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魔王の隣で勇者を想う  作者: 遠山京
第五章 令嬢と騎士

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090公爵邸へ

なんとか火曜更新は保てました…!

ただ、日曜更新はしばらく止まるかもしれません。

セルイラに戻った時の両親の喜びようはすごかった。

お母様は私達を一人一人抱きしめてしばらく離してくれず、お父様も目元に涙を浮かべながら長々とした誉め言葉を贈ってくれた。

街全体もお祭り騒ぎで、私達を送り出した時以上の人たちが出迎えてくれて凱旋パレードのような状態だった。


しかしいつまでもお祭り気分ではいられない。

雪で足止めを食っていたあの日々の退屈さが恋しくなるくらい、しばらく慌ただしい日々が続いた。

カッセード領で起きたことの報告、ガールウートの生態に関する調査報告書作成。


珍しくお父様とお母様が頑張ってくれていて大方の事務仕事は片付いていたけれど、私達の帰還を待って取り掛からないといけないような仕事がたくさんあった。

もちろんカッセード領主であるシェドに全部任せても良かったんだけど、シェドはシェドで春からの王国騎士団行きの準備もある。

だから私とリードも慣れない事務仕事に四苦八苦しつつ仕事を手伝っていた。


正直リードは物凄く嫌そうだったんだけど…

シェドの『無理しなくていい』という言葉に、ますます手を動かすあたりやっぱり面倒見のいい男だ。

仕事に追われていたおかげでシェドとの気まずい空気を忘れられたけど、流石にちょっと疲れたな…


落ち着いたのはセルイラ祭が始まる頃。

なんだけど、ぐったりしていて舞踏会に出る気にはなれなかった。

本当なら恋人(仮)であるアドルフ様を招いて参加すべきだったんだろうけど…

いや、今回は頑張ってたから見逃してほしい。

流石に私の疲労を理解してくれているのか、両親も無理強いしてこなかったんだ。


両親やシェドは出席してたけど、リードも私と同じくサボリ。

『エスコートする相手がいないんだから仕方ないですよね』とかいい笑顔で言っていた。

いや、シェドもエスコートする相手はいないわけだしそれを言い訳にはできないのでは。

両親が『ゆっくり休んでいていいよ』って言ってたんだからいいんだけどさ。


そして舞踏会の翌日。

まだ祭の後片付けが落ち着いていない中だったけど、いつもより前倒しをしてシェドの誕生日会を開いていた。



「シェド様、お誕生日おめでとうございます」


「ああ、ありがとう」



バタついていたこともあり、シェドの騎士団入りは少しだけ時期が遅れていた。

王国騎士団に入るにあたり全ての騎士は騎士爵を叙勲される。

その式典が毎月末に行われていて、シェドは当初三月末のものに参加して四月から騎士として働く予定だった。

だけどカッセードの一件の始末が遅れていたため、一か月延期している。

式典は四月末なんだけど、向こうに生活拠点を移すにあたりやることはたくさんある。

そんなわけでシェドは明日にも家を出ていくことになっていた。


去年の誕生日が最後のお祝いかと思ってたのにね。

ちゃんと祝えたのは嬉しいからいいんだけど。

だから餞別を兼ねて、今回は家族みんなからプレゼントがある。


両親からは剣。

長年使っていた剣が先の魔物討伐でかなりガタが来ていて、鍛え直すにも限界があったそうだ。

仕事上で使うものは騎士団から支給されるけど、さすがに自分の剣を持っていないのは、ということで有名な鍛冶師に頼んで作ってもらったらしい。


リードからは剣帯。

これもボロボロになってきていたから私物として持っておいた方がいいと。

リードも最近仕事を手伝っていてお父様からお給金という名のお小遣いをもらっている。

そのお金で用意したようだ。

別にプレゼントを家のお金で用意するのは普通のことなのに、律儀だなぁ。


私からは"乙女の守り"と呼ばれるお守り。

手のひらサイズの布に、魔法陣みたいな意匠を縫い込んだものだ。

親しい人が騎士団入りしたり戦場に向かったりするとき、未婚女性がこれを縫って贈る文化があるそうで。

乙女という響きがむず痒いんだけど、シェドに贈るような女性が私しかいないんだから仕方ない。



「ありがとうアカネ。大切にする」


「危険な時に身代わりになってくれることを祈るものですから、大切にするよりは持ち歩いてくださいね」


「もちろんだ」



私からお守りを受け取って微笑むシェドに、私も笑って返す。

良かった、時間を置いたおかげで、普通に話せてる。

あれから何もないし、シェドも落ち着いたんだろう。

一安心。



