013大精霊マイルイ
「話はわかった」
桜の木を燃やそうとしていたマリーを慌てて二人で止め、ファリオンが魔王(仮)であること、ファリオンには理性があるので害はなく、桜の木もファリオンの指示でやっているだけでむやみに人に害を為すものではないことなどを伝えるとマリーはようやく魔力を鎮めた。
「えっと、ごめんね。マリー」
「どうしてアカネが謝るの」
「いや、内緒にしてたし」
「簡単に話せる内容ではないことは分かってる。ファリオン公子の魔力が少しおかしいのも気付いてたから、むしろ納得した」
そういえばマリーは私にだけでなくファリオンに対しても魔力の心地よさを感じていたらしかった。
マリーの闇魔術で姿を消していた私にファリオンが気付いたこととかもあったし、その時点で普通じゃないとは思っていたんだろう。
「魔王」
「まだ仮だ」
「どちらでもいい。貴方が本当に害を為さないと証明できる?」
「おかしなこと言うな。迷宮の魔女」
ファリオンがどこか同情を含んだような笑みで返すと、マリーは不愉快そうに眉根をひそめた。
「……好きで魔女になったわけじゃない」
「知ってるよ。俺はまだ選ぶ余地があった。お前は違う。きっかけに関しては気の毒だと思ってるさ。俺は現状の話をしてる」
「私も同じだって言いたいの」
「同じかはしらねーよ。さっきのお前の問いかけを、自分にふっかけられんのかって聞きたいだけだ」
マリーはこれ以上無いというほど眉に皺を寄せた後、脱力したように溜息をついた。
それを見てファリオンも不穏な空気をひそめ、隣でオロオロしていた私を抱き寄せる。
「ま、少なくとも俺はアカネにこんな顔させたくはねーんだよな」
「……分かってる」
マリーは私の方をチラリと見た後に首を振った。
「アカネを裏切らないでいる間は、私も貴方に敵対はしない」
「上等だ」
「それより、今からドロテーアという令嬢に会うんでしょう?あの夢に関する話なら私にも関係がある。同席させてほしい」
やっぱりそこが気になったか。
すでに私が倒れた原因と思しき情報も伝えてある。
世界の記憶についてマリーは言葉くらいは知っているという認識だった。
今一つ信じてはいないようだけど、ドロテーアの事情聴取には参加したいらしい。
「……いいけど、ドロテーアを威圧しないでね。私の予想では、あの子は本当に普通の女の子なんだから」
「わかった。普通の女の子じゃないと判断したら威圧する」
「そうじゃない……」
お願いだから平和的に進めさせてほしいと説得するのに思いのほか時間がかかってしまった。
何だかんだで、客室にいるドロテーアのところへ向かえたのは深夜三時。
例のフォークで鍵を開けるファリオンを見てまたマリーの視線が厳しくなったのは言うまでも無い。
ドロテーアはベッドに腰かけたまま気を失ったような姿勢で眠っていた。
その顔には疲れが滲んでいて、花粉がなければ眠りにつけていなかったのでは無いだろうか。
ようやく眠れたのであろう彼女を起こすのは気がとがめたけれど、事情が事情だ。
その肩にそっと手をかけて揺り起こす。
「ドロテーア」
花粉の効果もあってかなかなか目が覚めず、一分くらい声をかけ続けてようやく目を開いた後も、ぼんやりした様子だった。
「……ん……?」
ボーっとしているドロテーアなんて貴重だ。
思わずまじまじと観察していると、だんだん瞳の焦点があってきたドロテーアは目を丸くした。
「え?アカネさ……えっ、え!?」
「シーッ」
一応ヒナ吉で防音はしているんだけれど、落ち着かせるためにも口をそっと押える。
そんな私の手をつかみ、ドロテーアは瞳を潤ませた。
「アカネ様っ、ごぶ、ご無事で……」
「大丈夫だよ。心配かけてごめんね」
「いえっ、いえ……」
涙を零しながら首を振るドロテーアを見て確信する。
やっぱりこの子が私に害意を持っているなんてあり得ない。
思えば前回も今回も、彼女は何かを目で追っていた。
私には見えない、おそらく彼女にしか見えない"何か"を。
「ドロテーア嬢。悪いがアカネの無事を見せに来たわけじゃねーんだ」
私とドロテーアの間に割って入るようにファリオンが体を滑り込ませる。
