24:ここ掘れウォルフくん!
短くてごめんなさい!
「アジトの場所を吐きなさいッ!」
「アジトの場所を吐けやオラァッ!」
ドカッ! バキッ! グチャッ! と、夜の街に無数の打撃音と悪人たちの絶叫が響き続ける。
違法組織『冥王星』のボスはかなり狡猾な人物らしい。アジトの場所がバレないように、運び手を何人も用意して薬物の流通ルートを複雑化させていたのだ。
そんな組織の手口に対し、ウェイバーさんとウォルフくんの取った手段は至ってシンプルだった。薬物の売人や組織からの刺客を片っ端から半殺しにして、アジトへの道のりを吐かせていったのだ……!
うーん、なんという力づくな探索法……! もうほとんどの路地裏が血塗れ状態だし、なんだかどっちが街を荒らしてるのかわからなくなってきたよ……!
そうして暴力に明け暮れること数時間、夜明けも近づいてきた時だ。
百人以上の人間をボコグチャにしたことで、ようやく私たちは『冥王星』のアジトがあるという場所に辿り着いた。
「ウェイバーさん……ここって……」
「ええ……墓場、ですね」
予想外の場所に行きついたことに、私たちは戸惑ってしまう。
薬物で荒稼ぎしてる組織のアジトだ。てっきりそれなりに立派な屋敷にでも住んでいるのかと思いきや、まさか街外れの墓場とは。
しかもほとんど誰も来ていないのか、墓石はどれも汚れてたり欠けてたりするし、真夜中の雰囲気と合わさってかなり不気味だ。
うーん、本当にここで合ってるわけ……?
もしかしたらガセ情報を掴まされたのでは――私とウェイバーさんがそう訝しんだ時だった。ウォルフくんが鼻を何度かスンスンと鳴らすや、一つの墓石の前まで行って、それを思いっきり蹴飛ばしたのだ!
って、ウォルフくん何やってるのぉおおお!?
「なっ、おい狂犬ッ!? 一体なにを……!」
突然の暴挙に声を上げるウェイバーさん。しかしウォルフくんはそれに応えず、墓があった地面を何度か足で払う。すると、
「……見ろよお前ら。ここからわずかに人の臭いがすると思ったら大当たりだ。これ、隠し扉ってやつじゃないのか?」
ウォルフくんが土を払った場所には、取っ手のついた鉄の扉が埋まり込んでいた……!
そっか、例の組織の連中はここから出入りしてたんだ! お手柄だよウォルフくん!!!
ねぇ見たウェイバーさん!? やっぱりこの子、私なんかがいなくても天才なんですよ!
「狂犬……お前……」
「狂犬じゃねぇよクソ執事。……俺のことはソフィアの番犬、ウォルフ様と呼べ! いつまでも考えなしの野良犬扱いすんじゃねぇッ!」
「っ、黙れ! だったら私のことはソフィア嬢の執事、ウェイバーと呼べ! 少し手柄を上げたくらいで調子に乗るな!」
……せっかく敵のアジトを見つけたのに、なぜか睨み合いを始めてしまうウォルフくんとウェイバーさん。
ていうか勝手に人のところに就職するのやめてくれるかなぁ? お給料なんて払えないから……!
「ハッ、何がソフィアの執事だ! 一度だって抱き締めたこともないくせによぉ!」
「なっ、だ、抱きッ!? ウォルフ……お前、お前ーーーーーーーーーーーッッッ!!?」
……ウェイバーさんの怒号が夜の墓場に響き渡る。
こうしていよいよ取っ組み合いまで始めてしまう二人に対し、私は大きく溜め息を吐いたのだった。
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