35:感動の再会!
ど、どうしてこうなった……!
ガタゴトと揺れる高級馬車の中、私は内心頭を抱えていた。
ダーニック大公の訪問から一週間。彼より与えられた最高級回復薬のおかげで元気にされてしまった私は、逃げる暇もなく馬車に詰め込まれてしまった……!
向かう先はセイファート王国の王城……国王陛下のところである!
ってうぎゃああああああああああああああッ!? 貴族の中でも下っ端中の下っ端な私が、どうしてこんなことにッ!?
私、小心者な元根暗女なんだよ? 絶対にプレッシャーで死んじゃうよぉ……!
しかも国王陛下っていったらアレだよね……アホ王子ヴィンセントのお父さんなんだよね……!?
う、うわーすごい不安になってきたぞぉ! ちょ、ちょっとどんな人か同席してるウォルフくんに訊ねてみよっと!
「……ねぇウォルフくん、国王陛下ってどんな人なの?」
「あん? あー……一言で言うなら、クソ野郎だな」
でっすよねーッ! まともな親だったらヴィンセントみたいな成金差別野郎を生み出しませんよねー!
……ていうか現国王のジークフリート陛下といったら、経歴だけを見てもヤバい人ってわかるからね。
二十年ほど前に王座についたその日、国民への挨拶で「シンラン公国とは最近不仲なんで侵略します」宣言(馬鹿じゃないの?)。
国王自らが戦場に立ち、圧倒的な戦闘力と卓越した指揮によって、瞬く間に公国を滅ぼしたという。
それからもウォルフくんの故郷である獣人国などを強引に侵略していき、平和的だったセイファート王国を一大軍事国家に作り替えたのだった。
はぁ、そんな人に会わなきゃいけないのかぁ……と思ってると、ウォルフくんが忌々しげに舌打ちをする。
「とにかく頭のネジが外れた野郎でよぉ……俺のことを奴隷にしやがった日に、こう言ってきたんだよ。
『最近は暗殺者がめっきり来なくなってしまってねぇ。刺激がなくて面白くないんだ。――そこでウォルフよ。君は毎日好きな時に、私のことを殺しに来なさい』……ってよ」
「え、えぇ……!?」
そ、そんな理由でウォルフくんのことをペットにしてたの!?
暗殺者がこなくて面白くないとか意味わかんないんですけど……!
「……それからは何度も襲い掛かったが、一度たりとも攻撃を当てられなかった。気付いた時にはぶっ飛ばされて、王城のベッドでおねんねだ。
ンで結局、俺のことにも飽きちまったのか……、」
「『冒険者になって五億ゴールド稼いで来なさい』って言われて、街にほっぽり出されたってわけね」
「そういうこった。本当に勝手な野郎だぜ……」
ウォルフくんはうんざりとした顔で、首に付けられた『呪いの首輪』を指差した。
国王陛下の許しがなければ外せないという呪具だったか。特に痛みなどはないそうだが、屈辱は相当なものだろう。特に獣人族の人たちはみんな、抑圧を嫌い自由を愛する性格らしいし。
ちなみに私は屈辱とか気にしないので、もしも私なら首輪が付いたままだろうが逃亡するんだけどね。
それに一年以内に五億稼げとか無茶苦茶だしさぁ……そもそも王族のくせに大金を要求してくるのはどうかと思うよ? 私、がめつい金持ちは嫌いなのでウォルフくんを全面的に応援します!
「頑張ろうよウォルフくん! 国王陛下のこと、見返してやらないとね!」
「ソフィア……おうよ! 五億稼いで自由になったら、決闘を挑んでぶっ殺してやるぜ!
お前と一緒に戦ってきたおかげか、なんか変な力にも目覚めたしな……!」
そう言ってウォルフくんは、手のひらから『漆黒の魔力光』を放つのだった。
最初に知ったときは驚いたものだ。急にウォルフくんが病室に飛び込んできて、『ソフィアアアアアア!!! お前のことを考えてたら身体から変なのが出てきやがったぁぁああああ!!!』とか叫ぶものだから、てっきり別のモノを想像して……いや、それはともかくッ!
とにかくウォルフくんは、ハオとの戦いを通して魔法使いとしての才能に目覚めたらしい。
彼が家を持ち上げたり空高くまでジャンプをしたのは、たぶん何らかの魔法による力だろう。
「それでウォルフくん、自分の魔力属性はわかった? その魔力、火とか水とかに変換できそう?」
「ん~わかんねぇ。ただ身体の一か所に集めたりしたら、そこがすっげー熱くなってものすごい力が出たりするぞ!」
なにそれホントにわけわかんない……身体を直接強化する魔法なんて聞いたことないんですけど……!
まぁ、そこらへんの難しいことは王都の魔法学院あたりで調べてもらおう。そこでは日々魔法の研究を行ってるそうなので、たぶん分かる人がいるだろう。
どーせ王都には今から行くことになるしねぇ……はぁーあ……。
国王陛下と会わなきゃいけないことを思い出し、改めて憂鬱な気分になった時だった。
青々とした草原しか見えなかった窓枠に、立派な館が映り込んだのだ。そこの門前で馬車は止まると、馬を操っていたウェイバーさんが声をかけてきた。
「ソフィア嬢……とついでにウォルフ。今日はこの館で宿泊しますよ。ここは王族所有の別荘で、使者の方が歓迎してくれるそうです」
「俺はついでかよクソ眼鏡」
「黙れクソ犬。お前はそのへんで野宿してろ」
……相変わらずな調子のウォルフくんとウェイバーさん。そんな二人に苦笑いをしながら、私は馬車から飛び降りた。
するとその時、ギィィィィイという古めかしい音を立て、館の扉が開かれて――、
「ようこそおいでくださいました、英雄様。僕はジークフリート陛下より派遣された使者にして、第三王子の……って、げぇえええええええええええええッ!? おままままままままっ、お前はァッ!?」
顔を青くしてガタガタと震える金髪の美少年。
なんと王国の使者に選ばれたのは、かつて私と殺し合った第三王子・ヴィンセントだった!
って、ふざけんじゃねぇぞ国王陛下ぁぁあああああッッッ!? アンタ何考えてんのマジでぇぇぇぇええッッッ!?
国王陛下「ドッキリ大成功!」
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