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15:新たなる決意

ウォルフくん視点です(愛が重い……!)




 シャワーのごとく降りしきる雨の中――ほこりとゴミにまみれた路地に、いくつもの打撃音と悲鳴が響き渡る。


「ぐがっ、ぎゃッ!? ま、まいった、降参だ……もうやめてくれ……ッ!」


「はぁ、はぁ……!」


 ヴィンセント王子とソフィアの決闘より一週間。黒髪の王子・ウォルフは荒れ狂っていた。

 今日も貧民スラム街の一角で、『獣人』であることを馬鹿にしてきた不良たちを殴り倒している始末だ。

 そうして何人もの相手を地に転がすと、舌打ちをしながら立ち去っていく。


「くそっ……こんなんじゃぁ駄目だ。これじゃ、ソフィアのことを守れねぇ……!」


 全身に雨粒を浴びながら、ウォルフは悔しげに呟く。

 彼の心を乱しているのは、一人の少女の存在だった。

 天使のような明るい笑みと、大人のような冷静さと思いやりを持った赤髪の少女……ソフィア・グレイシア。彼女が決闘の時に見せた強さが、ウォルフの心を焦らせていた。


「ソフィア……ソフィア……ッ」


 まるで、ベッドの上で恋人に抱き着く男のように――あるいは迷子になった子供のような必死さで、ソフィアの名前を呟くウォルフ。

 今や彼にとって、ソフィアの存在はとてつもなく大きなものになっていた。


 出会った日より、彼女には好意を持っていた。

 その勇敢さと知的さを併せ持った振る舞いはもちろん、何より『獣人』であることをまったく馬鹿にしないソフィアの態度は、ウォルフにとってとても心地いいものだった。


 戦争で負け、多くの者が奴隷となった獣人族の立場は、決して良いモノではない。

 特に貴族など良家の者ほど差別傾向が強く、そんな者たちが集まる王城で幼少期から飼われていたウォルフは、二十年近くの人生を悪意の中で過ごしてきた。


 それゆえに、ソフィアの存在はとても新鮮だ。

 貴族らしい見栄えの美しさと優雅さを持ち、それでいて庶民のような取っ付きやすさを持った不思議な少女。

 一度、「ソフィアって普通の令嬢らしくないよな!」と褒めたらなぜか落ち込まれてしまったことがあるので口には出さないようにしてるが、ウォルフはそんなソフィアのことが大好きだった。


 だが、それゆえに――、


「……いつまでも世話になってばっかじゃ駄目だ。アイツのために、俺は強くならなきゃいけねぇ……!」


 降りしきる雨の中、ウォルフは固く決意する。

 今よりももっと腕を磨こう。勉強だってやってやろう。そもそも自分が文字すら読めず、ヴィンセント王子に舐められきっていなければ、今回の一件は起きなかったのかもしれないのだから。


 全ては愛する女のために――黒髪の王子は強くなろうと胸に誓うのだった。

  




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