「シェドは明日から王都に行っちゃうし、アカネちゃんもいなくなるのよねぇ。なんだか寂しいわぁ。リード、お茶に付き合ってね」


「はは…よろこんでお付き合いいたします」



頬に手を当ててため息をつくお母様を、リードが苦笑気味になだめた。


そう、明日出ていくのはシェドだけじゃない。

私もだ。

と言っても行先は違う。


私はベルブルク家の領地であるロイエル領へ向かうことになっていた。

アドルフ様へお礼をする為だ。

カッセードの魔物討伐にあたり、私の恋人という名目で援軍を出してくれた…というか自ら騎士を引き連れて駆けつけてくれたアドルフ様。

苦情を送ってくれていいと言っていたけれど、流石にそれは送れなかった。

かといって表立ってお礼をすることもできない。

だから私が個人的にということで代表してお礼に伺うことになっている。


忙しくしていた私に気を遣ってくれたのか、時間を取ってほしいと言う私の申し出に対して、アドルフ様から返ってきた日時指定は四月の十九日。

今日はセルイラ祭が終わった翌日の四月十六日だ。

アドルフ様は今、ベルブルク家の領地であるロイエル領にいるらしい。

ロイエル領はセルイラの北隣にあり、公爵邸までは馬車で一日半ほど。

明日の朝に出れば指定された日までには十分到着できる予定だった。


今回は恋人の立場で行くわけだから、リードもついてこない。

若干の心細さを覚えるけれど、義兄をつれて恋人に会いに行く方がおかしな話だ。



「そうだアカネ、アドルフ様と会う時はエレーナの側から絶対離れないように」



思い出したようにリードがそう言う。

曖昧な笑みで頷いて返すけれど、頬が引きつってしまう。

だってその言葉、既に五回は聞いた。

ロイエル行きにはティナとエレーナ、エドガーとアルノーというおなじみの四人が付いてきてくれる。

安全とされる街道を通るし、お忍びの体をとるから護衛は少ない。


で、現地で常に私の側にいるのは女性であるティナとエレーナだ。

アルノーやエドガーは男性だし、公爵邸の中でも護衛を連れ歩くのは失礼だから待機するシーンも多い。

ここでわざわざティナではなくエレーナの名前を出したのは、エレーナが武闘派だからだろう。

…何をされると思っているのだろうか。

多分、本当は付いてきたかったんだろうなぁ…



「あらあら、過保護なお兄ちゃんが増えちゃったわねぇ、アカネちゃん」



お母様が楽しそうに笑う。

笑いごとかなぁ。



「私も一緒に伺えれば良かったんだが…一人で大丈夫かい、アカネ」


「大丈夫です、お父様。それに今回は私一人でないと角が立つでしょう?」


「そうだね、それにアカネもアドルフ様と二人きりの時間が欲しいだろうし」



お父様は相変わらず私とアドルフ様が恋愛関係にあると信じて疑っていない。

ちなみにお母様には、王都から帰ってきてすぐ『あれ嘘でしょう?』って見抜かれた。

私にアドルフ様の話をさせたら、すぐに分かったらしい。

恋する相手について語る口ぶりじゃなかったそうだ。

流石です、お母様。

だからお父様以外はみんな形だけの恋人同士だと知っているわけで、お父様のセリフはみんなにスルーされる。

シェドも特に突っ込むことなく、私に向き直った。



「俺からもアドルフ様によろしく伝えておいてくれ」


「はい。式典は私も見に行きますね!」


「ああ、王城で会おう」



両親とリードは式典に合わせて王都へ行き、シェドの晴れ姿を見守る。

私もアドルフ様にご挨拶したあと、王都へ行く予定だ。

お礼の品を渡して、その日の晩はお世話になって、翌日にはロイエルを出る。

おそらくそんな流れになるだろうから、少し早めに王都に着ける。

時間に余裕がありそうならアンナに会いに行こう。

ようやく慌ただしい日々から解放されて旅行に行けるような気分で、私はわくわくして翌日に備えた。




==========




春の陽気に恵まれた順調な旅路を終え、指定日前日の昼過ぎにはロイエル領に入れた。



「アカネ様!お天気雨ですよ!」


「ホントだ。あっ虹も出てる!」



入領手続きを終えて建物から出てみると、日が差すなか雨がパラついていた。

はしゃぐ私達をティナがたしなめる。



「早く馬車に乗ってください。日が暮れる前に公爵邸へ向かわないと」


「ん?もう行くの?今夜はどこかの宿をとるんだと思ってたけど」



一応エドガーがお使いとしてベルブルク家に到着を知らせに行ってくれたけど、指定された日付は明日だ。

あんまり早く来られても困るんじゃ?



「先方のご都合が悪いようであればそうするつもりでしたが…先触れに出したエドガーによると、もうお訪ねして良いようです。いつでもお迎えできると言っていただいたので、ご厚意に甘えましょう」


