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魔王の隣で勇者を想う  作者: 遠山京
第六章 令嬢と盗賊

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132/224

130若いもんには負けんぞ!(物理)

<Side:アドルフ>



パラディアへの協力要請を口にしたリード。

シルバーウルフ首領、ハイルのアジトはパラディアとの国境にある。

首領と合流した後そのままパラディアに入る可能性を考慮したのだろう。

しかし、普通は首領のアジトなど知らない。


これで怪しまれないと思ってるのか。

頭を抱えそうな俺とは対照的に、フェミーナ夫人は子供の可愛い悪戯を見たように軽やかに笑った。



「そう、では可愛い息子の勘を信じましょう。陛下にお許しを頂いた上でスターチス家からパラディア王国へお願いしてみるわ」


「お願いします」



夫人はもはやリードの暴走に関しては諦めているのかもしれない。

心配していないわけではないはずだが、この切り替えは見習うべきところだな。



「それで、私の可愛い息子はじっとしていてくれない子だと思っているのだけれど、お母様の勘は当たっていて?」



可愛い息子という言葉に、義母としての心配の色をのぞかせていたが、当のリードは気付いていなさそうだ。



「…当てがあります」


「そう、教えてはくれないのね?」


「お伝えすれば事が大きくなります」



手遅れだ、馬鹿。

怒りを通り越して脱力しそうになる。

何をうまく隠せたつもりになっているんだ。

フェミーナ夫人もさすがにため息をついていた。



「それに一人の方が動きやすい」



ハッキリ言いやがった。

魔物が蔓延るこの時代において未成年が一人旅をするのがどれだけ非常識だと思ってるんだ。

無理なんだぞ、普通は。

魔物を従えることができる魔王でもない限りな!


まぁいい、この迂闊さのおかげで作戦通りだ。

後は適当に反対意見でも出して、リードの知識をもう少し晒してもらおう。



「スターチス伯爵。お言葉ですが…ヴィンリード・スターチスは学生であり未成年。一人で捜索に向かうなど危険極まりない」



空気を読める学園長が、またいい仕事をしてくれた。

話を振られたスターチス伯爵は、計画通りの流れに戻ったことに冷静さを取り戻したようで、もっともらしく顎を撫でた。



「確かに、捜索するとなれば他領…さらにはリードの勘が確かならばその行動範囲が他国にまで及ぶ。その責任を取るにはその身では足りないな。東方に向かうとあればそれなりに私達のフォローが必要だと思うけど、根拠がなければ動けない。リード、周囲を納得させるだけの理由を上げられるかい?」



伯爵ののんびりとした声色がトドメだったのか、今にも飛び出したそうにしていたリードのこめかみが震えたのが見えた。

そして奴は三十分の休憩を言い渡し、きっちり三十分後に戻って来たかと思えばこの短時間で書き上げたとは思えないほどのレポートの束をテーブルに叩きつけたのだ。


一枚一枚めくって見せながら、リードは自分が一人で向かうメリットを、回りくどい情報も混ぜ込みながら語る。

こじつけにしか思えない情報もあり、目的は説得というより煙に巻くことだと見えた。

そのやり口はいい。

内容が大問題だ。


思わず手にしていたレポートを放り投げてしまった。

説教は全て済んでからまとめてしてやろうと思っていたが、もう無理だ。

我慢ならん。



「…ヴィンリード…お前、馬鹿か…」


「ご指摘は具体的かつ端的に願います、アドルフ様」



ああ、ああ、そうか、これでも分からないのか。

本物の馬鹿だな、お前は!



「それなら言ってやろうじゃないか。おそらくお前これでも情報絞ったつもりなんだろう。それにしても酷い。王都内の警備体制や巡回スケジュールみたいな機密情報をしれっと論拠に盛り込みやがって、何考えてんだ!?」



俺が期待していたのは歴史、魔術、そういった学術的に役立つ知識と実力を披露してくれることだ。

リードはこの国の学問の発展に役立つ存在であると、過激派を黙らせる材料を得ることだ。

確かにそんな情報も混じっていた。

お前の知識は財産だ。


でもなんで機密情報まで混ぜ込んだ!

