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22:絡まれ体質ソフィアちゃん!

・ちなみに100万の報酬はソフィアちゃんとウォルフくんのそれぞれにです!(18話、わかりやすく文章を直しました!)





 ――商人の男の子から泣き落としを食らい、百万ゴールドの買い物をしてしまった夜。私とウォルフくんは商業都市の酒場で食事を取っていた。


「へへへっ、見ろよソフィア! 市場で変な猫の人形を買ってきたぜ! ケツに指を突っ込むと『ニャ~!』って鳴くんだよ!」


 謎の猫人形を嬉しそうに見せてくるウォルフくん。満面の笑みでお尻に指をズボズボさせては、ニャーニャー鳴かせて楽しんでいた。うんごめん、ちょっとセンスがわからない。


 はぁ……普段だったら「考えなしに買い物しちゃダメでしょー!」って言うところなんだけど、せっかく手に入れた大金を一瞬で溶かしちゃった私にウォルフくんを叱る権利はなかった。

 ちなみにその件については秘密にしている。だって彼、私のことをめちゃくちゃ信頼してくれてるんだもん。

 お金の管理だって任せてくれてるくらいだ。そんな相手に失望されたら、ちょっとショックで立ち直れなさそう……!


 笑顔の下でそのようなことを考えている私に対し、ウォルフくんは猫人形のお尻に指を突っ込んだまま問いかけてくる。


「フフ、いい買い物をしちまったぜ。……んでソフィア、お前のほうは下着以外にも何か買ってきたのかよ?」


「えっ!? う、うーんまぁ、ちょっとね……!」


「ってなんだよソフィア、なんか言えないモノでも買ったのか? まぁお前のことだから無駄遣いとかは絶対にしてないだろうけどよ!」


 う、うわあああああああああああウォルフくんの信頼が重すぎるぅうううう!!?

 いやたしかに無駄遣いはしてないよ! 冒険者として長くやっていくためには、身体能力や魔力を底上げしてくれる魔晶石は必須のアイテムだもん! 実際に手にした時からちょっとだけ身体が軽い感じがするし!


 でもなー……私の目的はとにかく速攻で大金を貯めて、さっさと危険な冒険者業をやめることなんだよなー……!

 そう考えると百万ゴールドの大出費は痛すぎる……! まぁさらにいっぱい稼ぐための先行投資と思えば、失敗でもないんだけどさー……。


 はたして魔晶石を買っちゃったのは正解だったのかどうか。そんな答えの出ない問題に思い悩んでいた時だ。

 ――真横から何かが飛んでくる気配を感じた私は、咄嗟に手を出して『ソレ』を掴み取っていた。


 ……そして、掴んでからようやく私は気付いた。手の中に、鋭い矢が収まっていることに……!


 って、ええええええええええええええええええええッ!? 何それいきなりどういうことォオオオオッ!?



「なっ、嘘だろうッ!? あの女、飛んできた矢を当たる直前に掴みやがったッ!?」



 驚愕の声が酒場の入口のほうから響く。そこには弓を手にした包帯まみれの男が、困惑の表情で私を見ていた。

 ってコイツ、昼間に戦った薄汚い冒険者じゃんッ!? うわあっぶなー! 一瞬でも手を伸ばすのが遅れてたら殺されてたよ! 魔晶石買っといてマジでよかったー!


 突然の凶行にざわつく店内。荒事の気配を感じ取ったお客たちが窓から逃げていくのを尻目に、私は立ち上がって冒険者を睨みつけた。


「はぁ……まさか生きてるなんて思わなかったわ。それで、見事に奇襲に失敗しちゃって、生き恥を晒してる気分はどうかしら?」


「うっ、うるせぇッ! ガキを騙すのを妨害した上に、人を容赦なく切り刻みやがって! 組織の仲間が助けてくれなかったら死んでるところだったぜッ!」


「組織……?」


 気になる言葉に私が眉根をひそめた時だ。相席していたウォルフくんが我慢ならないといった表情で立ち上がり、男に対して吠え叫んだ。


「テメェ、包帯野郎ッ! 組織だかなんだか知らねえが、俺のソフィアをよくも襲いやがったなッ!? 生きて帰れると思うなよッ!」


 ちょっ、大声で『俺のソフィア』とか言わないでよウォルフくん!? めちゃくちゃ恥ずかしいから!