「アドルフ様、早くアカネ様に会いたいんでしょうねぇ」



エレーナがニヤニヤしながらそんなことを言う。

…まぁ、そうなのかなぁとは私も思うけど。

少なくとも歓迎してもらえていることは間違いないだろう。

それならお言葉に甘えてお邪魔しよう。


道の向こうに見えてきた屋敷へ向かって馬車が進む。

大きな屋敷だ。

王城ほどではないにしても、うちの三倍くらいありそう。

そもそもベルナルア族の族長の家であり、建国当初は一族全員で暮らせるよう当時の国王が建てさせたものだという。

友好の証に頑張ったんだろうなぁ。


お父様とベルブルク公爵は仲良しだけど、私がここに来たことは無かった。

私が公爵と顔を合わせるのは、いつもお父様を訪ねて来てくれた時だったから。


御者が声をかけると、私ひとりでは開けられそうもないほど重厚な門が開く。

先触れを出していたおかげで到着を察していたらしいアドルフ様や使用人らしき人たちが出迎えてくれた。

ずっと待機してくれていたんだろうか。

なるほど、こういうお出迎えを想定していたからティナは急かしてたんだな。

アドルフ様は馬車の横まで歩み寄り、傘を私に差しかけてくれながら微笑んだ。



「アカネ嬢、よく来てくれた」


「ご無沙汰しております、アドルフ様。わざわざお出迎え有難うございます」



相変わらず男性らしい美貌を持った人だ。

お母様やリードで見慣れていなければ見とれてしまっていることだろう。



「お怪我の具合はいかがですか?」


「何を言っているんだ。聖女のおかげで跡形もなく治っているさ」



念のため様子をうかがう言葉をかけると、笑ってそう返された。

そうだった、聖女のおかげだったね。

それについてはマリーから抗議文が来たっけなぁ。

セルイラに戻ってから呼び出し、ローブを返しがてらお礼を伝えたけれど、その時にも文句を言われた。

魔女としておそれられるのは良いけど、聖女として崇められたり、あやかろうと近づいてくる人がいて鬱陶しいらしい。

悪いことをしてしまった。


アドルフ様にエスコートされながら中に招き入れられ、応接間に通されると、ベルブルク公爵や公爵夫人が待ってくれていた。



「アカネ嬢、よく来てくれた」


「公爵、ご無沙汰しております」



いつものように鷹揚な態度で迎えてくれる公爵。

さらに、隣に立っていた女性が公爵夫人、レミエナ様だ。



「久しぶりだね、アカネ様」


「夫人もお久しぶりです」



レミエナ様には一度だけお会いしたことがある。

向こうも覚えていてくれたようだ。

レミエナ様はピンと背筋の伸びた凛々しい女性で、生まれは男爵家なんだけど剣の才能があり、婚前には王妃の護衛までつとめた女騎士だとか。