こんな他国の間諜やら暗殺者やらが泣いて喜びそうな情報を収集する能力を見せてどうする!

危険人物以外の何者でもないだろうが!


しかし俺と学園長の言葉がただの口やかましい小言としか聞こえていないらしく、リードは煩わし気な表情だ。

こいつ本当に一回殴ってやろうか。


しかしその空気を断ち切ったのは、王女殿下が扇でテーブルを打つ音だった。

無礼極まりないが、王女の存在を少し忘れていた。

そもそもリードが一人で捜索に向かう流れを作るため、王女がこの場にいらっしゃるよう仕向けたと言うのに。

この場の目的は既に達している。

彼女がリードを後押しするのを妨げる理由はないと、口を閉ざした。



「責任の所在が問題ということですのね?王女の勅命であればロッテの責任になりますわよね?」



あり得ない単語が聞こえた気がする。

王女の勅命?

王命に次いで重い命令を下すとおっしゃったか?

呆然としている間に命令状を書き始めてしまった王女を、学園長が慌てて止める。



「お待ちを。勅命とは…何をなさるおつもりですか」


「もちろん、命令状の発行ですわ。リード様をロッテの使者に任命し、アカネ、ファリオン様の捜索のため国内すべての領主に協力を要請いたします。それで国内の移動は問題ありませんし、パラディア王国でも助けてもらえますでしょう?印璽はありませんので仮発行となりますが、リード様に動いていただくのに差支えはないはず。正式なものは後ほどスターチス家に届けさせますわ」


「王女殿下、それは…」



ここまで影響範囲が広い命令状を勝手に発行したとなれば、流石に大臣たちが黙っていない。

シャルロッテ王女殿下は確かに箱入り娘ではあるが、命令の意味を分かっていない方では無かったはずだ。

リードも流石に予想外だったのか、戸惑ったように王女殿下を見つめている。

その視線を受けて、彼女は顔を上げた。



「こういう時にこそ権力を行使しなくてどうしますの?お友達を助けるためなら使えるものは全て使います。責任は全てロッテが負いますので、リード様は思うように動いてくださいませ」