「ファリオン様……と……?」
そこでようやく私以外の存在に気付いたようで、ドロテーアは目を瞬かせながらファリオンとマリーを見つめる。
「私のことは今は気にしなくていい。アカネの護衛」
「は、はい……」
しかしドロテーアは表情を強張らせていた。
もしかしてマリーが誰なのか分かっているんだろうか。
迷宮の魔女の名前は有名でも、その姿を見たことがある人間は少ないはずだ。
冒険者ギルド本部に出入りしている人間でもない限り、そうそう顔を合わせることはないし、彼女が嫌うので絵姿も出回っていない。
でもドロテーアの情報網だとなぁ……マリーがどこかの騎士と絡んだことがあるなら知ってるかもしれないと思ってしまう。
「率直に聞く。ドロテーア嬢、君は何者だ?」
声を低くして尋ねるファリオンに、ドロテーアは戸惑いを打ち消して表情に恐怖を浮かべた。
とても演技とは思えない。
「わ、私は……ただの男爵家の娘で……」
「それを信じるには不審なところがありすぎる。自覚はあるだろ?」
「わ、私……」
「別に敵だって言ってるわけじゃねーよ。ただ、ドロテーア嬢が抱えてる何かはおそらくアカネにも関わりがある。今日倒れたのだって、アカネの体に大きな負担がかかることだった」
ファリオンの言葉に身を強張らせ、ドロテーアは顔色を悪くした。
「なぁドロテーア嬢、前もアカネがこうなった時、誰かに話しかけてたよな」
「それは……」
「何か知っているなら教えてほしい」
「……」
「……言えないようなことなのか」
「もういいよ、ドロテーアにだって何か事情はあるだろうし」
ドロテーアは明らかに怯えている。
話せるものなら話しているだろう。
なのにこうも口を閉ざすんだ。
これ以上は尋問になってしまう。
慌ててファリオンを諫めようとするも、逆に睨みつけられた。
「自覚ないのかもしんねーけどな。急に倒れて半日意識無かったんだぞ。命に関わる事だ。情報があるなら無理にでも集めた方がいい」
ファリオンの言葉に、ドロテーアは唇を震わせて俯く。
「申し訳ありません、アカネ様、ファリオン様。でも私……」
「どうしても言いたくないなら今日は引き上げてもいい」
そのファリオンの言葉に、ほっと胸をなでおろす。
「来月には俺の肩書がハッキリする。それを待てというなら待ってやるよ」
それはつまり、侯爵の名のもとに命じるということだ。
「ファリオン、待って!それはまずいよ!脅しになっちゃう!ドロテーアは敵じゃない、友達だよ!?」
「敵か味方かはドロテーア嬢の回答次第だ」
「そんな……」
「別に好き好んで敵対したいわけじゃねーよ。でも俺は優先順位を見失わない。もう二度と」
そう言い放つファリオンの眼差しは険しい。
駄目だ、カッとなってるなら諫めようもあった。
ファリオンは冷静だ。
冷静に、ドロテーアを追い詰めようとしている。
ひとまずこの場からドロテーアを逃がして上げた方がいいかもしれない。
そう思って口を開こうとした瞬間、ファリオンとドロテーアの間に立ちふさがるように、光の粒が集まった。
「これは……」
光の粒は間もなく人の形を成し、目を焼くような閃光を放つ。
それが収まった時そこに居たのは、目のくらむような美女だった。
「ちょっと!ドロシーを虐めないでよね!」
柔らかな曲線を描く薄緑の長い髪、透き通るような肌は血の色を感じさせないほど白く、青い瞳は海を閉じ込めた宝石のよう。
重力を知らないかのようにふわふわと浮かぶ髪と四肢はあまりに非現実的で、けれど険しくしかめられた表情がわずかな親しみを感じさせる。
「マイルイ……」
そう呟いたのはドロテーアだ。
この美女の名前なのだろうか。
とにかくドロテーアは知っている相手らしい。
「ドロシーはあたしと無言の契約を結んでるから言えないのよ。質問なら私が受け付けるわ。ドロシーを虐めないで!」
「……お前は一体何者だ?」
私を庇うように立つファリオンが、声を尖らせながら問う。
守られる側の私すら身を固くしてしまうような声音にも美女は動じず腕を組んだ。
「あたしはマイルイ。この世界に揺蕩う精霊たちを統べる大精霊よ!」
せ、精霊きたー!
