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魔王の隣で勇者を想う  作者: 遠山京
第五章 令嬢と騎士

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085本領発揮

「こっちだ!走れ!」


「はい!」


「とまれ!頭を下げろ!」


「はい!」



飛び込んだ戦場は私の予想を超える場所だった。

鼓膜を叩く轟音。

目まぐるしく変わる目の前の光景。

シェドの声をなんとか聴き分けて、言うとおりに動くしかできない。

込み合う戦場の中をシェドとスヴェンさんに守られながら抜けていくも、すぐ真横で剣が振られているのは思っていた以上に恐ろしかった。

溢れかえる魔物たちは多種多様で、魔物図鑑かと思うほど種族に統一性が無い。

その分統率の取れた攻撃が無いのが救いのようだった。



「シェディオン様!」


「リードか!」



聞きなれた声が耳元に飛び込んできた。

なんとか周囲を見回すと、ずっと探していた銀色の髪が視界に映る。

ずっと竦めていた首をのばせば、紅い瞳と目が合った。

固くなっていた体に血が巡る。

震えが走って目が潤む。

ここ最近ずっと背徳感を覚えていたこの感覚が、今は何より心強い。

良かった、リード無事だった…

リードもこちらを見てほっとしたような顔をしている。

けれどすぐに表情を引き締め、隣の魔物の爪を弾きながら声を上げた。



「援護します!先ほどアドルフ様にも伝令が来ていたので、じきにこちらへ合流するかと!」


「あの方は結局こんなところまで出てきているのか…」



シェドが頭の痛そうな顔をする。

多分臣下も止めたけど聞かなかったんだろうなぁ…

もし最初は後ろに下がってたとしても、リードの活躍を聞いたら飛び出していきそうだ。



「なんにせよ援護は助かる!魔術師殿が魔術を打てる場所までお連れする!」


「分かりました!」



リードが加わった途端、私を守る人たちの安定感が増した。

もちろんリードの剣術が心強いのもあるだろうけど、魔物の攻撃がゆるむせいだろう。



『アカネ様、大丈夫ですか?』



不意にそんな声が聞こえて足を止めそうになるけれど、こんなところで足を止めたら行進のバランスを崩してしまう。

慌てて駆け足に戻した。

声が聞こえてきたのは胸元。

そこにあるのは髪飾りだ。

念のためネックレスに通して持ってきてたんだけど、それを察してかリードが声をかけてくれたみたいだ。

おそらく周囲の人たちには騒音に紛れて聞こえていないだろう。

胸元という近くからの声なのに、私もギリギリ聞こえるレベルだ。



「大丈夫。リードこそ平気なの?魔物の相手しながら話なんかしてて」


『お忘れですか?魔物は俺を襲ってこないんですよ』



あ、そういえば。

でも今まさに巨大オオトカゲみたいな魔物がリードに噛みつこうとして、剣で切り捨てられている。



「え、今のは?」


『ですから、一番骨が折れるのは無理やり俺を襲うよう一匹一匹コントロールしないといけないことですかね。それをわざわざこうして倒すっていう…こんなに辛い自作自演はできれば今回きりにしたいところです』