武闘派のベルブルク家らしいお嫁さんだ。

もちろん本人は騎士爵を持っている。


騎士爵は爵位としてはそんなに高いものじゃないんだけど、公爵はそんなことを気にせず彼女に求婚したらしい。

その辺のロマンスエピソードは一度ゆっくり聞いてみたいところだ。


とにかく、元騎士なせいか、立ち振る舞いが淑女というより騎士のそれで、なんか総合的にカッコイイ。

ドレスを着ているのに男装の麗人のようなオーラがあるんだ。

年も四十代のはずなのに、いまだに訓練を続けているせいか若々しいし。



「どうした?」


「あ、すみません。見とれてました」



ぼんやり見つめていたせいで心配そうにされてしまった。

私がそう返すと、レミエナ様は一瞬虚をつかれたように言葉を無くしたけれど、クックッと笑いを零した。



「そういえばアカネ様は、初めて会った時にも私を格好いいと言ってくれたね」


「その節は失礼を…」


「いいや、嬉しかったよ。私は格好いい騎士になりたくて剣の腕を磨いていたのだから」



初対面の時も、私はこうして見とれていた。

そして思わず『カッコイイ』と零してしまったのだ。

レミエナ様は笑って許してくれたけど、相手によっては失礼だと怒られかねない発言である。



「息子の恋人を見惚れさせるというのもなかなか無い経験だ。アドルフがこうも素直に嫉妬の顔を見せるのも悪くない」


「母上…」



悪戯っぽく笑うレミエナ様に、アドルフ様がちょっと嫌な顔をした。

え、嫉妬してたの?



「アカネ様、私とアドルフならどちらが格好いいと思う?」


「母上!」


「ええ…悩みますね」


「悩むのか!?」



アドルフ様、なんかショックを受けているようだ。

いやぁ、見た目が華やかななのはアドルフ様だけど、洗練されてるとかクールって感じなのはレミエナ様なんだよね。



「精進せよ、アドルフ」



騎士らしくそう言い放つレミエナ様。

アドルフ様は脱力し、ベルブルク公爵は真顔で頷いていた。

ここにも妻に寛容すぎてちょっとズレてる旦那がいるようだ。


しばらく歓談しているとノックの音が聞こえて、メイドさんが入ってくる。

ベルブルク公爵が耳打ちで用件を聞き、大きく頷いた。



「アカネ嬢。エスナーが帰ったようだ。よければエスナーとも会ってやってくれ」


「はい、ぜひ」



エスナー様といえばアドルフ様の弟だ。

私の了解を聞いて入室してきたのは少年と青年の境目にいるような男の子。

メガネをかけて理知的な印象があるけれど、アドルフ様によく似ている。

確か十五歳だったかな?

