38:首都『ネメシス』
前回のあらすじ:ヴィンセントくんが無自覚マゾに目覚めました
「さぁ、着いたぞソフィア! ここがセイファート王国の首都『ネメシス』だ!」
「わぁ……!」
屋敷に泊まった日の翌日。白馬に乗ったヴィンセント王子に導かれ、私たちの馬車はついに王都へと辿り着いた。
はえ~……商業都市も立派だったけど、ここはもっとすごいなぁ……! とにかく建物はめっちゃ高いし、人は溢れかえってるし、流石は王様の住んでる街って感じだなぁ……!
よ、よーし、街を歩く時は田舎者オーラが出ないように気を付けよっと! 元は根暗女だもん、悪目立ちするのは恥ずかしすぎるからね!
「ほらウォルフくん、王都に着いたよー? 降りるから起きて起きてー!」
「んぁぁ……柔らかいからもう少し……」
「だーめ」
お膝でグースカ寝ているウォルフくんを退けつつ、馬車から降りようとした時だった。ヴィンセント王子が、そっと手を出してきたのだ。
「えっ、王子……?」
「そら、早く手を取るがいいっ! ……僕は一応、王国からの使者だからな。馬車から降りるときに君がよろめいてしまわないよう、気を回さなければいけないだろう!
べっ、別に君の手を握りたいとか、そういうつもりはないんだからな!?」
プイっと顔を背けながら、頬を赤くするヴィンセント王子。
……って、ええええええええええええええッ!? えっ、なに!? 昨日は私に対して怨みマックスだったのに、なんでそんなにあからさますぎるツンデレな態度になってるのッ!?
私、そこまで好かれるようなことはしてないよね!? むしろ『王子様のせいで貧民が差別されたらどうするんですかぁ!』って感じの苦言を言ったり、最後にチョロっとからかったりして、嫌われはしなくても苦手に思われるようなことしかしてないよね!? 好感度が中の下くらいになるよう調整したよね!?
えっ、えっ、何がヴィンセント王子の琴線に触れちゃったの!? ウォルフくんやウェイバーさんみたいに溺愛されすぎるのは困るんだけど!?
……と、とりあえずもう少しだけからかって好感度を下げておこっと!
私はヴィンセント王子の手を取りながら、クスリと笑って囁いた。
「フフッ、王子様ってば手が震えているわよ? もしかして……緊張してたり?」
「ハウッ!? そ、そんなわけないだろうがぁあああ!!!」
おーヴィンセント王子が怒鳴った! これは苦手に思われること間違いなし!
よしよし、念のためにもう一発畳みかけておこっと!
私は馬車から降り立つと、ピンと指を立てて王子様に言い放つ。
「こーらっ。アナタは王族なんだから、ちょっとしたことで怒鳴り声を上げちゃいけないわ。私と約束できるかしら……ヴィンセントくん?」
「ヌァフッ!? ヴィ、ヴィンセントくんッ!? お、王族である僕をそんな親しげに呼んで、しかもまるで……『姉』のような態度で、叱るなんて……! 叱って、くれる、なんて……ッ!」
よーしよしよし! ヴィンセントくんってば怒りと恥ずかしさからかビックンビックン震えてる! これはもう好感度の下落間違いなしでしょ!!!
ヴィンセントくんってお兄ちゃんが二人いるから、きっと弟扱いにはウンザリしてるはずだよね! 絶対に家族から甘やかされてるはず! それに叱られ慣れてないだろうから、こんなことを言われちゃったら屈辱に感じるだろうな~!
うふふっ、もしも彼がマゾで家族愛に飢えてるとかだったらもう墓穴を掘りすぎて大惨事もいいところだけど、ワガママ放題な彼に限ってそんなことはないよね~! というわけで問題解決っと!
私は顔を真っ赤にして立ち尽くしている王子様をスルーし、ウェイバーさんに声をかける。
「それじゃあウェイバーさん、これからどうすればいいのかしら?」
「ええ、ひとまず王室御用達のドレスショップに向かい、着付けを行っていただきます。アナタ様用に国王自らがドレスを用意してくださったそうなのでご期待ください。
そして夜になりましたら、王城のほうで開かれる定例舞踏会の場で、勲章の授与が行われることになっております」
ひっ、ひえ~!? 舞踏会の場でってことは、上流階級の人たちがいっぱい集まってるってことでしょ!?
そんなところに底辺令嬢が突撃したら、みんなからいじめられること間違いなしだよ……! ご飯食べて勲章貰って早く帰ろっと!
とんでもないことになっちゃったな~と内心緊張していると、ウェイバーさんが何やらモジモジし始めた。
えっ、なに!?
「どうしたの、ウェイバーさん? 他に何かあるの?」
「あっ、いえ、その……くだらないことを言いますがね……? 私のことも、『ウェイバーくん』と呼ばれてもいいのですよ……?」
って何言ってるのこの人ッ!? (肉体的には)十五歳の私よりも十歳近く年上だよね!?
「えーと……ウェイバー、くん?」
「ハゥアッ!?」
……謎の叫び声を上げながら硬直してしまうウェイバーさん。
こうしてビックンビックン震えてるイケメン王子様と石像みたいになっているイケメン執事さんのせいで、私たちは通行人みんなから注目を集めることになったのだった……!
は、恥ずかしいーーーーーーーーーーっ!!!
・墓穴堀りの名人、ソフィアちゃん――!
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