なるほど。

確かにそれはそれで大変そうだ。

魔物に襲われないのは安全だけど、それじゃ周囲から怪しまれちゃう。

コントロール権を行使して自分を襲わせるなんていうのは、ある意味普通に戦うよりめんどくさそう。



「シェド!魔術師殿は!」



リードと合流して五分も経っただろうか。

今度はアドルフ様の声が前方から聞こえてきた。

シェドは長身だから遠くからでも見えるけど、女性の中でも特に小柄なマリーに扮した私の姿は見えないんだろう。

私の無事を案じてくれているらしい。



「無事です!最前線までまだありますか!?」


「すぐそこだ!こんなところまで連れてきてよかったのか!?」



話しながら合流してきたアドルフ様は、ようやくこちらの姿を認めて一瞬安堵したものの、この場所の危険性を思い出したようにシェドを睨んだ。



「私が望んだことです!」



私がそう返すと、『そうだろうな』と呆れたような返答を寄こされた。

…全く…シェドといい、リードといい、アドルフ様といい…

自分たちだって危険な場所にいるのに、真っ先に私の心配するんだから。

もどかしいような、泣きたいような、嬉しいような…

何とも言えない感情が溢れてくる。


絶対みんな守る。

この戦場にいる人達みんな。


次第に人の数が減り、目の前に分厚い魔物の壁が見えてきた。



「魔術師さんよ!ここまで来たらどうだ!」


「っ大丈夫です!」



スヴェンさんが魔物を押しとどめながらそう叫んだ。

魔物の圧が強くてひるみそうになるのを堪えて私も叫ぶ。

スヴェンさんをはじめ、まだ周囲に人がいるから誤射しないか心配だけど、これ以上人が居ないところに行けば私が瞬殺される。



「それで、何打つんだ!」



スヴェンさんにそう言われて一瞬動きが止まった。

…何をするか決めてなかった!

氷を含め、水魔術ならあらかた使える。

炎魔術もこの前みたいな火炎放射なら多分できる。

風魔術もシールドとして使うことを覚えたし、土魔術で壁くらい作れる。

手数が多すぎるせいでかえって判断に迷ってしまう。

とはいえ攻撃として私がまともに使えそうなのって言ったら…



「魔術師様、できるだけ広範囲の魔物を氷漬けにしてください!」



パニックに陥りかけた私の意識を引き戻すように、リードの声が響いた。



「そんなことできんのか!」


「できますよね!?」



スヴェンさんの疑いの声に、リードがそう被せる。



「で、できます!」


「それならできるだけ右側から頼む!ここは前線の右翼だ。今は戦線が広がりすぎて隊が乱れてる!氷漬けの魔物で壁を作れるなら隊が分断されないようにしてほしい!」


「わかりました!」



そして胸元から取り出したのは小さな(ロッド)

誕生日にシェドからもらったものだ。

高価な杖だけあって、魔力を込めると簡単に通っていく。

杖は繊細な操作を助けてくれる。

今使わずしていつ使うって話だ。

氷のイメージを高め、人々がいない場所に狙いを定めて魔力を放つ。



「いきます!」



狙いやすいように、みんなが私の前方から離れて射線を開けてくれる。

ほとばしる氷魔術が魔物の群れを直撃した。

右の端っこまで!

たぶんこのラインなら人はいないだろう。

その範囲を意識して魔力を流し込んでいくと、みるみるうちに一面広がっていた魔物が凍り付いていく。

人に近い場所は巻き込みそうで凍らせられなかったからそれなりに取りこぼしはあるものの、おそらく数百単位の魔物が凍り付いたはずだ。

周囲の人たちから歓声があがった。

一旦魔力を切り、様子をうかがう。



「ど、どうですか!?」


「どうって…すごいなんてもんじゃねーだろこれ」



呆然としたスヴェンさんの声は、歓声にかき消されそうなほど弱々しかった。

そうだよね、普通の魔術師はできないレベルの魔術だ。



「なぁ、あんたって…いや、詮索してる場合じゃねーな。どこまで凍った?」


「右端を回り込むように奥まで凍らせたつもりです。取りこぼしがあるかもしれませんが…」


「その掃除は俺らの仕事だな!」



そう言いながら、さっそく襲い掛かって来た魔物をスヴェンさんが討ち取る。

その隙を狙うように、兵が一人シェドの元へ駆け込んできて何か耳打ちした。



「…伝令から報告が来た。右はほぼ封じ込められたらしい。そのぶん中央に魔物が集中しだしている。隊を編成し直すぞ!」



シェドがそう周りに報告し、アドルフ様達と何か相談し始める。



「あのっ、次は中央に打てばいいんですか?」



話が途切れたのを見計らってそう問いかけると、シェドもアドルフ様もスヴェンさんも目を丸くした。

リードだけが複雑そうな表情をしている。

…なんだ?



