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30:憎しみの閃光



「死ねぇぇぇぇハオォォオオオッ!!!」


「お前がくたばれぇぇええええッ!!!」



 絶対零度を纏った拳と高圧電流の蹴りがぶつかり合い、空中で大爆発が巻き起こる。


 ――ウェイバーとハオの決戦は熾烈を極めていた。

 二人の激闘によって地下のアジトは完全に崩壊。その後、魔法の噴射によって空へと舞い上がった彼らは、殺意のままに命を削り合っていた。


「これ以上ッ、罪なき人々を傷付けるなぁッ! ――アイシクル・ランス、最大射出ッ!」


 怒りを燃やしながら吼え叫ぶウェイバー。彼の周囲に三百本もの氷の槍が出現し、ハオに向かって一気に迫る!

 ――だがしかし、それでやられるハオではなかった。


「罪なき人々ぉ? いいや違うなぁウェイバーくんッ! この王国に生まれた時点で、我にとっては罪人なんだよぉおおッ! ――荷電粒子砲、最大射出ッ!!!」


 憎悪を燃やしながら両手を構えるハオ・シンラン。彼は膨大な魔力を一気に圧縮させると、空を焼き尽くすほどの紫電の光線として解き放った――!

 それは迫りくる氷槍を全て滅ぼし、ウェイバーの身体を一瞬にして飲み込んでしまった!


「ぐぉおおおおおおおおおおおおおッッッ!!?」


「ハハハハハハハハハハハハハハハハハハッ! 死ね死ね死ね死ね死ね死ね死ねぇえええッ! 今は亡きシンラン公国に捧げる花となれぇえええええッ!!!」


 哄笑を上げながらハオは勝利を確信する。

 やがて荷電粒子砲に飲み込まれたウェイバーの人影が崩れ去ったことで、“ようやく目障りな害虫が消えたか”と気を緩めた――その時!


「――そこだぁぁああああッ!」


「なぁっ!?」


 頭上より現れたウェイバーが、冷気を纏った拳をハオの顔面へとブチ込んだのである!

 それによってハオは頭部を凍り付かせながら叩き落とされ、その先に有った屋敷の屋根へと墜落したのだった。


「ぐがはッ!? っ……お、お前は……死んだはずじゃ……!」


「フン……攻撃に飲み込まれる直前、氷像を作り出して変わり身としたのだ。……まぁもっとも、無傷とはいかなかったがな……おかげで燕尾服がボロボロだ」


 そう言って割れた眼鏡を押し上げるウェイバー。彼もまた、身体のあちこちに火傷を負っていた。

 本当に直撃する寸前での脱出だったのだ。だがそのおかげでハオを出し抜けたのである。


 ウェイバーもまた屋根の上に降り立つと、顔を起点として身体中を凍り付かせたハオに言い放つ。


「氷結の魔力を叩きこんだ……数秒後には脳や内臓まで凍り付くだろう。さぁ、これで終わりだハオ・シンランッ!」


「くっ……クククク……ッ! 誰が、終わりだってぇえええええッ!?」


 次の瞬間、ウェイバーは戦慄する……!

 ハオの胸から両腕が生えてくると、一気に身体を左右に引き裂き、そこから『全裸のハオ』が姿を現したのである――!


 彼は()()を果たすことで、内臓が凍り付くのを免れたのだった……!


「っ……ハオ、貴様……そこまで人間をやめていたのか……!」


「はははっ、言っただろう? 我は復讐のためにバケモノになったのだと!

 さて、それでは戦いの続きを……」


 ハオがそう言いかけた時だった。絶叫と悲鳴ばかりが響いていた市街地のほうから、たくさんの勇ましき声が上がったのだ。

 そちらに視線を向けると、そこには多くの民衆たちを率いて戦う少女――ソフィア・グレイシアの姿があった。

 堂々と人々を導く彼女の様に、ハオは苦々しく表情を歪める。


「チィ……いちいち気にさわる女だッ! 混乱状態に陥った民衆どもがどれだけ死ぬか楽しみにしていたのに、あれでは台無しではないか……ッ!

 クソッ……どうしてあんな少女が、こんなゴミのような国に生まれてしまったのか……!」


 追い詰められた状況でこそ人は本性を現す。

 今や街中には魔物が蔓延はびこり、さらには火の手が上がっている状態である。

 普段は強がっておきながら一目散に逃げる臆病者や、抱えきれないほどの財産を持って逃げ遅れる強欲者もいるだろう。中にはどさくさに紛れ、日頃から気に入らなかった相手を殺してしまう者もいるかもしれない。

 

 誰がどんなに無様で悪質な行動を取っても、おかしくはない状況である。

 そんな中で……ソフィアという少女は、戸惑う人々を取り纏めて戦うことを選んだのだった。


 ハオは表情を歪めながらも、神妙な目つきで彼女を見る。


「……ただ闇雲に戦うだけなら、実力さえあればまぁ出来るだろう。それで救える数などたかが知れているがね。

 だがしかし……怯えている者たちを勇気づけ、“全員で戦う”というのは……誰にでも出来ることではない」


 単純な力量やカリスマ性以上に、人々の力を信じる『真なる正義の心』がなくては、その行動は選べないだろう。

 高い知恵を持つ元王子として、ハオはソフィアの本質を理解する。


「……認めてやるよ、ウェイバーくん。彼女はそこらの偽善者とは違う。まさに『聖女』と呼ぶにふさわしき人物だとも。

 もしも我が憎悪に狂う前に、彼女のような者と出会えていたら……もしかしたら違った未来があったのかもしれないねぇ……」


「っ、ハオ……それがわかっているのなら、もう悪事など……!」


「――だがしかしッ! 我はすでに多くの者を犠牲とし、復讐を始めてしまったのだよォッ!

 ならばもはや止まれるものかぁぁぁああああああああああああッ!!!」


 そう叫びながら手のひらに雷の魔力を掻き集めるハオ・シンラン。

 咄嗟に身構えるウェイバーだったが、ハオは彼のほうにではなく、ソフィアのほうに腕を向けたのである――!


「なっ、貴様ーッ!?」


「ふははははははははははッ! 消え去れ聖女よッ! 穢れを知らない無垢なる少女よッ!

 この王国に生まれてしまった以上、お前も我の敵だぁぁああああああああッ!!!」


 夜空に響く復讐の咆哮。

 かくしてハオは、憎しみのままに紫電の閃光を炸裂させたのだった――!




・穢れを知らない無垢なる少女(※強盗志望)


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