それは、王女の声だった。

命令状の意味も、自らの身勝手さも、自身と父王の立場がどうなるのかも分かった上で、彼女はペンを動かしている。

……侮っていた。

王女殿下には全てお伝えしておくべきだった。

これほどまでにアカネ嬢とヴィンリードを気にかけているとは思わなかった。


いや、伝えていたところで、彼女は同じことをしたかもしれない。

王女の命令状。

これはリードを守るためには決定的となり得る切り札だ。

たとえリードがこの後、アカネ嬢を捜索する過程で人を傷つけることがあったとしても、王女の勅命を遂行する為に必要だったと面目が立つ。

命令状とはそれほどに強い効力を持つものだ。


シャルロッテ王女は、それらを見越した上で形に残る命令状の発行を選んだのだろう。

そうまでして、リードを守りたいという彼女の意思の表れだ。

これは王女の立場を悪くするおそれがあるが、リードにとっては追い風となるかもしれない。



「ヴィンリード・スターチス。シャルロッテ・カデュケートの名の下に命じます。わたくしが王女であるうちに、アカネ・スターチスとファリオン・ヴォルシュを救出なさい」



リードと共に跪きたい思いだった。

そんなシャルロッテ王女の鶴の一声でリードの出立が翌朝に決定し、誰もが慌ただしく動き出す。

俺もリードの監視につく人員の手配に奔走した。


リードは王女から下賜された馬に乗り、夜明けと同時に出立したらしい。

こちらの監視役も馬で後を追う計画になっていたのでそこは問題ないのだが、俺は嫌な予感がしていた。

案の定すぐに連絡係がやってきて、執務室のソファで仮眠していた俺を叩き起こす。



「申し訳ございません、アドルフ様!標的の騎乗する馬が馬とは思えないほどの脚力を見せ、王都を出て間もなく撒かれたとの報告が入りました!」



……そうだよな、髪飾りや人形が可能なら、馬だって魔物にできるよな。

監視できなかったら今回の作戦、全て意味が無くなるんだがな。


馬とは思えないと言うかもはや馬ではなくなったのであろう存在を思い、俺はとうとう溜息すら出せなくなった。




==========




王都にある別邸。

その執務室で、俺は相変わらず頭を抱えていた。



「手を焼いているようだな、アドルフ」


「焼きもしますよ…ヴィンリードは一般に知られていないような魔物を生み出し使役できるようです。こうなるとすぐにアカネ嬢を発見するおそれがあります」



ヴィンリードが出立してから二日。

監視が四六時中張り付くことは不可能となったが、予測されるルートに配置した監視員や、ハイルが手配したシルバーウルフ側の協力者から情報が俺の元へ集められているため、リードの行動は把握できていた。

しかし、正直状況は良くない。



「初日の夜は掃除屋が根城にしている廃屋で宿をとる手はずになっていたのですが、悪いニュースが立て続けにきていますし」


「あそこの監視担当はドーマという男だったか。アカネ嬢に何か?」


「掃除屋がアカネ嬢を気に入ってしまったそうです」


「……それは、また…」



黒を白に変える掃除屋、ベルテン。

優れた追跡、隠密、暗殺技術を持つ男で、シルバーウルフにおいて殺しの任務を請け負うスペシャリスト。

しかしその性癖は少々歪んだところがあり、気に入った存在ほど手にかけたくなるという厄介な人間だ。

親父殿からこの役目を引き継ぎ、彼とも数度顔を合わせたが得体のしれない空恐ろしい空気を持つ男だった。

ベルテンに気に入られたとなると、アカネ嬢の安全性が一気に怪しくなる。



「ヴァンはベルテンの危険性を十分知っているはずだ。確かにベルテンから逃れるのは難しいが、ヴァンには麻痺毒を塗った短剣も持たせている。アカネ嬢を守ってくれるだろう」


「そう祈りたいところですね。もしくはヴィンリードが追い付いて守るのが早いかですか」


「……まさか。早すぎるだろう」


「昨日…アカネ嬢たちが廃屋を出た五時間後にはヴィンリードがやって来たそうですよ。しばらくちょっかいを出して足止めしてくれたそうですし、そろそろリードもまとまった休憩を取るでしょうが……もう五日も持たないでしょうね」