「まさか、まだいけるのか?」


「魔力残量は?大丈夫なのか?」



普通の魔術師はあんなの打てない。

もし打てたとしてもあの一発で魔力は完全枯渇する。

だけど私は迷宮の魔女と同じ力を持つ人間。

魔力枯渇なんて感じた事すらない。

今回に関しては、いざとなれば魔術師の正体はマリエル・アルガントだったってことにしていいと聞いている。

ここまでの力を披露しちゃったなら今更だ。

とことんやってやろう。

私は力強く首肯した。



「…わかった、少し考える」



シェドは頷き、スヴェンさんたちと向き直って相談を始めた。

その間に襲い来る魔物たちはすっかりテンションの上がった周囲の兵や冒険者たちに倒されていく。

リードもそこに参戦しながら、私に声をかけた。



『なかなか正確なコントロールでよかったですよ』


「うん。これは杖のおかげだね。やっぱり持ってきてよかった」



シェドからもらった杖。

正直これまではあんまり使っていなかった。

というのも、ある程度操作ができないと魔力を流しすぎて杖を壊す可能性があると聞いたからだ。

魔力制御を手伝ってくれる杖を用いる為に魔力制御を練習しないといけないとはこれいかに。

なんて思ってたんだけど、さっき実際に使ってみて杖の意義が良く分かった。


確かに魔力の通り方は繊細で強く魔力を込めると壊れてしまいそう。

だけど出力さえ調整すれば、杖の先から出る魔術の操作は物凄くしやすかった。

なんだろう、ピンセット使う感じというか。

細かな操作を手伝ってくれている気がする。

これなら気を付ければ味方にあてちゃうこともなさそうだ。


話がまとまったらしいシェド達について今度は左翼に行き、同じく氷の壁を作り上げた。

こうして魔物たちが攻め込んでくる範囲を狭めたおかげで、ずいぶん余裕ができたらしい。



「シェド、今のうちに下げられる奴は下げておけ!俺達ならまだいける!長丁場の奴らを休ませてやった方が良い!」



アドルフ様のそんな言葉に後押しされて、シェドが一部の兵や冒険者たちを連れ帰った。

それでもなお余裕があるようで、私はひとまずの休憩をもらう。

まだまだいけるんだけど、戦闘箇所が狭まったせいで私が割り込む余地がない。

下手に手を出して味方にあてちゃうといけないし、中央まで塞ぐと今度は魔物がまた分散して対応しづらくなる。

そんなわけで私の出番は一時間たらずで終わってしまった。


前線から少し下がったところで休む私を守るように、リードやアドルフ様が側にいてくれている。

ここにいても魔物が流れてくることはあるんだけど、この二人が居て危険を感じることは無い。

二人とも余裕があるようで、時々剣を振るいつつも言葉を交わしている。



「アドルフ様、魔物退治がお得意なんですね」


「当然だ、自領を守るため自ら討伐に出ることもある…なんだ、対人は弱いくせにとでも言いたいのか?」


「いえ、そんなことは」



にっこり返すリードの笑みに何を読み取ったのか、アドルフ様はイラッとしたような顔をした。



「さすがに盗賊退治などに出たことはないからな。対人では試合をすることがほとんどだ。断っておくが!それが普通だぞ」


「僕は何も言っていませんが」


「顔がうるさい」


「それは失礼を」


「アカネ嬢と違ってお前はわざと顔に出すから可愛くないんだ」



…なんで私が引き合いに出されるのかな。

何か突っ込みを入れようとした瞬間、前線の方で大きな悲鳴が上がった。

素人の私でもわかる。

急に人間側が押されだした。



「何が起きた!?」



すぐにアドルフ様の部下がこちらへ報告にやって来る。



「申し上げます!ピンキーエイプの群れが上がってきており、前線が崩れています」


「そんな厄介なのがまだ残っていたか…俺も出る!リード、アカネ嬢を頼んだぞ!」



焦燥をあらわに舌打ちし、アドルフ様は混乱の戦線へ駆け戻っていった。

ピンキーエイプはその名の通り鮮やかなピンク色の猿だ。

だけどその牙も爪も鋭く、何より動きが機敏で攻撃性が強い。

大きさは小型犬程度なんだけど、それが群れで襲ってくるとなると…

