36:童貞を騙すな、ソフィアちゃん!
キャラの年齢についてですが、ウォルフくんは20歳くらい。ウェイバーさんは二十代前半。ヴィンセントくんは十代後半くらいです。
ちなみに(肉体年齢15歳のソフィアちゃんに触手ビロビロしながら構われたがっていた)ハオ様は、30歳です。
「このぉ……かつてはよくも僕のことを馬鹿にしまくってくれたなぁーッ!? おかげで僕の名声はボロボロだぁーッ! けっ、決闘だー! ソフィア・グレイシア、僕ともう一度決闘しろぉおおおッ!」
「えぇ……」
ガタガタと震えながらも剣を抜き、私を睨み付けてくるヴィンセント王子。
そんな彼を前に、私は心から国王陛下を恨んだ。
もうっ、何なのあの人!? わざわざ因縁のあるコイツを使者として送ってくるとか、何考えてんのーっ!?
とてもじゃないけど正気の沙汰とは思えない。
まーためんどくさい人に目を付けられちゃったなぁと私が溜め息を吐くと、ヴィンセント王子が顔を真っ赤にした。
「ムキッー!? なんだ貴様っ、今の溜め息は!? また僕のことを馬鹿にしてるのかー!?」
って違うから!? ていうかヴィンセント王子、私に対して剣を向けたりすると……、
「番犬パンチッ!」「執事キックッ!」
「ってうぎゃぁあああああああッ!?」
……ほらこれだ。
ウォルフくんとウェイバーさんの拳と蹴りを受け、ヴィンセント王子はごろごろと転がっていった。
ふ、二人とも容赦がないなぁ……!
「俺のソフィアに剣を向けんな。――コイツを傷付ける奴は、命を懸けてでも殺す……!」
「ご安心くださいソフィア嬢。――アナタに仇なす害虫は、私が全て排除しますので……!」
ひぇええええええええッ!? なんか二人からの愛情がどんどん重くなってないッ!?
私、もしもこの人たちに薄汚い本性がバレちゃったらどうなっちゃうんだろう……!
うぎぎぎぎぎぎ……彼らが私に対して抱いている『聖女像』を崩すわけにはいかない。
私はぶっ倒れているヴィンセント王子にしかたなーく近づき、心配してる(っぽい)表情で彼の顔を覗きこんだ。
うわ~まつ毛長いな~。
「えっと……大丈夫?」
「うっ、うーん……ってファッ!? な、なんだ貴様ッ!? 僕をどうするつもりだッ!」
あ、起き上がった。線が細いわりには意外に頑丈なのかもしれない。
私はビクビクしているヴィンセント王子の肩にそっと手を置き、寂しげな声で言い放つ――!
「ねぇ……もうやめましょうよ、ヴィンセント王子……! 同じ王国に生まれた私たちが、どうして憎み合わなくちゃいけないの!?
王国からの使者であるアナタなら知っているはずよ。大事件を巻き起こした『復讐の王子』……ハオ・シンランという男の、憎悪にまみれた悲しい結末を……!」
「っ、そ、それは……」
よぉしッ、怒り一色だったヴィンセント王子の表情が曇ったッ!
どうせキャンキャン噛み付いてくるコイツのことはどうにかしないといけなかったんだ。ここで一気に畳みかけてやる!
私はハオとの戦いで身に付けた新必殺技、『目から水魔法ピュルピュル』を発動させた!
ヴィンセント王子の顔に動揺が走るッ!
「えッ、泣きっ!? えっ!?」
「お願いヴィンセント王子っ! もう私は……誰も傷つけたくないの……っ! 誰の命も奪いたくないの……っ!」
「なッ――!?」
決まったーーーーー! ガツンと殴られたかのような表情で固まるヴィンセント王子ーーーーッ! さぁ決まったッ! これは決まったッ!
泣いてる女の子に対してッ! 罪悪感に苦しんでいる女の子に対してッ! 強く当たれる男の子なんているわけがないッッッ!
ぶっちゃけ私をぶっ殺そうとしやがったハオのことなんてまったく気にしてないし、アイツのことだからミミズに転生して生きてそうだなぁ~とすら思ってるけど、王子様と仲良くなるために利用させてもらいましょうッ!
さぁラストだ。私はヴィンセント王子の肩を握る手に力を込め、潤んだ瞳に決意の光を輝かせる(※ホントは何も決意していない)。
「……ヴィンセント王子。私のことが気に入らないというのなら、どれだけ罵ってくれても構わないわ。
だけどお願い……どうか出会った時のように、貧困層を差別するようなことだけは言わないで。
アナタは国を代表する『王族』なのよ……!? そんなアナタから蔑まれたら、いずれそれは風潮となり、貧しい人たちは国全体から迫害されることになってしまうわ……!」
「それは……!? っ……そう、か……。だから貴様は……いや、キミは……あえて僕のことを過剰に罵り……名声を失墜させようとしたのか。
『第三王子ごときの言うことなんて気にすることはない』と……そう民衆に思わせて、差別的な風潮を生ませないために……憎しみの種を生まないために、王子である僕から恨まれることになっても……ッ!」
「その通りよ」
そうじゃないんだが。
ぶっちゃけコイツをコケにしまくったのは、単純に憎かったからなんだけどね。ぶっ殺してやる気マンマンだったし。
お前さぁ……お金ないことを罵るとか、マジで殺されても文句言えないからなホント……ッ! 今度バカにしたら絶対に殺してやるからなぁぁあああッ!
――そんな思いを胸に秘め、私は柔らかく微笑んだ。
「本当は誰も傷付けたくはないけれど……でも、ハオのように平和を脅かそうとする者が現れたのなら、私は戦うわ。民衆を代表する貴族として、命を懸けてみんなを守ってみせる。
だからヴィンセント王子……アナタも王族として、どうか誇り高い姿を見せて頂戴」
「っ……フン、いいだろうっ! だがそのっ、あれだ! キミも貴族として恥ずかしい姿を見せるんじゃないぞ!?
つまりは、その……」
「泣くな、って言いたいの? フフッ……励ましてくれてるのね、ヴィンセント王子」
「なっ、いや、ちがっ……!? う、う~~~~~~~~っ! やっぱりキミは苦手だぁあああああ!!!」
顔を真っ赤にしながらどこかに走り去ってしまうヴィンセント王子。
あの調子ならもう大丈夫だろう。最底辺だった好感度が、中の下くらいにはなったはずだ。
最後にちょろっとからかってあげたし、変に近づいてくることもないと思う。
よーし、一件落着っと! 一つ問題が片付いたぞー!
私は晴れやかな気持ちで、好感度が高すぎてヤバい従者二人と屋敷へ入っていくのだった。
これ以上愛が重すぎる人が増えないように気をつけよーっと!
次回はヴィンセント視点です!
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