52:族長を殺そう!!!
ガンガンガンッ! という音が地域一帯に響き渡る。
私とウォルフくんは、シリウスの街にある鍛冶場の付近に来ていた。どうやらドワーフさんたちは言われるまでもなく仕事に従事しているようだ。
鉄を叩くけたたましい音にウォルフくんは顔をしかめた。
「んあ~、うるせぇなぁ……! で、ドワーフの族長はどこにいるんだよ」
「あはは……どこの鍛冶場からも音が響いてるからねぇ」
鍛冶をするための建物は一つだけではない。
元々このシリウスは亜人種たちを働かせるために作られたんだからね。煙突からモクモクと煙を出す平屋がいくつも並んでいた。
う~ん、どこの建物から当たろうかと私とウォルフくんがキョロキョロしていると、
「っておいソフィア、なんか立札が立ててあるぞ!? 『こちら、族長の鍛冶場』だってよ!」
「お~本当だねぇウォルフくん! じゃ、ウォルフくんはここで待ってて。警戒させたくないし、まずは一人で行ってくるから」
その言葉に彼は不安げな表情をするけど仕方がない。エルフと同じく、獣人族とドワーフ族は仲が悪いらしいからね。
肉体こそ自慢の武器だと思っている獣人族と、鉄を打って最強の武装を作り出すことに固執する彼らでは、何やら美学が違うんだとか。
「しゃーねぇなぁ……。ここで待ってるから、何かあったらすぐに呼べよ?」
「うん、いざというときは頼りにさせてもらうね」
私は彼に手を振って、族長の鍛冶場だという建物に入っていったのだった。
◆ ◇ ◆
「――な、なんで地下なんかが……?」
なんてことはない平屋に入ったはずの私は、なぜか地下に続く階段を降り続けていた。
そうしてようやく地面に足を着けるも、目の前にはずーっと先まで続く通路が。なんか、ハオ・シンランの秘密基地を思い出して嫌な気分になるんですけど。
念のために剣の柄に手を添えながら歩いていくと、入口にあったような立て看板があった。
魔法によって火を灯して何が書いてあるのか見る。
するとそこには、
『これは試練じゃ。生き残りたくば、ワシの下まで全力で走ってくるがいい!』
その文章を読み取った瞬間、ゴロゴロゴロゴロォオオオオオッ! という音が私の背後から響いてきた!
振り返ると、そこには通路を埋め尽くすような巨大な鉄球が、猛スピードでこちらに迫ってきていたのだ!
「えっ、えーーーーーー!?」
生き残りたくば全力で走ってこいってこういうことぉ!?
なんてアホなことを考えるんだろうかっ。怒りたい気持ちでいっぱいだけど、今はとにかく走り抜けるしかない。
水蒸気爆発による加速は――使えないか。もしも地下通路が崩壊したら生き埋めになってしまう。融合術式の制御もまだ完全に出来ているわけじゃないしね。
仕方なく私は、水を噴射しながら前へ前へと駆けていく。
「もうもうもうっ、ドワーフの族長め……見つけたらとっちめてやるんだから!」
プンスカしながらそう呟いた時だった。ふいにチリっとこめかみが焼けるような感覚が走る。
直感のままに双剣を抜くと、なんと横の壁から無数の矢が飛び出してきたのだ!
って殺す気マンマンじゃんこれーーーーーー!?
「死んで、堪るかーーッ!」
左右の刃に炎を宿し、全ての矢を切り払う!
だけどトラップはこれだけじゃなかった。続けて剣が、槍が、斧が、砲弾が、壁や天井からヒュンドンボカンッと飛び出しまくる!
って何なのよこの通路ッ!? 獣人族の襲撃が可愛く思えるくらいに危ないんですけどーーーーーーー!?
「ふざけるなぁああああああッ!」
全方位から迫る殺意を前に、私は怒りで吼え叫んだ!
ああ、がむしゃらに走りながら剣を振るうのでは駄目だ。地面を蹴る衝撃で体幹を揺らしていては、剣を振るう手に乱れが生じてしまう。
ゆえにこそ、私は魔力のコントロール精度をさらに高めた。
足元から水を噴射して走るのではなく、足と地面の間に水を常駐させながら踵より一点噴射することで、氷の上を滑るような疾走方法を実現させる――!
「これなら、いけるッ!」
危うく転びそうにもなるけど、身体の揺れは大きく減った!
地面を蹴る回数も減少したことで、体力と余裕を全て剣技に注ぎ込める。
私は迫ってくる攻撃を、双剣によって叩き落としていった――!
かくしてどれほど走り抜けたか。ついに私の目の前に、ちょうど背後の鉄球がハマるくらいの大穴が現れた。
さらにその先では、土埃にまみれた身長百センチもない少年が、驚愕の目で私を見ていた。
「おっ、おおおおおっ、まさかノリと勢いで作り上げた『殺意マシマシ♡トラップ通路』を突破してくるとは思わなかったぞ! よく来たのぉ、ワシこそが族長じゃ~い!」
なるほどなるほど、彼がこのクソ通路を作り上げたんだね。
私は最後の力を振り絞って大きくジャンプし、鉄球が落ちる用の穴を飛び越える。
そうして無邪気に笑うドワーフの族長に向かい、
「――お前は死ねぇええええええええええええええええええええッッッ!」
その顔面へと飛び蹴りを叩きこんだのだった!
ギョェエエエエエエエッと絶叫を上げながら吹き飛んでいく族長。かくして彼は岩盤に思いっきり衝突し、全身の骨が砕け散って倒れ込んだのだった。
よし、悪は滅びた!
そういえばここに何しに来たんだっけと思いつつ、私はクソ通路を後にしていくのだった。
・戦い慣れ過ぎてるせいで殺すと決めたら躊躇なく殺しにくるぞ、ソフィアちゃん――!
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