いくら間口が狭くなった戦場でも、ピンキーエイプなら持ち前の小回りが利く体とジャンプ力で次々こちらに攻め込んでこれる。

アドルフ様一人が戻って何とかなるとは思えない。

この状況をなんとかできるとしたら…



「リード、お願い!」


「…俺にもこの場を離れろと?」



今私達の周囲には誰もいない。

私の護衛をリードに任せ、誰もが前線へ戻っているか、後方へ状況を知らせに走っているからだ。

だけど…



「自分の身くらいなら守れるから!あれを何とかできるのはリードだけでしょ」


「俺が何より優先するのはアカネ様の身です」


「リード。リードは私の奴隷なんだよね?」


「…そうです」


「…命令だよ、お願いだからみんなを助けて」



私が初めてする真剣な命令。

リードは酷く苦い物を口にしたような顔をした。



「それにこのままじゃここも危なくなるかもしれない。今のうちに手を打ってもらった方が、かえって私も安全になると思わない?」



リードは数秒悩むそぶりを見せた後、頭をかきむしって唸った。



「…くそ…」


「ごめん。お願い」


「一つ約束してください。もし危険が迫れば、周囲への影響を気にせず魔術を使って自分の身を守ると」


「……」



自分の身に危険が迫れば、私は魔術で対応するしかない。

だけどそんなパニック状態で魔術を使えば、おそらく出力をまともに調節できない。

そして使用を躊躇った結果、魔物に襲われてしまう…

リードはそれを心配しているんだろう。

私にもそんな未来が簡単に思い浮かんだ。


周りの人を巻き込むかもしれないのに、気にせず魔術を使うなんてまず無理だ。

無意識に、咄嗟に使っちゃう可能性はあるけど。

だけどそんなことを言ったらリードは意地でもここを離れてくれないだろう。

だから私は頷いた。



「わかった、約束する」


「…っち」



そんな私の表情を見て、リードは納得するどころか今にも泣きだしそうな悲痛な表情で舌打ちをしてその場を離れた。

『自分が死んだら俺も死ぬこと覚えとけよ!』なんて、熱烈な告白みたいな言葉を残して。

思わず笑ってしまう。

そうだね、そういえばリードは最初のころ、自殺してしまいそうな危うさがあった。

それがいつの間にかこんな強かになってたのに。

…私に何かあったら、リードは本当に死のうとしてしまうかもしれないな。


きっとそこにあるのは悲恋物語みたいな甘苦いものじゃない。

リードのもっと深いところにある大きな傷みたいなものを刺激してしまう気がする。

その為にも私は死ぬわけにはいかない。

魔物が近付いてきたら、冷静を保てるうちに対処しなくちゃ。


そう思って周囲を間断なく見まわしていたつもりだった。

風の防御魔術だって背後に展開していたし。

だけど、完全にすべての方角を警戒なんてできるほど私は戦闘慣れしていない。

影が落ちたことに気付き、顔を上げた頃にはすでに大きな爪が私の眼前に迫っていた。



「アカネ様!」



どこからか飛び出した影が私を抱き込み、転がるようにしてその場を回避する。

目の前にアッシュブラウンの色が広がった。

ウェーブがかったその髪色には見覚えがある。

これは…



「え、エレーナ!?」



ひっくり返った私の呼び声に振り替えることなく、すぐに私を背後にかばう姿勢をとったエレーナは、スカートをたくしあげて太ももから何かを取り出し、頭上へ投げつけた。

鈍い悲鳴を上げて、鳥のような魔物が降って来る。

ポカンとしている私をよそに、エレーナはいそいそと魔物へ近づき、投げつけた得物を回収した。



「…な、何今の?」


「アカネ様ってばもう、一人になっちゃダメじゃないですか」



こちらに戻って来ながら、エレーナはぷんぷん、と頬を膨らませる。

いやいや、そうなんだけど。



「何でいるの?」


「こんなこともあろうかと、少し離れたところで待機してたんです!そしたらリード様ってば本当にアカネ様置いて行っちゃうんですもん。慌てて駆けつけたけど、ホント間一髪だったんですよ?」