実在するって聞いてたのに、魔王やら勇者やらは居ても一向に会える気配のなかった精霊がここに来て!
しかも大精霊とかいうなんかすごそうなトコが!
「大精霊だからこんな美人なんだ……」
思わずそう呟くと、マイルイはこちらをチラリと見てふんぞり返った。
「ま、まぁね。そりゃーあんた、大精霊が美しくないなら何が美しいの?って感じじゃん?」
「いや、ほんと人間とは一線を画した美しさって感じ」
事実なので手を叩いて同意する。
お母様達やファリオンやリードも綺麗な顔立ちしてるけど、マイルイは別格だ。
さらに上があったのかと思ってしまう。
本当にファンタジーっぽい神々しさがともなう容姿だもん。
「ん、んふふふ。やぁだよく分かってんじゃない。魔力高い人間もそう悪くはないわね」
ますます背筋をそらしながら、マイルイは引き結んだ口元をひくつかせる。
感情が隠せないタイプらしい。
「……それで、その大精霊がなんでこんなとこにいるんだよ」
「こんなところも何もぉ、精霊がいないとこなんてほとんどないわよ。魔力が強いこの国だと確かに力の弱い精霊は存在もできなくなっちゃうけど、あたしほどの大精霊ならどこにだって行けるわ。まぁ…あたしでも魔力泉とかは無理だけど……」
そういえばさっきも魔力高い人間がどうとか言っていた。
「精霊は魔力が嫌いなの?」
私の問いに、マイルイは頷く。
「嫌いって言うか。濃度が高いと毒になるのよ。あんたたちみたいに強い魔力の持ち主は周囲にもその魔力を漏れさせるし、弱い精霊なら近づくだけで消滅しちゃうわ」
なんと。
魔力が高いと精霊との親和性が悪いというまさかのデメリット発覚。
そういえば精霊に会ったことがあるっていうアドルフ様も魔術使ってるの見たこと無いし、魔力あんまり高くないのかも。
そう言う人が代わりに精霊から力を貸してもらえるっていう感じなのかな。
魔力高いのって万能チートかと思いきや、一長一短なのね……
「……知ってた?ファリオン」
「いや……そもそも精霊と言葉を交わせるなんて初めて聞いたからな」
「え?」
話せること自体一般的じゃないってこと?
