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25:光の聖女

いつもご感想ありがとうございます!

その中に以前、「ウォルフくんのケモノ度はどれくらいですか」という質問がありました。

これについてですが、ぶっちゃけ黒髪イケメンにイヌ耳が付いてる程度です!(乙女的配慮)

しかし詳しい描写もあえてしてませんので、個人個人の一番萌えるケモノ度で容姿を想像してくだされば幸いです!




「なっ、なんだコイツら!? バケモノだぁぁぁぁああああッ!!!」


 ――貧民層へと違法薬物を流し続ける暗黒組織『冥王星』。

 そこに所属する戦闘員の一人は、わずか三名ばかりの襲撃者たちに対してそう泣き叫んだ。



 迎撃の準備は完全だったはずなのだ。

 冷酷そうな執事と狂暴そうな獣人、さらにはなぜか気品に溢れたお嬢様が『冥王星』の関係者を襲い続けているとの知らせを受け、アジト内部には多数の戦闘員が集結させられていた。


 さぁ、来るのならばかかってこい。

 アジトの入口付近は土魔法使いの土壌操作により足跡一つ残っていないはずだが、万が一見つかる可能性もある。その時は実力行使で排除するのみだ。


 そうして待ち構えること小一時間……アジトへと続く隠し扉が開かれた!

 戦闘員たちは一斉に武器を構え、愚かな襲撃者どもを八つ裂きにしようとしたのだが――しかし!


「見ていろウォルフ、ソフィア嬢の執事の力を! ――大地よ、空気よ、凍り付け! アイシクル・バーストッ!」


 男の声が響いた瞬間、超極寒の暴風がアジト内部へと吹き荒れたッ!

 壁や床を瞬時に凍り付かせるほどの強力な一撃だ。判断力のある魔法使いは咄嗟に炎や雷を出して抵抗できたものの、それ以外の者は成す術もなく氷像にされ、二百人近くいた戦闘員部隊は一瞬にして半壊状態に陥ってしまった。


 ああ……そこに奴らは駆けこんできた……! 凍り付いた床をものともせず、“王”のいるアジトの最奥に向かって猛スピードで疾走していく。

 もちろん誰もが止めようとしたが、無駄だった。


「ほう、思っていたより多くの者が生き残っているようですね。……ならば、殴り倒すのみだッ!」


 燕尾服を着た男の戦い方は、まるで一切の容赦がなかった。

 流麗でありながら凶悪至極。フェイントの交えられた滑るような動きに、モンスターではなく人間を破壊することに特化した鋭利すぎる拳法は、明らかに裏社会の“賭け試合”などで用いられるものだ。


 さらに強いのは彼だけではない。


「出しゃばんなクソ執事! ソフィアに良いところを見せるのはこの俺だッ!」


 襤褸ボロをまとった獣人族の男によって、『冥王星』の者たちはさらに蹂躙されていく。

 その戦い方は滅茶苦茶だ。壁や天井を跳ねまわりながら超高速で接近してくるため、捉えることは非常に困難。さらにはどんな体勢からも一撃必殺級の蹴りや拳を放ってくるため、厄介な事この上なかった。


「なっ、何なんだコイツらはぁ!?」


「これ以上先に行かせるかぁッ! 死んでもここで食い止めるぞぉ!」


 ――機械のような殺戮技術を持った執事と、猛獣のような身体能力を持った獣人族の男。

 その二人を前に誰もが絶叫し、やがて一つの判断を下した。


 “こうなったら、せめて一人でも確実に殺そう”と。


 ならば狙うのは後方を走るドレスの少女だ。

 男たちからソフィアと呼び慕われているらしいこのお嬢様。なにやら唇をギュッと引き締めているが、自分から闇の組織に特攻しておいて恐怖しているということはないだろう。あれは“絶対に悪党どもを滅ぼしてやる”という決意の表情だと戦闘員たちは受け取った。


 大人びて見えるが、せいぜい十代も半ばくらいの少女だ。コイツならば絶対に殺せるはず。

 そうすれば男二人も動揺を見せ、一瞬の隙が出来るかもしれない――そう期待した戦闘員たちは、一斉にソフィアへと飛び掛かっていた。


 剣で、槍で、斧で、魔法弾で、確実に抹殺するために四方八方から攻撃を放つ!

