18:安い女、ソフィアちゃん!
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「――ありがとうございます、ウォルフ殿! ソフィア殿ッ! お二人のおかげで村は救われました!」
「お、おうッ!」
「いえいえ」
モンスターの群れとの大激闘から半日。私とウォルフくんは村人のみんなや街から戻ってきた村長さんから、盛大な感謝を受けていた。
多くの人に握手を求められ、わたわたと戸惑っているウォルフくんの姿が微笑ましい。
……逆に私のほうは遠巻きに見られてばっかなんだよねー。まぁ剣をブンブン振り回す女なんてちょっと変だし仕方ないか。それにウォルフくんのほうが戦い方が派手だし、顔もカッコいいから当然かな~。
というわけでみなさん、どんどんウォルフくんを褒めてあげてください! この子、こういう経験は初めてなので!
「っ、ソ、ソフィア! わりぃが俺はトイレだ! この場は任せるぜっ!」
「ふふっ、トイレの場所分かる? お姉ちゃんが付いていってあげようか?」
「って俺のほうが年上だオラァァァッ!」
顔を真っ赤にしながら走り去ってしまうウォルフくん。どうやらチヤホヤされまくったことで、羞恥心が限界にきてしまったらしい。
そんな彼の後姿を微笑ましく見ていると、ふいに村長さんが近づいてきて、懐から小銭袋を出してきた。
「本当にありがとうございました、ソフィア殿。アナタとウォルフ殿が通りかからなければ、村人たちは全員モンスターにやられていたことでしょう。
……それで、その……やはり何もお礼が出来ないというのも申し訳ないと思い……お恥ずかしいことにこれだけしか出せないのですが、あの……」
言葉を濁しながらお金を差し出してくる村長さん。皺と土埃にまみれた彼の手は、恥じらいからか僅かに震えていた。
――そんな村長さんの手を、私はそっと両手で包む。
「っ、ソフィア殿……!?」
「ありがとうございます、村長さん。でもこのお金はどうか取っておいてください」
村長さんの手を握り締めながら、私はちらりと村の外を見る。
そこではステラの街からやってきた冒険者たちやギルドの職員さんたちが、昨夜見つけたダンジョンの探索に乗り出すためにチーム編成をしていた。
「村長さん。これからはダンジョンの探索をしにやってくる冒険者たちのために、多くの宿泊施設や治療所などを用意しなければいけません。
もちろんこの地の領主や冒険者ギルドが支援してくれるでしょうが、村の責任者はアナタです。何か起きた時に対処できるよう、お金は大切にしておきましょう」
「それは、たしかに……。で、ですが……何もしないというのも……!」
私の話に納得はしつつも、村長さんはどうにも落ち着かない様子だった。
……優しいおじいさんだと心から思う。前世では村が滅んでしまったショックからそのまま亡くなってしまった人だ。村人たちの命を救った私とウォルフくんに、どうしても謝礼を送りたいのだろう。
――お金が大好きで俗っぽい私とは大違いだなぁと申し訳なさを感じつつ、私はふわりと笑って村長さんに告げる。
「でしたらこうしましょう。これから村が発展してすごく大きな街になった時……もしも余裕が出来たのなら、どうかその時にお礼してください。それなら私も気兼ねなく受け取れますから。ね?」
「っ……アナタという人は、まったく……っ! ……ええ、わかりました! それならワシらも、全力で村を発展させてみましょう! なぁ皆の衆!?」
「「「おうッ!!!」」」
涙ぐむ村長さんの言葉に、周囲の村人さんたちも力強く応えた。
それからはもうお祭り騒ぎだ。テンションを上げた村長さんが「お二人のために祝宴を開くのだーッ!」と言い出し、村の広場に料理とお酒をいっぱい並べて、日が暮れるまで歌って飲んでのドンチャン騒ぎ。
最後のほうには探索から戻ってきた冒険者たちも加わって、華麗な剣舞や派手な魔法で大いに場を盛り上げてくれた。
ちなみにウォルフくんはチヤホヤされるのに耐えかねて何度か逃走しようとしたため、たくましい腕をギュ~っと抱き締めたら大人しくなった。フフフ、これでもけっこう力が強いほうだからね!
いやー本当に楽しい宴だなー! お料理も美味しいし村長さんの腹芸なんて爆笑しちゃったし、たぶん前世も含めて一番楽しい時間だと思う。
……でも村のみんな、「命を懸けて私たちを守ってくれたというのに、何も求めないというのは無欲すぎます! どうかこれを受け取ってくださいッ!」なんて尊敬のまなざしを向けながら、綺麗な布や首飾りや指輪なんかを送ってくるのはやめてよねッ!?
だって私とウォルフくん……新ダンジョンを発見した特別報酬として、冒険者ギルドからそれぞれ百万ゴールドも贈られちゃったんだからーッ!
めっっっちゃ懐ホックホクだよー! あー幸せーーーー! お金最高ーッ! だからこれ以上貰っちゃうのも悪いよ~!
「いえいえみなさん、お気持ちだけで十分です。こうして宴を開いてくれただけで、私すっごく幸せですから!」
「ソ、ソフィア様……ッ!」
きっとみんな酔っぱらってるんだろう。ガチ泣きしながら手まで合わせてくる村人たちの姿にちょっと罪悪感を感じつつも、私の心は懐と同じくホックホクなのだった! ふへへへへ!
・命を懸けて戦ったのに、100万で満足しちゃう令嬢・ソフィアちゃん……!
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