと追い払うのは簡単だけど、私自身貧乏の苦しさを知る者としてはそれはちょっぴり心苦しいし、どうしたものか……。
そう思い悩んでいた時だった。ふいに貧民たちの中から、すらっとした細い手が挙げられたのだ。
その手の主は私にこう進言してきた。
「――領主ソフィア殿よ、どうか我々を労働力として使ってはくれまいか? 感謝の意を込めてぜひともアナタの下で働かせてほしい。
特に我は医療の心得がある……きっとアナタの役に立てるだろう」
そう言って彼は集団をかき分けて私の前に出てきた。そして片膝をつくと、両手をがっちりと合わせたような異国風のポーズで再度告げてくる。
「あいにく記憶がおぼろげゆえ、自分自身でも出生のわからぬ身であるが――どうかこの『シン』をアナタの配下にしてくれまいか?」
「っ――」
……彼の姿を見た瞬間、私は言葉を失った。
濁りを含んだ紫の瞳に、雪のように白い肌と白銀の髪……ああ、間違いない。どういうわけか青年から少年の姿になっているものの、決して見間違うわけがない。
シンと名乗ったその人物は、明らかにかつて殺し合った相手――『ハオ・シンラン』その人であったのだから。
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