でもよく考えれば、精霊がこうして話せるならこの程度の情報は常識として出回りそうなものだ。
そもそも、精霊の姿を見たことがあるという人もあまりに少ない。
「そりゃそうよ。普通の精霊は姿を見せられたとしても本当に気に入った人間の前にしか現れないし、言葉を話すのは流石に無理無理。ましてやこの国は迷宮があるせいで魔力が強い人間が集まりやすいから、精霊が力を貸したがる人間自体少ないしね」
なるほど、隣国のパラディアでは精霊信仰が盛んなのにこの国はそんなに精霊の話を聞かないのはそのせいか。
迷宮があるから強い冒険者が集まってくるし、そうなると高い魔力を持つ魔術師も多くなる。
「あれ、でもマイルイは話せるんだね」
「あたしは大精霊だもの。一緒にされちゃ困るわ」
「すごーい!」
「ふ、んふふん。でしょでしょ?」
「それで、ドロテーアはマイルイと友達だったの?」
困った顔をして私達のやり取りを黙って見守っているドロテーアに視線を向ける。
おずおずと頷く彼女が口を開くより先に、マイルイが両手を広げた。
「そうよ、あたし達は友達なの!ドロシーは魔力が低くて安全だし、何よりとってもいい子だもの!」
確かにドロテーアは魔術の授業でも、『魔力低いんですよねわたし』と言いながら苦戦していた。
そしていい子だという点にも心から同意する。
「なのになのに、最近はあんた達が一緒にいるからあたし近付きにくかったのよね。魔王なんて魔力の塊だし、魔力の楔も似たようなもんだしぃ。それが三人も揃ってんだもの嫌んなっちゃう。大精霊のあたしなら消滅まではしないけど、圧迫感あるのよね」
不満げに唇を尖らせるマイルイ。
しかし、初めて聞く言葉があった。
「魔力の楔?」
思わず問い返す私に、マイルイはにんまりと口角を上げる。
「んふふ、そう。あなたとあなたのことよ、楔ちゃん」
マイルイの指が私とマリーを示す。
「あっちの楔ちゃんはずいぶん年季が入ってるけど、パスがぐちゃぐちゃね。やっぱりあんなイレギュラーで解放されちゃったからかしら。こっちの楔ちゃんもなんだか同じ感じだったから、ドロシーのお友達同士のよしみでちょっぴり手を貸してあげたんだけど」
何を言っているのかさっぱり分からない。
好き勝手に口を開くマイルイを咎めるように、ドロテーアは眉をひそめた。
「マイルイ……」
「安心して、ドロシー。この三人が悪い子達じゃないってことは分かってるわ。だけどね、だからこそちょっとヒントをあげなくちゃ。このままじゃ、そのうちこの楔ちゃん達、心を壊して死んじゃうわよ」
なんかすごい不穏な話をされている。
ファリオンは私の前から動かず警戒を解かない体制のまま、溜息と共に口を開いた。
「……やっぱり、ドロテーア嬢は全て知ってるんだな」
その言葉にはたと気付く。
そう言えば、マイルイは魔王だとか楔だとか口にしている。
それを聞いても動じていない様子を見るに、ドロテーアはファリオンが魔王だと知っているようだ。
「んふふ、あたしは友達に情報を出し惜しみしたりしないのよ」
この世界のどこにでもいるという精霊なら、そりゃ知らないことなんてないだろう。
ファリオンはその言葉を聞いて大きく溜息をついた。
「ドロテーア嬢……」
「ご、ごめんなさい」
なんでファリオンは呆れたような声を出していて、ドロテーアは小さくなっているのか。
疑問符を浮かべる私に気付いたか、ファリオンは首を振った。
「おかしいと思ったんだ。いくら騎士が好きで噂話に強くたって、あんなリストを作れる情報網なんて腕利きの諜報員レベルだから」
「……あ、騎士の情報リスト!?」
私が攫われた時に、ドロテーアが餞別として渡したという騎士の情報リスト。
ハイルさんに一泡吹かせた、濃すぎる情報録を私は実際に目にしてはいない。
だけどファリオンの口ぶりを聞く限り、相当すごいものだったようだ。
「随分古い情報も残ってるもんだと思ったら……精霊が情報元なら納得だ」
「んふふん、千年前の王様の性癖だって知ってるわよ!」
なんでやたらと性癖を暴きたがるのだろうか。
知ったところで誰も得しない情報だと思うんだけどなぁ。
てことはハイルさんの性癖情報も、娼婦のお姉さんが漏らしたっていうより勝手に精霊が覗き見してただけかも?
何でもありだな……
あれ、もしかして私の情報も漏れてる?
