32:やけっぱちのソフィア
投稿が遅れてすいませぬ! ちょっと病気してます!(現在進行形)
ハオが勝手に逃げてくれる。私にもようやく幸運が巡ってきたんだ!
――そう思ってた時期が私にもありましたッ! でも、現実はこれだよチクショウッ!!!
「ソフィア率いる愚か者どもよッ! 国家反逆組織『冥王星』の首領として、お前たちを根絶やしにしてくれようッ!」
そう言って狂った瞳で私を睨むハオ・シンラン。
って率いてねぇよ!!! いやまぁたしかにウォルフくんは私を慕ってくれてるし、他の民衆たちも私が掻き集めてきちゃったんだけど、人を敵対者たちのリーダーみたいに扱わないでくれませんッ!? それ絶対に集中攻撃してくるヤツじゃんッ!
私、他のみんなと違って敵意ゼロだから……! もう生きて帰れるならアンタのことなんてどうでもいいから!!!
くそー……こうなったら殺ってやるッ! ただし、数の暴力で一気にブチ殺してやるわ!!!
私はハオへと剣を向け、怒り狂う民衆たちに指示を下す――!
「ハオ・シンランッ! 平和を乱したお前の存在を、私たちは絶対に許さないッ! ――さぁみんな、その怒りを奴へとぶつけてやりなさいッ!」
「「「うぉおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!」」」
咆哮を上げる民衆たち。こうして千人を超える人々による一斉砲火が始まった!
無数の弓矢と魔力弾がハオに向かって射出され、奴の姿は一瞬にして土煙の中に消えていった。
さらには駄目押しとばかりに、武器を構えて突撃していく人々だったが――、
「――無駄だぁぁぁああああッ!!!」
次の瞬間、土煙の中より紫電の爆雷が迸ったッ!
「っ、あぶねぇソフィアッ!」
咄嗟に落ちていた瓦礫を盾とし、私を抱き寄せてくれるウォルフくん。
そんな状況下で私は見た。ハオの放った爆雷の衝撃により、千人を超える人々が絶叫を上げながら吹き飛ばされていく光景を――!
やっ……やばすぎでしょぉおおおおッ!? ウェイバーさんもすごかったけど、どうなってんのその魔法の威力ッ!?
私は改めて『上級魔法』の使い手の力に戦慄する。
魔法とは、主に出力によって三段階にクラス分けされるものだ。
握りこぶし程度の魔法弾が出るのは『初級魔法』、それよりもさらに威力が高かったり長時間維持されるものが『中級魔法』といった具合に。
そしてそれのさらに上……災害級の威力を誇るのが『上級魔法』だ。
「クククッ……まったく愚かなことだ。ただの人間ごときが、我を殺せるわけないだろうが……!」
傲慢な物言いをするハオだが、彼の言葉に間違いはない。
十人に一人くらいはいる魔法使いの中でも、上級魔法を使える者は一万人に一人いるかいないか程度とされている。
そんな希少かつ最恐の力を――よりにもよって、私の命を狙う者が持ってしまっていた……!
「さぁソフィアッ! 我を怒らせた罪、その身を持って償うがいいッ!」
う、うわぁぁあああああ! めっちゃ私のこと睨んできてるよぉおおおッ!? ……い、今からでも謝ったら許してくれるかなぁ?
電流を纏った触手を蠢かせるハオを前に、私が土下座をかまそうとした時だ。
それよりも早くウォルフくんが拳を構えて、ハオに向かって叫びやがった!
「調子に乗るんじゃねぇぞ悪党がッ! 街のみんなの思いに懸けて、俺とソフィアがお前を倒すッ!」
って、“俺とソフィア”ってどういうことぉ!!? もう巻き込まないでよぉおおおおッ!!!
内心吐きそうになる私。そこに追撃するように、倒れ伏した民衆たちが声を上げる。
「ソ、ソフィアさん……どうか、オレたちの仇を……!」
「後は頼みました……!」
「お願いします……ヤツを倒してください……!」
だっ、だからそういうのやめてって!? もう完全に逃げられないじゃん!
……あーもうやるよッ! やってやりますよッ! やってやらぁコンチクショウッ!
私は双剣を構え、ハオに向かって宣戦する――!
「……みんなの想い、受け取ったわッ! ハオ・シンラン! 正義の刃でお前を倒すッ!」
うわーーーん! こうなったらやけっぱちだー!
正義心なんてこれっぽっちもないけど、死んだ時に出来るだけカッコよく語り継いでもらうために、正義の味方になってやるッ!
「行くよウォルフくん、覚悟はいいッ!?」
「おうよォッ! お前とだったら地獄にだって付き合ってやるぜッ!」
って縁起でもないこと言わないでよぉ!?
……たとえ死んでも地獄に落ちることだけは避けたいなぁと思いつつ、私たちはハオへと一気に駆け出した――!
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