サバを読んだが、正直なところ三日も持たないのではないかと思っている。

俺の言葉に親父殿は表情を険しいものにした。



「……エルヴィンの件はどうなっている」


「宮廷会議を開く計画でしたが、規定にある貴族全員を一ヶ月以内に揃えるのは難しいかもしれませんね。宮廷会議は本来、一年から半年前には通知するものですから」


「この際フランドル侯爵の地位を整理するのは後になっても構わんだろう。エルヴィンを逃がさないことが肝要だ」


「そのエルヴィン本人も厄介ですね。こちらの動きを察したかのように数日前から姿が見えません」



こうして色んな不都合が重なっているせいで俺はすっかり参っていた。

その様子を見てとったか、ここまで俺に任せるスタンスをとっていた親父殿が表情を険しくした。



「…ふむ、仕方あるまい。エルヴィンは私が追跡しよう」


「申し訳ございません」


「一筋縄ではいかぬ案件が絡み合っている上に、あまりにイレギュラーが多い。反省するとしたら、使えるならば父でも使うという気概を持たなかったことだ」


「ご高説謹んで受け止めます」



苦笑してそう返す。

確かに任されることが増えたからと意気込んで抱え込みすぎたかもしれないな。

親父殿は踵を返し、ドアに手をかけながら振り返った。



「ああそうだ、アドルフ」


「はい」


「お前、明日にでも一度ナルアに戻れ」


「は……何故です?」



今はリードの動向に関して情報を集めているところで、拠点を動かすと連絡係に混乱を招く。

ロイエル領都のナルアまではここから二日ほどかかるし、事が済むまではこの別邸に居るつもりだ。

そんな事情をよく知っているはずの親父殿の言葉に戸惑っていると、親父殿は目を合わせないまま口を開いた。



「どうやらスターチス家がナルアに隠した宝石に気付いたようだ」



すかさず椅子を蹴飛ばして肉体強化を全力で付与し、ドアの元まで一跳びで近寄った。

叩きつけるようにドアを閉めて退路を塞ぐ。



「親父殿?なぜ言い逃げしようと?」


「アドルフ、お前……こんなことに肉体強化を……」


「まずは詳しくお聞かせください」


「詳細は後で部下から伝えさせ…」


「詳しくお聞かせください」


「……スターチス夫妻が雇っていたA級冒険者の魔術師カルバンがクラウス様だと発覚した」


「はっ!?」


「そしてクラウス様はどうやら魔術具製作者としても大変優秀でいらっしゃるようで、血の結びつきが強い者を探し当てる道具を作られたようだ。クラウディア様が見つかった」


「はぁ!?」



あの意味深な顔合わせはそのせいか!