「いや、リードがあっちに行ったのは、私がお願いしたから…」


「そんなこと分かってますよ。リード様めっちゃ苦渋の決断って顔してたんですから。あんまりわがまま言っちゃダメですよ」



『メッ』された。

すみません。

いやいや、そうでもなくて。



「エレーナ、何者?」



さっきの身のこなし、普通のメイドじゃない。

だけど私の問いにエレーナはきょとんとした顔をして、可愛らしい顔で微笑んだ。



「私はただのメイドですよぅ」



そんなわけないだろ。

しかし突っ込む間もなく、エレーナは再び腰を低くして臨戦態勢に入る。

何事かと思っていると、頭上に再び影が落ちた。

しかも、さっきよりずっと大きい。

これって…



「グリフォン!」



いつだったか私がやっつけたやつ…

なんだけど、あれより二回りくらい大きい。



「やだ、グリフォンの雄じゃないですか!私の武器じゃちょっと荷が重いですよー!」



エレーナは焦ったような声でそう言いつつも、私をかばう姿勢のまま先ほどと同様短剣を投げつけた。

しかしグリフォンの硬い羽毛に勢いを殺されたのか、かすり傷しか与えられていない。

あれが雄のグリフォン?

ってことは私が前に倒したのは雌グリフォンだったのかな?



「やっぱりぃ!アカネ様、ここは撤退を選択した方がいいです!」


「わ、わかった!」


「私が時間を稼ぐので、その間に逃げてくださいです!」



その言葉に息を呑む。

エレーナを置いて逃げるなんて…

だけど私の今の心理状態で魔術を使えば、また暴走するかもしれない。

そんな役立たずの私が残っても足手まといになるだけだ。


エレーナは言っていた。

『私達も自分で逃げられるのでお気になさらずですよ』って。

エレーナが何者かは分からないけれど、それなりに戦闘慣れしてるっぽい。

だけど私が居たら庇わなきゃいけないから逃げられないかもしれない。

ここは大人しく指示に従った方がいいだろう。


急いで踵を返し、後方に駆け戻る。

心臓が飛び出しそうなくらい鳴っていた。

早く、早く離れなきゃ。

そう思えば思うほどローブに足がからめとられ、横を流れていく景色はスローモーションのように遅い。

足がうまく動いていないのもある。

だけど非常事態に知覚が鋭敏になっているせいもあるんだろう。

体感時間が実時間を上回ってしまっている。

だから足元に再び影が落ちたことも、私はハッキリ認識できた。

だけどその認識に、体の反応は追い付かない。


あ、殺されるかも。


そんなことはぼんやり考えられるのに。

魔術を使わなくちゃなんてことを思う余裕はそこに無かった。



「アカネ嬢!」



結論から言えば、私は生きていた。

誰かに突き飛ばされたようで、いつの間にかひっくり返っていた視界。

そうして見えた星空と満月が嫌味なくらい綺麗で、しばし私は状況を忘れる。

呆然とする頭を叱咤し、ようやく体を起こして周囲を見渡すと、すぐ近くでグリフォンが息絶えていた。

ただ…

その前に倒れている人が居る。



「…アドルフ様?」



地に広がる真っ赤な染みを、月明かりが冴え冴えと照らしていた。

Q.アドルフ様どうやって追い付いたの?

A.アカネの足が遅かった+アドルフ様の肉体強化が本気を出した+だってフィクションだもの

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