……考え無い方が良さそうだ。
「千年前の王様の性癖なんてどうでもいい。大精霊、私の体について何を知っているの」
脱線しだした会話に焦れたか、マリーがそう言って割って入る。
苛立つマリーを見ても、マイルイは人を食ったような笑みを絶やさない。
「そうねぇ。この期に及んであなただけお預けも可哀そうよね。貴方もちょっとだけ助けてあげる」
滑るようにマリーの傍へ寄ったマイルイは、マリーが抵抗する間もなくその額にチョンと触れた。
その瞬間、マリーが頭を押さえて呻く。
そしてなぜだかマイルイの方まで指を押さえて唸った。
「あいたた。やっぱり楔は魔力が強くてやんなっちゃう」
そう言うマイルイの指は、火傷を負ったかのように爛れている。
よろめくマリーを支えながらも、一体どちらを心配していいのかわからない。
オロオロしている間に、支えているマリーの体から力が抜けてしまった。
「ま、マリー!」
「なるほど、アカネにも同じことしてやがったんだな」
「怖い顔しないでよ。確かに荒療治だけど、こうでもしなくちゃずっとおかしなところに記憶が溜まり続けて、歪みがあちこちに出始めるの。この子なんか何十年もこの状態だったから、精神がかなり不安定になってるわ」
記憶、とマイルイは言った。
やっぱり世界の記憶が関係あるのだろうか。
マリーがパニック障害みたいなものを持っているのは、結晶の中に長年閉じ込められていた影響だけではなかったのかもしれない。
もしかしてやたら動揺しやすいのもその一環?
「早いとこその子寝室に連れて行って、あの防音の魔術具つけてあげた方がいいわよ」
「あ、そうだよね。ファリオン……」
「待て、まだ話は終わってない」
「心配しなくても逃げたりしないわよ。この子はアカネより年季入ってるから、繋がるのが早いわ。さっさと運んでらっしゃい。魔王」
「……俺が油断した隙にアカネに何かしねーだろうな」
「馬鹿言わないでよ。何かするんならあんたが居ようが居まいが関係ないわ。覚醒前の魔王くらい、隙をつけばどうとでもなるもの」
マイルイは鼻で笑って一蹴した。
さっきもマリーとあっという間に接触したし、確かにマイルイはその気になればいつでも私たちを制圧できるんだろう。
魔力には弱いみたいだけど、精霊は魔力とは異なる理で不思議な現象を引き起こせると言う。
大精霊という存在がどういうものかピンとは来ないけれど、S級冒険者のマリーが敵わないんだ。
私達じゃ相手にならない。
ファリオンは歯噛みしつつも、一体どこに潜ませていたのかどこからともなく現れた大きなスライムにマリーを運ばせ始めた。
意地でも自分はこの場に残るつもりのようだ。
今は屋敷の人間が全員眠っているからいいけど、誰かが目を覚ましたら大事件になる。
一体どこにどんな魔物をどれだけ仕込んでいるのだろうか……
スライムの操作に意識を割いているのか、ファリオンは腕組みをしたまま難しい顔をして黙り込んでしまった。
「マイルイ、もう少し穏便にできないの?」
ずっとその場を眺めているしかなかったドロテーアが泣きそうな声でそう言う。
「魔王や魔力の楔を相手に穏便なんて面白いこと言うわね、ドロシー」
「魔王だとか楔だとかの前に、二人は私の……」
「大事なお友達、でしょ。分かってるわよ。あたしだってドロシーの大事な友達でしょ」
「だから困ってるんじゃない」
ドロテーアは頭を抱えた。
ずいぶんこのオトモダチには振り回されているようだ。
私は未だに痛ましい様になっているマイルイの指先を見て口を開いた。
「マイルイは大丈夫なの?」
「ん?ああ、これ?んふふ、アカネは優しいわね、大丈夫よ。この程度なら夜が明けるまでには修復されるわ」
「そう、良かった」
それなら心置きなく話を続けさせてもらおう。
「マイルイ。魔力の楔って何?」
ついにドロテーアの情報源が明らかになってしまいました。
ずるっこしてただけです。
そりゃ流石にただの十四歳があんなに情報集められませんて。
===
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