 だが、しかし……!


「――危ないなぁ、もう」


 次の瞬間、戦闘員たちは驚愕した。全方位から繰り出された多重攻撃は、彼女の双剣によって完全にいなされていたのだ……!


 全ては刹那の出来事だった。ソフィアは最も早く放たれた槍を右の剣で弾き、振り下ろされてきた刃に当てることで攻撃を相殺。さらには左の剣で振るわれてきた斧の柄を斬り、宙を舞わせることで魔法弾に当て、軌道をわずかにずらしてみせたのだ……!

 そうして稼いだ一瞬の時間の内に、足元から激流を噴出して高速移動。

 気付いた時にはソフィアは包囲の外におり、残りの戦闘員たちは攻撃を空ぶって、仲間に当ててしまっている始末だった。

 

「はっ……はぁぁぁあああああッ!? い、一体何が起きたんだッ!? 何だこの女はぁぁああッ!?」


 意味不明の神業を前に、戦闘員たちは混乱状態に陥った……!


 反射神経や空間把握能力に優れているレベルではない。今の回避行動を行うには、いくつもの死闘を乗り越えた戦士だけが身に付けられるという超感覚――『死への感知』が必要になるはずだ。

 それを十代も半ばの少女が覚えているという異常事態に、誰もが唾を飲み込んだ。



 ああ……駄目だ、こんなバケモノに敵うわけがない……!



 そう恐怖する戦闘員たちへと、執事と獣人族の男が襲い掛かってくる。


「貴様ら、よくも我が聖女をッ!」


「俺のソフィアに手ぇ出すんじゃねぇッ!」 


 激昂したことで男たちの猛攻はさらに激しくなり、戦闘員らは紙くずのように散っていった。

 宙へと飛ばされながら、彼らは薄れゆく意識の中で思う。


「もう、ウォルフくんにウェイバーさん。あんまり私から離れないでよね……何かあったらどうするの……」


 圧倒的に強い男たちに対し、小さな声で“何かあったらどうするの”と()()()()()()()()()を投げかけるソフィアという少女。


 彼女こそ男たちの主君であり、違法組織『冥王星』の襲撃を指揮する首謀者であると、戦闘員らは確信する……!


「ソフィ、ア……美しくも恐るべき……正義の断罪者……ッ!」


 殺人機械と猛獣を従えた、悪を許さぬ光の聖女。

 そんな存在に目を付けられてしまったことに恐怖と絶望を感じながら、戦闘員らは意識を落としていったのだった。






 ◆ ◇ ◆



「あ~死ぬかと思った~……」


 ブチ切れながら無双するウォルフくんとウェイバーさんを見ながら、私は小さく溜め息を吐いた。


 まったくもう……二人が先走りすぎるせいで、マジで殺されかけたんだからね!? 

 野生動物たちとバトルして鍛えた反射神経と直感のおかげで生き延びれたけど、私ってば一番の雑魚なんだから、何かあったらどうするの!


 はぁ……死ぬのだけは本当に嫌だ。もうあの時の痛くて熱くて魂が砕け散るような感覚だけは味わいたくない。

 だからちょっとした家柄の人とテキトーに結婚して平和な人生を送りたいと思っていたのに、どうして私……違法組織のアジトを襲撃してるんだろう……!

 ああああああああああっ! 人生思い通りに行かないのにも限度があるって! もう私の心は限界だよー!


「よし決めた……! この戦いが終わったら、組織の金を奪い取って今度こそ幸せな生活を送ろう……!」 


 危ないことに関わるのはこれで最後だ! そうと決めたら頑張れ私っ! 大金を奪って家に帰って引きこもるのだッ! 疲れた心を癒すために三か月くらいは親のすねをかじってやるッ!


 ……そんな正義のせの字もない野望を胸に、私は生き残ってる悪党どもへと突撃していったのだった。




 



・悪を許さぬ光の聖女(※金品強奪・引きこもり志望)



《読者の方へのお願い》


本作を



面白い! 早く更新しろ! 続きが気になる!



そう思って頂けたら、


下にある「☆☆☆☆☆」を「★★★★★」にしてください!


よろしくお願い致します!

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[良い点] ひどいけど正直でとりあえずあたおかでない主人公が珍しくてよしです( ・ิω・ิ)b
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