私も来月には十五になるから年が近い。

もともと十八だった私からしたら年下のはずなんだけど…



「お初にお目にかかります。エスナー・ベルブルクと申します」


「あ…初めまして。ご丁寧に…アカネ・スターチスでございます。お見知りおきを」



目下の私より先に挨拶してくれるし、その後も私が立ったままなことを気にしたり、気遣いが足りないと兄であるアドルフ様を叱ったりと、大変しっかりした弟さんだった。

…私に縁談来たのがエスナー様じゃなくて良かった、なんてちょっと思ってしまう。

彼と結婚なんてしたら、私なんか小言を言われているだけで日々の会話が終わりそうだ。

そのまましばらく五人で歓談していたけれど、聞き役に徹していたアドルフ様がしびれを切らしたように口を開いた。



「そろそろアカネ嬢と二人の時間をくれ」



その言葉を聞いて、私も本来の目的を思い出す。

そうだった、アドルフ様にお礼しに来たのに、他の人とばっかり話し込んじゃった。

主にレミエナ様と。



「ああ、そうだったね。長い事捕まえちゃってごめんなさい、アカネ様」


「いえ、楽しかったです。レミエナ様」


「ふふ、嬉しいな。またいつか、今度は私の為に時間をちょうだい」



至近距離でにっこり微笑まれて、思わずぽぉっとなってしまう。

…いけない、何かに目覚めそう。



「いくぞ!アカネ嬢!」



アドルフ様に手を引っ張られ、強引に引き離された。

…ナンデカナー。



「ああ、そうだ。良ければ娘達にも会ってやってほしい」



部屋を出る間際に、レミエナ様がそう声をかけてきた。

娘…?

ああ、そういえばベルブルク家には一番下に双子の娘さんたちがいるんだったっけ。

まだ社交界デビューしていないし、あまり話を聞かないご令嬢達だから忘れていた。



「ぜひお会いしたいです」



きっと娘さんも可愛いんだろうなぁ。

そう思って頬を緩ませそう言ったのに、足を止めたアドルフ様は視線をレミエナ様にやりもせず渋い顔だ。

…なんで?



「アドルフ」



たしなめるように声をかけたのはベルブルク公爵だ。

しかしアドルフ様は厳しい表情を崩さない。



「…兄上のご心配はわかりますよ。アカネ嬢を困らせてしまうかもしれませんし」



眉を下げて兄を擁護したのはエスナー様だ。

何、どういうこと?

妹さんたちになにか問題でも?

しかしエスナー様を手で制しながら、レミエナ様が口を開いた。



「アドルフ、お前はアカネ様と真剣にお付き合いしているんだろう?」


「それは…」



また複雑なところをついてくる。

どうやら公爵家は私とアドルフ様の付き合いを真実だと受け止めているらしい。

まぁそうだよね…言いにくいよね。

アドルフ様はますます苦い顔になった。



「これからのことも考えているのなら、隠すべきこととそうでないことをよく考えなさい。それに、私は娘たちについてなんら恥じるところなどないと思っているよ」


「…それは…俺も二人を恥だと思っているわけではありませんが」


「なら胸を張りなさい。お前の妹も、そして恋人であるアカネ様のことも。信じておやりなさい」



異様な空気にこっちが緊張してきた。

公爵に会う以上の前置きが必要な相手って何なの。



「ほら、お前が変な渋り方をするからアカネ様が不安がっていらっしゃるだろう」


「あ、ああ。すまない、アカネ嬢。違うんだ、なんというか妹たちは…普通の令嬢とは違うと言うか…少し変わっていて…」



言葉を選ぶようにそう言うアドルフ様。

変わり者?

だから会わせるのを悩んでたのか。

でもさ。



「私よりも変わっていますか?」



思わずそう聞いてしまう。

私も令嬢としては普通じゃないだろう。

普通でありたいと思っているしたまに自分でそう言い張るが、いかんせん元が別世界の女子高生。

貴族の令嬢として異色であることは認めている。

そんな私の問いかけに場が静まり、数秒後大きな笑い声が響いた。

レミエナ様だ。



「ははは、確かにね!アドルフ、アカネ様の方がよほど肝が据わっていらっしゃるじゃないか。お前がそんな小さい男でどうする。つり合いのとれる男になりたいのなら、もう少し大きく構えていなさい」



いえ、つり合いが取れていないのは私の方であってアドルフ様が悪いわけでは。

変わり者の令嬢とつり合いがとれるようになるのがいいこととも思えない。

その言葉を聞いてようやく眉間のしわがとれたアドルフ様は、苦笑しながら私の手を握り直した。



「よし、アカネ嬢。妹たちの部屋へ案内しよう」


「はい、お願いします」

いつもご覧いただきありがとうございます。

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