 もう……まあいいや。客はみんな逃げちゃったし、コイツを殺せば今の言葉を聞いた人間は一人もいなくなるしね。


 私は剣を引き抜き、包帯まみれの男に剣先を向けた。


「ウォルフくんの言うとおり、今度こそ死んでもらうわ」


「くっ……調子に乗るんじゃねえぞクソカップルがッ! 一人で来たと思ったら大間違いだぜ!」


 男がそう叫んだ瞬間、奴の背後から薄汚い格好をした者たちが三十人以上も姿を現した――!


 なるほど、援軍まで用意してきたか。私とウォルフくんを取り囲むように広がるそいつらだったけど……しかしどこか様子がおかしい。


「ひひっ、ひひひひひッ! おまっ、お前らを殺せば、クスリがもらえる……ッ!」


「ギャハハハッ! 一緒に気持ちよくなろうゼェェエエ!」


 涎を垂らしながら不気味に笑う男たち。目の焦点が定まっていないことから、明らかに正気を失っている様子だった。

 彼らの異常な有り様に戸惑う私とウォルフくんに対し、包帯まみれの男が下卑た笑みを浮かべてくる。


「ははっ! コイツらをそこいらのチンピラと一緒にしたら大間違いだぜ! とある違法薬物で理性も筋力のリミッターもぶっ壊れちまってるんだからなぁッ!」


「なっ、違法薬物!?」


 男の言葉に驚いた瞬間、取り囲んでいた連中の一人がウォルフくんに向かって飛び掛かってきた!


「ギギャァアアアアアアアアッ!!!」


「っ、なんだテメェはオラァッ!」

 

 咄嗟に正拳を放ち、そいつの腹をブチ抜くウォルフくん。だがしかし、薬物中毒者の男はまるで痛みなど感じていないといった様子で、腹に腕が突き刺さったままウォルフくんの首筋に噛み付いてきたッ!


「ウォルフくんッ!?」


「ぐああああああああああッ!? このっ、離れやがれぇぇえええッ!?」


 無理やり引き剥がされ、勢いよく壁に叩き付けられる薬物中毒者の男。

 その衝撃であちこちの骨が砕け、さらに拳が突き刺さっていた腹からは大量の血が流れ出しているというのに――そいつは白目を剥きながらゆっくりと起き上がってきたのである……!


「これは……まさか……」


 そんな悪夢のごとき光景を前に、私は前世の記憶を思い出した。

 商業都市レグルスには、とあるモンスターが放つ幻覚作用のある毒から危険な薬物を作り出し、売りさばいている違法組織があると。

 その薬を飲んだ者は一時の快楽と引き換えに、徐々に人間の心を失っていき……最終的には欲望を満たすためだけに暴れ回る怪物になってしまうという。


 ちょうど、私たちを取り囲んでいる者たちがそうであるように……!


「グハハハハハハッ! ヤクの売人であるオレ様に手を出しちまったのが運の尽きだったなぁッ! そぉら野郎ども、やっちまいなーッ!」


「っ!?」


 包帯男が叫んだ瞬間、薬物中毒者たちが一斉に飛び掛かってきた!

 物凄い勢いだ――! 薬物による作用なのか、踏み込む力が強すぎて床と足が砕け散っているほどにッ!


「グギギャァァアアァッ! オンナァァァ食わせろォオオオッ!!!」


 涎を撒き散らしながら迫る、痛みや出血にまるで怯まない化物ども。

 そんな者たちが何十人もいるとあっては、一撃や二撃は必ず食らうことになるだろう。


「ウォルフくん、いくよッ!」


「おう、こうなったらやってやらぁッ!」


 迫りくる者たちを前に、私とウォルフくんが覚悟を決めた――その時。



「私の『聖女』に、手を出すな……!」



 突如として響いた声と共に、周囲の薬物中毒者たちが一瞬にして凍り付いてしまったのだ!

 青白い冷気に酒場が包み込まれていく中、気付けば私の目の前には燕尾服の男性が立っていた。


「あ……アナタはたしか、ウェイバーさん!?」


「ええ、アナタの執事のウェイバーです……ッ!」


 そう言って彼は眼鏡を光らせ、私に対して深々とお辞儀をしてくるのだった。


 ……って、ウェイバーさんのことを雇った覚えなんてないんだけどぉッ!?


 


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