「何故スターチス家がクラウス様と!」


「どうやらフェミーナ夫人はずっとお二人を探していたらしい。そこにクラウス様が接触、捜索に協力していて、ついに見つけたというわけだ」


「何を呑気におっしゃっているんですか!」


「呑気になど言っていない。すぐにナルアに戻れと指示をしただろう」


「まさかスターチス家はすでに…」


「安心しろ、フェミーナ夫人は慎重だ。トロットから入領するらしい。猶予はある」


「猶予って!どうするんですか!」



宥めるように言われても逆効果だ。

思わず怒鳴ると、親父殿は怒鳴り返してきた。



「知らん!何でこの時期にこうもトラブルが立て込むんだ!」


「俺に言われても知りません!」


「私も知らん!」



クラウス様とクラウディア様の誘拐事件は、王家の権威を守るため、そしてカルト教団の勢いが増すのを防ぐために秘匿されていた。

この十三年間の間、お二人はご病気により離宮で療養していることになっている。


クラウディア様をセシルの元に匿っていたのは、エルヴィンの目から隠すためだ。

王宮にお連れして厳重な警護の元暮らしていただく案もあったが、ハイルによって救出されるまで彼女は娼婦をしていた。

そんな経歴を持ちながら、煌びやかで高潔さを求められる王族としての生活を強いるのは彼女の精神に負担をかけると判断され、彼女自身も強く拒否した。

加えて誘拐事件以降、"潜る"頻度が高まった彼女はまともな生活を送るのが難しく、セシルに世話をさせるのが最適だと判断されたわけだ。


エルヴィンの目をくらますため、"娼婦デイジー"の誘拐はシルバーウルフによるものだと強調し、首領が彼女を囲っていると言う噂まで撒いた。

セシルはクラウディア様の世話をよく焼き、その存在が外部に漏れないよう徹底していた。

かくいう俺も親父殿から仕事を引き継ぐまでセシルの家にクラウディア様が居ることなど知らなかったほどだ。

自治隊の隊長、シルバーウルフ盗賊団シリウスの副長、その二つをこなしながらよく世話をしたものだと思う。

その甲斐あってかクラウディア様もセシルにはよく心を開き、信頼しあっているようだった。


傷跡はあれど穏やかな時間を過ごしていただいていたのだ。

だというのに。



「スターチス夫妻がクラウディア様を探しているなど初耳です!」


「それは私もだ」



そもそもお二人の行方が分からなくなっていることは、王家の一部とベルブルク家にしか知らされていないはず。

当時、フェミーナ夫人はすでに降嫁して王族ではなくなっていた。

彼女は事件の事すら知るはずないというのに。



「一体誰がフェミーナ夫人に情報を…!」


「陛下だ」


「……」


「陛下だ」


「聞こえています、親父殿」



そういえば今日、親父殿は陛下に呼び出されていたのだったな。

その話だったのか。



「現国王陛下が即位されて間もなく、お祝いに来たフェミーナ夫人にうっかり漏らしてしまったとのことだ」


「うっかり…」


「そして国が捜索のために動いていないと知った夫人に問い詰められ、陛下はこうお答えになったそうだ。『王族は簡単に動けない』と」


「……それは」


「我らベルブルク家が動いていることを察してほしかったそうなのだが」


「フェミーナ夫人はのんびりして見えて行動的で真面目な方ですから…」


「それは陛下もご存知だ。スターチス家の動きについて先刻お伝えしてきたのだが、『おそらく王族ではなくなった自分が動くべきと受け取ってしまったのだろうな』とおっしゃっていた」



『何を呑気な!』と叫びかけたが、あまりに不敬だ。

ぐっと堪えた。



「アドルフ、陛下から伝言だ」


「なんと」


「ごめん、と」


「何を呑気な!」


「こら、私も堪えた言葉を!」


「俺だって一度は堪えました!親父殿も何を淡々と説明していらっしゃるんです!呑気に!」


「呑気なものか!私は早くナルアに戻って手を打てとさっきから言っているだろう!」


「どう手を打てと言うんですか、すっかり見つかってしまっているのに!」


「陛下はご自分の責任をお認めになり、スターチス家に限りシルバーウルフの正体を明かして良いと仰せだ!」


「強引な解決法になりますよ!?」


「致し方あるまい!……それとも、お前ならもっとスマートな解決を図れるとでもいうのか」


「ぐっ……それは、無理です…おっしゃるとおりに致します」


「それでいい」



はぁ、とお互いに息を整えて改めて向き合った。



「では、クラウディア様はどうなさいます。セシルの元から離れるのを望まれないと思いますが……」


「ひとまずフェミーナ夫人、クラウス様に会わせてさしあげろ。クラウディア様の無事を確認するまで、あのお二人は納得すまい。今後のことはその御三方と国王陛下に判断していただこう。ことここに至ってはもはや家族の問題だ。我らが口を出しても仕方があるまい」



それは匙を投げたというのでは。



「では、全て伝えたぞ。任せた」



そう言って再びドアノブを引こうとする手に気付き、慌てて抑え込む。



「お待ちください親父殿!俺は今ヴィンリードの対応で手いっぱいなのですが!」


「エルヴィンの件は引き受けてやっただろう!」


「だからといって押し付けて逃げるような真似はいかがなものかと!使えるものは父でも使えとおっしゃったばかりではないですか!」


「言葉をそのままとらえるなど未熟者のすることだぞ情けない!」


「正式に立場を譲ったわけでもない見習いに、ろくな情報も与えず言い逃げしようとなさる方がどうかと!耄碌なさったか!」


「馬鹿にするでないわ!ベルナルアの戦士は生涯現役だ!」



そう言ったか言わないかのうちに、親父殿からすさまじい気迫が放たれ、目の前のドアがドアノブから砕けた。

唖然としている俺を横目に、まもなく五十になろうとしている公爵は肉体強化で体を輝かせながら走り去った。



「力比べではまだまだ負けんぞ!二度と耄碌したなどと言うでないわ!」



そんな言葉を残して。



「……ベルナルアの戦士とは…」



そんな俺のつぶやきを聞き、廊下に控えていたメイドがそっとハンカチを差し出した。

いや、泣かないからな。

かろうじて。

いつもご覧いただきありがとうございます。

ベルブルク公爵がなんかちょいダメ親父になってきました。

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